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2020.12.08

コロナ禍で顕在化した社員の幸福度と経営課題の関係

多様な視点と広い視野で「不確実な未来」に対処せよ

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慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 教授
ウェルビーイングリサーチセンター長 前野隆司氏

 2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、残業時間の削減やフレックス制度の導入など、これまで多くの企業が改革に取り組んでいる。さらに、突然のコロナ禍によって従来型の働き方が見直され、かつてないほど社員の創造性や生産性が重要になっている。

 先行き不透明な状況でも社員の力を引き出して業績向上へと結びつけるために、経営者はどうすればよいのか。幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授に話を聞いた。

「幸せ」を抜きに改革は実現できない

―― 働き方改革の名のもと、多くの企業が様々な取り組みを進めています。しかし、なかなかうまくいっていないという声も耳にしますが、何が問題なのでしょうか。

前野 隆司 氏(以下、前野氏) 結論から言うと、「幸せ」を考慮すれば本当の働き方改革が実現できるのに、それが抜けていることが問題です。そのために、働き方改革を嫌々やっていてうまくいかない、あるいは社員が疲弊してしまうというケースが多いのです。

 改革と呼ぶからには、全体的に大きくデザインを変える必要があります。しかし、「時短」「フレックス」「テレワーク」といった言葉だけに注目してしまい、目先の改善や変化にとどまっている企業が多いように見えます。

 もちろん、難しい面があることは事実です。幸せとは、社員みんながやりがいを感じて繋がることを意味します。しかし、大企業のように何千人、何万人の従業員がいると、社長以下全員が一丸になることは、中小企業に比べて容易ではないでしょう。

 現在、働き方改革がうまくいっている企業の多くは、働き方改革が叫ばれる前から改革に取り組んできたところです。社員の多様なニーズに合わせた制度を作って改革を続けてきた結果として、売り上げを増やし、離職率を下げてきました。

 具体的にどのような制度かというと、社員一人ひとりの要望に応えるきめ細やかな制度です。例えば、産休を取りたいと言われたら、産休を3年間取得できる制度をつくったり、友人の会社を手伝いたいので辞めたいけど再び戻ってきたいと言われたら、一度辞めても戻ることのできる制度を整備したり、という具合です。

 個々人でやりたいことは違うので、それらに細かく配慮することが一番の成功要因です。大企業の場合、ついつい大きな制度を作ろうという発想になりがちですが、制度を一つ作るだけではすべての社員に響きません。それよりも手間はかかりますが、きめ細かく一人ひとりのニーズに対応することが、一見遠回りのようで実は改革への近道だと思います。

企業や組織の幸福度を測る14の因子

―― まずは、一人ひとりの幸福度を高めることが重要で、その土台があって初めて各施策が機能するということですね。幸福度という観点から、特に大企業においてはどのような取り組みや考え方が有効でしょうか。

前野氏 私の研究で、幸せの心的特性の調査を行ったところ、人が幸せになるためには4つの因子が必要だということが導き出されました※1。これは個人の幸せの状態であり、個人の努力目標やキャッチフレーズのようなものです。

※1 社員の「幸福度」で変わる創造性・生産性・売り上げ
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58412

 これに続く形で、2020年7月にパーソル総合研究所と共同で「はたらく人の幸福学プロジェクト※2」を実施しました。その成果として「はたらく幸せ・不幸せをもたらす7つの要因」というものを特定しました。これは、幸せな職場の条件と不幸せな職場の条件は単に表裏なのではなく、別々のものとして存在しているのではないかという仮説に基づいています。

※2 慶應義塾大学前野研究室とパーソル総合研究所、「はたらく人の幸福学プロジェクト」の成果を発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/202007150001.html

 名称に「はたらく」とあるように、今回は働く人に焦点を当てており、企業内で幸せ/不幸せになる要素や条件になっています。診断ツールとしてアンケート項目を公開しており、誰でも使っていただけます。職場ごとに診断や分析ができるので、規模の大きな組織には特に有効だと思います。

出所:パーソル総合研究所+慶應前野隆司研究室

 例えば、あるIT企業の調査では、全体的には幸せ因子が高い傾向を示した一方で、不幸せ因子の一つである「オーバーワーク因子」も高くなっていました。幸せではあるものの、働き過ぎてヘトヘトになっているというわけです。この傾向が続いてしまうと、燃え尽きてしまったり、心の力がなくなったりしますから注意する必要があります。

 昨今のコロナ禍では、テレワークで職場が離れ離れになり、社員同士のコミュニケーションが不足しがちです。その結果、承認されているか、チームワークをとれているか、信頼関係が築かれているか、といった人間関係の部分が弱くなっています。

 しかし、こうした状況でも業績が伸びている企業はあります。オンラインを活用して社員どうしでランチ会をしたり、飲み会をしたり、遠隔だからこそ以前よりも幅広い人と接する機会が生まれて、さらに仲良くなっているという職場もあります。こういった企業ごとの差は、14因子で分析してみるとより明確に浮かび上がってくると思います。

幸せな企業と不幸せな企業の二極化が進む

―― コロナ禍をきっかけに在宅勤務が進み、自身の働き方や仕事観、家族観、人生観について改めて考えるようになった人が多いといわれています。幸福学という観点から何か新しい発見や課題はありましたか。

前野氏 新しい発見というもよりも、起こるべきことが起きていると感じています。コロナ禍というのは不確定な事態で、それに対処できるのは視野の広い人です。視野の広い人はより幸せになり、視野の狭い人はうろたえて不幸せになっています。

 幸せになったという人は、もともと家族仲が良かったので、在宅勤務になったことでさらに幸せになります。不幸せになったという人は、もともと家族仲が悪かったけど、長時間労働や残業をして家族とあまり接しないようにしていたのが、ごまかせなくなっています。

 職場も同じです。もともとうまくいっていたところは、会えなくなってもがんばってコミュニケーションをとって幸せになります。うまくいっていなかったところは、上司の管理がなくなったことで部下がサボったり、上司が部下にうまく仕事を与えられなくて部下が暇になってしまったり、好ましくない状態になります。

 サボる社員は、もともとやりがいを感じていないなど、幸せではなかったわけです。不測の事態になると、隠されていたのが赤裸々になるということです。日頃からもっと幸せに考慮しておけば、いざというときに強いのだなと改めて思いました。

経営者に求められるのは多様な視点と広い視野

―― コロナ禍の終息はまだ見えていませんが、このような状況で企業の経営者や管理職の方は、どのような姿勢で経営や事業運営に取り組めばよいのでしょうか。

前野氏 やはり、社内外の人たちとしっかりとコミュニケーションをとることです。マスメディアで流れる情報は、概観としては正しいのですが、一面的だったり部分的だったりします。しかし、ミクロのレベルでは実にさまざまなことが起きています。

 コロナ禍によって不幸になった人々の様子が毎日のように報じられていますが、幸せになった人も少なからずいます。不謹慎だからと「私にはこんなに良いことがありました」と大きな声では言わないものの、うまくいっている個人や企業は存在します。たとえば飲食業では、オンラインやデリバリーに転換してうまくいったところもあります。そういった「よい変化」にも目を向けられればよいのですが、負の点だけに目を向けると、同じように苦しんでいる境遇の人とだけ集まってしまい、「大変だ、大変だ」という意識になりがちです。

 世の中には、色々な最先端の工夫やイノベーションを実践している人たちがいます。例えば、拠点を地方に移したり、社員全員を在宅勤務にしたり、大きな手を打っている企業が多くあります。ここ数か月の間に、色々なことが起きています。こういったことにしっかりとキャッチアップすること。また、社員が懸命に働いているのか、サボっているのか、把握するには一人ひとりと面談するなど、本音を引き出すための地道な努力やコミュニケーションが必要です。

 このようなVUCAの時代は、答えが教科書に書かれているわけではないので、とにかく行動するしかありません。海外には、コロナ禍によって日本とは比べものにならないほど大きな打撃を受けている国があります。これからさらに拡大する国もあります。そういった国を助ける仕事もたくさんあります。想像力を働かせれば、できることややるべきことは無数にあるので、経営者の方にはそういった大きな視点で物事を捉えて、地球がより良くなるために頑張っていただきたいですね。

※本記事は 2020年11月26日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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