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2020.11.19

AIの進化によって「人間らしさ」はエンタメ化する

Afterコロナの未来予測、テクノロジーがもたらす新たな景色

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 新型コロナウイルスは現実世界を大きく変えてしまった。この変化によって、過去に予測されていた未来も変わってしまうのだろうか。コロナ禍で進化の加速がみられる技術もあり、これから訪れる未来は、これまでの常識では考えられないものになるかもしれない。

 そうした中で私たちは、どのような視点からAfterコロナの世界を捉えればよいのだろうか。昨今の環境変化を踏まえ、テクノロジーと人々の生活、産業の未来はどうなっていくのかフューチャリストの小川和也氏に話を聞いた。

PHOTOGRAPH BY Possessed Photography / UNSPLASH

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非接触技術とバーチャルヒューマンが爆発的に進化する

グランドデザイン株式会社 代表取締役社長 北海道大学客員教授 フューチャリスト 小川 和也 氏

グランドデザイン株式会社
代表取締役社長
北海道大学客員教授
フューチャリスト
小川 和也 氏

―― コロナ禍で人々の生活はがらりと変わりました。小川さんはこの変化をどのように捉えていますか。

小川 和也 氏(以下、小川氏) リモート会議やオンライン授業が増え、早々にオフィス移転する企業が現れたり、地方へ移住してしまう人が出てきたりしています。仕事がオンラインで完結するようになったから地方に引っ越そうとか、すべてのミーティングはオンラインでいいとか、判断のスピード感は大事である一方で、それらが長い目で適切な判断であるとは言い切れないと考えています。

 このようなパンデミックを経験したことがない中で、科学的な根拠の乏しい衝動的な判断や行動が、失敗を招くことも多いはずです。失敗から学ぶこともあるわけですが、現時点の情報に振り回されて、未来が見えたかのような決断をしてしまうには時期尚早だと思います。

―― コロナを分岐点に、どのような技術が進化すると考えていますか。

小川氏 非接触をテーマにしたバーチャルヒューマン技術が加速度的に進化すると考えています。

 すでに製造業の現場ではコロナ前からファクトリーオートメーション、「インダストリー4.0」といった概念が進んでいました。こうした技術が5Gや高速Wi-Fiなど通信回線の発達により、私たちの日常のあらゆる面で一般化すると考えられます。

 このような技術が浸透すれば、例えば、工事現場を無人化できるようになります。高速通信回線が普及すれば、工事現場に多くの機械やロボットを投入し、同時多接続できるようになるでしょう。すると人間が現地で立ち会ったり指示を出したりしなくても、機械同士が通信回線で指示し合うようになります。現場作業員は危険な作業から解放され、労働生産性も大幅にアップします。

ロボティクスで体力勝負の労働環境が変わる

―― 労働力不足の解決にも一役買いそうです。

小川氏 そうですね。慢性的な人手不足が予想される業界からの期待も大きいはずです。例えば、小売りや介護などの現場では、遠隔操作を用いたロボティクスが活躍すると予想されます。

 2020年8月にファミリーマートはTelexistence(テレイグジスタンス)社の遠隔操作ロボット「Model-T」を使って、商品陳列や検品の実証実験を始めました。操縦者がVR端末を装着して店頭のロボットを遠隔操作し、様々な形状のドリンクを掴んで商品を補充したり、検品をしたりするのです。

 工数が大きく、作業者にとって身体的な負荷の大きい商品陳列・検品作業が軽減すれば、店舗オペレーションに改革をもたらします。すると小売りの現場が必ずしも体力勝負の労働環境ではなくなり、高齢者も働きやすい環境になるかも知れません。

 とはいえ、人間の関節や指先の精緻な動きをロボットに模倣させるのは非常に難しく、現在はまだ模索中です。それに、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの商品点数はとてつもなく多く、毎日商品が入れ替わります。ロボットの遠隔操作技術には、まだまだ今後の進化に期待しなければなりません。

 バーチャルヒューマンの領域も進化するでしょう。人間を模した3DCGの中に人工知能やAIが組み込まれ、簡単な診療をする「デジタルドクター」が登場する日もそう遠くはありません。ゆくゆくは人間を介在させずに、記録や記憶をもとにバーチャルヒューマン同士が会話したり、人間の相手をしたりするようになるはずです。

AIが企業を経営する日は来るのか

―― ロボットやバーチャルヒューマンに搭載される人工知能やAIは、これからどのように進化するとお考えですか。

小川氏 これからの10年は特化型AIが発達していきます。「特化型AI」とは、特定の用途に特化したAIのことです。病理画像解析や自動運転などが一例です。

 その後2030~40年にかけては、人間の脳に近づけた「汎用型AI」が増えていくでしょう。全脳エミュレーションのように、限りなく人間の脳に近い構造を再現しようとしたり、様々な特化型AIを機能として組み合わせて、人間の脳のバランスに近づけていく、というようなアプローチですね。

 そして2040年代以降、人工知能はより汎用性を高め、身体性を兼ね備えるようになると、能力が大幅に拡張します。スーパーマシンやスーパーロボットが登場し、先ほどお伝えしたバーチャルヒューマンにも、より人間的な「脳」が備わるようになるでしょう。

―― 「人間の脳みそをきれいにトレースした人工知能」が生まれれば、2040年より先の未来、経営やクリエイティブな仕事もAIに任せられるようになりますか。

小川氏 私自身も会社を経営する立場から考えると、確かにAIによる企業経営にチャレンジできるとは思います。政治やアートなどのクリエイティブな仕事もいつか任せられるようになる日がくるはずです。

 とはいえ変数が多く、不確実性の連続である企業経営をAIに任せられるようになるのは、さすがに2040年よりも先のことだと考えています。それがある程度のレベルに達したとしても、AIに任せられるのは経営業務の半分くらいなのではないでしょうか。

AIの苦手分野と新たな可能性

―― 進化が著しいAIですが、苦手分野としてはどのようなことがありますか。

小川氏 あまりにも変数や相関が複雑な意思決定は難しいでしょう。いかに優れたAIであっても、「コロナ禍における社員のベストな働き方はどのようなものか」「リモートワークを行うとき、社内でどのようなコミュニケーションを取るべきか」「環境変化に対応した成功する事業はどのようなものか」といった判断は困難なはずです。

 不確実性が高く、柔軟性が求められる仕事をAIに任せるとなると、人間の脳をより深く研究・解析して人間のような人工知能を作る「全脳アーキテクチャ」や「全脳エミュレーション」と呼ばれるアプローチが必要になります。経営判断をAIに任せるのは、人工知能の発達の最終段階ではないかと考えています。

 その頃になれば、いまよりも多くの業務をAIに任せられるようになっているはずです。そして、その残り半分の、人間としての経営能力や政治能力で勝敗が分かれる。そんな世界がやってくるでしょう。

―― このように考えると、これからの未来、目の前にロボットや3DCGとしてリアルな物体が見えているのに、そこに本物の人間はいない、ということが当たり前になってきますね。

小川氏 まさにそのとおりで、これから先、人間は「目の前に見えているものは本物なのか」という哲学的な問いに直面することが増えると思います。目の前の存在について問う現象学やカントの純粋理性批判などがありますが、新しいテクノロジーによって哲学にも変化が生じるのではないでしょうか。

 目に見えているものがバーチャルヒューマンであろうと、ロボットであろうと、それをどう感じるのかは結局見ている人の主観でしかありません。見ている人がそれらを「人間と同等である」と感じるならば、バーチャルヒューマンもロボットも「人間である」ということになってしまいます。

 例えば、犬型ロボットであるAIBO(アイボ)に可愛さを感じたり、癒やされたりしますよね。自宅で稼働させ、一緒に暮らしているうちに愛着がわいてきたのなら、AIBOはその人にとって生身のペットと同じなんですね。結局は、脳がどのように感受するかという主観と客観の話なのです。

 科学が導き出すアウトプットは一つの現象に過ぎません。それをどう受け取るかは、人間の思い込みや主観でしかないということです。

 落合陽一さんと「デジタルネイチャー」という概念に関する対談をした時に、チョウチョや生い茂る木々が本物の生物や自然ではなく、デジタル上の存在だとしても、見た本人がチョウチョだと認識すればそれも自然であり本物と解釈できるという観点にたどり着きました。

 「デジタルネイチャーネイティブ世代」が登場し、生まれて初めて見たチョウチョがデジタル上のものなら、脳にプリインストールされる虫とはデジタルのものになるんです。子どもの頃からデジタル上の自然に触れている彼らは、もう「デジタルネイチャーネイティブ」ということですね。

 一方、デジタルのない世界で生きてきた世代は、デジタルネイチャーにはリアリズムを感じられない。こうした世代間の格差が出てくるでしょう。

"人間らしさ"がエンターテインメントになる

―― まさにSFの世界ですね。こうしたAIが発達したとき、人間はどのように人間らしさを保てばいいと思いますか。

小川氏 人間の感情的な側面や、間抜けさ、おっちょこちょいな部分などの“人間らしさ”は、エンターテインメントとして産業化され、贅沢品になると思います。ちょっとニュアンスが違うかも知れませんが、(Twitterで話題になり、漫画化・ドラマ化された)「レンタルなんもしない人」みたいなものって、ある意味では合理的ではない“人間らしさ”を楽しむエンターテインメントコンテンツに感じられました。

 一方で、仕事や日常生活ではそういう人間らしさは生産性を下げますから、「人間のバグ」として扱われ、AIによって合理化されていく。これから現実は『攻殻機動隊』や『スター・ウォーズ』のようなエンタメの中のできごとに近づいていきますから、今度は「ドジな人間のストーリー」などが、ファンタジーになり希少価値が高くなる。そんな逆転現象が起こるのではないかと思っています。

―― まだ見ぬ未来を、私たち一般の生活者はどのように受け入れたら良いでしょうか。恐怖でしょうか、それとも希望でしょうか。

小川氏 正確な未来予測はできるものではありませんが、科学技術を背景に確度を高めることは可能です。そして何しろ、未来はいまの積み重ねなので、自分の中で考えながら未来をつくっていくことが大切なのだと思います。未来予測は、どのような未来をつくりたいかを考える上での、ひとつの営みだと捉えています。

 未来は誰かに用意されているものではなく、これからの人間が能動的に作った結果生まれるものです。AIやバーチャルヒューマンをそのまま受け入れるのか、気持ち悪いと感じるか。そうした感じ方すらも、目の前の現象に対して個々人がどう認識するのか、主観と客観の狭間で揺れ動くことになるでしょう。だからこそ、科学哲学の重要性も増すと考えます。

 これからは人間にしかできないことは何かがより一層突き詰められ、生物と非生物のハイブリッド化が進みます。例えばイーロン・マスクがBMI(Brain Machine Interface:脳マシンインタフェース)「LINK VO.9」を豚の脳に埋め込むデモに成功したように、記憶などの情報は脳にチップを埋め込む“外部脳”で補完する世界がくるかも知れません。あるいは、人間のある部分の筋力だけを強化するロボティクスも誕生するでしょう。人間とAIやロボティクスの力を合わせることで、人類と人工知能が共存共栄していけるようになるのではないかと思っています。

*本記事は 2020年11月12日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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