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2020.03.31

HR Tech市場の成長を促す3つの技術領域

「従業員体験の向上」が施策の効果を高める鍵に

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jinjer HR Tech総研 所長 松葉 治朗 氏

 ここ数年で着実な成長を遂げているHR Tech市場。働き方改革への社会的な要請も高まる中、業界をリードする企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。そして、様々なテクノロジーが発展を遂げる中、それらをどのような視点で活用すれば、成果に繋げることができるのだろうか。HRに関するリサーチ等を通じて社会課題の解決に取り組む、jinjer HR Tech総研 所長の松葉治朗氏に話を聞いた。

社会課題と技術発展が市場成長を後押し

―― まず初めに、jinjer HR Tech総研について教えてください。

松葉 治朗 氏(以下、松葉氏) jinjer HR Tech総研は、ネオキャリアグループが保有している様々な人事データを活用し、社会課題の解決を目指すために発足しました。特に、HRのデータを軸に、他のテクノロジーとの融合を図ることに注力しています。例えば、InsurTech(インシュアテック)やFinTech(フィンテック)といった分野ですね。

 2018年には、東京海上日動様との業務提携、慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授との産学連携にも取り組ませていただいています。弊社の力だけでは解決できない課題がたくさんあるので、様々な企業や大学と連携して解決を目指す。そういった活動を進めている組織です。

 ネオキャリアグループがHR Tech市場に参入した2014年頃は、市場規模が徐々に伸びつつある状況でした。一方で、アメリカのHR Tech市場では人事・勤怠・給与がオールインワンになっているSaaS型のプラットフォームが普及していました。

―― 国内のHR Tech市場が拡大を続ける背景について、どのように捉えていますか。

松葉氏 市場成長の背景には3つの要因があると思っています。まず、テクノロジーについては、クラウドサービスとスマートフォンの普及が大きく関係しています。クラウド型なのでサーバー費用なしでサービスを導入できたり、スマートフォンやタブレットで打刻できるようになったり、といった具合です。2つ目は、ビッグデータの存在。活用できるデータが増えた影響は大きいでしょう。3つ目が最大の要因で、政府による働き方改革の推進です。そこには、少子高齢化に伴う労働力人口の減少も関係していますが、ギグワーク・ギグエコノミーの広まりといった働き手の変化も影響していると思います。

市場拡大に至った転換点とその原動力

――御社のレポートでは、HR Tech関連の市場規模が2019年に1000億円を超えたとしています。何が市場拡大のターニングポイントだったと捉えていますか。

松葉氏 やはり、働き方改革関連法の影響が大きかったと感じます。そのタイミングで市場が活性化し、HR Techを扱う企業の上場も増えました。具体的な部分では、有給休暇取得の義務化はシステム面への影響がありましたし、企業によってはフレックスタイム制の適用ルールを変えたり、高プロ(高度プロフェッショナル制度)に対応する機能アップデートを行ったりする必要もありました。法改正の影響で市場が拡大し、それに続いてHR Techも発展を遂げた印象があります。

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―― HR Tech市場を拡大させた要因として「ピープルアナリティクス」といった領域が挙げられています。例えば、どのような活用シーンがあるのでしょうか。

松葉氏 ピープルアナリティクスの技術は、採用の意思決定や配属先を決める際に多く活用されています。例えば、ソフトバンクでは従業員の診断データとIBMのWatsonを活用して、エントリーシートの精査を行っているそうです。

 また、従業員に性格診断や適性検査を受けさせた上で、そこに営業成績や人事評価を掛け合わせて分析を行う例も増えています。いわゆる「ハイパフォーマー・ローパフォーマー分析」といったものです。配属前の期待値と実際の数値の乖離を明らかにして、その人の性格や特性を分析する手法です。

 配属先の意思決定に関しては、性格分析の結果を元に「どの上司の下に配属するか」を決めるケースもあります。例えば、自立性の強い従業員と常にマネジメントを必要とする従業員では、配属先も変わりますよね。また、配属先で求められるスキルにマッチするかどうかだけではなく、志向性がマッチするかどうかを見ることも重要です。

体験価値のあり方が組織へのオンボードの鍵となる

――「エンゲージメント」という観点では、従業員体験について触れられていますね。

松葉氏 「EX(Employee Experience:従業員体験)」や「CX(Candidate Experience:候補者体験)」は近年、特に注目を集めている分野の一つです。例えば、現場へ新たに配属された方が上司に質問できないタイミングであっても、チャットボットに質問すればすぐ回答してくれる環境を用意する、といった取り組みもその一環です。このように組織へのオンボーディングの仕組みを整えることも、HR Techができることの一つですね。

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 海外では、従業員が持つ「このポジションに就きたい」という意欲を生かすために、「自分自身に足りないスキルは何か」「そのスキルを取得するために、何を学べばよいのか」をAIが判定して示してくれるツールもあります。そこでは3~5分程度の動画教材が公開されているので、自分が学びたいときに学ぶことができる上に、長時間の学習よりも高い効果が期待できるといわれています。

 今後、AIが発展するにつれて「ユビキタス情報社会」から「アンビエント情報社会」へシフトするといわれています。今までは自分から情報を拾いに行くことが当たり前でしたが、今後はAIが自分に合ったものを教えてくれるようになる、ということです。こうした動きがある中、HR Techを使うことで自分に合ったスキルであったり、上司が部下にアドバイスするときの指導法であったり、さまざまなことをAIから提案されるようになっていくのだと思います。

―― 従業員体験を向上させるために、企業はHR Techとどのように向き合うべきでしょうか。

松葉氏 データを取って指標をモニタリングすることも大事ですが、それ以上に、どうすればユーザー(従業員)が本音を教えてくれるかを考え、良好な関係性をつくることが大切です。例えば弊社では、打刻管理といった業務システム一つとっても、従業員体験の向上に繋がる工夫をしています。誕生日の日に打刻すると「おめでとうございます!」というアニメーションが出たりとかですね。

 つい最近は、PCメーカーさんに協賛していただいて、「打刻すると一定確率でプレゼントが当たる」といった取り組みを行ったばかりです。単純に見える業務であっても、とにかく楽しんで取り組めるようにする、といった視点が大事だと思います。

社会との繋がりを意識したワークスタイルが求められる時代に

―― 最近は副業が解禁された企業も多く、「オンデマンドワーク」といった分野も注目されていると思います。

松葉氏 オンデマンドワークの最大のメリットは、選択の自由が増えることです。労働者の立場からすると好きな時間に仕事ができるため、育児との両立を図ったり、フリーランスという道を選んで自分の価値を最大限に発揮したりする方も増えています。企業側としては、固定費を下げられるメリットが大きいでしょう。単発で行うようなプロジェクトや細かなタスクはクラウドワーカーに頼むなどして、様々な面でコストメリットを出すことができます。

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 一方で、デメリットもあります。人と顔を合わせる機会が減ることで、社会的に孤立してしまうリスクが確実に高まります。クラウドワーカーは労働者保護という観点では守り切れない部分があることは事実なので、最低賃金の保障といった労働者保護の観点が必要になってくると思います。

―― 御社でもクラウドワーカーの方々を活用されていますか。

松葉氏 活用しています。例えば、ソフトウェア開発では単発のデザインやテストをクラウドワーカーに任せることがあります。マーケティングでも顧問サービスを使うなど、職種ごとの特性を踏まえて、任せられる部分は社外のワーカーの方に任せるようにしています。コミュニケーションの取り方もWeb会議が中心になっているので、お客様との打ち合わせも含めると、弊社では月に10万時間以上Web会議を使っている状況です。

「施策の実行しやすさ」がデータ統合の本質

―― HR Tech市場の今後について、どのように見据えられているでしょうか。

松葉氏 まず、プラットフォームサービスのあり方が変わっていくと考えています。日本企業の多くは現在、勤怠管理システムはA社、経費管理システムはB社、という具合にバラバラのシステムを使っています。いわゆる、マルチプラットフォームという状態にあるわけですが、これらがオールインワンのシングルプラットフォームに変わっていくと考えます。

 去年は様々なサービスがAPIを公開したことで、これまで以上にデータ連携が進むようになりました。これは人事データを連携させたいというユーザーのニーズの現れだと思うのですが、API連携で全てのデータが繋がるかというと、そうとも限りません。そこで、HR関連のサービスにも統合の動きが見られます。

 アメリカのHR Techは既にその先に進んでいて、統合したデータから次の提案を示してくれる「アクションプラットフォーム」が発展しつつあります。これは、先ほどお話した従業員体験を向上させるためのものです。統合した人事データを活用して、従業員が次に学ぶべきテーマや受講すべき研修、利用できる福利厚生サービスをレコメンドしてくれるイメージです。

―― 従来型のオールインワンプラットフォームとアクションプラットフォームの最も大きな違いはどこでしょうか。

松葉氏 従来型のオールインワンプラットフォームは、データが統合されていることで優れたユーザビリティやオペレーション改善をもたらしてくれることが特徴です。アクションプラットフォームは、それらに加えて「従業員がそこから何を得られるか、どう行動すべきか」を提案してくれることが大きな違いですね。

―― ありがとうございます。最後に、企業がHR Techを活用して得られる価値を最大化するために、大切だと考える視点を教えてください。

松葉氏 まず、第一はオペレーションの効率化。業務が煩雑化している中では、人事部が十分な力を発揮することができません。第二に、仮にデータを統合したとして、それが各部署でどのように生かせるかを具体化すること。アメリカでは職種ごとのジョブ定義・スキル定義がなされていますが、日本の場合はそれらが可視化されていないので、そもそもAIを活用できる基盤が出来上がっていません。だからこそ、HR Techを自社の何に生かすのか、きちんと向き合うことが大切です。

 近年は、HR Techを活用して人材の最適化を進める事例も増えてきています。このように、オペレーション人事から戦略人事へとシフトを図ることが、テクノロジーを活用する上での第一歩になると思います。

*本記事は 2020年3月27日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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