2022.06.28

印刷環境の見える化がもたらす経営インパクトとその実践

リンクをクリップボードにコピーしました

ここ十数年、日本企業の生産性は先進国の中で低い順位をひた走っている。一人当たり労働生産性は78,655ドルであり、データが取得可能な1970年以降、主要先進7カ国で最も低い水準から脱却できていない。

そんな中、総務部門やIT部門は、利益を創出するためのコスト削減を強く要求されてきた。生産性を高めるためには本来であれば、労働資源の“最適化”を図るべきだろう。しかし、目に見えて効果が分かりやすいコスト削減に多くの企業が舵を切った。

加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大によってハイブリッドワークが定着した。セキュリティ面などの課題はいくつか残るものの、利便性と効率の良さという快適性を得た社員は、もう昔の働き方へは戻らないだろう。

働き方も働く場所も多様化が進む中で、生産性向上も追求するという新たな命題に総務部門やIT部門は直面している。そこでこの記事では、総務部門やIT部門が向き合う課題を整理し、解決策の第一ステップとなり得る印刷環境の見える化について解説したい。

※参考:公益社団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」調査レポート(抜粋版)より

1.生産性向上という中・長期的な取り組みに向かえない総務部門・IT部門の現実

① 総務部門・IT部門の現状

働き方や働く場所の多様化に対応しながら、生産性を向上させる。そのためには、社内オペレーションとかかるコストを見える化することが、総務部門やIT部門にとっての必須命題である。

生産性を高めることは、すなわちインプットに対するアウトプットを最大化するということだ。あらゆるコストを単に削減するだけではアウトプットは最大化されない。アウトプットを最大化するには、インプットを効率化し質を高めるツールの導入・入れ替えが必要となる。

このことに気付いている日本企業は、実はまだ多くはない。バブル崩壊後の長引く不況の中で、徹底的にムダを省くコスト削減の方法がすっかり根付いてしまったからだ。生産性を高めようとした場合に、本社オフィスの縮小や支店の閉鎖、デバイスおよびサプライ品の削減に取り組む企業が多いのはそうした背景がある。

過度なコスト削減に取り組むあまり、社員が効率よく働くための環境が遠のいていく。社員の生産性は阻害される。一度、立ち止まってみてほしい。経営効率が改善するどころか、長期的な成長が見込めない状況に陥り始めていないだろうか?

生産性を高めるには、コスト削減一辺倒なやり方を根本的に変えなければいけないのだ。

② 印刷環境の見える化がコスト削減と生産性向上の両方につながる

必要なのは、現状の見える化だ。中でも、社内オペレーションとコストという2つの要素の見える化が急務である。

実は、見える化の対象分野の中でも、経営効率の改善につなげやすいのが印刷環境だ。複合機やプリンターといったデバイスの数・配置を最適化できるほか、インクトナーや用紙といったサプライ品の削減にも取り組める。さらに言えば、印刷やスキャンといった行動をすべて記録し分析することで、社員の働き方や業務フローの再構築にもつなげられる。

まさに生産性向上の取り組みがしやすく、成果を出しやすい分野が印刷環境というわけだ。しかしながら見える化、そして改善の手が入りづらい分野でもあった。なぜだろうか?

それは、印刷環境の管理を担っている総務部門やIT部門が、見える化や改善までは手の回らないことが多いためだ。ここで一度、2部門が日々対応している業務・役割を整理しよう。

・総務部門が抱えている通常業務
オフィスや設備の管理、さまざまな備品の管理と発注、固定資産管理、給与・労務管理、経費精算、防災や安全衛生の徹底、社内外の慶弔業務や社内イベント業務、BPO、ハイブリッドワークなど新しい働き方への対応 など

・IT部門が抱えている通常業務やミッション
システムの企画立案、システムの運用保守、アプリケーションの運用保守、 社内ユーザーに対するヘルプデスク、資産管理、システム関連業務 など

こうしてみると総務部門やIT部門にとって、印刷環境の管理はほんの一部の業務であることがわかる。加えてサステナビリティ対応やDX推進などの業務が加わり、人手不足も相まって、業務負荷が急激に高まっている。そんな状況において印刷環境の管理業務は、「いつかは・誰かが・やらなければいけない業務」として取り残されてしまったのだ。

2.印刷環境のブラックボックス化に端を発する企業の「見えないリスク」

印刷環境の全体を取りまとめていないことで発生する「見えない企業リスク」は驚異的だ。例えば、以下のようなコストとリスクを抱えていることになる。

  • 業務生産性の低下、経営効率の低下
  • インク代や用紙代といったサプライ品費、不要な印刷の増加
  • セキュリティの脆弱性
  • 電子文書保存法を始めとする法改正への未対応
  • 徹底したコスト削減による低ユーザビリティ

あなたの会社にも、オフィスに置いてあるが、あまり使われていない印刷機器がないだろうか? 一方で、休みなく稼働していて、いつも順番待ちになっている印刷機器もある。それでは業務効率は下がりがちだ。印刷環境の全体が管理されていなければ、不適切・ムダな印刷がされていても気づけない。

とはいえ、ユーザーや出力情報まで事細かに管理していては、本来業務に割くべき手が取られ生産性の低下が起きる。だからといってベンダーに管理を丸投げにしてしまっても、無駄なコストが増えてしまうだろう。あるいは、印刷機器の削減やペーパーレス化といったコスト削減をやりすぎて、ユーザーの使い勝手が低下してしまう現場もある。印刷環境の管理を内製化しても外注しても、それだけではいずれにしても経営効率の低下につながっていく可能性が高い。コスト削減かコスト過多、どちらか両極端な取り組みになりがちなのが印刷環境の最適化における課題だった。

また複合機は、リース契約により導入している企業が多い。ネットワーク周りの初期設定は自社のIT部門が対応するかもしれないが、その後の保守はベンダーに任せきりになっていないだろうか? 複合機に不具合が生じたときは、各部門・支社の社員がベンダーに直接連絡をしなければならず、工数が取られてしまうことも問題のひとつだ。

また、購入費用が10万円を超えないプリンターは資産に計上されない。そのため、部署や支社ごとに勝手に買い足してしまい、いつの間にかサプライ品費がかさんでいることもあるだろう。

働き方が変わる中、新たなセキュリティリスクも増えている。もはや、メール添付のマルウエアやネットワークへの不正アクセスに止まらず、最新のサイバー攻撃はネットワークへの侵入の入り口としてハードウエアデバイスそのものが狙われる時代だ。

たとえばプリンター1台とっても、インターネットに接続する以上、ハッカーにとっては格好の侵入経路、攻撃対象となってしまう。標的となる企業は、規模も関係ない。大企業へ攻撃を仕掛ける際、防御力の高い大企業組織そのものではなく、サプライチェーン上にある中小・零細企業が踏み台にされるケースも増えているのも昨今の事例から明らかだ。

怖いのは、これらが「見えないリスク」であるという点だ。だからこそ、現在の印刷環境をまずは見える化していく必要がある。では、どうすればそれを効率的に実現できるのだろうか?

3.MPSではじめる印刷環境の見える化と経営面から見るメリット

印刷環境の見える化に有効なのが、MPS(マネージドプリントサービス)だ。

MPSとは、印刷機器の提供をはじめ、サプライ品の提供や印刷状況の管理などを一括提供するアウトソーシングサービスをいう。全体を管理するアプリケーションにより、印刷機器の出力状況と業務プロセスが見える化され、印刷環境の最適化が可能となる。また、印刷機器のエキスパートにより継続的に支援を受けることで、セキュリティの改善やビジネス効率の向上、法改正への対応などをも実現できる。つまり前段で触れた「見えないリスク」が可視化され、経営効率の改善に取り組めるのだ。

たとえば、MPSによって見える化できる項目には以下のようなものがある。

  • そもそも企業全体で何台の印刷機器を所有しているのか?
  • オフィスのどこに印刷機器が配置され、稼働状況はどれくらいか?
  • 印刷機器を誰が、どれくらい使っているのか?
  • 無駄な出力はどれくらいあるのか?
  • サプライ品はどれくらい消費し、どれくらいの頻度で発注しているのか?
  • 印刷環境を誰が管理しているのか?
  • 電力をどれくらい使っているのか?

つまり、経営効率の改善に直結する印刷環境の状況全体が見える化できる。印刷環境の状況が見える化できれば、適切な状況へ改善していけることにも気付いてほしい。

そして、印刷環境を最適化すると、以下のようなメリットが一度に享受できる。

  • 印刷機器およびサプライ品のコストを削減(最適化)できる
  • 新たな働き方に対応することで生産性が上がる
  • ユーザビリティを担保しながらコスト削減ができる
  • 導入する機器によってはエンドポイントセキュリティを担保できる
  • ESG、サステナビリティの取り組みに貢献できる  など

① 見えるコストだけでなく「見えないコスト」も削減

たとえば、自社が所有している印刷機器の台数や使用状況が最適化され、無駄のない印刷環境を実現できる。多くのケースでは全体的な台数の削減につながり、その後も印刷機器の使用状況を継続して監視・把握することで台数が適切に管理されていく。

印刷機器そのものの提供だけでなく、サプライ品やメンテナンスなどの全てのサービスをMPS契約として一本化できる。そのため、印刷機器の購入・リース費用や、用紙・トナーといったサプライ品、保守費などを必要な分だけに最適化できる。このように「見えるコスト」の削減がしやすくなるのも大きなメリットだ。

「見えないコスト」の削減も可能だ。サプライ品の発注や故障・不具合発生時の対応など、印刷環境の管理・保守にかかっていた工数も削減、あるいは最適化できるためだ。これにより、他業務へのリソース配分を増やせ、文書のペーパーレス化などが進み生産性向上が期待できる。

さらに、HPのMPSサービスで特徴的なのが、在宅ワーク用プリンターもMPS内で提供していることだ。サプライ品の費用請求業務などがなくなり、在宅ワーク時の働き方・生産性の向上も実現が可能だ。

② セキュリティの強化、ゼロトラストへの対応

MPSの導入は、セキュリティ強化にも寄与する。なぜなら、エンドポイントセキュリティに対応した印刷機器への入れ替え・利用ができるからだ。高いセキュリティ水準を備えた印刷機器は高額すぎて購入しづらいこともあるが、月額のサービス契約なら導入しやすい。HPのエンタープライズ向け複合機(LaserJet Enterprise/LaserJet Managed シリーズ)には、業界最高水準のハードウエアセキュリティ機能が搭載されている。そうしたハイエンドな印刷機器もMPSなら導入しやすく、ゼロトラスト環境に対応した印刷環境が実現できる。

③ サステナビリティ目標への貢献

CO2削減をはじめとするサステナビリティ目標の達成もしやすくなる。印刷環境における環境配慮への効果が測定可能になるからだ。MPSを利用すれば、サプライ品や電力の使用量をどれだけ削減できたか可視化し、外部機関にも示せるようになる。

実際にHP本社ではMPSを導入していたため、移転の際には印刷機器の台数を50%削減できた。

4.MPSの活用で工数をかけずに「見える化」を行い、そして印刷環境の最適化を

生産性向上のために見える化しなければいけないのは印刷環境だけではないが、印刷環境の見える化はもっとも取り組みやすい分野となる。

しかしながら、総務・IT部門が取り組むには他の業務が忙しくて手が回らず、改善インパクトが小さいと捉えられ後回しになりやすかった。

同じような課題を抱えているならば、MPSを活用してみてはどうだろうか? 総務・IT部門は本業に集中しながら、印刷環境を最適化し、経営課題への貢献も期待できる。

さらにHP MPSなら、部門単位で導入ができる。まずは一部の部門から印刷環境を見える化し、最適化による効果とコストパフォーマンスを検証することが可能なのだ。在宅ワーカー向けの印刷環境の最適化やセキュリティリスクにも対応でき、事業継続性といった側面における総務・IT部門への貢献度も高い。

まずは、HPエキスパートによるアセスメントを受け、現状を分析してみるのも良いだろう。どれだけのムダが発生しているか調査報告も行っている。
興味をもたれた方はぜひサービス資料をダウンロードしてほしい。また業務改善に役立つ無料のホワイトペーパーも用意しているので、参考にしてほしい。

下記必要事項を記入の上、ボタンを押してください。

リンクをクリップボードにコピーしました