2022.03.16

DX時代の働き方、ハイブリッドワークの実践から見る:デジタルとフィジカルの組み合わせ方

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 時代とともに変化する働き方は、今大きな変節点を迎えている。コロナ禍でリモートワークをはじめとする柔軟な働き方が急速に広がり、新たなワークプレイスやワークスタイルに課題が見えてきた。働く環境は社員のモチベーションやパフォーマンスに大きく影響を及ぼし、人口減少時代における人財確保や企業の競争力にも影響するようになっている。そんな中、在宅勤務をはじめとした「テレワーク」と、出社して働く「オフィスワーク」を積極的に組み合わせた「ハイブリッドワーク」が大きく注目されはじめている。コロナ禍による自粛生活を契機として、未来の働き方が予定より早くやってきたのだ。

リモートワークからハイブリッドワークへ

 働く人の意識はコロナ禍で大きく変わった。日本HPが実施した調査※1では、日本の89%のビジネスパーソンがコロナ後もテレワークを含む柔軟な働き方を続けたいと回答している。若者の価値観も然りだ。BIGLOBEの「ニューノーマルの働き方に関する調査」※2では、学生が働きたいと思う会社の条件で「在宅勤務やリモートワークが可能な会社」が堂々の第1位となり、「給与の高い会社」(5位)を遥かに凌ぐ結果となっている。

(※1日本HP調査 従業員規模1000人以下の企業500社を対象:2020年11月実施
※2出典:BIGLOBE「ニューノーマルの働き方に関する調査」 20代の学生300人を対象にインターネット調査を実施:2020年9月10日~9月14日 https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2020/10/201022-1

 このようなアンケート結果からもわかるように、リモートワークには多くのメリットがある。パンデミックのリスクを最小限に抑えると共に、通勤時間やそれに伴うストレスからの解放は、ワークライフバランスの充実に直結した。自身で自分の時間をコントロールできる臨機応変な働き方は個々人の集中力からなる生産性を高め、多様な働き方をサポートすることで優秀な人財確保にもつながる。リモートワークを通したこうした様々なベネフィットは、多くの企業に「もう元には戻れない」という実感をもたらした。

 一方で、リモートワークの新たな課題も出現した。オンラインでの接点は対面でのコミュニケーションに比べて意思疎通が難しく、オフィスでのちょっとした立ち話から生まれるひらめきや、多様な人が交わることで化学反応を起こすイノベーションや新しいアイデアが生まれにくいなど、改めてフィジカルで接することの重要性も再認識することとなった。

 このようなリモートワークのメリットを享受しつつ課題を解決する働き方として注目されているのが、ハイブリッドワークだ。次の章では、これからの働き方の中心は、デジタルとフィジカルのそれぞれの長所を選び取るハイブリッドワークになると考え、実際に2021年に本社の移転とともにオフィス面積を約半分に縮小し、ハイブリッドワークに大きく舵を切った日本HPの事例をご紹介したい。

日本HPにおけるハイブリッドワーク導入事例

 日本HPは、2007年から在宅勤務が可能なフレックスワークプレイスを導入し、既に15年がたつ。コロナ禍では、2020年2月末からいち早く完全在宅勤務にシフトした。しかし、現在は、リモートワークを中心としたハイブリッドワークに移行し、週に1日程度の出勤と4日程度の在宅勤務を各々が組み合わせて調整している。日々のオフィスの出社率は10〜20%だという。

 このようなハイブリッドワークは、リモートワークとオフィスワークの組み合わせで実践されるが、部門や職種、また個人によって最適な仕事環境や時間の使い方などの働き方は異なるため、日本HPではその裁量の多くは個人に委ねられている。そして、「どんな部門でもリモートワークはできる」ということを前提としていることが大きな特徴といえる。営業職や事務職のリモートワークへの適正は言うまでもないが、完全リモートワークの経験をするなかで、これまでリモートワークが難しいと考えられていた研究開発部門などでも、仮説の考察や実験データの解析といったデスクワークは自宅でも十分対応可能であり、部分的にリモートワークを導入できることがわかった。

 さらにリモートワークを主軸とするにあたり様々なデジタル化も進められている。その一例がショールームだ。完全在宅勤務の期間においては、リモートワークでは製品のショームールが利用できなくて不便だという声もあったが、現在、日本HPはリアルタイムでショールームのオンライン見学ができるよう、臨場感のあるコンテンツを充実させ、ショールームのデジタル化を推進している。同様に、ショールームにオンライン配信用のスタジオを新しく設置し、顧客やパートナー向けのオンラインセミナーも積極的に開催、オンラインでの顧客接点を増やしている。移動時間を節約しながら、その場にいるかのようなサービスが展開できればお客様のメリットも大きいだろう。

 一方で、ハイブリッドワークのもう一つの軸であるオフィスはコラボレーションとイノベーションを生み出すことに目的をおいた設計となっている。例えば、日本HPの新オフィスでは、多くの人が利用するプリントステーョンでは、コピーや印刷をするついでに雑談ができるカフェのようなスペースを設け、人と人があえて出会う機会を生み出している。印刷した文書をとりにいく時間も無駄で面倒な時間ではなく、コラボレーションを生み出すきっかけだという発想である。

 また、ABW(Activity Based Working)を軸とした、固定席のないワークスペースには、様々な用途に応じたコラボレーションスペースが豊富にあり、目的に合わせて自由に使えるように設計されている。さらに、大型モニター4台を設置したハイブリッドカンファレンスルームを設け、部屋全体を映し出すことによって会議室同士やリモート参加者との臨場感溢れるオンライン会議を可能にし、これまでのオンライン出席者と会議室での出席者の溝を取り除く試みが取り入れられている。

 ここまで日本HPによる新しい取り組みが実装されたハイブリッドワークの実例を紹介してきた。ここからは、ハイブリッドワークとDX(デジタライゼーション)について、物理的な世界とデジタル世界をまたぐ機能をもつ印刷やスキャンという側面から考えていきたい。

ハイブリッドワーク時代におけるスキャン・プリントの姿

 ハイブリッドワークを推進するためには、環境や制度の整備、従業員の意識改革が必要となる。従業員がオフィス以外の場所でも快適に業務を遂行できるように、テクノロジーを活用し、利便性が高く安全なテレワーク環境を整えることがハイブリッドワークの第一歩となるが、まず必要なのはDX(デジタライゼーション)によるデジタルワークプレイスの確立と定着だ。これにより、オフィスにいるのと同じ環境で仕事ができ、様々なツールを同じように利用できるようになる。ただ、デジタライゼーションだけではリモートワーク環境における生産性は維持、向上できないということを忘れてはならない。物理的な世界とデジタル世界を交換するフィジカルツールである、プリント・スキャン環境についても整える必要がある。

 特にプリント・スキャンは、オフィス以外の場所で仕事をする際、職種により生産性に大きく影響を及ぼす要因となる。例えば営業職の場合、お客様によってはリモートでの対応が難しいケースもあり、提案書を印刷して訪問する場面もまだ多いのが現実である。お客様先の会議室にモニターがない場合も多く、印刷は必須といえる。また、事前にメール等で資料を送っていてもお客様側で印刷して書き込みをされている場合も多々あり、デジタル化が進む中でも、大切な局面においては印刷が必要な場面は今後も想定できる。

 外出の多いマーケティングや企画職も印刷ニーズは多い。移動中に企画やプレゼン内容をチェックする際は、スマホの小さい画面ではなく紙でのチェックが便利だ。また、Excelの数字や書類の細かい内容を確認する場合には、印刷の方がチェックしやすいという声も多く聞かれる。このように一般的には大きく減少していくであろうオフィス印刷の中でも、重要な局面での印刷はまさしく企業の生産性を左右する。

 では、リモートワーク時の印刷はどのように対応しているのだろうか。取材によると、月曜日の朝に出社して一週間分の印刷物をまとめて出力しているケース、その都度コンビニの印刷機で出力し会社へ費用請求するケース、自宅のインクジェットプリンターを活用しインク代を費用請求しているケースなど様々だ。しかし、いずれのケースも、会社ではものの数分で終わる作業のはずが、リモートワークで行う場合には、かなりの手間と時間がかかっており、さらにコンビニ印刷での置き忘れなどセキュリティ面におけるリスクも伴う。

 スキャンについても、自宅に複合機プリンターを持っていない場合にはコンビニ機を活用しているケースが多い。業界によってはデジタル化が追い付いておらず、契約書、注文書、納品書などサインや捺印をもらい、スキャンして社内の業務に送るといったフローがまだまだ残っている。その他にも、経費精算で領収書をスキャンする、紙で入手した資料を部内で共有するなど、幅広い用途で活用されている。

 このような状況に対し、実際のリモートワーカー達からは、デスクトップ型の複合機を家で使えるのであればぜひそうしたい、という声が多く聞かれる。リモートワーク中に、印刷やスキャンするためだけに出社する人がいることを考えると、ハイブリッドワークにより業務の生産性向上を実現するためには、自宅での複合機の利用などもニーズに応じて積極的に検討していくことが求められる。

ハイブリッドワークへ向けたオフィスの見直しと最適化

 さて、ここからはオフィスワークにおけるハイブリッドワーク実践について考えてみたい。リモートワークにより業務生産性の向上が実現できれば、オフィスはその役割が変わり、業務の遂行の場から、リモートワークでは実現が難しい偶発的なイノベーションを起こす場へと変化していくことが求められる。ちょっとした立ち話から生まれる発想の転換、多様な人が交わることで生まれる新しいアイデアなどは、変化が激しく不確実な時代を生き抜くために必要な生成物である。そのため、業務遂行はリモートワークが主体となることを前提に、これまでのオフィスとは一線を画す、効率だけを重視しない偶発的なコミュニケーションが行われるようなオフィス設計を意識的に取り入れる必要がある。

 また、ハイブリッドワークにおけるオフィスの役割はイノベーションの創出だけではない。それは帰属意識や社員エンゲージメントの醸成である。リモートワークではどうしても孤立感が高くなり、人と人のつながりが希薄になる。その結果として、会社や組織への帰属意識が低くなる傾向にあることは想像に難くないだろう。ハイブリッドワーク時代のオフィスには、社員自身がコミュニティへの帰属を意識できるような取り組みが必要だ。例えば、日本HPではそのような取り組みの一つとして、出社時のワークスペースを完全なフリーアドレスではなく、ゆるくエリアを指定する方式を採用している。これによりオフィスではある程度同じメンバーで自然なコミュニケーションが行われることになり、帰属意識や仲間意識の醸成を促すのである。

 このように、ハイブリッドワークを実践するオフィスには、旧来型のオフィスとは全く異なる役割が求められている。リモートワークは集中的な業務遂行の場として、オフィスワークはコラボレーション・イノベーションの場として、まさにハイブリッドで生産性を高めるべく設計されることがその中心となる考え方なのである。

 最後に、オフィスに設置されるプリンターについて補足しておきたい。ハイブリッドワークにより出社率が低下し、そしてリモートワーク下での印刷が行われていくと、当然オフィス印刷のニーズにも影響がでてくるだろう。どのフロアでどれだけ出力されているか、管理部門は現在の需要を見える化し、機器の増減や必要な機能をその時々の状況によって見極め、柔軟な印刷環境を保つことが、ハイブリッドワークを実現するオフィスの重要なポイントの一つとなる。これには、オフィスにおける印刷出力を可視化・分析し、最適な出力環境を構築して運用するアウトソーシングサービスを使えば、出力環境に対するTCOの把握と削減、管理業務プロセスの効率化などの効果が期待できる。日本HPでは、ハードウェア・ソフトウェア・サプライ・サービスを1つにまとめ、さらに在宅勤務用プリンターとサプライ品の提供までも含めたトータルソリューション、HP MPS(Managed Print Service)を提供しているので、このようなサービスも視野に入れてハイブリッドワークの環境づくりにぜひ役立ててほしい。

日本HP MPS(Managed Print Service)はこちら
https://jp.ext.hp.com/business-services/

テレワーク(在宅勤務)におすすめのプリンター特集はこちら
https://jp.ext.hp.com/printers/personal/inkjet/special/plusone/telework/

印刷のセキュリティはこちら
https://www.hp.com/jp-ja/security/business-print-security.html

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