HP Latexでつくる新しい襖紙の世界
販売先は?生産量は?
- 株式会社 菊池襖紙工場
株式会社 菊池襖紙工場は、「HP Latexプリンター」を導入し、
本業である襖紙だけでなく、壁紙をプリントし内装の世界に新風を巻き起こしている。
今回は、同社専務取締役の菊池崇徳さんに話を聞いた。
大判インクジェットプリンター導入のきっかけ
当社は1924年に創業され96年の歴史があります。創業の地は今の東京スカイツリーあたりの東京都墨田区立花で、手加工で襖(ふすま)をつくる職人の集団として発足し、その中に初代社長の菊池利男がいました。私は初代社長、菊池利男氏の孫です。
HPさんとのお付き合いは2011年に、HP Latexプリンター「HP Designjet L25500 60-in Printer」を導入してからです。当初は壁紙用ではなく、商業施設用のPOPやディスプレイ用として使用していました。
菊池 崇徳 専務取締役
-「HP Latexプリンター」で作成した襖の前で
菊池襖紙工場(本社)
2015年には1.6m幅の「HP Latex 360」を導入しました。その後2017年7月に、3.2m幅の「HP Latex 3600」を、同年8月には「HP Latex 570」を相次いで追加しました。さらに2019年に「HP Latex 3600」の2台目を入れています。
現在は「HP Latex 3600」が2台、「HP Latex 570」と「HP Latex 360」が各1台の、計4台が稼働しています。
このうち、「HP Latex 3600」と「HP Latex 570」で壁紙を生産。「HP Latex 360」ではPOPのプリントで活躍しています。
1柄160mで生産可能、昨年末に過去最大2万4000m2を出力
HP Latexプリンターの特長は、においがなく、有害物質も含まれていないこと。これなら「壁紙のプリントに転用できる」と考え、商品開発を進めました。
実は以前、他社の溶剤系プリンターを使っていたのですが、においが強烈すぎると感じていたのです。においのきついものでは、家の内装に使用するには課題がありますからね。
当社が壁紙事業を始めたのは2007年から、印刷幅が約90㎝の輪転式印刷機で生産し始めました。印刷長は5mで、レンガ柄など繰り返し同じパターンを刷るのには最適。大手が扱わないような少量で納品できることから、ホームセンターを中心に販売数を増やしていきました。
大手メーカーが販売しているのは、内装工事業に収める本格的な壁紙ですが、当社ではホームセンターにいらっしゃるDIY用途のお客様は少量が欲しいのです。当社商品はこれにマッチしたものとして受け入れられています。
HP Latexプリンターの導入により、DIY用途で求められるさらに短い単位での生産が可能になりました。輪転機は3000m以上からが経済ロットですが、HP Latexでは一デザインにつき、ほとんどが160mほどでプリントしており、製版をしないで済むため、種類を増やすこともハードルが低いのです。
輪転式の印刷機では3000m単位で生産。
これに比べHP Latexプリンターは160mから生産できる
貼って剥がせる壁紙を応用したステッカー
輪転機での生産は十数柄であるのに対し、HP Latexプリンターでは自社の定番だけで、約50種類、雑貨ショップに収めているデザインでは100種類以上というケースもあります。
商品のバージョンも増やしています。内装工事のプロの方は、現場で壁紙に糊を付けて貼るのですが、DIY用は施工しやすいように、粘着剤を付けています。2013年には、貼って剥がせる壁紙も商品化しました。
まだデジタルは全体の10%程度ですが、確実に伸びています。実は壁紙というのは、7割は無難な白色です。その中で当社がデジタルプリントする柄のついた壁紙の10%は健闘していると思います。
生産量は平均して毎月1万1000㎡、繁忙期にはプリンターをフル活用し、昨年末には通常期の倍以上にあたる2万4000㎡をプリントしました。
こういった情報もHPの「PrintOS」を見ればすぐに確認できます。
月平均1万1000m2のプリントは日本最高クラス
荒っぽい使い方にも耐えるマシン
デジタルプリントするのは、ほとんどがフリース素材で、開発には2年を要しました。プリントすることは容易でしたが、粘着力と下地の壁紙への影響はトレードオフの関係にあります。粘着力を強めれば、下地の壁紙を痛めてしまい、粘着が弱いと上から貼った壁紙が剥がれやすくなります。
この技術がなかなか難しいのか、今のところ追随する他社商品はありません。
オペレーター自身が交換を行える
プリントヘッドとインク在庫
こんな感じで、私は実験が大好きで、荒っぽい使い方もしてみたくなります。ここだけの話、さまざまな用紙を通してきたので、機械トラブルも他社よりはあったのではないでしょうか。ぎりぎりの厚い紙を通してプリンターを止めてしまうこともありました。
そんな時でも、HPのサービス対応は迅速ですし、オペレーターがトラブルの原因について分かるように指導もしてもらえます。
HPでは「アップタイムキット」といって常備薬のように、損耗しやすい一部の部品をあらかじめ生産現場に置いておき、オペレーター自らが取り換えられるというシステムがあり、これも気に入っています。
「ハイムテキスタイル」で見せた伝統技法との融合
当社は2018年、ドイツで開催された世界最大規模のインテリア展示会「ハイムテキスタイル2018」にも参加しました。
この時のテーマは「アートジャパネスク」で、江戸唐紙で使われる技法「金銀砂子」や、昭和の「スクリーン印刷」「フレキソ印刷」「グラビア印刷」を使用。そこに現代の「HP Latexプリント」を融合しました。
「唐紙」は版木や接着剤、さまざまな材料の粉を使用し、独特の模様を表現する伝統工芸。「金銀砂子」その中の表現方法の一つで、膠液など接着剤で薄く書いた絵の上に金銀の粉を振りかけることでデザインを表現します。
2018年、ハイムテキスタイルに出展
金銀砂子を使用した見本
「新世代壁紙研究所」がコミケへ出展!
2019年末に行われた「コミックマーケット97」にも出展しました。それも出展名は「新世代壁紙研究所」で、新世代の壁紙をテーマにしました。
当社がもともと壁紙事業を始めたのは、本業である襖紙の需要が徐々に少なくなっていることからでした。新築数や和室の減少など、将来を考えると、襖紙だけでなく他の事業にも軸足が欲しいという思いから、壁紙事業が発展したのです。
「新世代壁紙研究所」は、これをさらに進化させ、「キャラクターグッズとしての壁紙」を目指したものです。キャラグッズというと、最大のものでもタペストリーや抱き枕くらい。壁紙はこれを超えるサイズで「目立つんじゃないか?」「バズるんじゃないか?」という期待もあり、出品してみました。
プリント品質は、見る目が厳しいアニメや漫画ファンの鑑賞にたえられるほどのものです。正直言って、一般の方には輪転印刷機で印刷したものと、HP Latexプリンターでプリントしたものの区別はつかないでしょう。そんな品質の高い壁紙が1万円以下で手に入るのです。
「伝統技法から新たな壁紙へ!」という取り組みはコミケで手応えをつかんだ
実際、コミケ出展の評価は高く、商品も売れました。一方で、事前告知するなどの方法をあまりとれなかったことは反省しています。現在は新型コロナウイルスも影響で、展示会などへの出展は見合わせていますが、いずれまた研究所の活動を再開したいと思っています。
今後は、このキャラクター系、ライセンス系の仕事を増やし、当社ビジネスの柱の一つとしていきたいです。こういった活動をすることは、伝統工芸の技を残すとともに、それを将来に伝えるものになると思います。
日常の仕事をする中ではありますが、私のできる範囲で将来につながる事業を開発していき、新たな分野への進出を進めていければうれしいです。その時にHPのプリンターは強い味方になってくれています。
株式会社 菊池襖紙工場
菊池 義明 社長
デジタルプリントの現状
従来、襖のプリントでは、いろいろな表現が必要とされます。そのためには、いろいろな版材を用意しなければなりませんでした。
材にはゴム販や樹脂板やPS販そしてシルクスクリーン販などがあり、みな印刷装置が異なります。このため、求められる製品により、一工程では出来ないことが多く、何工程もかけなければ完成しません。加工コストを低減させるため、多量の印刷ロットが必要になっていました。ところが最近では、市場規模が小さくなり、お客様の負担を軽減するためにも小ロットを要求されています。「デジタルプリント」は、そういった要望に応える商品(中高級品)には最適なシステムだと思います。
今後の展望について
現状のプリント速度では、高級品にのみの対応で、現在メイン商品である廉価版商品には使えませんので、印刷速度の高速化が求められます。こが実現されれば、内装業界が変わるでしょう。
また、デジタルプリントと伝統技術とのコラボも期待できます。すでに商品化されていますが、それが可能な業者は限られますので弊社としてはさらに充実していきたい分野と考えております。
対象プリンター
HP Latexプリンター
高い生産性と印刷品質を実現しながら、産業プリンターとしては環境に配慮したインクを搭載。
従来からある溶剤インクと比較しても、同等以上の耐候性や耐擦過性を発揮。
屋内掲示物も水性Latexインクならではの広い色域と発色、そして健康被害の心配がありません。
印刷素材の範囲やアイディアはお客様次第です。
私たちと一緒にビジネスの幅を広げましょう。