クライアントを物理的に一元管理
窓から注ぐ光が、いくつものデスクの列を照らす。その列の間をスタッフが忙しそうに行き来している。ここはTISの大阪本社、産業第2事業部。この広いオフィスの一番奥まったところに基盤ソリューション部のサーバ ルームがある。
案内をしてくれた北村部長は、部屋の中に入ると、おもむろにひとつのラックを指差した。そこにはブレードPCが整然と収まっている。同部は昨年、社内展開への布石としてHPのクライアント統合ソリューション(CCI)をテスト導入した。これらのブレードはCCIのいわば心臓部。このコンパクトなユニットが社外を飛び回る基盤ソリューション部スタッフの業務活動を支えている。
「スタッフのPCをこのように物理的にひとつの場所に収めること自体がすでにメリットだといえます。こうすることでシステム全体を容易に一元管理できますから」と北村部長は説明する。
セットアップもブレード1枚ごとにいちいち行う必要はない。マスターを作っておけば、残りのすべてのブレードにその設定を自動配信できるからだ。アプリケーションの更新や入れ替えなどでこれは威力を発揮する。
また、故障時の負荷も減る。もしこれらのブレードPCのうちのひとつに障害が起こったとしても、他のブレードが即座にその代役を務めるため、マシンの復旧に汗を流す必要はない。ユーザサイドから言えば、いったんログアウトし、再度ログインすれば、それで「復旧」は完了だ。二度目のログイン時に別のブレードに接続し、障害前のデスクトップ環境が即座に再現される。
機動力あるセキュアなデスクトップ環境
スタッフのデスクに置かれたシンクライアントは、ブレードPCに接続するための端末で、ハードディスクを持たないため、セキュリティ上非常に有効だ。ハードディスクがなくとも、アプリケーションはブレードPCから提供されるので業務上何の不都合もない。
「ブレードPCがシンクライアント端末に送るのは実データではなく画像情報。だからセキュリティは確かです」。CCI導入を指揮した坂口主査もそう太鼓判を押す。「サーバからデータを持ち出さないので機密情報漏えいの心配もなく、安心して運用できます」
メリットはセキュリティだけではない。「どこからでも自分のデスクトップ環境を立ち上げられるので、ユーザビリティも上がります」と坂口主査は話す。同時に、これは業務の機動力アップにもつながっている。
「企業によっては情報漏えい対策としてノートPCの持ち出し禁止などという措置をとっていますが、それでは本来生産性を高める道具であるはずのモバイルやノートPCの機動性が犠牲にされてしまいます。CCIソリューションを導入すれば、社内にいようと社外にいようと、いつでも使い慣れた自分のデスクトップ環境が利用できる。出張のたび使い慣れない持ち出し用ノートパソコンを借りていく必要はありません。つまり、セキュリティやユーザビリティのほかに業務のモビリティも上がるというわけです」
管理コスト、運用効率にも効果
坂口主査によれば、クライアントPC一台あたりの管理費や稼動率を考えると、コスト面においてもCCIに軍配が上がるという。
旧来のクライアントサーバ型環境では、通常PC一台あたりの初期費用に対し、管理費が5倍近くかかる。しかし、クライアントを一元管理するCCIならその管理費を大幅に圧縮できる。また、オフィス内のPC稼働率にしても、ブレードPCなら一枚を多数のクライアントに割り当てることができるので、ユーザ不在のため机の上で利用されないPCが眠っているということはなくなる。
「経営的な視点から見ても、非常に有効なソリューションです。その意味で、今後さらに導入を拡げていきたいですね」と坂口主査は抱負を語る。その自信のほどは?
「実際に使っているところを見て、CCIの効果を肌で感じてもらえれば、余計な説明はいりません」そう言って北村部長はにこやかに笑った。
達成目的
- 利用場所を特定しないデスクトップ環境の実現
- 社内機密データのセキュリティ確保
- クライアント管理負荷の軽減
アプローチ
- HPのクライアント統合ソリューションCCIを導入
- ブレードPC、HP Compaq t5720 Thin Client、RDP管理サーバによるシステム構成
導入効果
- 社内、社外にこだわらない業務の機動力
- クライアント端末での高い情報セキュリティ
- 多数のクライアントを一元管理