混雑を解消する無人受付システム
木目調の受付デスクの上に置かれているのは3台のタッチパネルディスプレイ。 その傍らには電話機と小さなマシンが置かれている。来訪客は手馴れた様子でタッチパネルに触れ、 相手の内線番号を検索する。部署名や個人名で探せるので、ほとんど時間がかからない。番号が表示されれば、 あとは隣にある電話機でダイアルするだけだ。人を介するよりも早く、混雑がない。来訪を告げた客はシートに腰掛けて相手が現れるのを待つ。
これはコマース&サービス事業本部のMD戦略室が内製した無人受付システム。ディスプレイ横の小柄なマシンはHP Compaq t5720 Thin Clientだ。 駆動部を持たないため静かでコンパクトでスタイリッシュな外観も受付エリアに調和している。
受付システム構成図
受付システム画面
オフィス移転でシステム開発を
もともとコマース&サービス事業本部は汐留の本社ビルにあったが、事業の拡張でスペースが手狭になり、より広いオフィスに移転することになった。
汐留本社には受付があるが、引越し先にはない。しかし約900名の社員が4つのフロアを占めて仕事をする新オフィスに受付は不可欠だ。 事業活動を停めずに移転の準備が進められるなか、MD戦略室は短期の無人受付システム開発に取りかかった。
セキュリティと運用管理
コマース&サービス
事業本部
MD統括部 MD戦略室
室長
本多 晋弥 氏
コマース&サービス
事業本部
MD統括部 MD戦略室
Webシステム課
宮城 正史 氏
システムの開発にあたり本多室長がまず掲げた要件はセキュリティだ。 不特定多数が利用するため、社員情報の保護には特に気を使う必要がある。
そこでシステムのフロントエンドにHP Compaq t5720 Thin Clientが選ばれた。ハードディスクを持たず、512MBのフラッシュメモリがその役割を果たすこのシンクライアントは個人情報のような機密データを保持しない。したがってシンクライアントを一元管理サーバ配下にたてることにより、セキュリティ対策が万全となる。 USBポートを無効化する機能も備え、情報不正入手はほぼ不可能。 さらに万全を期すため、本多室長は受付システムを社内ネットワークから完全に切り離した。
システム構成を担当した宮城氏によれば、管理の手軽さもシンクライアント選択の理由のひとつだという。ちなみに同システムのスイッチ操作は受付エリアの警備員が行っている。 出社時に電源を入れ、退社時に切るという単純なオペレーションだが、これはFlash ROMで稼動するシンクライアントだからこそできることだ。 通常のPCで家電のように電源を落せば故障は必至だ。この他にも省電力、省スペース、低コスト、静寂性と、受付システムにシンクライアントを採用するメリットは枚挙にいとまがない。
引越し当初、来客が集中する時刻には受付エリアに列ができていたが、導入後は見かけない。これは受付システムの明らかな導入効果だ。
シンクライアントにはMicrosoft Internet Explorerが標準搭載されており、 これを利用してWebベースとなることで効力を発揮する。今回の受付システムのプログラムを担当した根本氏も「最初からWebベースで設計しました」と話す。
フリーオフィスなどの展開にも
コマース&サービス
事業本部
MD統括部 MD戦略室
Webシステム課
根本 真由美 氏
システムの開発にあたり本多室長がまず掲げた要件はセキュリティだ。 不特定多数が利用するため、社員情報の保護には特に気を使う必要がある。
一元集中管理サーバ上の作業フォルダ、アプリケーションが利用できるシステムであれば、シンクライアントも利用場所に縛られず、サーバ上にある同じデスクトップ環境を再現する。 したがって、もしシンクライアントが社内に行き渡れば、スタッフが自由に座る席を選べるフリーオフィスも夢ではない。
事業本部の移転に合わせ、急遽内製した今回の無人受付システムだったが、MD戦略室にとっての収穫は何だろうか。本多室長はこう語った。「私たちの部隊の仕事は取扱商品のプロモーションです。そのためには新しい商品を積極的に試しパートナーの皆さまにご提案できるアイデアを見つけていかなければなりません。 シンクライアントの可能性が見えてきたという意味で、今回の開発は大きなプラスになっています」
達成目的
- 無人受付システムの開発
- 社員情報の安全性確保
- 運用管理負荷の軽減
- 短期立ち上げ
アプローチ
- タッチパネル式の無人受付システムをWebベースで開発
- 携帯電話への呼び出しメール機能を付加
- HP Compaq t5720 Thin Clientの採用
導入効果
- 移転後すみやかにシステム稼動
- 受付エリアの混雑緩和
- 社員情報の保護
- 警備員による簡易な運用