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HPのブレードPCとシンクライアント端末の新システムに移行日本赤十字九州国際看護大学

大学の中でコンピュータの利用は当たり前になっている。事務処理だけでなく専門教育の現場でも情報科学や統計学の講義や実習ではPCが不可欠の時代だ。完備されたIT環境により、教員の研究・教育活動を支えるとともに学生の勉強を支援するインフラを備えていることが少子化 で学生獲得競争が激しくなる中では必要だろう。福岡県宗像市にある日本赤十字九州国際看護 大学では、HPのブレードPCとシンクライアント端末で、その情報インフラ構築を実現した。

2001年開学の新しい大学だが、当初の情報システムはトラブル続き

教授
池田 正人 先生

経理課主事
藤川 愛梨 氏

少子化の影響で全国の大学は生き残り競争の渦中にある。学生獲得競争を勝ち抜くには魅力ある大学をどのように作っていくかがこれからの課題でもある。福岡市の中心部から電車で40分程度の福岡県宗像市にある日本赤十字九州国際看護大学は、看護学部の単科大学。現在、約460人の学生が学んでいる。看護という専門分野の教育を行うだけに就職率は100%と抜群だが、少子化の中で教育環境を整備し魅力ある大学を作るために苦心していることに変わりはない。

日本赤十字九州国際看護大学は2001年4月開学の新しい大学。講義や事務に活用するコンピュータシステムは、2005年9月まで開学時に導入したC/Sシステムを使用してきた。しかし、この旧システムには問題が多すぎた。同大ITコンサルタントの村山淳一氏は、「とにかくトラブルが多発していた。今日こちらでダウンすれば、明日は別のところでダウンするという状態」と、ホトホト手を焼くシステムだったと語る。同大には情報システムの専任セクションを設けていない。資産管理を担当する経理課が“兼任”で情報システムの管理を担当している。そのため、「どこかでトラブルがあると飛んでいって状況を確認するのが日課」(藤川愛・経理課主事)で、「月曜が来るのが憂鬱でした」と振り返る。

2006年4月に着任した情報科学と統計学が専門の池田正人教授は、旧システムについて「非常勤として講義に来ていたのである程度は知っていた。問題の根幹はトラブルの分析ができていなかったこと」と断言する。村山氏は、「ベンダーにトラブルの復旧を依頼しても、原因を究明することなくシャットダウンしまた立ち上げる、という繰り返し」だったという。さらにWindows2000にアップグレードした段階で、PCが古かったためメモリの容量が足りず、起動に時間がかかったりトラブルの原因になったりという問題も発生した。当然ながら情報システムに対し職員や学生の不満は高まってくる。幸い、入学試験などに関わる部分では大きなトラブルは発生しなかったが、不信感が募ればIT利用そのものが後退することにもつながる。「なにかいい解決策はないか」と村山氏が探した結果、学内のインターネット系サーバをホスティングしている九州電力グループのキューデンインフォコム株式会社および九電ビジネスソリューションズ株式会社が提案するシンクライアントシステムを選択した。

何故ならばサーバベースのシンクライアントシステムと比較してHPのブレードPCとシンクライアント端末が教育機関である大学としてより使いやすいと判断したからである。

目的

  • トラブルが多発していた旧システムからトラブルが無く、管理が容易なシステムへの移行を目指した。

アプローチ

  • サーバベースのシンクライアントシステムも検討したが、使い易さを重視してブレードPCとシンクライアント端末の導入を決定。
  • 教職員用に端末60台を設置したほか、統計などの講義に活用するために情報処理室に66台、そのほか図書館などに80台以上の端末を設置し、学生が自由に端末を使える環境を構築。

システムの効果

  • システムトラブルが無くなった。これまでシステムの復旧に関わる時間が長かったが、その負荷が大幅に減少した。
  • トラブルが発生しないことで、講義への影響、業務の停滞が無くなった。

ビジネスへの効果

  • 学生は図書館や講義に使用していなければ情報処理室の端末を自由に使える。レポート作成など大学施設を利用する頻度が高まった。

フィルタリングなどの制限を少なくし、学生が自由に使える環境に

経理係長
加来 昌二 氏

村山氏がシステム選定にあたって重視したのは3点。それまでのシステムで苦労したことからひとつは安定稼動、そして障害時の復旧の早さ、さらに組織的に対応できないためにライセンス管理を含めシステム管理のしやすさだ。HPのソリューションの導入を決定したのが2005年2月で、春休みから導入を開始する予定が夏休み期間にずれ込んだものの10月に事務用と学生用にHPのブレードPCとシンクライアント端末による情報システムが稼動開始した。ブレードPCが200台、シンクライアント端末は217台という構成で、教職員と学生にグループ分けされている。また図書館などに置いたシンクライアント端末は、部外者もウェブ端末として利用が可能だ。

池田教授は、「情報教育というわけではないが、統計学の講義や実習ではPCを使用する。ブレードPCとシンクライアント端末という構成にしたことで、通常のPCと同じ感覚で使用できる」と、講義の進捗にも貢献していると話す。また、「学生に自由に使わせたい」(池田教授)という発想から、学生が書きかけのレポートを自宅に持ち帰りたいという要望もあってUSBメモリの使用も可能にしている」(村山氏)。ただ、「企業の情報システムとカルチャーは違うが、セキュリティの問題は無視できないため一部やむなくフィルタをかけている」と対応に苦慮している面もあるようだ。しかし、図書館に並べられたクライアント端末に学生がやって来て、レポート作成などにあたっている光景を見ると大学らしい自由な雰囲気も感じられる。

そうした環境の中で、自然とITスキルも身についてくる。日本赤十字社の各病院でもオーダリングシステムなどIT導入が進められている。2007年4月に日本赤十字社の病院からの異動で同大に赴任してきた加来昌二経理係長によれば、「病院でのIT導入が難航しているケースもある」という。同大での学生生活を終え、看護師として病院勤務が始まっても、「学生時代にITを利用する環境があれば、病院勤務でもITに対する戸惑いはないという期待はある」と見ている。

今後はe-ラーニングなど新システムの活用範囲拡大を目指す

ITコンサルタント
村山 淳一 氏

「ようやくシステムインフラが整備されたという段階。これから様々なコンテンツ開発を進め教育の現場でもっと活用できるようにしていきたい」と池田教授は、今後の活用法の拡大を進めていきたいと語る。学生が自由に使える端末が学内にあることで、「e-ラーニングなどニーズはある」とし、実際に教員の間でもそうした活用に対する期待は出ているという。大学であるため、企業のように1人1台のPC が配備されているわけではない。しかし学生の利用率は「100%近い」(村山氏)という人気の高さ。増設が必要な場合でも、ブレードPC を増設すれば済むという拡張性の高さも、ブレードPC を選択したメリットだ

かつてのシステムのようにトラブルに悩まされることが無くなった。その反面、使いやすさ故に、「統計解析に必要なものや、一部の人しか使わないような特殊なソフトウェアを導入したいという要望も出ている」(池田教授)ため、「そうなるとライセンス管理の面での検討課題が増える」と村山氏も苦笑する。それだけシステムインフラが安定しているという、安心感の表れでもあるだろう。

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