4町合併で日置市が誕生。市域が広がったことで情報管理係の職員4人では
市内各施設のPCの保守管理が負担となる懸念が浮上。
2005年5月1日に発足した日置市は、薩摩半島の中央部に位置し東は鹿児島市に隣接し、西は東シナ海に面している風光明媚で温暖な地域。人口が約2万4000人だった伊集院町、約1万3000人の東市来町、約1万人の吹上町、約6000人の日吉町が合併したことで人口は約5万3000人、総面積2万5000ヘクタールの新市が誕生した。
平成の大合併を進める過程で政府は、電子自治体の構築やネットワークの普及を目指したe-Japan政策(現在はu-Japan政策に発展)を展開。地方のIT化を進めるために各種の補助事業を行ってきた。日置市も2006年度の総務省の補助事業「地域イントラネット基盤施設整備事業」を活用し総事業費約5億円(補助率は補助対象額の50%)で、各庁舎や市の施設をネットワーク化する光ファイバー網と業務用のブレードPC導入、市民開放用のシンクライアント端末の導入を図った。
CCIの導入について日置市総務企画部企画課情報管理係の太田昭一郎係長は、「合併で職員数も市の施設数も増えた。さらに市域が広がり情報管理係の職員4人でカバーするのが難しくなった。そのため本庁で集中管理できるようなシステムを必要としていた」ことを最も大きな理由にあげている。実際、「PCが起動できないというようなトラブルでも、場所によっては車で30分以上かかる施設もある。動ける情報システム担当の職員も限られており、トラブルが重なれば迅速には対応できない」と情報管理係の濱田理氏。そうした課題を抱えた中で、SIerの三菱電機インフォメーションテクノロジーが提案したのが、HPのブレードPCとシンクライアントシステムのCCI。未だブレードPCが普及していなかった2005年の段階で、鹿児島県内の他自治体でもブレードPCやシンクライアントシステムを導入しているところは皆無。しかし合併により市域が拡大したことで、増加することが容易に予想できるシステムサポートの負荷を軽減するためには、中央管理型のシステムを試してみる価値があると判断した。
目的
- 4町合併したため市域が拡大。各地に分散する支所や小中学校に配置したPCのサポートの負担を軽減。
- 住民のITリテラシー向上を目的に、本庁や支所、地区公民館などに市民が自由に触れる開放PCを設置。
アプローチ
- 2006年度の総務省の補助事業「地域イントラネット基盤施設整備事業」を活用し資金を確保。職員の業務用にブレードPC109台、市民開放用にCCI端末40台を導入。
- 業務用ブレードPCは財務会計などウェブアプリケーション用として使用。
システムの効果
- ブレードPCにより本庁で149台を一括管理し、その分についてはサポートの負荷を軽減。
- 職員用のブレードPCは外部メディアを接続できないため、セキュリティ向上にも貢献。
ビジネスへの効果
- 約650台の既存PCを順次、ブレードPCに置き換え。
- 市内のデジタルディバイド解消を計画、イントラで整備した光ケーブルネットワークを活用して住民のインターネット接続や市の情報提供を支援。
ブレードPCはWeb アプリケーションに対応。既存システムのWeb対応が課題に。
総務企画部
企画課 情報管理係
係長 太田 昭一郎 氏
総務企画部
企画課 情報管理係
宇都 哲郎 氏
そこで2006年度の総務省の補助事業に応募し選定され、実際に業務用のブレードPCと市民開放用のシンクライアント端末を導入した。ブレードPCは本庁の各課に1台ずつと小中学校などの出先の事務処理用に各1台、支所や市の施設などにも1台ずつを置いており、総数は109台。シンクライアント端末は市役所の本庁舎、支所をはじめとして地区公民館など市民の利用しやすい場所に40台を設置した。
業務用に市役所内の各課および施設ごとに1台ずつ配置したのは、「補助金で事業を推進する上での制約があったため」(太田係長)とか。職員のサポート業務の負荷を低減するためという目的からすれば、「遠いところに集中的に配置したいが…」(同)という思いはある。加えて旧来のシステムを踏襲している基幹系の総合住民システムのようにウェブ対応していないシステムについては、「何度か検証したが、VisualBasic で作られているアプリケーションを動かせないことがわかった。自治体業務パッケージのWeb アプリケーション化が進んでいるので、対応できるシステムは出てくるだろう」(情報管理係の宇都哲郎氏)というように、今後のシステム更改の段階で機能アップを図っていく考えだ。
外部記憶メディアを接続できないことで、職員の情報セキュリティ意識の向上に貢献。
ブレードPCについては、総合住民システムへの対応が図れていないために窓口業務には活用できていないが、すでにWebアプリケーション化が完了している財務会計システムなどは使用できることから、学校や市の施設での庁内業務用では十分に活用されている。当初、ブレードPCを導入する際には「職員からFDDやCD-ROMといった外部媒体を利用できず仕事にならないという不満があった」と太田係長は言う。実際に過去の台帳などをCD化している自治体は少なくないし、一般的に職員がFDDにデータを落として自宅に持ち帰るというケース無いわけではなかった。しかし、そういう習慣が情報漏えいを引き起こすことになる。「そういう意味で、外部メディアを接続できないブレードPCならば記憶媒体を持ち出すことによる情報漏えいが物理的に発生しない。ブレードPCの導入が職員のセキュリティ意識を高めることにもなる」(太田係長)と、各課に1台という現状であっても情報セキュリティに対する認識を深めることには役立つと語る。また、既存のデスクトップPCと異なり省スペースなのもメリットとしてあげている。
職員1人に1台の割合で配備されている既存PCのブレードPC化、
シンクライアント化が今後の検討課題。
総務企画部
企画課 情報管理係
濱田 理 氏
市民開放用のシンクライアント端末はHPのCCIを活用している。住民票の発行など電子申請に活用するところまでは行っていないが、市民が市庁舎や地区公民館などに設置された端末で自由にインターネット利用できる環境を作った。また、市民開放用の端末とは別に、市議会の模様を見られるシステムも構築した。自治体の電子化が進み、電子申請などのインフラも多くの自治体が導入を進めている。しかし、全市民がそれを利用できるわけではなく窓口業務も並行して存続しており、その点では自治体の業務負荷は増えたという見方もできる。電子自治体を構築し、それを住民サービス向上につなげるカギになるのは住民がインターネットを利用できる環境整備とITリテラシーの向上である。
鹿児島市に隣接する農村地域が多い日置市にとって、デジタルディバイド解消のためにも情報ネットワークの整備は急務。インフラ整備が進めばさらにインターネット接続環境は充実することになる。その第一歩が市民開放用の端末の設置であり、端末の利用が活発化することで市民のITリテラシーの向上につながると考えている。
「地域イントラネット基盤施設整備事業」を活用することで、ブレードPCとCCIの導入は実現した。今後の課題は、現在も職員1人に1台の割合で装備されている既存のPC約650台をどのようにブレードPCやCCIに置き換えていくかである。「更新のタイミングで業務のWebアプリケーション化は進んでいくが、原課の業務によってはそうならない場合もある」(濱田氏)というように、まずは各業務システムのWeb化は必要だ。日置市の場合、合併前の4町は基幹系も情報系もC/Sシステムを使用しており、ホスト系で作りこんだアプリケーションをベースにしていない点で、更新時のWeb対応システムへの移行は容易だろう。ブレードPCのメリットがはっきりしていることで、「ブレードPCの導入台数を増やすことは検討中。5年後をめどに実現したい」(宇都氏)という。