シンクライアントの集客効果
プロジェクト推進室
マーケティングチーム チーム長
林 昌和 氏
渋谷区渋谷1丁目。コンバージョンされたモダンなビルの螺旋階段をのぼったところにその店はある。ゆったりした店内にはジャズの音色とともにヨーロッパ風の寛いだ空気が流れる。カウンター前には木造りの大きなテーブル。そこに数台のディスプレイが並ぶ。若い女性が数名、テーブルに腰掛け、ファッション雑誌でも楽しむようにWebサイトを眺めている。彼女らの見つめているディスプレイはHPのシンクライアントだ。
この店はRESPEKT。全国に直営店22店舗を展開するカフェ・カンパニー株式会社のカフェのひとつだ。このほかにも、コミュニケーションをテーマにした同社のカフェブランド、WIREDCAFE 10店舗、Planet3rd 3店舗、青山一丁目の 246 CAFE<>BOOK、駒沢大学駅のTokyo People's Cafe、六本木のA971 GARDEN<>HOUSEにシンクライアントが入っている。「情報端末が来店動機になっているお客様もいらっしゃいます」とカフェ・カンパニー株式会社、 プロジェクト推進室、マーケティングチーム長の林氏は、その集客効果を語る。実際、都心の店舗ではシンクライアントを入れてから、来店客が増えた。
故障ゼロで手軽な運用
以前は、頻繁な故障が悩みの種だった。もともと店舗用の端末として回線業者から供与されたPCを利用していたのだが、それがよく故障した。業者はサポートにあまり熱心ではなく、修理や交換にひと月以上かかることも。 本来数台あるべきPCが1台しか稼動していないような状態では、とても顧客サービスにならない。
「しかし、シンクライアントになってからは、そういう悩みはなくなりました」と林氏は話す。シンクライアントは、ハードディスクをはじめ冷却ファンなどの駆動部がないため、静かで壊れにくい。現在、WIRED CAFEなどの店舗に合計で78台のマシンが稼動しているが、導入から数ヶ月、まだ故障は一度もないという。 「『故障』といえば、一度だけコンセントが抜けていたことがありましたね」と林氏は笑う。
たしかに、忙しいカフェ経営では、こうした運用の手軽さは必須要件だ。社内にサポートを専門に行う部門がないため、次々と故障すれば、 すぐにお手上げとなる。かといってサポートを外注すれば、今度は運用コストがかさむ。
「おかしくなったらいつでもスイッチを切るように言ってあります」。店内でのシンクライアントの運用法について林氏はそう説明する。スイッチを切って再起動すれば、システムはすぐにリフレッシュされる。 直前までユーザが何をしていようといつでもそれでもとの設定に戻る。「これなら現場のストレスはありません」
カフェのようなオフィス
シンクライアントをプロモーションに積極的に活用していく考えもある。待機中のマシンのスクリーンセーバーや、ネットへのアクセス画面にカフェのコンセプトに合った商品情報をさりげなく入れておくというアイデアだ。待機画面は必ず来店客の目に入るので、使い方次第では地域ピンポイントの広告メディアのひとつとして使える。
現在ではこうした店舗内の活用に限られているが、本社まで導入を拡げればシンクライアントはもっと大きな威力を発揮する。ブレードPCと連動させて全社にクライアント統合(CCI)の仕組みを作っておけば、人事異動の際も、転勤先にデスクトップPCを移設する必要がなくなる。 どこからでもシンクライアントで自分のデスクトップ環境を呼び出すことができるからだ。
将来構想について尋ねると、林氏は「オフィスをカフェみたいにしたいですね」といたずらっぽく笑った。窓際にテーブルをたくさん並べ、そこにシンクライアントを設置する。朝、出勤したらカフェのように誰もが好きな場所に腰をおろし、そこで仕事ができる、という業務環境。これは同社のようにプロジェクトベースで仕事を進める企業には最適だ。
そんな環境が実現するのはいつの日だろう。林氏にもまだその明確な答えはない。しかしカフェをコミュニティ創造のメディアとしてとらえ、ライフスタイルの視点から斬新な生活空間を生み出している同社の先進性を見れば、さほど遠い日のこととも思えない。 その時、シンクライアントは集客力にプラスして、カフェ・カンパニーに新たな機動力をもたらすだろう。
達成目的
- 来店客への情報端末の提供
- 運用管理負荷の削減
- 新店舗への展開
アプローチ
- HP Compaq t5720 Thin Clientを採用
- 直営店17店舗で展開
- 店舗スタッフによる運用
- システム設定は専門業者に依頼
導入効果
- 顧客ニーズをとらえ集客率が向上
- スタイリッシュなマシンで次世代のカフェを演出
- 故障がなく業務負荷を大幅に削減
- 端末を販促メディアとして展開