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入院患者への情報提供にシンクライアントを導入綾部市立病院

入院患者への情報提供にシンクライアントを導入
検査画像を表示して入院患者への説明にも活用を計画

全国的に地方の公立病院の経営状態が悪化している。その中で京都府にある綾部市立病院は雑誌にも取り上げられるほど、全国でも指折りの健全経営の病院として知られている。
地域の中核病院として機能する綾部市立病院だが、医療業務面でのIT導入にも積極的であり、さらに入院患者への情報発信などもネットワークを活用することを検討してきた。その結果、このほどシンクライアントをベッドサイド端末として導入しインターネット接続など入院患者の利便性向上にもつなげている。

16年連続で黒字。地方公立病院には珍しい健全経営

綾部市は京都府の北部、丹後地方を後背地に舞鶴市などとともに中丹地域に位置している。 京都駅からは、山陰本線の特急で約1時間の距離。グンゼ発祥の地としても知られており、人口は約3万7000人の典型的な地方都市。 唯一の公立病院である綾部市立病院は、1990年にそれまであったグンゼの病院を引き継ぎ財団法人綾部市医療公社が運営する病院として当初150床でスタート。 現在は中丹地域の中核病院として診療科も増えベッド数も206床に拡大している。土曜日も診療を行っており、「地域の救急患者の8割が搬送されてくる。1日約620人の患者の診療にあたっており、年間でのべ18万人の患者が来院する」(樋口高夫・綾部市立病院事務部長)と中丹地方では非常に重要な医療機関である。

副院長
鴻巣 寛 氏

事務部長
樋口 高夫 氏

しかも全国各地の地方公立病院の経営状況が悪化している中で、「京都府の自治体病院の中でも珍しく健全経営を続けている。公立病院だが運営は第3セクターの綾部市医療公社が行い、入院患者の食事やビル管理など民間業者への業務委託も積極的に行うことでコスト上昇を防いでおり、90年に開業して3年目に黒字化し、これまで16年連続黒字を続けている」 (樋口事務部長)。そして2003年には「自治体立優良病院総務大臣表彰」も受けた。

目的

  • 入院患者への情報提供
  • インターネット利用ニーズへの対応

アプローチ

  • ベッドサイド端末にシンクライアントを導入

システムの効果

  • シンクライアントをベッドサイドに設置したことで発熱や騒音の問題がない。
  • セキュリティが高いため入院患者がインターネットに接続する際の心配が少ない。

ビジネスへの効果

  • シンクライアントの設置により、検査画像などを表示しながら医師が入院患者に説明ができるようになる。
  • シンクライアント化により、今後さらに入院患者の利便性向上などを検討するベースができた。

積極的な医療業務面でのIT活用

こうした環境から最新医療技術の導入やITの活用にも積極的で、電子カルテについては「これまでオーダーエントリーシステムを活用してきたが、さらに更新により本格的な電子カルテシステムへの展開を計画している」(樋口事務部長)最中とか。 「最初に導入した5年前にはシステム側が未成熟であったため電子カルテの機能を使う弊害があったが、最近は相当改善されてきたので綾部市立病院としても電子カルテまでの展開を考えている」(野崎祐・綾部市立病院事務部管理課主任)という。 また、その他にも部門ごとの業務に適応して、それぞれシステムを活用するなどIT化にも積極的だ。

入院患者のベッドサイド端末にシンクライアントを採用

こうした医療業務に関する部分だけではなく、入院患者に対する利便性や情報の提供を主な目的として、患者のためのITを手がける(株)ヴァイタス提案のもとHPのシンクライアントシステムを導入した。「ベッドサイド端末として採用したので、シンクライアント端末という意識はあまりないが…」(野崎主任)としているが、「発熱が少なく、ファンなどの騒音がない点で病室という環境にマッチしている」(野崎主任)ことがシンクライアント端末の導入の理由という。また、入院患者からインターネットを利用したいという要望もあり、それに対応するためにはPCが必要になるが、「病院側からの情報発信にも使うという目的もあり、インターネット接続のために病院内のネットワークを活用することを考えるとセキュリティを高めなければならない。 その点でもシンクライアントならばセキュリティが高くて運用上の負荷も少ない」(野崎主任)ということが決め手になった。 ベッドサイドの端末では、インターネット接続や病院からの情報発信に加えて、これからは「ベッドサイドで医師が患者に放射線画像を示しながら説明するというような使い方も検討している」(野崎主任)という。

現在、ベッドサイド端末にシンクライアントを置いているのはICUなどの特殊なケースを除きほぼ全てのベッド。それも「4日間ほどで全てのベッドに設置した」(野崎主任)という。導入の検討開始が約1年前。2008年2月には導入を決定し、5月には一気に設置してしまった。設置から間もないため、「入院患者にとっては新しいテレビに代わったという程度の認識」(樋口事務部長)と笑う。

本格的な利用やサービスメニューの拡大はこれから

「まだまだこれからどう使っていけるかを考えているところ」と野崎主任は今後も入院患者への情報提供に大いに活用していきたいと語る。医師の側から見て、鴻巣寛副院長は「まだこれからだが、入院患者への説明などに使える点はメリット。

ただし個人情報という点から個室に限られるかもしれないが。それと回診の際にすぐに情報が呼び出せるかどうかが課題かもしれない」と実際の使い勝手という点で注文をつける。

綾部市立病院は臨床研修指定病院となっており、「募集定員を超えて応募があるというのは京都府内でも数少ない」(樋口事務部長)という貴重な病院のひとつである。研修医が殺到するのも、医療レベルの高さとともに設備が充実しているというのも理由である。そして設備の充実という点ではIT化でもポイントは高いといえるだろう。

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