2021.03.02

新規ビジネス開拓を成功に導く、大判デジタル印刷機・HP Latex プリンターのポテンシャル

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長引くコロナ禍で世の中が目まぐるしく変化する中、印刷会社はさまざまな課題に直面している。

売上の確保だけでなく、近年世界に取り組みが進められている地球環境への配慮など、ニューノーマルを見据えた動きが求められている。特に環境対応は、日本もようやくカーボンニュートラルな社会づくりに本格的に着手し、その影響は想像以上のスピードで印刷会社にも波及するだろう。

環境対応を実現しながら、利益を生み出す。これは業種問わず、全ての企業に課せられた至上命題だ。印刷会社、特に大判印刷を扱う会社であれば、印刷素材や地球環境への影響が大きい溶剤インクなどを使用しない「環境に優しい印刷物」を制作しなければ、今後世の中に受け入れられなくなるだろう。

大判印刷を扱う会社が、アフターコロナで躍進するには何が必要なのかー。今回も前編に続き、株式会社日本HP Latexビジネス本部 プリセールス 大型プリンターエバンジェリストとして、顧客事例など豊富な知見を持つ、霄 洋明(おおぞら ひろあき)氏に話を聞いた。

溶剤インクに「持続可能性」はあるのか

これまで屋外広告向けの大判印刷では、溶剤インクが主に使われている。溶剤インクは発色がよく、プリンター操作も比較的容易で、その長い経験値から一般的なテクノロジーといえる。

しかし、溶剤インクには致命的なデメリットがある。その1つが「臭い」だ。溶剤インクは強烈な臭気を発して、オペレーターをはじめ周囲への影響も極めて大きい。最近では旧来のハードソルベントではなく、エコソルベントと呼ばれる臭気の少ない溶剤性インクが主流だ。むしろ低溶剤であればあるほど、最初は気になった臭気に「慣れ」が出てしまう。そのため、溶剤インクを使用する際は意識的に換気を徹底する必要がある。

さらに、もう1つの欠点は「環境負荷が極めて大きい」ことだ。溶剤インクは印刷素材(メディア)の表面を文字通り溶かして、色材を定着させる。このような性質を持つため、溶剤成分によって、印刷素材や粘着材が変化してしまうことがある。結果として、表示サインや広告があとから浮いたり、反り返って剥がれたりするトラブルが後を絶たない。トラック車体のアルミコルゲート部分に掲出した広告イメージが、剥がして撤去した後にもゴーストのように残ってしまうこともある。

このようなトラブルを回避するには、印刷物を12時間から24時間脱気乾燥させるしかないが、それにより脱気したVOC(揮発性有機化合物)にオペレーターが晒されることになる。

また溶剤インクを使用するプリンターは定期的に廃インクを排出する仕組みになっている。インクの無駄が発生してインク代が割高になるだけでなく、先に述べた作業環境や施工後の影響の懸念も払拭できるものではない。

日本では、溶剤インクの使用に関する規制などは、現時点でほとんどない。しかし海外では「オーストラリアをはじめ、溶剤インクの使用にはかなり厳しい規制を敷いている」(霄氏)という。

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近年は「地球環境への配慮」が世界的な取り組みになっている。世界経済フォーラムでも「持続可能性」について議論され、利益最優先の考え方を改めようとする動きも見られる。
また日本でもSDGsの認知向上とともに、政府もカーボンニュートラルな社会を実現するため、二酸化炭素排出と吸収の量を同じにする(実質ゼロ)取り組みに向けて動き出した。日本でもようやく地球環境への配慮が国をあげての取り組みとなり、企業も今後対応が求められるのは間違いない。

今後、環境負荷が大きい溶剤インクを今までのように使えるのか。溶剤インクの「持続可能性」は、今から考えるべき重要なテーマである。

環境負荷が少なく、多様な印刷物を制作できるLatexインク

Latexプリンターで使用するLatexインクは、いわゆる水性インクだ。インクの約65%以上が水でできているLatexインクは、素材表面にインクを乗せたあと、プリンター内蔵のドライヤーで熱を加えることにより、水分を蒸発させて、Latexポリマーを溶解硬化させて色を表現する。そのため、印刷素材を傷めることもなく、溶剤インクとは対照的に環境負荷がとても小さい。このような特性を持つことから、安全な作業環境の維持と、掲出施工後の印刷物の美しさも保つことができる。

さらに繰り返しになるが、HP Latexインクは無臭で、溶剤インクやUVインクのような強烈な臭いも発しない。そのため、オペレーターをはじめ周囲への影響もほとんどなく、安心して使用できる。

印刷現場は、昔から”3K”(きつい、汚い、危険)のイメージが強く、他の製造業に比べて若い人材のリクルーティングが困難だった。しかしLatexインクのような環境対応したインクが開発されたことで、クリーンなイメージを訴求でき、若い人材が採用しやすくなるだろう。

またLatexインクの臭いを発しないという特性は、屋内で使用する壁紙やポスターなどの制作にもメリットがあり、コロナ禍で発生した新たな印刷ニーズを取り込む上でも優位に働く。霄氏は「近年は”STAY HOME”の影響もあり、DIY用途の壁紙やリメイクシートなどの需要も伸びています。また屋内でマスク着用や消毒を促すPOPやスタンドのニーズもあり、そのような状況の中でLatexインクの特性はより際立っています」と語る。

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乾燥時間をほとんど必要としないのもLatexインクの特徴だ。前述のとおり溶剤インクの場合、印刷してから12~24時間ほど乾燥する工程が必須となる。しかしLatexインクならこの工程が不要で、すぐに加工・梱包・施工など次の工程に素早く移行できる。そして「タイムリーに素早く」という特性により、大判出力の根底にある「多品種・少ロット」の印刷物に瞬発力を加えることができる。

さらに、Latexインクの強みはこれだけではない。その1つに、霄氏は「屋外耐候性を持ち、擦過性も従来の水性インクより圧倒的に優れている」ことを挙げる。

「HPは2008年に世界で初めて屋外耐候性を持つ水性インクの開発に成功しました。水性インクを使用した印刷物が屋外でも使用できるようになり、用途がさらに広がりました」(霄氏)

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「ゴム(Latex)のように伸びる」というコンセプトを体現するように、Latexプリンターは欧米を中心にユーザーを獲得し続けた。霄氏は、屋外のサインディスプレイや大型イベントのポスター、電車やバスなどのラッピング広告にも利用できるようになったことに触れ、その特徴的な利用方法を紹介する。

「日本ではあまり見られない、建物のラッピングやイベントの超大型のポスター印刷で使用されるケースが多いです。日本のように印刷物の大きさに規制がないので、これらのニーズがあります。また車両ラッピングは日本でもこの10年くらいで3〜4倍になっているという声を聞きますが、海外は10倍くらいに成長しているかもしれません。日本と比べて、伸び率はずっと大きく、そこでもLatexプリンターは威力を発揮します」(霄氏)

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溶剤インクのデメリットを解消し、環境対応しながら屋内外で利用される印刷物の制作が可能になる。Latexインクは、今後印刷業界の主役になるポテンシャルを秘めている。

プリンターに欠かせない「操作性」と「サポート体制」

Latexプリンターの強みは、インクだけではない。PCやサーバーなどのビジネスを手がけるHPだからこそ提供できる価値がある。

その1つが、タッチスクリーンを活用した優れた操作性だ。

「Latexプリンターは、フロントパネル(操作盤)にフルカラーのタッチスクリーンを搭載しました。これによりユーザーインターフェースが洗練され、オペレーターもより使用しやすくなりました。またタッチスクリーンは操作だけでなく、操作手順も作業の進行に合わせてガイドする仕様です。操作がわからなくなったら、説明書をわざわざ開くのではなく、タッチスクリーンで確認できるのです」(霄氏)

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印刷会社にとってオペレーターの育成は喫緊の課題だ。経験豊富なオペレーターの職人技を伝承するのは極めてハードルが高い。

しかしタッチスクリーンによって、スマートフォンやタブレット端末を操作するように印刷物を出力できるようになれば、技術伝承の問題は解決に向けて大きく前進するだろう。

またサポート体制も他のプリンターメーカーと一線を画している。「異常が発生する前にサポートする」ことをコンセプトに、IoTの活用も進めている。さらにコロナ禍でもサポート窓口は通常どおり対応が可能で、ユーザーのダウンタイムを軽減する強力な体制を築いている。

Latexプリンターなら、これまでの強みをもとにスピーディーに事業拡大が可能に

このような特性を踏まえ、HPはLatexプリンターを活用した新規事業開発を印刷会社、特に商業印刷分野へと提案している。新規ビジネスで新たな顧客を開拓したい。Latexインクをはじめ、HP Latex プリンターはそんな印刷会社のニーズを満たす仕様を備えている。

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前編で解説したとおり、Latexプリンターは上記のような幅広いジャンルで活用できる。そして、これに呼応するかのように、印刷会社の中にもこれまでの常識や慣習にとらわれず、新たな挑戦に一歩踏み出す企業が増えつつあるようだ。

「オンラインミーティングがほとんどを占めるようになった影響もあるかもしれませんが、最近相談にいらっしゃるお客様は、HP Latex プリンターを活用して新たなチャレンジをしたいという意欲が高まっています」と霄氏も顧客の変化を感じるという。

また商業印刷会社は、これまでに多くの顧客接点を構築しているケースが多く、顧客基盤が安定している。例えばスーパーや商業施設が顧客で、これまでチラシの発注を受けていた場合、Latexプリンターがあれば提案の幅をさらに広げることができる。

店内内装、店舗内バナー、店舗外装、そして屋外広告など、Latexインクの多岐に渡る対応力を活かして、少ない投資で様々な打ち手が可能になる。またデリバリーが主役となる店舗に対しては、配達用のバイクのラッピングも可能だ。それを広告媒体として利用することも提案できる。

このようにLatexプリンターがあれば、これまで築き上げた顧客基盤をさらに深め、印刷という分野を大きくずらさずに提案の幅を大きく広げられる。そして、これにより顧客理解を深めていくという道筋が見えてくるのである。

また印刷会社によっては、従来手掛けていた印刷物をHP Latex プリンターで代替するケースも増えている。印刷コスト、そしてスピードでも優れるHP Latex プリンターで、業務の見直しを図るケースもある。「確かに、まだHP Latex プリンターで出せない色もあります。しかし、HP Latex プリンターでできる仕事は、HP Latex プリンターで取り組むお客様も増えつつある。現在使用しているプリンターと併用してビジネスを展開しているケースも見られます」(霄氏)。

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また新たなニーズが生まれると、その業界には新たなプレイヤーが誕生する。印刷業界にもベンチャー企業が増え「HP Latex プリンターのお客様にも、2人で立ち上げたベンチャー企業もいらっしゃるくらいです」と霄氏は明かす。

ひと昔なら、大型のポスター印刷と内装の壁紙印刷では別々のプリンターが必要だった。そのため莫大な設備投資が必要で、新規参入の壁は極めて高かった。

しかしHP Latex プリンターなら、Latexインクの特性などを活かして、オールインワンで様々なニーズに応えられる。

そして、そのための設備投資も必要最低限に抑えられる。霄氏は「HP Latex プリンターは、ビルボードなどの屋外広告からポスター、小売店舗で使用するPOP、内装の壁紙印刷などにも活用されています。ここまで幅広い種類の印刷に対応できるのは、HP Latex プリンターだけでしょう」と強みを語る。

コロナ禍や環境対応など近年の流れを「危機」と捉える印刷会社は多い。しかし裏を返せば、何かを変えねばならない「チャンス」と解釈もできる。こういう時こそ、新たなチャレンジに踏み出しやすく、結果として事業の成長に結びつくはずだ。

幅広い印刷物を出力でき、環境負荷も小さいHP Latex プリンターを活用すれば、市場の縮小が続く印刷業界で一歩抜きん出た存在になる可能性がある。HPはプリンターのサポートだけでなく、新たなチャレンジに挑む印刷会社の事業拡大にも貢献できるよう努めていく。