2020.06.19

HP SmartStream Designer─多様なパーソナライゼーションに応える新たなソリューション

HPデジタル印刷機がもたらす革新 5

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最新のHPデジタル印刷技術がもたらす世界を、さまざまな視点からクローズアップする連載「HPデジタル印刷技術がもたらす革新」。シリーズ最後となる今回は、デジタル印刷の特長である可変デザインを手間をかけずに簡単に生成し、印刷を実現するHP SmartStream Designerの機能を紹介する。多様なパーソナライゼーションに応える新たなソリューションは、印刷会社にどのような革新をもたらすのか? 株式会社 日本HP デジタルプレス事業本部のソリューションアーキテクト 森真木氏による説明で綴る。

株式会社日本HP デジタルプレス事業本部 コマーシャル営業本部 ソリューションアーキテクト
森真木氏

Indigo日本立上げ時にプリプレス担当としてE-Printに関わる。
以後、オフセット印刷メーカーを経て2008年からHPでDFEサービスエンジニアを担当。
以後PODメーカーへ移動しBPOビジネスの構築運用を担当後2016年からHPで商業印刷ソリューションアーキテクトとして活動。

HP デジタル印刷機
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顧客に合わせたデザインを生み出す、可変データ生成ツール

HP SmartStream Designerは、成果物ごとに異なる可変デザインを生成し、パーソナライゼーションを提供するアプリケーションです。「同じものを大量に印刷する」という固定観念を破壊し、「1枚ごとにまったく異なるものを印刷する」という、デジタル印刷ならではの新たな体験をもたらします。

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パーソナライゼーションに革命を起こす可変デザイン

パーソナライゼーションの典型的な例として挙げられるのが、ダイレクトメールです。ダイレクトメールをつくるうえで求められる要素は、顧客ごとに宛名や住所、チケットのナンバーなどが印刷されていること。しかし、それではパーソナライズされた効果的なマーケティングとは言えません。

HP SmartStream Designerは、宛名や住所などはもちろん、顧客ごとにフォントや文字の大きさ、コメント、さらには画像やイラストすらも1枚1枚異なるデータを生成。「自分だけの特別なメッセージ」「自分だけに届いた特別なダイレクトメール」など、顧客の満足度を高めるパーソナライゼーションを実現します。たとえば1万人の顧客に対して、1万通りの異なる可変デザインをつくることも不可能でありません。

ホテルなどで使用される、ウェルカムカードを例に見ていきましょう。ウェルカムカードに必要な情報は、Welcome to~に続くお客様の名前、ルームナンバーといった基本的な項目が挙げられます。HP SmartStream Designerの場合はこれだけにとどまらず、部屋にあったデザインや模様、お客様の画像イメージなども個別に変更することができます。さらにお誕生日や記念日といった特別な日を迎えたお客様に対しては、プレゼントのお知らせやメッセージを載せることもできるのです。

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DMやグリーティングカードは顧客の基本データベースを活用

HP SmartStream Designerは、Adobe InDesign、Adobe Illustratorのプラグインです。どちらもグラフィック業界では広く普及しているアプリケーションだけに、「普段使っているアプリケーションの中で使うことができる」ということも大きなメリットと言えるでしょう。

可変データ生成の基本となる、DMやグリーティングカードを作成する際の宛先、宛名の可変部分デザインの元になっているのは、CSVで構成された顧客データベースです。名前や住所、年齢や性別といったさまざまな顧客情報をHP SmartStream Designerに紐づけることで、条件に応じて可変データを生成します。ほかにも郵便番号の情報から郵便用のカスタマーバーコードを生成することや、文字列からQRコードを生成するということにも対応します。

可変デザインを支える多彩な機能

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HP SmartStream Designerの特長は、顧客のデータベースを用いて無限の可変デザインを生成することにありますが、これを可能にするため機能がいくつかに分かれて搭載されています。代表的ないくつかの機能をご紹介しましょう。

HP Mosaic
元になる1つの絵柄から、異なる複数のデザインパターンをランダムに生成するアルゴリズムです。デザイナーやクリエイター自身が数万パターンのデザインを1つずつ作成のは現実的ではありません。しかしHP Mosaicは何十万、何百万というデザインを、短期間で生成できるという特長があります。元になるデザインの一部分を切り出すだけではなく、拡大や縮小、回転、色の置き換えといった多彩な選択肢からアレンジを加えることで、あらゆるパターンのデザインを生成します。

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HP Collage
HP Collageは複数の画像ファイルを任意に組み合わせて、可変デザインを生成する機能です。例として以下の図のように海と砂浜を背景に、ヨット、ボール、ヒトデ、貝などの画像を配置することで可変デザインを生成できます。HP Collageの特長は、単に画像を配置を生成するだけではなく、「ヨットは海にしか出現しない」といった細やかなルール設定も可能な点です。また個々の画像の可変に関しても、大きさや数など柔軟に対応できます。こうした細かなルール設定を用いることで、多彩なデザインを生み出すことが可能です。

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Locr Maps
HP SmartStream Designer内にデータベースの情報を利用し、住所から地図を生成する機能です。たとえばお店の場所を知らせたい場合に、顧客ごとの住所をLocr Mapsが参照し、顧客とお店の位置関係をマップとして生成して伝えるというような可変デザインが可能です。

TEC-IT Barcode Studio 、ID Automation
2次元バーコード、MicroQRバーコード、カスタマーバーコードなど多彩なを自動で生成できる機能です。

Edge Printing
小口印刷、背印刷をデザイン的に装飾できる機能です。小口や背に少しずつ絵を組み込んで、並べたときに1枚の絵を表現することができます。たとえば1巻から20巻までの背に、1枚の絵を分割して載せる場合、ベースとなるデザインを元に、背表紙のサイズと冊数から自動で分割してデータを生成します。
また、小口印刷はベースとなるデザインをページ数に基づいて自動に分割し小口を装飾することができます。

HP SmartStream Designer for Designer (D4D)

手軽にHP SmartStream Designerの機能をより多くのデザインに携わる方々に体験していただくために、Adobe Exchangeで無償版であるHP SmartStream Designer for Designer (D4D)が公開されています。対応しているアプリケーションはAdobe Illustratorのみ、生成できる可変データも20レコードまで、という制限はありますが、HP Mosaic、HP Collage、Locr Maps 、Edge Printingといった主要な機能を使うことができます。

D4Dは導入しやすいというメリットを持つため、主にデザイナーやクリエイターがブランドオーナーに対して提案するためのツールとして活用していただくことを意識しています。ブランドに採用された提案はSmartStream Designerを保有する印刷会社と連携し、何万もの製品として生産します。
デザイナー、クリエイターが可変データのおもしろさを知ることによって、パーソナライゼーションの領域はさらに拡大すると思われます。

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HP SmartStream Designerの無限の可能性を証明した4つの事例

事例1:すべてオリジナル!アイスキャンディーの限定パッケージデザイン
実際の導入事例としては、Quality Tape& Label社が、King of Pops(アイスキャンディー)のハロウィン限定パッケージとして採用。HP Collageを使用し、お化けやパンプキン、お菓子に目玉といったハロウィン独特のモチーフを散りばめ、1つとして同じデザインが存在しないパッケージが完成しました。

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初期生産分はわずか1週間で完売。翌週には、初期生産分の3倍の生産量を納めています。こうした実績は、HP Collageによるデザインが、お客様を売り場にとどめておくアイキャッチとして、非常に効果があることを証明したと言えます。このキャンペーンはハロウィンにとどまらず、クリスマスやイースターでもシリーズ化され、好評を博しました。

事例2:メッセージ性をデザインに込めたチョコレートのパッケージ
Tony's Chocolonley社が、フェアトレード(発展途上国で生産された作物・製品を、適正な価格で継続的に取引し、生活向上を持続的に支えるシステム)よりもさらに一歩進んだ取り組みとして、奴隷・児童労働による搾取のないカカオ豆から生産したチョコレートのパッケージデザインに、HP Mosaicを採用しました。

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事例3:思わずコレクションしたくなる多種多様なボトルデザイン
D4Dの使用例として、クリエイターであるYarza TwinsがSminoffのキャンペーンボトルのデザインを担当。人種も世代も超えた多様なデザインを完成させ、Packaging Design 2018において、権威あるD&AD Pencilを受賞しました。

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事例4:「印刷のパラダイムシフト」を実現したチラシデザイン
日本においてもD4Dのプロモーションは積極的に行われています。2019年7月4日に行われたコンベンションアートイベント、紙deナイト『デジタル×紙』にて、紙とデジタル可変デザインの融合をテーマにディスカッションが行われました。本イベントでは、株式会社Hooopの武田英志さんが、初めてD4Dを体験。武田さんは普段オフセットを中心に携わり、「印刷物=制約の中で遊ぶ」という意識をお持ちになっていましたが、実際に可変デザインに触れることで、「印刷のパラダイムシフト」を感じたとのことです。実際に武田さんは瞬く間にD4Dの特長をつかみ、可変デザインを駆使した見事なチラシを完成させました。

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チラシに用いられた絵柄は、浮世絵師である歌川国芳の『山海愛度図会 続きが見たい』という錦絵。完成したデザインは、背景の色や女性が手にした本のデザイン、着物や髪飾り、タイトルのフォントや位置も微妙に異なるという、可変デザインの魅力を具現化したものでした。イベント当日は来場者にチラシを持ち寄ってもらい、同じものが1つもないという、可変デザインの実力に驚きの声が上がりました。

可変デザインが秘めたさらなる可能性

マーケティングオートメーションが推進されていく中で、HP SmartStream Designerは高水準のパーソナライゼーションを実現するソリューションとして、無限の可能性を秘めています。今後、さらに普及が進むことによって、誰も想像もつかないデザイン、パッケージが誕生し、お客様ごとに最適化されたデザインを提供することに留まらず、売り場を一変させるクリエイティブ登場の可能性を秘めています。店頭でふと見入ってしまったパッケージ、それを生み出しているのはHP SmartStream Designerかもしれません。

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