2020.06.05

HP Indigo Pack Ready – デジタル×ラベル印刷が切り拓く新たな領域

HPデジタル印刷機がもたらす革新 3

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最新のHPデジタル印刷技術がもたらす世界を、さまざまな視点からクローズアップする連載「HPデジタル印刷技術がもたらす革新」。3回目は、デジタル印刷機を活用した印刷会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するテクノロジーとして主にラベル&パッケージ業界向けに存在する「HP Indigo Pack Ready」の機能から解説する。

HP デジタル印刷機
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HP Indigo Pack Readyとは?

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デジタル印刷機HP Indigoは、紙、フィルムといった材質を問わずに印刷が可能。さらに大量印刷はもちろん、少量印刷にも柔軟に対応できるという利点があります。これはさまざまな包材の印刷でも同様で、特に「短納期で小ロットの印刷を手軽ができる」というジョブは、HP Indigoの最も得意とするところです。

その後の工程は、印刷されたフィルムに接着剤を塗布してラミネートし、製袋機で袋状に加工する……というプロセスが一般的ですが、現在、この工程では従来設備の大型ラミネート機で処理を行うのが一般的です。これがボトルネックとなり、少量印刷の加工を行う際には、大量印刷の合間に行わなければならず、また場合によってはデジタル印刷用の接着剤に交換するという手間も生まれます。

こうした問題を解消し、デジタル印刷のメリットを包装で活かすソリューションがHP Indigo Pack Readyになります。

現在展開しているのは、ボイル・レトルト包材に適したHP Indigo Pack Ready コーティング、接着剤不使用で即時製袋加工可能なHP Indigo Pack Readyラミネーションに加え、新たにラベル印刷用のHP Indigo Pack Ready for Labelsが加わりました。HP Indigo Pack Readyがもたらす新たな可能性を見ていきましょう。

デジタル印刷でボイル・レトルト包材にも対応

HP Indigo Pack Readyコーティング

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HP Indigo Pack Readyコーティングは、これまでデジタル印刷では難しかったボイル・レトルト包材にも対応するソリューションです。

これまでデジタル印刷を活用した包材は、製菓やお米・お茶などの軽包装に用いられることが主流でした。軽包装は「内部の鮮度を保つ」という要求が第一で、ラミネート時、製袋時に印刷にかかる負荷はそれほど過大ではありませでした。しかしボイル・レトルト包材の場合、「高温・高圧で殺菌をする」という工程が加わります。

たとえばレトルトのカレーは、常温で長期間の保存を可能としていますが、これは包材を120℃以上高温で殺菌しているから実現できていること。ただし、この加熱殺菌はデジタル印刷にとっては過酷な条件です。熱でラミネートしたフィルムが浮く、接着強度が落ちる……といった問題をクリアしなければなりません。それでも「利便性の高いデジタル印刷をボイル・レトルト包材に使いたい」というニーズは、日増しに高まってきました。こうした声にお応えするべく、デジタル印刷がもたらす高付加価値、高機能包材を実現するHP Indigo Pack Ready コーティングが開発されました。

従来の包材を印刷するフローを振り返ってみましょう。まず印刷フィルムにHP Indigoデジタル印刷機+HPエレクトロインキを用いて印刷を行ったあと、ドライラミ機でラミネートフィルムを貼り合わせます。それをスリッターでスリットし、さらに製袋機で袋状にして商品を充填して市場へ送り出す……という流れが一般的でした。

それに対しHP Indigo Pack Ready コーティングは、この従来のフローに追加ステップを加えることで強靭なコーティングを可能としています。具体的な作業内容としましては、Pack Readyコート剤を油性コーターで印刷面に塗布し、1日エイジングを行うことです。

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Pack Readyコート剤をコーティングすることで、どのような変化が起こっているのでしょうか?

フィルムにプライマーを塗布し、HP Indigoエレクトロインクを使用した印刷面に、Pack Readyコート剤を塗布すると、プライマーとインクに含まれるポリマーとの間に化学反応(架橋反応)が起き、両者はクロスリンクし、強固なポリマーチェーンで結ばれます。これによってインクの耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的物性など、総合的な物性が向上。100℃以上の熱にも耐え、水にも強い物性を実現します。

HP Indigo Pack Ready コーティングは、欧州を中心に数年前から導入が進み、2018年には日本でも導入され普及し始めています。その用途は常温保存可能な食品やペットフードをはじめ、さまざまな用途への普及が期待できます。

接着剤・溶剤不要。環境に配慮し、短納期を実現

HP Indigo Pack Ready ラミネーション

HP Indigo Pack Ready ラミネーションでは、これまでにない新しいラミネートプロセスを実現しました。従来の軟包装におけるラミネートは、油性の接着剤を用いてシーラントと印刷面とを貼り合わせるのが一般的です。ところがこの従来方式では接着剤の乾燥時間や環境的な配慮、そして少量印刷には不向きといった問題がありました。そこでHPでは、ラミネーターを手掛けるメーカーとフィルムメーカーと協力して、新たにPack ReadyラミネーターとPack Readyフィルムを開発。熱によるポリマーの機械的結合のみでエイジングレスのラミネートができるソリューションを作り上げました。

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工程としましては、HP Indigoデジタル印刷機で印刷したフィルムを、熱反応樹脂が表面にコートされたシーラントフィルム(HP Pack Readyフィルム)を専用のサーマルラミネーターで貼り合わせます。一般的なラミネーターと異なり、接着剤不使用、無溶剤化・エイジングレスを実現しました。昨今は印刷業界に限らず、環境問題への取り組みは大きなテーマであり、欧米ではすでに無溶剤の接着剤やインキが広く普及しています。日本ではグラビア印刷が主流で、溶剤が多く使われていますが、今後の無溶剤化への流れは世界的なものと言えます。HP Indigo Pack Ready ラミネーションは、こうした環境問題への取り組みを先取りしたものと言えるでしょう。

また接着剤や溶剤の乾燥時間やエイジングが不要であることも大きな利点です。印刷が終われば即時製袋が可能であるため、納期の短縮が期待できます。さらに大型のドライラミ機の場合、数十~百m単位でのロスを覚悟しなければなりませんでしたが、HP Indigo Pack Ready ラミネーションは僅か数mのロスで済むなど、少量印刷にも適したラミネート方式と言えます。

ラベル耐性を飛躍的に向上させる新たなソリューション

HP Indigo Pack Ready for Labels

新たなHP Indigo Pack Readyファミリーである「for Labels」。コーティングとラミネーションは軟包装用の後加工ソリューションですが、for Labelsはラベル加工用のソリューションになります。シールラベルを印刷する場合、多くは印刷の表面にコーティングとしてOPニスが用いられます。この際に用いられるUVニスの中に、HPのエレクトロキンキ、プライマーと化学反応する添加剤を新たに開発。インクとプライマーが架橋反応を起こし、様々なラベル物性を向上させます。

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具体的にラベル物性が向上すると、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか?耐化学物質の向上では、エンジンオイルや食用オイル、アルコール濃度の高い飲料などのラベルで真価を発揮します。機械的耐性の向上では、ガラス瓶のラベルに使用した際に摩耗しにくいというメリットが挙げられます。ほかにも耐熱性・耐水性では熱湯から氷水にも対応し、湯せんする食品ラベルといった用途にも使用可能です。

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デジタル印刷の領域は無限に広がっていく

デジタル印刷機HP Indigoは、アナログ印刷の常識を覆す数々のソリューションを生み出してきました。その一方で、いまだデジタル印刷の良さを十分に活かしきれないカテゴリーも存在していました。HP Indigo Pack Readyは、こうした状況を打開するだけではなく、新たな可能性をもたらします。

たとえば、従来のアナログ印刷では、「小ロットのボイル・レトルト包材や、軽包装を超短納期で生産する」ことは現実的ではありませんでした。しかしHP Indigo Pack Readyであれば、この課題をクリアするだけではなく、デジタル印刷ならではの高品質で高付加価値の包材、ラベルを実現できます。需要予測の困難な時代にとって最適なソリューションになり得るでしょう。このようにHP Indigo Pack Readyを組み合わせることで、デジタル印刷機の可能性は無限に広がっていくでしょう。

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