2021.12.24

社員4名の小さな企業が、デジタル印刷で続ける大きな挑戦
株式会社ラップリンクス 手取社長インタビュー

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株式会社ラップリンクスは、従業員4名という小規模ながらHP Indigoデジタル印刷機を生産機として使い、発注者の要望にきめ細やかに応え質の高い商品を提供するパッケージコンバーターだ。個人事業主や小規模ブランドオーナーに寄り添い、ビジネスパートナーとして小回りのきく対応で彼らの事業を支えている。グラビア製版業からの転換と独立、デジタル印刷を生産の主軸に据えたビジネスの立ち上げ、ブランドオーナーと二人三脚で歩んだ事例、そしてこの先の目指す姿について、ラップリンクスの代表取締役社長、手取氏に話を聞いた。

株式会社ラップリンクス
代表取締役社長 手取 武志 氏

 株式会社旭グラビア製版センターで工場長およびデジタル事業部の専務を務めた後、株式会社ラップリンクスとして独立。HP Indigo WS6600デジタル印刷機で、天然水のオリジナルラベルをはじめとするシュリンクラベル、軟包装、オリジナルポリバッグ製造など、小ロット・多品種・バリアブル印刷が活きる商品を提供する。

ラップリンクス創業のストーリー ~グラビア製版業からデジタル印刷業への転身と独立~

―― グラビア製版業から独立されたとのことですが、ラップリンクス創業までのストーリーを教えてください。

「私がもともと在籍していた株式会社旭グラビア製版センターは、石川県金沢市に本社を構えるグラビア製版業者です。同社のお客様であるグラビアコンバーターの受注するパッケージが年々小ロット化してきており、そのことにお客様も頭を悩ませていました。小ロットという課題に対して、製版業として何かできないかと模索し、小ロットをサポートすることでお客様の力になれればと、2013年8月にHP Indigo WS6600デジタル印刷機の導入に踏み切りました。

ところが、実際に導入してみるとお客様の反応は良くありませんでした。デジタル印刷機はグラビアコンバーターにとって脅威の存在でもあったのです。グラビアコンバーターのお客様からは、「どうしてそんなものを入れるんだ?」と言われ、導入したデジタル印刷機の活躍の場を見出せずにいました。そこで、デジタル印刷機を活用した商品を自分たちで考えようと、地元石川県・白山の天然水を使ったオリジナルラベルの印刷を企画したのです。旭グラビア製版センターは製版業ですから、畑違いの飲食物を取り扱うならば、別会社を立ち上げて挑戦してみるのが良いだろうと社長に背中を押され、1台のHP Indigoデジタル印刷機と共に2014年に株式会社ラップリンクスとして独立しました。現在、社員は私と営業1名、デザイン1名、オペレーター1名の実動4名体制でやっています」

―― 新しいマーケットで新規顧客開拓はどのようにされましたか?

「オリジナルラベル天然水の企画をしたものの、そこからが大変でした。まずはホームページを立ち上げましたが、なかなか思うように問い合わせは入りません。当時はSEOもよくわからない状態でしたが、担当者が人に聞きながら試行錯誤し、リスティング広告も運用して改善を重ねるうちに、少しずつ県外のお客様からも問い合わせが来るようになりました。オリジナルラベル天然水はイベントのノベルティなどでよく使われていますが、新規のお客様はやはりWeb経由が多いです。また、Webを開設しつつも、頻繁に東京に足を運んで営業活動することで仕事に繋げていました。

現在手掛ける商品は、シュリンクラベル、軟包装、ポリエチレンの手提げ袋の印刷が主です。地元のお客様も多く、たとえば石川県内の酒屋さんや醤油屋さんに販売ルートをお持ちの印刷会社から、小ロットのラベルやキャップシールの発注を頂いたりしています。お鮨屋さんに行くと、そのお店専用のお醤油が置いてあったりしますが、そういうオリジナルものなどでデジタル印刷の需要があるんですね。また、行政からの依頼でポリバッグの印刷も行っていますが、最近では、バイオマス30%の袋など、環境に配慮した商品も取り扱っています」

スタートアップブランドを支えるビジネスパートナー

―― Bardon株式会社の創業当初よりKane Bar(カナエバー)の包装材を提供されていますが、その歴史についても教えてください。

「ラップリンクス創業から間もない頃、無添加のドライフルーツ&ナッツバー「Kanae Bar(カナエバー)」を製造するBardonの創業者である勝田佳捺絵さんからお問い合わせをいただきました。まだ創業前の商品開発の段階で、Kanae Barを作って販売する上でオリジナルパッケージを作りたいというご相談でした。電話でお話した後、パッケージの手書きデッサンを持って茨城県から石川県まで訪ねてくださったのが始まりです。

Kanae Barは、オーガニック、無農薬栽培、フェアトレード、砂糖不使用など、材料・仕入先・製法にとことんこだわったナッツバーですが、素材の配合や味の異なる多くの種類があり、中身ごとに柄の異なるパッケージを作りたいというご要望でした。通常のコンバーターは最低発注量が多く、小ロット多品種の対応が難しいので、インターネットで探して弊社のホームページを見てくれたようです。当時、これだけの種類を細かくかつキレイに印刷できるのはHP Indigoデジタル印刷機くらいだったと思います。大量に作るグラビア印刷と比較するとどうしても単価は高くなりますが、こだわりのある商品とその価値に見合う包装ということで、HP Indigoデジタル印刷機によるオリジナルパッケージが誕生しました。ナッツの酸化を最小限に抑えるため、光を遮断したアルミ蒸着タイプの包装材を使用し、種類ごとに異なるデザインのパッケージを印刷しています。1回の発注量は当初1万枚で、種類ごとの印刷数量は自由に設定してもらいました。

当初のパッケージはもっとシンプルなものでしたが、その後著名なデザイナーによって、種類ごとに全て柄の異なる現在の美しいパッケージへと進化しました。今では大変人気のKanae Barですが、創業以来ラップリンクスの大切なお客様としてパッケージをご提供しています。個人事業主や小さなブランドオーナーのご要望もできる限り具現化してビジネスを支えるパートナーでありたいと思います」

生産機はHP Indigoデジタル印刷機のみ、成功のポイントは得意分野への注力と協業体制の構築

―― デジタル印刷に特化してビジネスを展開されていますが、デジタル印刷が得意とする分野をどのようにお考えですか?

「デジタル印刷は、大量生産のグラビア印刷よりはどうしても印刷単価が高くなりますから、少し価格が高めでも、価値を感じてもらえる商品とは相性が良いと思います。また、通常、印刷会社では版の保管期間を最終受注から1年や2年と各社で決めています。膨大な版を保管すると管理も大変ですし費用もかかりますから、一定期間リピートがないと落版してしまうわけですが、新しく版を作る際に、1年後に落版が予想される場合は、割高になっても最初から版が不要なデジタル印刷を使用されるケースもあります。

また、マーケティング戦略上、パッケージデザインを頻繁に変更したり可変にしたりすることで販売促進につなげたいという商品は、デザインごとに版が必要となるグラビア印刷よりもデジタル印刷が向いています。全国展開するものはグラビア印刷の方が量販によるコストメリットは高いのですが、地元密着型のお土産品や限定品などはデジタル印刷との相性が良いのではないかと思います。

加えて、デジタル印刷は必要な分だけ印刷できるので、廃棄も少なく環境負荷の低い印刷です。先ほどご紹介したKanae Barの『地球にも人にも優しい』というコンセプトの商品とも調和しますし、環境意識の高いブランドオーナーやエンドユーザーの意向をサポートできるというメリットもあります」

―― 印刷業界でのつながりや協業はありますか?

「グラビアコンバーターでは対応しづらい1000〜2000枚などの小ロットのパッケージ製造を請け負ったり、こちらからは大ロットをお願いしたり、グラビアコンバーターとは持ちつ持たれつです。

HP Indigoユーザー同士の協業もあります。当社ではできない広幅の印刷を対応してもらったり、高度な技術が必要なサンドウィッチプリンティングやチューブ状の原反への印刷をこちらで対応したり、注文が殺到した時に協力したりと助け合っています。

グラビアコンバーター同士は競合のため、通常横のつながりがあまりありませんが、HP Indigoデジタル印刷機ユーザーは、HP主催のイベントやユーザー会での出会いを通して協業があるのが面白いですね。デジタル印刷はまだまだ未開の地ということもあり、お互い知恵を出し合って助け合おうという意識があるのかもしれません」

コロナ禍での苦労と挑戦、今後に向けたDXへの考え方と譲れないポリシー

―― コロナ禍ではどのような苦労がありましたか?

「オリジナルラベルの天然水は、イベントに特化した商品なので、コロナ禍では新規のお問い合わせが一切途絶えてしまいました。日本酒も今は一升瓶を買う家庭は減り、仕入れるのは主に飲食店ですから、需要の落ち込みに比例してラベルの生産量も減ってしまいました。日本酒はインバウンドのお土産需要も多かったのでコロナの影響は大きいです。

ラップリンクスは売上の8割をシュリンクラベルが占めていますから、コロナ禍で売り上げが1/3にまで落ち込んだ時もありました。とにかく緊急事態宣言が明けるまでは本当に大変でした。今年の10月になってようやく少しずつ注文が戻ってきましたが、私自身はコロナ禍で苦しい時も基本的には普段と変わらないように社員と接し、行政の雇用助成金を活用して給与に影響が出ないようにしました。そして、感染状況が落ち着き経済活動が勢いづいてきたときに備え、今年の5月から新たに東京に拠点を設けて営業活動を拡大しています。いざ動こうとした時に気心もわからない人と一緒に仕事はできませんから、先を見据えて協業できそうな人や会社と接点を持ち、人間関係を築いておくことは大切です。

Zoomなどオンライン会議は便利ですが、やはり直接会うのとは違います。画面越しではなかなか気軽に余計な話もできないので、オンラインでは「ついで仕事」が一切なくなりました。日頃から直接顔を合わせて会話をしてこそ生まれるビジネスも多いと感じており、それが拠点を拡大した理由の一つです」

―― Webを開設してお客様を呼び込むというDXを早くから実践されていますが、オンラインで印刷の発注を可能にするWeb to Printや自動化についてはどのように考えていますか?

「Web to Printやオンライン決済はもともとやるつもりはありません。それは、水という飲料品を取り扱うという責任を大きく感じているためです。どういうお客様がどのように商品を使われるのか、お客様とのやり取りや入稿データを見て初めてわかることもあります。確かに、自動入稿・オンライン決済ができれば便利かもしれませんが、自動化してしまえば、しっかりとコンプライアンスチェックをして内容に責任を持って引き受けることができなくなってしまいます。たとえば、ラベルに反社会的なことや法令に抵触するような内容が書かれていれば、最終消費者はもちろん、天然水の製造元にも迷惑がかかりかねません。どんなに小さいロットであっても、飲料を取り扱っている以上、きちんとやり取りした上で内容を確認し、信頼できるものだけを世の中に出したいのです。小さい母体でやっているからこそ、信頼は絶対なので、石橋を叩きながら地道にやっていきます」

―― 手取社長が大切にしていること、心がけていることを教えてください。

「人と人とのつながりは大切にしています。1つはお客様とのつながりです。小さい企業の苦労はよくわかりますから、どんなに小さな企業や個人のお客様ともきちんと向き合い、良きパートナーになりたいと思っています。ご相談だけでもお受けしますし、時には、数年ぶりに2度目のリピートオーダーをくださるような方もいて、ご縁の大切さを感じています。

2つ目はビジネスパートナーとのつながりです。たとえば、ペットボトルのシュリンクラベルは、輸送時の摩擦などで納品時にラベルが剥がれてしまうという不良が発生することがあるのですが、当社は、創業当初からお付き合いのあるシュリンクラベル・キャップシールの製造会社から技術的な知見をもらい、印刷時に工夫を施して専門の加工業者で接着することで不良の起こらない高品質なラベルを提供できています。それがうまく行ったことで、その製造会社ではデジタル印刷のシュリンクラベルも営業してくれるようになり、パートナーシップがあってこそのビジネスだと感じます。地元のグラビアコンバーターや加工業者とも補い合ったり助け合ったりの関係ですから、しっかりとした仕事をするために、お互いが良き関係であることはとても大切です。

3つ目は社内のつながりです。小規模な会社なのでよく冗談を言い合うアットホームな雰囲気ですが、一生懸命で前向きな人達が集まっています。技術的には、加工のパートナー含めてプロの集まりなので、自信のある商品だけを提供しています。元々製版業を長らくやって来ましたから、社員も印刷やパッケージ制作の基本技術については熟知していますし、HP Indigoデジタル印刷機のオペレーターは、パッケージの製版作成に携わっていましたので、文字の細かい表示まで校正チェックができ、そのきめ細やかな対応がお客様に喜ばれています。自動化されたWeb to Printとは違った付加価値として、今後も痒い所に手が届く対応を続けていきたいですね。最終消費者はもちろん、発注者、ビジネスパートナー、そして自社の社員を幸せにする、そんな仕事を続けていけたらと思います」

関わる全ての会社や人を大切にしたい、取材から見えたラップリンクスはそんな想いを紡ぐ会社である。その社名に込められたとおり、ラップリンクスは人と人とのつながりを大切に「包装でつながる」ことを、実直にまっすぐに実現している。

誰しもが時代の潮流に翻弄される。印刷業界においてもDXは必須だ。しかしながら、信頼を築くという点において一切の妥協をせず、デジタル化すべきところは積極的に推進し、新分野を切り拓く挑戦をしながらも、丁寧な職人仕事として残すべきところはしっかりと見極める。その軸がぶれないこと、そして誠実な仕事を積み重ねることでラップリンクスの価値は生まれているのだろう。それは時代が変わっても求められ、きっと色褪せることはない。

HP デジタル印刷機
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