2020年5月12日実施

どうなる?

Withコロナ時代における印刷会社の人とビジネス

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オンラインライブ配信レポート

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新しいウイルスの出現により、人々の生活様式は大きく変わりつつある。世界中の人々の意識を変え、経済活動にも大きな影響を及ぼしている。世界を取り巻く現在の環境を、「オン・コロナ」「ウィズ・コロナ」「ポスト・コロナ」の3段階で捉え、それぞれのフェーズで何をすべきか深く考え、実行考察する。今、印刷業界で何が起きているのか?デジタル・トランスフォーメーションにはどのように取り組むべきか?そして今だからこそ準備すべきことは何か?変革を迫られる印刷業界で、計らずも突入したコロナ時代を見据え、次の一手を業界のスペシャリストが熱く議論した60分のオンラインライブをダイジェストでまとめてみた。

今、印刷業界に何が起きているのか?

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新型コロナウイルスの影響で人々は家にこもり、国内外の多くの産業が打撃を受ける中、印刷業界も決して例外ではない。しかし、こうした逆境も裏を返せば、ビジネスのやり方を見直すチャンスではないだろうか。そして、今だからこそ自分たちにできることをしたい、と立ち上がるHPデジタル印刷機ユーザーの動きも見られる。HPが医療用フェイスガードの図面を起こし、全世界のIndigoユーザーに配信したところ、さまざまな国のユーザーが医療従事者を支えようとするる動きが出ている。日本でも、大洞印刷がいち早く、HP提供デザインを日本人向けに改良し、フェイスシールドを提供開始した。フジプラスは、ソーシャル・ディスタンスを明示するフロアシールを制作し、マージネットは、感染拡大防止の啓蒙や飲食店を応援するテイクアウトのポスターをHP Indigoで素早く印刷し広く配布している。大和美術印刷は、玄関の置き配ステッカーを開発、同時に新型コロナ封じとして流行の「妖怪あまびえ」を即座に取り入れたステッカーを展開した。精工は、工場がある高知県の市民にマスクの抗菌シートを無償で配布するなど、数々のHP Indigoユーザーたちが厳しい状況下でスピーディな行動を起こしている。

危機的な状況を乗り越え、新しい時代を生き抜くために、新型コロナウイルスにおけるビジネス環境を3段階で捉えてみる。まず、緊急事態発令下の「オン・コロナ」では、キャッシュの確保や今後の見通し予測が重要となり、それが緩和され限定された状況下でオペレーションが始まる「ウィズ・コロナ」では、どこで利益を確保できるかの見極めが、そして「ポスト・コロナ」では、ニューノーマルとして新しい働き方やビジネスモデルをどう作っていくかが重要になると考えられる。「オン・コロナ」を経験し、さまざまな無駄や無理が明白になり、サステナビリティの重要性が浮き彫りになった。これからは、印刷業界においてもビジネスのあり方において二極化が進み、デジタル・レディな会社が、新しいビジネスを作っていくことが明らかになりつつある。

ロックダウン(都市封鎖)されたイギリスでは、家の中にいる孤独感を解消するため、これまで以上に人と人とのつながりを求め、パーソナライズされたグリーティングカードを贈り合っているという。その勢いは、クリスマスシーズンをも上回るというのだ。人々は街に出ることなくオンラインで注文し、非デジタルなつながりであるはずの手紙が、デジタル印刷によって人々の手に届けられている。人々が家にこもるようになって、一時はビジネスが急落したものの、このようにオンラインで需要に応える準備ができていれば、ニーズの変化によるマーケットの動きに即座に対応できる。このケースからもわかるように、人は動かなくても、物や情報が動けばビジネスになる。デジタルによるビジネスが真の実力を発揮する今、印刷業界も多分に漏れず、コロナウイルスによって本来やらなければならなかったことが加速していると言える。

印刷業界のデジタル・トランスフォーメーション

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印刷業界でデジタル・トランスフォーメーション(DX)と言えば、デジタル印刷、Web to Print、インフラ、IoT、AI、データ経営など、さまざまなキーワードで議論されている。しかし、根本的なフィロソフィーの重要性を見落としていないだろうか。何のためのDXで、そのために何をするのか?単純にインフラが整っていれば良いという訳ではなく、企業は、確固たる企業理念の上にデジタルをどう活かすか考えていくべきだろう。

一方で、DXには、経営効率を向上させるという側面と、新しいビジネスを創出するという2つの側面がある。言い換えると、工場内での生産を中心とするバックエンドと、販売・マーケティングを中心とするフロントエンドのDXだ。これらを一緒にするのではなく、バックエンドのインフラを整えることと、インフラの基礎力を最大限に活かす応用サービスや付加価値戦略とを分けて考えるのが望ましい。

印刷業界に影響を及ぼすブランドオーナーの動きに着目してみる。このところ、Webに対する強化策や投資の準備を進めているブランドオーナーが目立つ。消費者は外出が規制される中、今まで以上に能動的にデジタルで情報収集し、それらの情報を選択する力を日に日に高めている。こうした背景を受け、あらゆるビジネスがこの先Web(デジタル)ファーストのビジネスモデルになることは疑いようがない。新型コロナウイルスがDXの流れを後押しし始めた今、もはや変革実行の有無を議論している時間はないだろう。

お金の使い方も変化しつつある。チラシをやめ、年間億単位もの予算を次は何に使うべきかとディスカッションを始めたブランドオーナーもいる。従来の販売促進的なバラマキではなく、お客様と正しくつながるためのメディアにレベルアップして顧客関係を強化したい、というニーズが高まっているのだ。新規顧客開拓が難しいため、短期的な新規獲得キャンペーンの発想から転換し、一人ひとりの顧客視点で長期的な価値と収益を考える「ライフタイム・バリュー」を上げることが市場命題となっている。それをなくして利益を生み出すことはできない。そのためには、単なるモノやコト売りではなく自社の理念、目的、自分たちに何ができるのかといった、ブランドストーリーを共有することが重要ではないだろうか。ビジネスのやり方が変化している以上、これまでのやり方を見直し、新たな利益獲得モードに持っていくことが大切だ。

顧客接点でデジタルと非デジタルの世界をどう組み合わせていくかにも注目すべきである。ブランドストーリーを顧客に伝える手段は決してデジタルだけではないからだ。

印刷とは、人の想いを形にすることだ。心に響くメッセージをどう伝えるか――リアルとデジタルを融合した複合チャネルを考える際、ブランドオーナーはデジタル印刷がもたらすワクワク感や可能性をちゃんと認知しているだろうか。印刷業界は、既成概念にとらわれず、顧客によりそったコミュニケーションを提案していくことが大切だろう。

セルフ・ブランディングを高める

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オン・コロナから、わずか数ヶ月で社会環境は大きく変化した。ポスト・コロナにおいて後も、行動変容はニューノーマルとして定着すると考えられ、人々の行動変化は、意識や価値観の変化へとつながっていくだろう。では、ポスト・コロナの世界を見据えて、今私たちは何をすべきなのか。

まず、これからは、印刷物ありきで考えるのではなく、生活者ドリブンで考えていく必要があるだろう。印刷業界を取り巻く環境や人々の意識が変化する中で、印刷物がどのように使われたらもっと豊かで深いつながりができるのか。それを実現し、支えるために印刷会社にはどのようなインフラやサービスが必要なのか。そして、その中で仕事をする人は何を考え、どう行動すべきだろうか。今、この瞬間にもできることは、社会で何が起きていて、ビジネスがどう変わっていくのか、さまざまな分野から情報を集め、多くの人の意見を聞き、それを自分の資産として価値化していくことである。一旦立ち止まって、スキルやキャリアについて考えてみることも必要かもしれない。印刷業界内の業務に限らず、それを取り巻くあらゆることに目を向けることが大切だ。例えば、一見関係がないように思えても、世界のエコシステムの知識を身に付けることも有益だろう。つまり、自分の強みや、それを活かして何ができるのかを言えるようにしておくためには、セルフ・ブランディングが大切なのである。今は、業務に追われるだけではなく、人として自身のブランドを作っていくことに目を向けたい。厳しい状況に置かれ、閉塞感を抱える日々を過ごしていても、決して思考停止に陥ってはいけない。人が動かなくとも常に変化は起きているのだから。

今後、どこで印刷の価値を高めていけるのか。それが見つかれば、次はそのためにどうするかを考えればいい。同じ思想を持つ人が集まって想いを強め、さまざまな経験を乗り越えた印刷のプロたちがつながり、コミュニティとしてお客様に満足したサービスを提供する。このほんの数か月で電子会議ツールなどを活用し、ネットを介して誰とでも会話ができることを全員が体感しその可能性を知った。だから、このような状況下でも積極的に人と会話をするようにしたい。これまで進んできた印刷の再定義を価値やブランドと合致させれば、きっとデジタル印刷の会社にはチャンスになるはずだ。

変化を正しく知り、変化を受け入れ、変化に対して準備する――そうすれば、マーケットが動いた瞬間にアクションを起こせる。これは、コロナの時代を生き抜く私たちの教訓となるだろう。

<ライブ配信を終えて>

コロナ禍で私自身が考えていたことをまとめ、提示し、そして印刷業界のプロの2人に語っていただいた。この内容が印刷業界人に受け入れられるかどうか不安だったが、アンケートを見て少し安心している。人生の多くの業務をマーケティングに費やしたことで世の中の変化に敏感になることができたが、今のこの変化以上の変化を感じたことはこれまでにない。マーケティング業界も印刷業界も全体が本気でデジタル・トランスフォーメーション に取り組む時代が日本でもようやくやってきた。私自身もセルフ・ブランディングし、これら2つの業界と人の変化に貢献できる人でありたい。私たちが、HPが、志向する幸せに満ちたこれからの世の中を伝え、日本の印刷業界を世界で戦える業界にしていくための活動としてこのチャネルを発展させていくことを改めて誓う時間となった。仕事も学びもオンラインになった今、立ち止まっている時間はない。

株式会社 日本HP 甲斐 博一 記

SPEAKERS

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株式会社Goof CEO
岡本 幸憲

1996年、デジタル印刷の可能性に魅了され印刷業界に転職。ITテクノロジーが進化・成熟する中での紙・印刷の在り方を追求し続け、オンデマンド出版、パーソナライズドDM、フォトブックなど、様々なプロジェクトに参画。特にデータと連携する印刷プロダクションの自動化スペシャリストとして多くのプロジェクトの成功を支援。2012年、『すべてのITと連携する紙』『紙媒体のアプリケーション化』をテーマに、さらに上流レベルでのイノベーションを目指しプルキャストを共同設立。(現:グーフ)エンタープライズレベルにてWeb To Print及びデジタル印刷テクノロジーを活用した事業やサービスの企画・デザイン・プロジェクトマネジメントを担当。現在では国内に留まらず、グローバルなプロダクション連携の実現を目指し活発に活動。印刷テクノロジーの進化と共に実現が可能となるダイナミックな企画で、データドリブンな時代だからこそ活きる紙・印刷を追求し続ける。

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株式会社 日本HP
デジタルプレス事業本部 カテゴリー本部 本部長
山田 大策

日本ヒューレット・パッカード(株)へ入社後、製造・流通業向け基幹システム事業におけるセールス、ビジネスディベロップメントを手掛ける。2008年に同社プリンティング事業へ異動、HP Indigo デジタル印刷機のマーケティング活動を通して、印刷業界におけるデジタル化の推進に従事。現在は、国内におけるIndigoビジネスのカテゴリーマネジメントの傍ら、本テクノロジーで先行する海外パートナー、国内印刷事業社と連携を取り、新たな顧客体験を創出する印刷メディアの開発に努めている。

MODERATOR

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株式会社 日本HP
経営企画本部 部長
甲斐 博一

IT業界においてマーケティング職20年。B2C、B2Bそれぞれの特徴を活かす独自のマーケティング施策を実施。途中eコマースビジネスの立ち上げにより、本格的なデジタルマーケティングを経験。以降、ブランド開発からコンバージョンまでフルファネル設計と段階ごとのクリエイティブ開発、評価を得意とする。現在はこれまでに得た知見をもとに、アフターデジタルにおける体験の時代における付加価値創造マーケティングを追求中。AIのマーケティング活用や産学連携の活用法にも取り組む。

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