2019.04.05
企業によっては、情報を「クラウドへバックアップしている」というところもあるでしょう。しかし、「クラウドは怖いからできれば使いたくない」という意見が一定数あるのも事実です。そこで、この記事では、データのバックアップをクラウドで行う意味やメリット、注意点、さらに対処法などについて紹介します。これを読めば、データをクラウド上でバックアップすることへの意識が変わるかもしれません。
そもそも、どうしてクラウドでバックアップを行うのかというと、それにはきちんとした意味があるのです。データというのは、企業によって差はあれど、どこでも膨大な量になってくることが多いでしょう。そして、データやファイルといったものの量は、日常的に業務を進めていく中でどんどん増えていきます。しかも、もし事業を大きくするとなると、バックアップの対象となるデータが急に増加することになるのです。そのため、バックアップ先の容量を増やしたり、サーバーを増設したりといった対応をしなければならないこともあるでしょう。もちろん、こうしたサーバーの数が多くなればなるほど、管理に関するコストや手間が増えることになります。
中小企業では、少ない人数で日常的な業務に加えて、こうした作業を担当することがほとんどです。本来の業務にプラスして作業を行うため、とても多忙になってしまうことがイメージできるでしょう。そのため、管理しなければならないサーバーが増えると、「バックアップが漏れていた」などということが出てくる可能性もあります。その点、クラウドでデータを管理すれば、容量を追加することも簡単で、ミスも少なくなるのです。こうした理由から、クラウドでバックアップを行う企業が増えているのです。
バックアップをクラウドで行うことは、災害時にも役立ちます。クラウド上にバックアップを行っておけば、災害時には迅速に対応することが可能となります。たとえば、これまでのようにディスクなどによる管理方法だと、復旧にとても時間がかかるという状況がありました。また、ミスが出やすい可能性もあるのです。具体的には、まず、そもそもきちんと引継ぎをして管理していないために、トラブルにつながる可能性があります。それから、しっかりと管理されていたとしても、手順を間違えて完全に復旧できないことも考えられるでしょう。それから、確認に時間がかかってしまったり、ディスクの情報が消されてしまう可能性もあるのです。
しかし、クラウド上に待機サーバーを設置しておけば、こうした心配はいっさい不要です。バックアップをクラウドで行えば、本来のデータとは別に、クラウド上にデータを保管しておくことができます。そのため、もし間違えてデータを消してしまっても、クラウドに保存してあったものからデータの復旧が可能なのです。また、クラウド上に待機サーバーを設置し、災害時にはクラウドへの切り替えを行って業務を続けることもできます。そのため、災害時でもすぐに使うことができるのです。
クラウドへのバックアップを行ううえで一番心配に思われるのが、安全性です。しかし、実はこの安全性を高めるための方法というものがきちんと存在します。それは、セキュリティ対策を行うことです。具体的には、暗号の長さや方式、保存する場所に配慮した「暗号化」と、暗号鍵を使う方法です。まず、暗号の長さというのは、もちろん長い方がいいでしょう。なぜなら、この長さが長いほど復号されにくいからです。それから、方式については、こちらは暗号化できればいいというものではありません。暗号化方式にも信頼性のあるものが存在するため、それに気を付ける必要があります。また、場所についてですが、通信を出す前には暗号化するようにしましょう。保存するときも暗号化したまま行い、復元するときについては、復号をローカルで行います。
このように、ユーザーが使っているローカル機器以外については、データはいつも暗号化されているようにするのが重要です。それから、暗号鍵についてですが、これは「どこに保存されているか」ということが非常に大切になってきます。なぜなら、それは「復号は誰ができるのか」ということにもつながってくるからです。ほとんどのクラウドストレージでは、クラウド側がこの暗号鍵を持っています。しかし、それではデータが見られてしまうという危険性があるのです。よって、暗号鍵はローカル側が持っているのが望ましいでしょう。もしくは、暗号鍵にアクセスできるのがユーザーだけになるような仕組みを持っているのがベストです。
安全性の高いクラウドとして、「暗号鍵」があるサービスを利用することが大切であると言えるでしょう。暗号鍵があり、暗号化されているクラウドへのバックアップ方法は、企業の利用に耐える安全性を持っているのがポイントです。もし、この暗号鍵をクラウドが゙持っているような場合には注意した方がいいでしょう。なぜなら、クラウド側が企業のデータを見ることができる可能性があるからです。そのため、「暗号鍵はクラウドが保管していないこと」が重要であると言えるでしょう。暗号鍵について明確になっていないようなところは、避けるようにしましょう。暗号鍵の有無は、安全性の高いクラウドの証のようなものなのです。
ただ、暗号鍵のことが不安だからといって、自分たちでクラウドへのバックアップを構築する場合は注意が必要と言えます。なぜなら、設定を間違えてしまうと、データが世界中に公開されてしまう危険性があるからです。そのため、設定はくれぐれも慎重に行い、操作できるのも少人数の決まった人だけにとどめておくのがいいでしょう。
安全性の高いクラウドとして、「データのログが残る」サービスを利用することも大切です。バックアップクラウドは、データについての履歴をログとして残すことができます。このログというものにはいくつかの種類があり、ログインログや操作ログなどが一般的です。ログインログは、「いつ・どこから・どの端末を使ってログインしたか」というものになります。そして、操作ログは「いつ・だれが・どのファイルを操作したか・ダウンロードしたか」といったものです。
クラウドサービスは、場所を選ばず「どこからでもアクセスできる」というところがメリットでしょう。しかし、それはたとえば、自宅のパソコンなどからも利用できるということなのです。そのため、「だれが・いつ・どこで・どのようなデータを利用したのか」といった履歴を追える仕組みがあることは非常に重要になってくるでしょう。この「データのログが残る」サービスを利用することで、サーバーから情報を持ち出すなどの犯罪があったとしても、後から検証することもできるのです。そのため、ログが残るサービスを選ぶことも非常に重要となります。
企業側が求めるクラウドサービスには、いくつかの特徴があります。それらの特徴を踏まえたうえで、企業がクラウドサービスを選ぶときのポイントについて紹介しましょう。まず、「企業が必要とする容量と、料金との兼ね合いで検討する」という点です。ほとんどのクラウドサービスでは、料金の異なるプランがいくつか用意されています。そして、それは容量によって違うのです。ここで気を付けてもらいたいのは、値段が一番安いから、という理由だけでプランを選ぶのは危険だということです。なぜなら、そのような理由で一番安いプランを選ぶと、使い始めるとあっというまに容量が足りなくなる、といったことが考えられるからです。必要な容量をきちんと把握し、予算との折り合いをつけたうえでプランを選ぶといいでしょう。
それから、「共有のしやすさはどうか、権限の管理について比較する」という点も大切です。クラウドへのバックアップは、一般的に、多くの人で共有するものではありません。そのため、「大人数で共有する」ということは考慮しなくても問題ないでしょう。なんのためにクラウドサービスを利用するのか、という目的をしっかり考え、権限の管理について決めるようにします。また、「時系列でデータの管理ができると便利」というのも忘れてはいけません。基本的にデータは上書きされていく仕組みですが、場合によっては、前に使っていたバージョンが必要になることもあるでしょう。そんなとき、時系列にデータの管理ができれば安心となります。間違ってデータを消してしまったときも、データを呼べるようなものであれば、なお良いでしょう。
災害時の企業データについては、検討するべきポイントというものがいくつかあります。まず、災害時において、重要なデータの復旧や保存ができるかどうかを検討するということです。災害時でも、企業によっては通常と同じように業務を進めていかなければならないところもあるでしょう。そのため、災害時でもデータの復旧や保存ができるというのは非常に重要なポイントなのです。そのような企業にとって、業務への影響を最小限にし、業務が中断したりストップしたりしないように検討することは、とても大切だと言えるでしょう。
また、バックアップに要する時間や転送時間は業務時間内に終了できるか、というのも検討すべきポイントです。バックアップをするたびに業務時間いっぱいかかるようでは、とても実用的とはいえません。どれだけ膨大なデータであっても、所定時間内にバックアップが完了できるようなシステムや方法についても検討しておくべきでしょう。
クラウドへバックアップを行うメリットは、いくつかあります。まず、導入する手間が簡単だということが言えるでしょう。企業はシステムなど何も構築する必要はなく、ただサービスに申し込むだけていいのです。手間をいっさいかけることなく、しっかりしたセキュリティを備えたバックアップ環境を手にすることができます。また、クラウドへのバックアップは作業効率がとても良いです。そのため、セキュリティ担当者が一人でも対応できるというのもメリットと言えるでしょう。
そして、容量をすぐに増やすことができるうえ、どこからでもアクセスできるのもメリットの1つです。企業のデータというのは、日々増えていきます。新しく拠点を増やすということもあるでしょう。そんなときでも、ただ申し込みをするだけで簡単に容量を増やすことができるのです。また、クラウドへバックアップをしておけば、万が一何かあったときでも、社外にいる関係者が事業を継続して行っていくことができます。
クラウドへバックアップするときには、気を付けなければならない注意点があります。というのも、クラウドへのバックアップは、データが多くなればなるほど、通信速度が遅くなる可能性があるのです。そうすると、その間は何もすることができず、作業がストップしてしまうことになります。また、最悪の場合にはバックアップがうまくできていないことも考えられるため、できれば大量のデータをバックアップするのは避けたいものです。
そのようなときには、クラウドへ保存するデータを最小限にしたり、社内サーバーに保存してから同期するなどの方法を取ったりするといいでしょう。こうすることで、バックアップ時にかかる負荷を小さくすることができるのです。
企業がクラウドへバックアップを行うことについては、不安の声が多く聞かれるのも事実です。ですが、クラウドへのバックアップはメリットがたくさんあることも、また事実でしょう。そこで、不安を感じているときは、まず「何が不安なのか」ということを明確にするようにするのがおすすめです。そして、そのうえで「企業が必要とするサポートを提供するサービスは何か」ということを検討してみるといいでしょう。漠然とした不安感があったけれど、しっかりと調べてみたらぴったりなクラウドサービスがあった、ということになるかもしれません。
クラウドへのバックアップは、注意点にさえ気を付ければ、安全に利用することができます。しかし、それでも不安を感じる人はいるかもしれません。そのポイントというのは、企業によってさまざまでしょう。そこで、クラウドへバックアップを行うことに対する不安を感じているならば、まず「その不安は何か」ということを明確にすることが重要です。最初に、自分たちに必要なのはどのようなサービスか、ということをしっかりと把握します。そのうえで、その不安を払拭してくれるようなサービスを探すようにするといいでしょう。