2019.04.05
業務で使用するさまざまなデータは、システム障害などが起こり紛失すると大きな問題や損失につながる恐れがあります。企業で保有するビッグデータや機密データは、個人的なデータとは異なり、しっかりと保全しなければならないものです。そこで、バックアップを行わなかった場合のリスクと、データの自動バックアップ方法について紹介します。
「デジタルデータ利用に関する実態調査」によると、約80%のユーザーが定期的にバックアップを行っていない事実が明らかになりました。頻繁にデータをバックアップしているユーザーは21%、「行ったことはある」は58%、「行ったことはない」が20.7%という結果です。データそのものが個人の所有物であれば自己責任で済むものの、業務システムのバックアップを行わなずにデータが消失すると多大な損害を出す恐れがあります。
業務中、システム障害などのトラブルが発生した際、バックアップを行わなかったためにデータを復旧できない、システムの使用開始に時間がかかるなどの問題が起こります。データの回復やシステムの再開に問題が起こることにより、取引業務や顧客のアクセスができず、社会的信用の失墜につながるでしょう。データを安全に保管していないことが明るみになり、重要なデータの管理体制を問われることとなるでしょう。また、見積書などはデータで送付したり、契約や受発注など重要な書類もメールで送受信している企業が多いです。メールが使用できない、データが損失することなどによって業務を行えない状態となれば、社会的信用を失うだけではなく、賠償責任が生じることもあります。
業務に使用するシステムの停止によって、営業活動の停止となる可能性もあるのです。企業で使用されているITシステムは、在庫・生産管理、経理会計、さまざまなコミュニケーションツールなどが挙げられます。ITシステムが停止することによって、企業全体の業務が完全に停止するリスクも高くなります。ITシステムは、データを送受信、保有することで成り立っているため、データが失われることは営業活動の停止にも直結するといえるでしょう。
さらに、バックアップを行わず、重要かつ膨大なデータを失えば、競争力も低下します。データを分析して活用するケースは多く、保有しているデータが競争力の向上にもつながっている企業は非常に多いためです。ほかにも、長期保存が義務付けられているデータを損失すれば、コンプライアンス違反に該当します。e-文書法や、日本版SOX法といった、企業のデータに関連する法律が存在し、企業が保有するデータの保護を行うことが定められているのです。加えて、個人データの安全管理措置も法令で義務付けられています。実例として、システム障害で個人データが失われ、バックアップもないためにデータを復旧できず、該当する個人はサービスを受けられなくなったケースも多くあります。
バックアップを行わないことは、非常にリスクが高いため、トラブルが起こっても迅速に対応できるよう、システムのバックアップを行うことが重要です。サーバシステムは、OSのみではなく、それぞれの環境ごとにアップデートパッチが適用されている場合や、業務ごとにアプリや設定が行われています。システム障害からスムーズに復旧するために、アプリや設定を再度行うのは時間も手間もかかる作業です。そのためにも、万が一の事態に備え、日ごろからバックアップを行うことが推奨されています。
バックアップの方法には、手動と自動の2種類がありますが、実際に行う際は自動バックアップのほうが便利です。手動バックアップは、手作業で行うバックアップであるため、忘れてしまうことがあります。また、バックアップ作業には手間と時間がかかることもデメリットです。一方、自動バックアップは、自動で行われるためバックアップを忘れる心配がありません。定期的にバックアップが行われるため、突然パソコンが壊れた場合にもデータの消失を防げるでしょう。
自動バックアップはあらかじめ設定したタイミングで、設定したバックアップ先へ定期的に行われます。復元ポイントというバックアップファイルが作られ、自動でバックアップされることが特徴です。
Windows の自動バックアップには、バックアップと復元、ファイル履歴、復元ポイントで自動バックアップを設定するといった3つの方法があります。1つ目が、バックアップと復元で自動バックアップを行う方法です。まず、バックアップ先の外付けHDDを接続し、検索ボックスに「バックアップ」と入力したら「バックアップと復元」をクリックします。
次に「バックアップの設定」をクリックすると、バックアップを保存する場所の選択画面へ移るため、バックアップ先を選択して、「次へ」をクリックしましょう。クリックすると「バックアップの対象」が表示されるため、いずれかを選択して「次へ」をクリックします。「バックアップ設定の確認」が表示されるため、バックアップの場所・概要・日時をチェックするという流れです。設定をしたあとは「設定を保存してバックアップを実行」で自動バックアップ設定が完了します。
2つ目がファイル履歴で自動バックアップを行う方法です。HDDやUSBなどを準備したらパソコンに接続し、「スタート」ボタンをクリックして、「Windows システムツール」、「コントロールパネル」の順に進みます。次に「システムとセキュリティ」にある「ファイル履歴でファイルのバックアップコピーを保存」をクリックし、ファイルのバックアップコピーを保存しましょう。
「ファイル履歴」画面が表示されるため、外付けディスクやUSBなどであれば「オンにする」を選択します。使用できるドライブがないときや、ほかのネットワークやドライブを選択したいときは、左にある「ドライブの選択」をクリック。最後に、「利用できるドライブ」から保存場所を選択し、「OK」、「オンにする」の順に進み、「ファイル履歴はオンになっています」と表示されたら、一定時間待ちます。
3つ目が復元ポイントで自動バックアップを行う方法です。まず、コントロールパネルの「システムとセキュリティ」から「セキュリティとメンテナンス」を選択し、右下の「回復」ボタンをクリックします。表示メニューから「システムの復元の構成」を選択し、移動した画面で「構成」をクリックしましょう。クリックすると、復元ポイントを自動的に作成するための設定画面へ移るため、「システムの保護を有効にする」を選択して「OK」をクリックするだけで、復元ポイントが作成され自動バックアップ設定が完了します。万が一トラブルが起こった場合でも、復元ポイントを選択すればバックアップデータの復元が可能です。
Mac にはTime Machine と呼ばれるバックアップ機能が入っているため、Time Machine を利用してApp、や映像メールや書類、システムファイルといったさまざまなファイルを自動でバックアップできます。Time Machine にバックアップしておけば、Macで削除されたファイルであっても、バックアップファイルから復元可能です。また、MacのハードディスクもしくはSSDの消去や、交換を行った際にも復元できます。
Time Machine バックアップを行うために、外付けのストレージデバイスを用意しましょう。Macとデバイスを接続して「バックアップディスク」として選択すると、Time Machine が過去24時間、1時間ごとのバックアップ、過去1カ月分のバックアップ、過去のすべての月で1週間ごとにバックアップを行います。ただし、バックアップディスクの容量が上限に達すると、最も古いバックアップデータから削除されるため注意が必要です。
Macの状態によっては、外付けドライブを接続すると、ドライブを使用してTime Machine でバックアップを行うかどうかの確認メッセージが表示されます。メッセージが表示された場合は「バックアップディスクを暗号化」を選択して「バックアップディスクとして使用」をクリックしましょう。Time Machineで「バックアップを作成するためにこのディスクを使用しますか」といった確認メッセージが表示されないのであれば、手動でドライブを追加しなければなりません。
まず、メニューバーの「Time Machine」アイコンメニューから「Time Machine」環境設定へ進みます。もしくはAppleメニューから「システム環境設定」の順に選択肢し、「Time Machine」をクリックする方法も有効です。次に「バックアップディスクを選択」または「ディスクを選択」、「バックアップディスクを追加/削除」をクリックして、使用可能なディスクの一覧から外付けドライブを選択します。そして、「バックアップを暗号化」を選択し「ディスクを使用」をクリックしましょう。
もしも、選択したディスクがTime Machineのフォーマットになっていなければ、ディスクを消去するようにメッセージが表示されます。メッセージが出た場合は「消去」をクリックして進みますが、バックアップディスク上の情報は消去されることを認識しておくことも大切です。 バックアップディスクを選択すると、Time Machine定期的な自動バックアップが作られるようになります。
Androidで自動バックアップをするためには、まずホーム画面右上の「設定」をタップし、次に「自動バックアップの設定」を選択しましょう。また、「自動バックアップの設定がオフになっています」をタップした場合でも、次のステップへ進めます。次に「自動バックアップの設定」が表示されるため、「バックアップ対象設定」にあるバックアップ対象にチェックを入れ、モバイル通信とバックアップ先を設定を行う流れです。モバイル通信設定は、3G/LTE回線でもアップロードを行う場合に「Wi-Fi以外の動作を許可」にチェックをします。
Wi-Fi以外の3G/LTE回線でアップロードを行うと、パケット代がかかり、場合によっては高額な料金となるため注意が必要です。バックアップ先のフォルダ設定は、「選択」をタップして設定したうえで「フォルダ指定」にチェックをします。設定が完了すると、自動的にバックアップが行われ、バックアップ中は「設定」画面に「バックアップをしています」と表示されるため確認しやすいでしょう。Androidの自動バックアップのうち、アドレス帳をバックアップする際は、アプリを最新バージョンへアップデートしなければなりません。アプリの状態を確認してから、自動バックアップ設定を行う必要があります。
iPhoneでは、iCloudを利用する方法とiTunesを利用する方法があります。それぞれのバックアップ方法の違いを確認し、最適な方法を選択することが大切です。iCloudでバックアップを行う方法は、最初にデバイスをWi-Fiに接続します。自動バックアップができるのはWi-Fi接続時のみであるため、最初に接続しなければなりません。次に「設定」、「ユーザー名」の順にタップし、「iCloud」を選択して「iCloud バックアップ」をタップします。そして、「今すぐバックアップを作成」をタップし、バックアップが完了するまではWi-Fi ネットワークに接続した状態にしておきましょう。ただし、iCloudを無料で使用している場合、保存できるデータは5GBまでとなります。そのため、容量が不足するのであれば、iTunesのバックアップも併用する方法が有効です。
iTunes でバックアップを行う場合、まずは最新バージョンのiTunes にアップデートする必要があります。iTunes を開いたら、パソコンにデバイスを接続し、デバイスのパスコードの入力画面や「このコンピューターを信頼しますか」など確認メッセージが表示されるのであれば、画面の指示通りに進みましょう。iTunes に「iPhone/iPad/iPod」の表示が確認できたあとは、それぞれ選択します。iOS デバイスもしくはApple Watch 上のヘルスケアとアクティビティデータを保存する際には、バックアップを暗号化しなければなりません。暗号化は「デバイスのバックアップを暗号化」にチェックを入れ、パスワードを決めます。ヘルスケアとアクティビティのデータを保存しない場合は、暗号化せずバックアップを行えるため、「今すぐバックアップ」をクリックすれば完了です。
業務で使用しているパソコンやスマートデバイスは、すべて自動バックアップすることが可能です。自動バックアップは、手動バックアップよりも効率的であり、突然のトラブルにも対応しやすいといえます。それぞれのデバイスごとで設定を行う必要はあるものの、自動バックアップは1度設定をすればよいため、継続して手間や時間はかかりません。大切なデータを失わないためにも、自動バックアップを有効活用しましょう。