2019.04.05

スマートカードの役割と活用法とは?企業のセキュリティを強化しよう!

世界的に進んでいるキャッシュレス化に伴ってスマートカードが日本でも急速に普及しています。スマートカードのユーザーは一般消費者だけではありません。さまざまなシーンで使用され、実際に活用されています。たとえば、企業活動でスマートカードを採用することで、セキュリティを強化することが可能です。そこで、この記事ではスマートカードの役割や活用法について紹介します。

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1.スマートカードとは?

スマートカードとは、キャッシュカード大のプラスチック製のカードにICチップを埋め込んだものです。日本ではどちらかというと「ICカード」という名称で広まっていますが、英語圏では主に「smart card」または「chip card」と呼ぶ場合が多くなっています。内蔵されたICチップによって、カード内部での高性能な情報処理が可能になっています。同じような情報を記録するカードには、かつて磁気を活用した磁気ストライプカードと呼ばれるものがありました。しかし、スマートカードでは暗号化に対応しているものもあるため、磁気ストライプカードと比べてもセキュリティ面で安全性が高いとされています。暗号化することで不正なアクセスを防止し、データの改ざんや情報の抜き取りを防ぐ効果も期待できるのです。

また、スマートカードは記憶容量についても磁気カードに比べて大きく、とても機能性が高いことが特徴です。内蔵されているICチップの性能にもよりますが、スマートカードでは一般的には数KBから1MBほどのデータの記録が可能です。その他のカードと比べても記憶容量が大きいので、識別番号を記録させつつ、データの送受信が可能になるなど、さまざまな機能を付与することができるようになっています。

さらに、内蔵されているメモリの種類によっては、専用の装置を利用することで記録されているデータを任意のタイミングで書き換えられます。その一方で、読み出し専用のROMチップを内蔵しておけば、上書きができないスマートカードとして活用することも可能です。スマートカードは暗号化に対応しているだけでなく、利用者のさまざまなニーズにも対応している、安全性と機能性の両面で優れたカードだといえます。

2.スマートカードには2種類ある!

スマートカードには「接触タイプ」と「非接触タイプ」の2種類があります。接触タイプは、カードの端子を端末の読み込み部分に直接接触することでデータを取得するタイプです。読み込み装置に端子が触れると通電し、カード側の駆動回路への電力供給とデータの送受信を行います。端子の物理的な仕様などの技術面はISO/IEC 7816で標準化されています。各業界ではその基準に基づきながらデータの記録や送受信といったスマートカードの機能において大切な項目の標準規格を定めています。

接触タイプが一般的によく使われているのは、クレジットカードやキャッシュカードです。暗号化や個人認証が可能になり、安全性が高まったことで、従来の磁気ストライプカードから徐々に切り替えが進むようになりました。その他では、携帯電話を使用するにあたって必要なSIMカードや、ETCカードなども接触タイプのスマートカードが使われています。

一方、非接触タイプのスマートカードは基本的に無線通信でデータの送受信をしているのが特徴です。無線通信でデータの送受信を行うためスマートカードと端末の双方にアンテナが内蔵されており、微弱な電波で交信しています。非接触タイプのスマートカードは、カードと機器を接触させる必要がないため、スムーズな利用が求められる現場で利用されるケースが多いです。たとえば、交通機関のICカード乗車券やカード型電子マネーが挙げられます。また、運転免許証(ICカード免許証)や個人番号カード(マイナンバーカード)などにも一部採用されています。

接触タイプと非接触タイプは認証の方法こそ異なるものの、基本的な機能としては大差ありません。どちらかというと、ユーザーのニーズによって使い分けられているのが現状だといえます。

3.カード認証と個人認証の違いとは?

スマートカードの利用方法を大別すると、「カード認証」と「個人認証」に分けられます。カード認証とは、カードに付与されている特別な機能を利用するときに、カードそのものを認証するものです。一般的にイメージしやすいのは、決済などを行うクレジットカードでしょう。クレジットカードには、スマートカードに決済機能という特別な機能を付与してあります。しかし、ユーザーは読み取り装置でカードを認証しなければクレジットカードを利用できません。スマートカードにはさまざまな機能を付与することが可能なので、カード認証も幅広い分野で利用されています。どちらかというと、一般消費者へのサービス事業として利用されているケースが多く、流通やサービス、交通といった各分野で広く活用されているのが特徴です。クレジットカード以外にも各種のポイントカードやETCカードなどにも活用されています。

一方、個人認証はスマートカードを利用して利用者個人を証明することを目的としているのが特徴です。スマートカード内部に個人情報を識別するためのICチップを内蔵することで、利用できるようになります。実際の活用事例としては、社員証や運転免許証が挙げられます。個人認証はあくまでも個人の特定を目的としているため、あまり一般消費者のニーズは高くありません。むしろ、企業のセキュリティを高める目的で活用されているケースが多くなっています。

4.非接触タイプのスマートカードの実例

非接触タイプのスマートカードの実例としては、交通系ICカードが挙げられます。非接触タイプのスマートカードの特徴は、無線通信によるスムーズなデータの送受信です。そのため、特に利用者数の多い電車や地下鉄といった乗り物で活用されるケースが多く、通勤・通学時間帯の混雑を緩和するのに役立っています。交通系ICカードはスマートカードの代表格とされており、乗車券以外にも定期券や電子マネーとして利用されています。電子マネーも非接触タイプを代表するスマートカードの一種ですが、事前にチャージが必要なものとクレジットカード利用ができるものに分けられるのが特徴です。また、なかにはスマホからの利用に対応しているものもあり、スマートカードの多機能性がよく分かる事例だといえるでしょう。

非接触タイプが企業で活用されている事例としては、社員証が挙げられます。社員証を非接触タイプのスマートカードにして個人のIDを識別することで、入退室管理や勤怠管理が効率化できます。利用する社員側にとっても、入退室の際に毎回ID入力する必要がないので手間が減る点はメリットです。

5.接触タイプのスマートカードの実例

接触タイプのスマートカードが利用されている実例としては、キャッシュカードやクレジットカードが挙げられます。スマートカードの特徴のひとつはデータの暗号化に対応している点です。そのため、従来の磁気ストライプカードに比べて安全性が高まっており、スキミングなどの被害に遭いにくくなっています。また、非接触型のように無線で通信する必要がなく、直接端末にデータを読み取ってもらう方式であるため、データの不正アクセスをされる危険性も少ないです。さらに、磁気ストライプカードに比べて偽造するのが非常に難しくなっています。そのため、交通系ICカードや電子マネーよりも高額の利用をする機会が多く、より安全性が求められるキャッシュカードやクレジットカードに多く利用されているのです。

その他にはETCカードも接触タイプのスマートカードが活用されている事例として挙げられます。ETCは車載器と料金所のアンテナで交信することで機能しています。しかし、ETCカードは車載器に挿入することでデータを読み取っているので、スマートカードそのものは接触タイプが使われています。ETCカードにスマートカードが採用されている理由も、基本的にはクレジットカードやキャッシュカードと同様で、セキュリティが高いことが評価されているからです。

6.企業での一般的なスマートカードの導入例

一般消費者向けのサービスとして、すでに幅広く使われているスマートカードですが、一部の企業では上手に活用して業務の効率化に役立てているケースもあります。たとえば、社員証に利用する場合です。スマートカードにはさまざまな機能を付与することが可能なので、社員証をただの身分証にはせずに、オートロックの部屋へ入るためのカギにすることもできます。それによって鍵の管理の手間がなくなりますし、同時に入退室の管理をすることも可能です。社員証に認証ナンバーを記録しておけば、「誰が、いつ、どの部屋に入ったか」をデータとして保存しておくことができるので、セキュリティの向上につながります。

また、個人ごとの入退室の管理ができるということは、勤怠管理も容易になるということです。部署の部屋に読み込み装置を設置して勤怠管理システムと連携すれば、自動的に社員の出退勤の時刻を打刻できます。その他にも、電子マネーの機能を付与させることで社内食堂や売店の支払いに活用することもできます。基本的には電子マネーと変わらない使い方ができるので事前チャージ式にすることもできますし、クレジットカードのように後から給与で天引きすることも可能です。スマートカードは企業や社員のニーズに合わせて、自由にカスタマイズできるという点が普及している理由となっています。

7.セキュリティ強化につながる!スマートカードの使い方

スマートカードは企業のセキュリティ強化にも利用されています。それは入退室の管理による不正の防止だけではありません。たとえば、印刷機とスマートカードを連動させれば、印刷物の取り間違えを防ぐことが可能です。スマートカードを印刷機にかざすと自分のパソコンから飛ばされたデータのみを印刷するようにすれば、間違って他人の印刷物をもっていくことはありません。企業が扱っている情報には重要な個人情報や機密情報が混ざっているケースもあるでしょう。そうした情報が外部へ漏れにくくするために有効な手法のひとつです。

また、ログイン認証や物品の貸出にスマートカードを活用する事例もあります。パソコンのログインにあたってはIDやパスワードでセキュリティを担保している企業が多いでしょう。しかし、IDやパスワードは情報が盗まれてしまうと、誰でもアクセスできるようになってしまう点が欠点です。パソコンのログインに社員証を必要とすれば、さらにセキュリティは高まります。さらに、物品の貸出にスマートカードを利用することで、在庫管理が簡単になります。「誰が・いつ・なにを借りたか」が簡単に記録できるようになるので、事務作業の効率化が期待できるでしょう。

8.来客が多い企業はスマートカードが必須!?

企業のセキュリティ強化に役立つスマートカードは、特に来客数の多い企業ほど役立つことが考えられます。なぜなら、来客数の多い企業ほど部外者が企業内に侵入しやすい環境だからです。来客数の少ない企業であれば、関係者以外の人が企業内に入り込んでいたらすぐに分かります。しかし、もともと来客数の多い企業の場合は見慣れない人を社内で見かけても、来客か部外者かを判断することは難しいです。そのため、部外者に侵入されてしまう危険性が増します。来客者にも来客者用のスマートカードを装着してもらうことで、「誰がいつ来社して退社したのか」を管理しやすくなるでしょう。部外者が勝手に社内へ侵入する可能性を低くできます。

また、部外者が来社して入室した部屋の特定も可能になるので、万が一不正が行われてしまった場合の対処も比較的容易です。スマートカードを採用するとセキュリティ面においてさまざまな点で安心できるので、来客の多い企業ほど効果的だといえます。

9.スマートカードで経理が楽になる!?

決済機能のあるスマートカードを経費精算システムと連動させると、経理の仕事が効率的になります。特に従業員の多い企業ほど効果の高い利用方法で、スマートカードを利用すると経費精算システムへ自動的に情報が記録されるため、出費のあるたびに入力する必要はありません。使用するカードに特定の勘定科目を事前に登録しておくことも可能で、自動的に仕分け作業を行ってくれる機能をもったシステムもあります。

また、事前に利用できるカードを登録しておくことで、社員がプライベートで利用しているスマートカードと区別することが可能です。そのため、プライベートな出費を判別でき、無駄な経費を抑えることにもつながります。社員にスマートカードを利用して経費を支払ってもらえば、現金を手渡す必要がなくなるので、コンプライアンス対策になるという点もメリットです。

10.スマートカードでより安全な企業を目指そう!

スマートカードはそれまで活用されていた磁気ストライプカードよりも、高性能で安全性の高いカードです。セキュリティ対策になるだけでなく、さまざまな機能を付与できるのが特徴で、使い方次第で企業側と社員側双方にメリットが期待できます。経理や管理業務の効率化にも役立ち、少子化による労働力不足を解決するひとつの手段にもなり得るので、積極的に活用を検討してみましょう。