2021.09.22
日本でもテレワーク/リモートワークが多くの企業で導入され、あらゆる場所がワークプレースになる時代に突入しようとしている。業務がデジタル化の一途をたどる中、その中心の端末となるビジネスPCにおいても、さまざまな利用シーンに対応できる製品がこれまで以上に現場から強く求められている。
従来は薄型軽量で持ち運びに適したノートPCと、処理性能やコストパフォーマンスに優れたデスクトップPCの2つがビジネスPCの主なカテゴリーとなっていたが、より高い機動性といった付加価値によって、あらゆる場所で便利に使える「2in1」と呼ばれるタイプも人気を集めている。
2in1とは2つの形態を1つのデバイスで実現できることを指しており、PCの場合はノートPCとしても、タブレットとしても使える製品をそう呼んでいる。これまでに数々のビジネスPCを手掛けてきた日本HPが投入する「HP Elite x2 G8」(以下、Elite x2 G8)も、同社の2in1に分類されるPCだ。
Elite x2 G8はタブレット部分とキーボード部分が取り外し可能なデタッチャブル式の2in1で、キーボードを装着して通常のノートPCのように使うこともできる上に、対面による営業活動のような場面では、キーボードを取り外して相手に画面を見せながらペンで操作するなど、多様なシーンに対応できるのが強みだ。
今回はそんなElite x2 G8の魅力について、製品担当者に話を伺いながら、2in1をビジネスPCとして採用するメリットをひもといていこう。
Elite x2 G8の本体サイズは、タブレットとキーボード込みで289.3(幅)×223(奥行き)×14.2(高さ)mm、重さは1.175kgとなっている。小さくて軽いからとは言っても、本体の作りは頑丈。アルミニウムの塊から削り出すCNC精密加工によって、堅牢なボディーを実現している。
日本HPの岡崎和行さん(パーソナルシステムズ事業本部 モバイルビジネス部 プロダクトマネージャー)は、製品のコンセプトによってボディーの素材選びに違いが出てくると説明する。
「本体にアルミ合金を使う理由は、耐久性と見た目を重視したためです。PCの中には軽量性を重視してマグネシウム合金を採用しているモデルもありますが、アルミボディーと比べると、どうしても圧力でたわんでしまう場合もあります」(岡崎さん)
Elite x2 G8はタブレットとしての用途も見越して、アルミ素材で“がちっとした”堅牢性を追求している。
日本HPの岡崎和行さん(パーソナルシステムズ事業本部 モバイルビジネス部 プロダクトマネージャー)
「ただ壊れにくいとか、軽いとか言う理由だけではなく、ユーザーの所有欲を満たすようなデザインを追求しています。『Elite x2 G8を使いたい』──現場からそんな声が挙がるようになったらうれしいですね」(岡崎さん)
ダイヤモンドカット加工のエッジは、光の加減や見る角度で虹のように輝く。背面のキックスタンドは最大165度まで調整できる
さらにElite x2 G8は12万時間にも及ぶHP独自のテスト「HP Total Test Process」をパスしている。振動・落下・粉じん・凍結/解凍など、米軍の調達基準である「MIL-STD-810H」にある19項目ものテストもクリアしており、その結果を公表。過酷な環境にも耐える仕様となっている。
過酷な環境での使用を推奨しているわけではないが、時には本体が汚れてしまうこともあるだろう。Elite x2 G8には「HP Easy Clean」という機能があり、タスクバーにあるアイコンをクリックするだけでデバイスをロックし、キーボードやタッチパッドなどの操作を無効化する。電源をわざわざ落とすことなく、クリーニングシートなどで本体を隅々まで拭けるというものだ。
一見すると小粒な機能に思えるかもしれない。しかし、裏を返せば非常に細かい部分までユーザビリティが考えられているともいえる。コロナ禍という状況で、デバイスの清潔さを保ちたいというユーザーにもぴったりな機能だ。
Elite x2 G8はマルチタッチ操作に対応したアスペクト比3:2の13インチ液晶ディスプレイを搭載。表面のガラスには米Corningの「Gorilla Glass 5」を採用して耐久性を高めている。
ディスプレイは最大で3K(3000×2000ピクセル)表示に対応した高解像度モデルや、屋外の太陽光の下でも見やすい最大輝度・1000nitの高輝度モデルを用意。業務や用途に合わせて適したモデルを選択できる。
Elite x2 G8で選択できるディスプレイ
液晶 | 3K2K | WUXGA+ | WUXGA+ HP Sure View Gen3 (内蔵プライバシースクリーン機能)搭載 |
解像度 | 3000×2000 | 1920×1280 | 1920×1280 |
最大輝度 | 450 nits | 400 nits | 1000 nits |
さらに別売で「HP リチャージブル アクティブペン G3」が用意されているので、移動中に思い付いたアイデアをメモしたり、資料にコメントを直接書き込んだりと、手書きで行っていた作業をデジタル化するツールとしても強力だ。
アクティブペンは4096段階の筆圧を検知できる他、30分の充電で1週間のバッテリーライフを実現。ペンは本体にマグネットで取り付けられるのも便利だ。ペンといえばクリエイターなどに使われるイメージが先行するが、業務用途でも活用が広がっている。
「展示場で使ったり、保険外交員の方が顧客先で使ったりなど、紙の置き換えで使われるシーンが増えているようです。紙の代わりにタブレットへサインするケースもありますよね。電子ハンコ、電子サインでOKとする商習慣も普及しつつあるので、そういう意味ではビジネスPCにおいてペンの用途が広がってきていると思います」(岡崎さん)
テレワーク/リモートワークの普及によってオンライン会議はすっかり定着しているが、Elite x2 G8はそういった用途を想定してマイクやスピーカーにも力を入れている。本体の背面上部には360度から集音できる全方位マイクを搭載。さらにAIを活用したノイズキャンセル機能も採用し、周囲のノイズや不要な音を学習して低減できる。
スピーカーはオーディオの老舗ブランド、Bang & Olufsenとの共同開発。ディスプレイの左右にあるステレオスピーカーで、バランスのよいナチュラルなサウンドを楽しめる。オンライン会議でも周辺機器を用意することなく、Elite x2 G8単体でクリアなサウンド環境を実現できるだろう。
さらに最近は支給したビジネスPCを個人用途でも利用可としている企業も増えているという。Elite x2 G8には「HP Sound Calibration」という機能があり、これを使うとユーザーの聴覚テストを通じて、最適なサウンドプロファイルを設定してくれる。また「HP Dynamic Audio」により、音楽を聴いているのか、会議をしているのかという状況をAIが判断して、自動的に最適なプリセットを選択する。ハードウェアとソフトウェアの両面から快適なサウンドを追求している。
Elite x2 G8では、屋外などで作業しているときに、横からのぞき見されることを防げるプライバシースクリーン機能「HP Sure View」を搭載したモデルも選択できる。機能をオンにするとディスプレイ全体が黒くなり、視野角を狭められる。以前はビジネスパーソンが物理的なフィルターをノートPCのディスプレイに貼り付けるような風景を見かけたが、そういった手間を省けるスマートな機能だ。
さらにディスプレイ上部にあるWebカメラには、プライバシーシャッターを搭載。カメラのレンズを物理的にふさげるもので、プライバシー保護の観点からも、ユーザーの心理的にも安心感を与えられる。
生体認証機能「Windows Hello」にも対応。PINやパスワードを入力しなくてもWebカメラ部分に搭載された赤外線センサーによる顔認証でWindows OSにログオンが可能だ。煩わしいパスワードの入力などをスキップできるため、使い勝手が大きく向上する。
持ち運びが可能なデバイスだからこそ、デバイスの紛失にも気を付けたいところ。しかし、従業員に厳しいルールを課したり、気を付けるように呼びかけたりするだけでは限界もある。Elite x2 G8には米Tileが手掛ける捜し物トラッカー「Tile」(タイル)が内蔵されており、万が一デバイスを紛失した場合でも、ペアリングされたスマートフォンが最後に接続された場所を記憶してくれる。
加えて、紛失したときにPCが起動されたか、または(悪意のある人物によって)PC本体の外装がこじ開けられてしまったかを検知する「HP Tamper Lock」という仕組みも搭載している。日本HPのセキュリティブランドが提供する「HP Wolf Security for Business」も採用しており、BIOSレベルからOSで動くアプリケーションまで、総合的に対策が行われている。
従業員に負担をかけず、仕組みで情報を守る。これが日本HPの考え方といっても過言ではないだろう。
Elite x2 G8には、ここまでに挙げた他にも充実した機能が用意されている。「PCを使う=インターネットに接続する」が当たり前になりつつある今、しっかり4G LTEモデルが用意されているのもそのうちの1つだ。自宅でのリモートワークだけでなく、建設現場や小売店、店舗のバックヤードといった、ネットワーク環境が整っていない場面でも情報端末として活躍するだろう。
「HP QuickDrop」は、スマートフォンとPCの間をワイヤレスでつなぎ、データ転送が行える独自ソフトウェアだ。スマホで撮影した写真をElite x2 G8に送信するなど、デバイス間のファイル共有に役立つ。
2in1のPCといえば、「Surface」シリーズを思い浮かべる人も多いだろう。確かに同製品が市場を拡大したことは間違いなく、それは日本HPも理解していることだ。しかし、Elite x2 G8もビジネスに特化した2in1として、顧客の要望に耳を傾けながら世代を重ねてブラッシュアップを続けてきた。
Elite x2 G8の細かな仕様を見ていくと、ライバルに対しての強みが明らかになってくる。CPUには最新の第11世代Coreシリーズを搭載。高いパフォーマンスを実現しているのはもちろんのこと、前半で紹介したような細やかな機能の他にも、インタフェースに計3つのType-Cポート(2つはThunderbolt 4対応)を搭載していたり、ビジネスPCで重視されるセキュリティスロットもしっかり用意したりと、ビジネスの現場が求める要件を着実に搭載している。
生体認証機能も充実している。Elite x2 G8は顔認証だけではなく指紋認証にも対応。外出先でマスクを装着しているときは指紋認証、自宅では顔認証といった使い分けが非常に便利だ。
「HP 65W USB Type-C スリムアダプター」
Elite x2 G8に標準で同梱される「HP 65W USB Type-C スリムアダプター」は、急速充電機能の「HP Fast Charge」に対応。外出が多いときでも、電源が確保できるちょっとした時間で早く充電できるのが心強い。自宅でも、それ以外の場所でもしっかり使えるように考えて設計されている。
「コロナ禍によって強制的にリモートワークへ移行せざるを得ず、ワークプレース戦略の見直しに直面した企業が多くあります。持ち運べるビジネスPCの売上が広がっているのは間違いありません。自宅でもサテライトオフィスでも、外出先でもどこでも使えるモバイルPC──その中でも2in1は、クラムシェル型のPCと比較すると“可変性”があることが利点です。どんな状況でも対応できるのが2in1なのです」(岡崎さん)
ビジネスPCに求めるものは何か。自分たちの業務に必要な機能は何かを冷静に見つめ直すと、確かなデバイス選定につながるはずだ。
※本記事は2021年09月06日、ITmedia NEWS SPECIAL に掲載されたコンテンツを転載したものです