第6回:モバイルノートってすげぇ ~ 4年使ったデスクトップパソコン愛機不調の回復断念で再認識

山田祥平の戦うスマートライフ

2026-08-26

Illustration: Generated by Gemini / Created by Syohei Yamada
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安上がりに最高の環境を実現できるデスクトップパソコン。仕事場に閉じこもって使うにはベストなフォームファクタだと思う。でも多くの人々はいつでもどこでも使えるノートを選ぶ。なぜならモバイルノートがデスクトップパソコンを代替する可能性を信じているからだ。その頼もしさを再認識した。

フリーランスライター:山田 祥平

いろんな意味でモバイルノートはオールマイティだ。実際、ドックなどとの組み合わせでデスクトップと遜色がない環境が手に入る。でも、フリーランスライターとして自宅の仕事場で使うメインのパソコンはタワー型のデスクトップ機だった。自宅でノートパソコンを使うことはほぼないに等しい。

プロセッサーアーキテクチャのトレンドの節目節目を見つめながら、数年に一度、環境を見直すことを繰り返してきた。1990年にDOS/V(IBM DOS J4.0/V)を発表し、追って日本語版 Windows 3.0 が登場した。英語環境を日本語化する西川和久氏のDOS/VスーパードライバーズやWin/Vなどのお世話になりながら、市販の標準パーツを組み合わせて日本語パソコンを作れるという時代の黎明期を謳歌していた頃からの個人的な流儀だった。

あれからいったい何台のパソコンを組み上げたかはわからない。比較的新しいシステムとしては、2016年に組んだ Core i7 6950X 機で、32GBのメモリを装備していた。このシステムはかなり長く、約6年間使った。後半はちょうどコロナ禍と重なる時期に、自宅の仕事場から一歩も外に出ず、3密(密閉、密集、密接)を回避するオンラインミーティングにいかに快適に参加するかといった作業をこのシステムが支えた。

だが、Windows 11 ではこの世代の Core プロセッサーのサポートは見送られた。そこで2022年の初頭にシステムを刷新した。コロナ禍が終わりかけ、そろそろと対面のオフラインイベントなどが開催されるようになり、マスクをつけて参加できるようになっていたころだ。前年の暮れに発表されたプロセッサーの Intel Core i9–12900Kを使ったシステムを組んだ。以降、それをずっと使い続けてきた。第12世代の Core プロセッサーだ。このシステムもよく働いてくれていた。ほとんど不満を感じることはなかった。

だが、愛機との蜜月は6月上旬のある朝に終わった。朝、仕事場でパソコンに向かうと、ブルースクリーンエラーが発生して止まっていたのだ。AIと相談しつつ、複数のブルースクリーンエラーと戦いながら、グラフィックカードを取り外したり、メモリモジュールをテストしたり、一枚挿しにしてみたり、BIOSを更新してみたり、そして Windows のクリーンインストールを試みるなど、徹底的に切り分けして修復を試みたが、丸2日間ほど格闘してみたものの、復旧には至らなかった。おそらくは、プロセッサーまたはマザーボードの物理的な故障ではないか。AIとのチャットでもその可能性が高いという結論が出た。早い話がさじを投げられた。マザーボードを修理に出すことも考えた。でも、その前にやることがある。まずは、仕事に使える環境を再構築するのが最優先の課題だ。データはすべてクラウドにあり、失ったものは何もなかったのは狙ったこととはいえ不幸中の幸いだ。

日常の仕事を支えているのはデスクトップパソコンだけではない。数台のモバイルノートパソコンを併用し、日常の取材や出張はもちろん、日常の外出にも携行している。

その中の一台を逝った愛機の代替として使うことにした。第13世代の Intel Core i7-1355U プロセッサーで32GBメモリ、ストレージは512GBのSSDだ。メモリ容量は逝った愛機と同じだが、ストレージがちょっと不安で残り容量が50GBほどしかない。

このパソコンを閉じた状態で使うことにした。仕事場には42インチモニターが2台と、27インチモニターが1台ある。すべて4Kモニターだ。それらをすべてマルチディスプレイ環境として使ってきた。個人的に複数画面は百難を隠すと思う。多少処理性能が劣る環境でも、複数枚のモニターがあれば体感的な処理効率は担保できるからだ。自分の記憶力や段取り力に頼らなくても、多画面が情報の置き場となり、思考の抜け漏れを補完してくれる。

こんな環境を持ち運べるはずもなく、列車内、カフェ、コワーキングスペース、出張先のホテルなど、いろんなところで仕事をするが、自宅環境以上のものが得られる場所はない。だから自宅での作業がもっとも効率が高くなる。それがスーツケースに24インチモニターを入れて出張にでかけるような行動にもつながった。モバイルディスプレイが容易に手に入り、カジュアルに持ち運べる現代は幸せだと痛感する。

ノートパソコンとデスクトップパソコンの違いは、その処理性能というよりも、拡張性のスタイルにある。「ないものはない」とはよく言ったもので、「ない」ものはねだっても「ない」のだ。だから何らかの方法で拡張する。それができるのが汎用機としてのパソコンだ。そして、ぼくが愛用してきたようなタワー型のケースには、いろんなものを内蔵してしまえる。内部スペースに余裕があるため、拡張したデバイスを内蔵できるので、外観は変わらなくても、できることを増やせるノートパソコンではそうはいかない。特に、モバイルノートパソコンは限界に近いエンジニアリングで軽薄短小を実現している。もはや内部に何かを拡張することなど不可能に近い。それでも、今回デスクトップ機代替としたノートパソコンは左側にHDMIポート、右側にUSB-Aポート、そしてThunderbolt 4ポートが左右にひとつずつある。これだけあれば拡張し放題といってもいい。

ただ、全ポートに何かをつなぐというのはいかにもつぎはぎでスマートじゃない。だからドッキングステーションを使うことにした。ノートPCとケーブル一本で接続するだけで、画面出力、高速データ通信をまとめて担わせることができる機器だ。多くの場合、給電機能も兼ね備え、接続したパソコンに電力を供給することもできる。

このドッキングステーションを使い、3台の4Kモニター (HDMI、DP×2)、有線LAN、会議用カメラ、会議用マイク付スピーカー、マウス、キーボード、イメージスキャナ、オーディオインターフェースを接続した。さすがにUSB-Aポートが足りなくて、USB-Cハブを接続してHID系つまりマウスやキーボードを束ねた。各モニターはUSB-Cでの接続もできるスペックだが、42インチが2枚あってそれを並べるとケーブルの長さの制限でレイアウトに支障が出てしまう。でもドッキングステーションならHDMIやDPで接続できるので長いケーブルが使える。

ノートパソコンはディスプレイを閉じた状態で使うので、電源の接続時にはカバーを閉じてもパソコンがスリープしないように設定しておく。画面をオフにしたり、スリープ状態になるまでの時間も少し長めの30分程度にしてある。

この状態で、閉じたままのノートパソコンにケーブル1本でドッキングステーションを接続するだけで、ステーション側に接続した各種の機器をすべてノートパソコンから使えるようになる。このノートパソコンは基本的に外に持ち出すことはなさそうなので、バッテリーのいたわりのため、充電は80%で停止するように設定してある。

想像通り、重い3Dレンダリングや動画書き出しを24時間回し続けるような用途でない限り、4K×3画面のマルチディスプレイ環境下でブラウザ、Office アプリ、テキストエディター、各種オンライン会議アプリなどを同時に動かすビジネス・執筆ワークにおいては、数年前のハイエンド自作デスクトップ機と比べてもまったく遜色なく、むしろレスポンスよく軽快にこなせる性能を備えていることを実感できた。

なにしろ、愛用してきたマウスやキーボード、そして表示のためのディスプレイが同じなので、本当に、傍らの閉じたままのモバイルノートが稼働しているのか疑いたくなるレベルだ。ファンの音さえそばに寄って耳を近づけないと確認できない。最新の Copilot+ PC ではないのでNPU処理を前提としたローカルAI処理についての実用性は限定的だが、少なくとも、6月まで使ってきた環境の代替としてはほぼ不満がない。

こうなるといろいろと試してみたくなってくる。たとえば、第11世代の Core プロセッサー搭載のノートパソコンを引っ張り出してきてつないでみた。ThunderboltポートがなくUSB 3.2(Gen2)対応のUSB-Cなので、帯域が確保できないため、モニター1台はノート本体のHDMIポートに接続する必要があるが、その他はそれでも十分に実用になることがわかった。

こうして、電源、キーボード・マウス、そして強固な有線ネットワークまでがすべて整った。外観はスマートなモバイルノートでも、使い勝手としてはほとんど「ハイエンド・ビジネスデスクトップ」そのものだ。逝ったデスクトップパソコンの穴を埋めるどころか、それ以上に盤石で仕事に没頭できる完璧な環境が仕上がったように感じる。このあとは、生体認証関連の拡張を企んでいる。やはり顔認証は外せないといったところか。

今後、パソコンの世界は、モバイル、デスクトップを問わず、オンデバイスAI処理の方向に向かうだろう。今のクラウド依存のAIエージェントとローカルAIをハイブリッドに使う環境だ。それでパソコンはますます便利で役にたつ存在になっていく。

思考し、文字を紡ぎ、Webで資料を閲覧するといった作業は、今、パソコンを使う時間の大部分を占めるが、現代のプロセッサーにとっては負荷が軽すぎて、ほぼアイドリング状態で処理できてしまう。4Kモニター3台という贅沢な環境も、表示そのものは内蔵グラフィックスが担うため、文章作成やWeb閲覧の体感を大きく損なうほどの負荷にはなりにくい。

こだわってきたデスクトップパソコンの価値は、たとえるなら「時速300キロで走れるスポーツカー」だ。でも、日常の仕事という一般道を法定速度で走れれば十分というシーンにおいては、スポーツカーだろうが軽自動車だろうが、目的地に着く時間はぶっちゃけ何も変わらない。限界突破の力仕事なんてめったにない。

ぼくらがパソコンを使って仕事をするとき、最大のボトルネックは、その処理速度ではなく、人間が考えて、キーボードを叩くスピードだ。少なくとも、第8世代以降の Core であれば、その人間の思考の速度を裏切らないだけの最低限のラインをすでに完全にクリアしている。

愛着のあるデスクトップパソコンが逝ってしまったのは非常に寂しい事件ではあったが、そのことで、手元にある古いノートパソコンでも、仕事環境としては全く困らないという事実を身をもって体感できた。この経験はAIが今後、どれほどパワフルなローカル環境を求めるようになるのかということを知るためのベースラインでもある。人間の思考速度にはすでに追いついているレガシーなパソコンは、これから本格化するAIの介入にどこまで耐えられるのだろうか。

そのとき問われるのは、CPUの瞬発力だけではなく、メモリ、ストレージ、NPU、放熱、そしてバックグラウンドで動き続けるAIにどれだけ余力を与えられるかだ。

Illustration: Generated by Gemini / Created by Syohei Yamada
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100円ショップで購入した皿立てに閉じたままで立てかけたモバイルノートは縦置きクラムシェル状態だ。ベタ置きよりもはるかに放熱効率は高い。そして必要なときにはケーブル一本を抜いて別の場所に気軽に持って行ける。パソコン1台をオールマイティに使うには、筐体を束縛する「紐」をできるだけ少なくすることだ。抜き差しが億劫ではそうならない。たった1本のケーブルであらゆる周辺機器を接続でき、電力供給までまかなえるドッキングステーションはそのための強力な助っ人になってくれるはずだ。

もちろん、新しいパソコンは必要ないなどというつもりは毛頭ない。普段の作業をストレスを感じることなく処理できるのは当たり前で、そのうえで、オンデバイスAIを着実にドライブできるパソコンがほしい。これからも着実な進化を望みたい。これからのパソコンは人間が複雑な手順を指示しなくても、自律的に高度な作業をこなしてくれるようになるだろう。人間の代わりにバックグラウンドで複雑なプロセスを処理していく。人間はそのことを知らなくていい。でも、その代わりに、十二分なリソースをパソコンに与える必要がある。パソコンの選び方も少しずつ変わっていくかもしれない。

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連載 |コラム「山田祥平の戦うスマートライフ」
  1. 第6回:モバイルノートってすげぇ ~ 4年使ったデスクトップパソコン愛機不調の回復断念で再認識
  2. 第5回:アドビが認めた中間言語としての紙文書
  3. 第4回:身体の可視化と日々のバイタルデータ活用 温「数」知新
  4. 第3回:優れた同僚であるAIと戦う、その距離感を考える。
  5. 第2回:コンピューターとパーソナル ~「私の拡張」としてのマルチデバイス
  6. 第1回:翻訳。言葉の壁が消えたあとの「摩擦」を楽しむ

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