第8回 Outlook のエージェントモード活用ガイド
「Microsoft 365 AIエージェントを業務で使おう!」シリーズ
2026-09-29
今回は、メールソフトウェアの代表格「Outlook」に焦点を当て、日本の職場で欠かすことができないメールを取り上げます。
Copilot in Outlook は、「メールを書いて」といった単発の依頼に答える道具から、複数の作業を引き受けるエージェントへと進化しました。従来は、メールを1通要約する、下書きを1つ作るといった単発処理が中心でしたが、エージェント機能の強化により、受信トレイの確認、優先度付け、下書きの作成、予定の再調整までを一連の流れとして実行できます。
たとえば「24時間返信がないメールを探し、優先度を付けて、フォローアップを下書きして」と伝えると、Copilot は検索、並べ替え、下書き作成までを順に実行します。
そんな Outlook のエージェント機能を理解するうえで欠かせないのが Work IQ です。その概要を紹介したあとで、具体的な活用方法に進みます。
MKTインターナショナル株式会社 CEO/代表取締役社長:赤井 誠
Work IQ について
Outlook で Copilot を活用するうえで重要になるのが、Work IQ です。Work IQ は、メール、予定表、会議、ファイル、チャット、組織内の人や関係性など、Microsoft 365上の業務データを横断的に理解し、Copilot やエージェントがより文脈に合った回答や作業を行うための「職場インテリジェンス層」です。
| Work IQ が参照する情報 | Copilot ができること |
|---|---|
| メール・予定表・会議 | 誰と何を進め、次に何が必要かを把握する |
| ファイル・SharePoint サイト | 関連資料、最新版、よく使う様式を見つける |
| Teams のチャット・会話 | 議論の経緯や決定の背景を理解する |
| 人と組織のつながり | 関係者や共有先を把握する |
| 日々の仕事のパターン | よく使う書式や繰り返し作業を学び、提案に活用する |
少し前から、Copilot チャットでは、メニューの上部に Work IQ ボタンが配置されています。
Work IQ ボタンがオンの場合、チャットはMicrosoft 365 のテナント内の情報も加味したうえで回答します。Work IQ をオフにすると、Microsoft 365 内の業務データを参照しない一般的な Copilot チャットになります。
Work IQ ボタンがオンの場合、Outlook では、単にメール本文だけを見るのではなく、送信者との過去のやり取り、関連する会議、添付ファイル、直近のプロジェクト、期限や優先度といった周辺情報を踏まえて、要約、返信案の作成、会議準備、フォローアップ整理を支援できます。これにより、ユーザーは「このメールにどう返すべきか」「次に何をすべきか」を、より少ない操作で判断しやすくなります。
- 重要なメールの背景を、関連する会議やファイルとあわせて把握する
- 長いスレッドを要約し、決定事項・未対応事項・次のアクションを整理する
- 相手や過去の文脈に合わせた返信案を作成する
- 会議前に、関連メールや資料から確認ポイントを準備する
Work IQ が利用できるのは、ユーザー自身がアクセスできる情報だけです。利用者に閲覧権限のないファイルやメールを、Work IQ が勝手に参照することはありません。
Outlook のエージェント機能について
Outlook のエージェント機能は、受信トレイと予定表を確認して、複数の手順を組み立てて実行します。
できること(受信トレイ編)
受信トレイ側では、返信が必要なメールの抽出、優先度の高い差出人の強調、似たメールをまとめるルールを実行できます。例えば、夏期休暇明けに不在中の重要な用件をまとめるよう依頼すれば、見逃したメッセージの要約と、緊急度の高い案件の提示が返ってきます。返信が来ていないメールを検知して、フォローアップを送るかどうか提案も行います。
受信トレイをエージェントで操作する
受信ルールの作成は、日本語で指示できます。従来の Outlook では、設定画面のメール、ルールと辿って条件を手作業で作る必要がありましたが、簡単な指示でルールを組めるようになりました。例えば、「上司から届き自分が宛先に入っているメールに高優先度の分類を付ける」、と入力するだけでルールが作られます。
今までの方法では、【設定】メニューから【メール】→【ルール】を選択して、条件やアクションを設定します。
では、実際にエージェント機能を利用するとどのようにルールを作るか試してみましょう。
-
Outlook を起動し、右上にある Copilot アイコンをクリックします。
- プロンプト入力ボックスの上部にある【既定のモード】をクリックします。メニューが出てきます。【アクションを許可する】を選択します。
- ボックスに「◎◎というメールアドレスからのメールで宛先(TO/CC) に自分が入っているものに 最重要 分類を付けるルールを作ってください」と入力します。今回は、筆者の別メールアドレスからのメールを対象にします。
-
少し経過すると、ルールが作成されたとメッセージが出力されます。
-
受信トレイを確認します。High Priority とラベルがついているメールを確認できます。
-
最後にルール設定画面を確認します。ルールが作成されたことが確認できます。
他にも受信トレイに対して、次のような操作を実行できます。
| 機能 | できること |
|---|---|
| 優先順位づけ | 受信メールを重要度で並べ替え、緊急の返信が必要なものを前面に出す |
| 返信漏れの検出 | 自分が送って一定時間返信がないスレッドを特定し、重要度順に並べてフォローメールを下書きする |
| 報告メールの起案 | 直近1週間のプロジェクト関連メールから最新状況を集約し、上長向けの進捗報告メールを下書きする。 |
できること(予定表編)
予定表への命令は、出欠回答の判断基準をあらかじめ登録しておくことができます。差出人、件名のキーワード、勤務時間といった条件に応じて、承諾、辞退、フォロー(時間は確保せず内容だけ追う)を自動で処理できます。
例えば、予定が空いていれば上司からの会議は常に承諾する、◎◎さんからの会議依頼は常に辞退する、件名に「営業月例会議」を含む会議は常に承諾する、19時以降の会議はフォローに切り替える、キャンセルされた会議は自動的に削除する、といったものです。
処理された内容は通知され、後から履歴で確認できます。
また、会議の設定も行うことができます。出席者の空き時間の確認、候補時間の提示、会議室の確保、招待の作成までを Copilot が引き受けます。候補はカレンダー上にどう収まるかが表示されるため、ユーザーは都合のよい案を選んで確定するだけです。
では、実際にエージェント機能を利用するとどのようになるか試してみましょう。
- 新しい Outlook を Windows 版または Outlook オンライン版で開いてください。
- 設定を選択します。
-
Copilot を選択し、次に【予定表の指示】を選択します。
- 「予定表の指示」の「指示の作成」を選択します。
-
Outlook は Copilot を開き、手順を案内します。プロンプト欄には、自動的に「予定表を管理するための Copilot への指示の設定を手伝ってください」と入力されます。すると、以下のようなメッセージが出力されます。
- 「予定が空いていれば上司からの会議は常に承諾する」ルールを作ってみましょう。上のプロンプト欄に、続けて、「予定が空いていれば 上司(メールアドレス) が主催する会議は常に自動承諾してください」と入力します。数分で新しいルールが作成されます。
-
実際に、別のメールアドレスから、ミーティングの依頼メールを出したところ、次のような返信が返ってきました。Copilot による自動返信であることが分かります。
| 機能 | 具体的にできること |
|---|---|
| 会議の設定 | メールスレッドから「この件で打ち合わせを設定して」と依頼すると、出席者の空き時間確認 → 時間帯の提案 → 会議室の予約 → 招待の送信 まで実行。 |
| 競合の自動解消 | 定例1:1などが他の予定と重なった場合に、自動で再調整し会議室も取り直す。 |
| 出欠の自動回答 | カスタム指示に基づき、開催者・件名のキーワード・勤務時間などから承諾/辞退/保留を判断して回答する。 |
まとめ
受信トレイに対するルール設定が厳しすぎると対象のメールに対して、予想外の処理が行われることがあります。例えば、重要なメールを自動的に別フォルダーへ振り分けてしまって、見落とす可能性があります。ルールの作成直後だけでなく、1〜2週間後にも実際の振り分け結果を確認してください。
予定表ルールは、他者の予定にも影響を与えるため注意が必要です。自動での辞退や再調整は、相手の予定にも影響します。出欠の自動処理は、条件を詰めないまま有効にすると、本来出席すべき会議を辞退してしまう恐れがあります。最初はキャンセルされた会議の削除のように影響の小さい条件から始め、実行履歴を見ながら少しずつ範囲を広げるのが安全です。
コラム:AI、そのクラウドサービスとオンデバイス処理
Microsoft Build 2026の基調講演で、サティア・ナデラCEOは「Unmetered Intelligence on Every Desk and in Every Home(あらゆるデスクと家庭に、無制限の知性を)」という印象的なメッセージを掲げました。
これまで生成AIは、主にクラウド上の大規模データセンターで処理されてきました。そのため、利用量に応じたコストや処理能力の制約が避けられませんでした。しかしナデラ氏が描く未来では、AIはクラウドだけでなく、PCやデバイスそのものの中で動作します。Windows PCに搭載されるNPUやGPUを活用し、ローカル環境でAI推論を実行できるようになることで、利用回数やトークン数を意識せずにAIを活用できる世界を目指しているのです。
Build 2026では、Outlook のメール要約、PowerPoint の代替テキスト生成、Teams の映像補正機能などが、デバイス上のAIを活用している事例として紹介されました。また、Adobe Premiere や After Effects などのソフトウェアも、Windows のAI基盤を利用してローカル処理を行っています。AIは特別なアプリケーションではなく、OSや業務環境に自然に組み込まれる存在へと変化しつつあります。
AI利用が隅々まで広がれば、すべてをクラウド処理に依存するモデルには限界があります。だからこそ、マイクロソフトは、クラウドとエッジデバイスを組み合わせた新しいコンピューティング基盤を推進しています。Build 2026では、ローカルでAIエージェントを実行できる新しい開発環境やデバイスも発表され、その戦略がより明確になりました。
HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。
Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。
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