都市空間を彩る作品づくりを支えたHPワークステーション
戸田建設株式会社 / アーティスト 藤倉麻子
2026-07-31
まちづくりをする際に、より多くの人が空間を共有できるよう、芸術をテーマに人々が集まれる場所を提供した企業がある。今回は自社ビルの建て替えにあたり、アーティストの作品を発表できるパブリックスペースを用意した戸田建設と、その場所で存在感を示すアートを手掛けた藤倉麻子氏に話を伺ったので紹介する。
目的
- パブリックスペースの有効活用 / 都市空間のイメージを伝える作品の提供
アプローチ
- 作品の制作を効率化するHPワークステーションを活用
システムの効果
- ソフトウェアのレスポンス向上により、ストレスのない作業環境を構築
- 複数のワークステーションを設置したことにより、これまで以上の制作フローの効率化を実現
ビジネスの効果
- イマジネーションをリアルタイムに反映する環境の構築
- レンダリングに必要な時間の圧縮により、制作期間を短縮
取材:中山 一弘
パブリックスペースをアーティストに開放
戸田建設株式会社(以降、戸田建設)は1881年に創業した歴史ある企業だ。老舗のゼネコンとして確固たる地位を築いており、これまで手掛けてきた無数の実績と信頼は日本国内だけでなく世界からも注目されている。2017年からは建築土木関連事業に加えて戦略事業にも注力するようになり、自社開発による不動産の有効活用などにも積極的に取り組み、同社の活躍の場をさらに広げようとしている。
その中のひとつの取り組みとして、都市計画の中にアーティストが表現できる場を提供するというコンセプトから、戸田建設の本社ビル建て替えにあたり、アートの展示ができるパブリックスペースを設けることにしたのだという。「2024年11月に新社屋が完成しました。この建て替えにあたっては、お隣のアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)と一緒に開発を進めていくなかで、開発のテーマを『芸術文化の拠点づくり』にしようということになりました」と語るのは戸田建設の小林氏だ。
新社屋は「TODA BUILDING」と命名され、芸術文化の複合施設として、地域を訪れる来訪者が気軽に利用できる空間にしたいという思いがある。「オフィスだけでなくギャラリーなどが入っていることもあり、エントランスロビーも開放的な雰囲気になるよう設計されています。さらに入りやすくするためのアイテムとしてアートがあると興味を持たれる方も増えると考えました。アーティスト側にとっても都心のオフィスビルで長期間の展示ができる場所というのはメリットがあると思います」と小林氏は続けて語る。
パブリックスペースにアートを取り入れるという構想は「パブリックアートプログラム」として、TODA BUILDINGが稼働すると同時に始まっている。「パブリックアートプログラムでは、まずキュレーターを選出することが最初に行われます。それから、そのキュレーターがアーティストをセレクトしていくという流れになっています。今回は東京都現代美術館で学芸員をされている藪前知子さんに、キュレーターをお願いしています。その藪前さんが選ばれたアーティストのひとりが、藤倉麻子さんということになります」と語るのは戸田建設の武井氏だ。
人々が集う都心の空間に作品を提供
藤倉麻子(以降、藤倉氏)は、東京藝術大学大学院 映像研究科メディア映像専攻 修了のアーティストだ。都市部、郊外、インフラといった人工物や景観の探求をテーマに3DCGアニメーションを用いた作品を作り続けている。その活躍は世界にまで及び、以前の記事でもそのあふれる才能を紹介している。
(【検証事例・ヴェネチア・ビエンナーレ日本館】現代美術の国際展覧会を成功へと導くアーティストを支えたHPワークステーション)
「藪前さんから最初にお話をいただいたときに、発表する場所に、TODA BUILDINGのエントランスの外のパブリックスペースを選ばせていただきました。私自身が、最近の興味として美術館のなかやギャラリーなどではなく、通行される方が気軽にアクセスできるような場所で目に触れたりするような立体などの制作に関心がありました。そういうこともご相談しながら、外のスペースを使った展示というものを考えてみたいと思い、プランニングを始めました」と作品の展示に関する経緯を語る藤倉氏。
今回、藤倉氏が提供した作品は、屋外のエントランスに設置され、れんがなどの建築物をイメージさせるオブジェクトと大画面に映し出される3DCGによって表現される鮮烈なイメージを持ったムービーによって構成されている。
「今回のコンセプトとしては、外側からいえば立体・実写映像・CG映像の3つの要素があると考えています。CGのとてもフィクショナルで抽象的な仮想空間イメージと、本当の東京近郊の実写映像、まさにこの京橋エリアや東京都心部、そのときにちょうど戸田建設さんが建設されていた早稲田大学の新しい校舎など、様々な素材を集めました」と藤倉氏。
そのほか、建設現場で実際に使われている鉄骨やプレキャストコンクリートなどのほか、遠方の砂利採取場へ出向いてそれらを撮影し、建築材料の最初の段階からそれらが建築に設置されるまでの流れを映像素材として収集、作品の制作に使ったのだという。
「実写映像とCG映像をリアルにつなぐものとして、現代の風景に少しSFチックな架空の都市の話をテキストで載せながら、どちらにも何か登場してくるような立体を設置しました。形やマテリアルはどちらからも集めてきたような状態になっています」と藤倉氏は語る。
実際にこの作品の周囲には常に人が集まり、中にはモニュメントに座り込んで、CGを食い入るように見つめる人もいる。藤倉氏と戸田建設がイメージした通りに、人々が足をとめ、この空間を共有し、インスピレーションを得るのに最適な場所を提供しているのだ。
「今回新作の『オープンサンライズシティ・プロトコル』は「苛烈化する太陽光を遮りつつ、朝日を最大効率で取り込む巨大な岩盤に守られた世界」という架空都市の設定(フィクション)に基づいています。抽象的なCGと実写の間に、SFめいたテキストによる具体的な架空都市の描写が重なります」と藤倉氏。この大胆かつ緻密に設計された3DCGの制作を支えたのがHPのワークステーションだった。
作品づくりを支えたHPワークステーション
藤倉氏が作品づくりに活用しているワークステーションは「HP Z6 G5 A Workstation」だ。最大96コアという驚異の処理能力を持つ「AMD Ryzen™ Threadripper™ PROプロセッサ」を搭載し、グラフィックスにも「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition 」が選択可能。3DCG制作環境を大幅に向上させ、アーティストのイメージをリアルタイムに反映させられるワークステーションとなっている。
エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション営業部
市場開発担当部長
若宮 明日香 氏
「今回はこのほかにもHPモバイルワークステーション『HP ZBook Fury G1i』(NVIDIA RTX PRO 5000 Blackwell 搭載)も活用させていただきました。メインであるHP Z6 G5 Aでレンダリングしている間は、モバイルワークステーションで調整作業をするといった感じで、交互にフル活用して40分間の長い3DCGムービーを制作しました」と藤倉氏。
HP ZBook Fury G1iにおいても実写映像の処理などではかなりパフォーマンスに余裕があったことから、作品づくりは実にスムーズだったという。「ストレージも大きかったので、快適に作業を行うことができました。高速なGPUを搭載していただいたということもあって、作品づくりにメインで使っているCinema4DやRedshiftを使った作業でもまったく問題がありませんでした。GPUとCPUのどちらもフル活用するような場面がいくつもありましたが、安定した動作をしていました」と藤倉氏は振り返る。
特に今回の作品はCGだけでなく、実写イメージも利用したため、よりグラフィックスへの要求は高くなっていたが、それでも1枚のグラフィックスカードでその要求に応えたNVIDIA RTX PROシリーズはその高いポテンシャルを証明してみせたといえる。
また、HP Z6 G5 Aは最大で3基のグラフィックスカードを搭載可能なので、藤倉氏の環境はまだまだ拡張できる余裕がある。今後の制作環境で更なるグラフィックスパワーが必要となってもそれに応えることができるのもHPワークステーションの強みとなっている。
その後も藤倉氏は制作中にも試行錯誤を重ね、それぞれのワークステーションの限界点を把握、快適に使えるポイントを見極めていったのだという。「私はレンダリング作業などもウィンドウを開いて見ながら作業したいという思いがあるのですが、それができるだけのマシンパワーがあるのがとてもうれしかったです。リアルタイムにレンダリングの途中経過を確認できるというのは、かなりすごいことなのだと思います」と藤倉氏は評価する。
作品づくりにメインで使っているCinema4DやRedshiftを使った作業でもまったく問題がありませんでした。GPUとCPUのどちらもフル活用するような場面がいくつもありましたが、安定した動作をしていました。
今後へ続く、それぞれの取り組み
実際に制作を開始してから半年未満という短い期間だったが、見事な作品を作り終えた藤倉氏。今回の作品のテーマには「人間とAIの協働」があったのだという。「私が使用している各種ソフトウェアにもAI機能が実装されていて、それを使うこともあります。今のところどの程度どんなAI機能を作品に使用していくか、まだ様子を見ているのですが、自律的にコンピューティングをマネジメントしてくれるAIエージェントには興味があります。作品づくりという面では自分の手で触り、組み立てていくのが好きなのですが、将来的にはAIがプロダクションの中身を組み立てるのを手伝ってくれたり、プロジェクト管理をやってくれたりという時代がくると考えています」とデジタルとリアルの世界観について語る藤倉氏。
「パブリックアートプログラムは今後も継続して行う予定ですが、その次の準備もしっかり進めているところです。現段階ではどのようなアーティストの方が参加してくださるのか、どういう作品になるのかは決まっていませんが、HPワークステーションの性能を引き出した素晴らしい作品が出てくることを期待しています」と武井氏。
「私も秋に行われる美術展に向かって、今回のコンセプトを共有した新たな作品の構想を練っているところです。引き続きHPワークステーションのパフォーマンスを活かした作品づくりを進めていきたいと思っています」と最後に藤倉氏は語ってくれた。HPは今後も戸田建設の取り組みと、藤倉氏の活躍を支えていく。
関連リンク
- 戸田建設株式会社
- TODA BUILDINGでのパブリックアートプログラム「APK PUBLIC Vol.2」APK PUBLIC Vol.2 | PROGRAM | ART POWER KYOBASHI - アートパワー京橋
- BIM・CIM/GIS向け HP ワークステーション | 日本HP
- HP Z6 G5 A Workstation 製品詳細・スペック - HP Workstations ・PC通販 | 日本HP
- HP ZBook Fury G1i 16inch Mobile Workstation
- HP ZBook Fury G1i 18inch Mobile Workstation
- NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition
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