デジタルツイン開発とローカルAIエージェント開発の共通基盤となるHPワークステーション
オムロン株式会社
2026-09-17
少子高齢化による人材不足、ベテランの技術伝承など、課題が顕著な日本の産業界において、課題打開のためのDX推進は不可欠であることはすべての企業の共通認識となっている。 制御機器の分野で世界をけん引するオムロンもそこへ着目。デジタルツインとAIを融合させた最新技術で社会的な課題解決に臨んでいる。最先端の現場で今何が起こっているのか、取り組みを支えるHPワークステーションの活躍と共に担当者に話を伺ってきたので紹介しよう。
目的
- デジタルツインとAIを活用し、最先端の検査装置技術を確立する
アプローチ
- HPワークステーション製品群のパフォーマンスで研究開発を促進
システムの効果
- 高性能GPU×4枚搭載モデルでデジタルツイン・AIエージェントの構築を実現
- 1兆パラメーターオーバーのLLMをローカルのワークステーションで構築を実現
ビジネスの効果
- AIエージェントで熟練技術者の作業を大幅に短縮
- 24時間365日の安定稼働を実現
- ローカルLLMとクラウドLLMの使い分けでコストと開発効率の最適化を実現
取材:中山 一弘
制御機器で世界をリードするオムロン
オムロン株式会社(以降、オムロン)は独自の「センシング&コントロール+Think」技術を中核としたオートメーションのリーディングカンパニーとして、制御機器、ヘルスケア、社会システム、データソリューション事業を展開し、事業を通じたよりよい社会づくりに貢献するグローバル企業だ。今回ピックアップする制御機器事業では、企業が抱える課題を解決するオートメーション技術をベースに、世界中へ向けて幅広いラインナップの制御機器と制御アプリケーションを提供してきた経緯がある。
「私は2006年にオムロンに入社し、コントローラ事業部に約20年在籍しています。その間、現在も主力のコントローラであるNJ/NXシリーズの開発やFAの統合開発環境に携わってきました」と語るのはインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー(IAB) 商品事業本部 コントローラ事業部 技術専門職(京都大学博士[ロボット工学])の岩村 慎太郎 氏だ(以降、岩村氏)。
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー(IAB)
商品事業本部 コントローラ事業部
技術専門職(京都大学博士[ロボット工学])
岩村 慎太郎 氏
2015年にアメリカのAdept Technology社というロボット関連の会社をオムロンが買収したのをきっかけに、3Dシミュレーションの技術「Sysmac Studio」を利用したロボット統合コントローラの開発も手掛けてきた岩村氏。「2023年に博士号を取得し、社内の昇格試験を経て『スペシャリスト』として業務にあたっていますが、現在はIABの中でデジタルツインやAI関連の開発に注力しています」と同氏は自身の経緯を語る。
ロボット統合コントローラの開発を行っていた当時はNVIDIA Omniverseがリリースされた時期でもあった。その過程で岩村氏は「 NVIDIA Omniverse Partner Council Japan 」を知り、デジタルツインの活用に舵を切り始めたのだという。「弊社にはセンサ事業部という部署があるのですが、FAのセンサで画像処理を行っています。そこでNVIDIAのGPUのレンダリングエンジンなどを使うことで、設計の前倒しなども可能になるのではないかと考えました。
NVIDIA Omniverseが登場し、様々な人々がコラボレーションする場として機能することに期待が寄せられ、岩村氏はその波がFA(ファクトリー・オートメーション)にも来るのではないかと予想したのだ。
「デジタルツインで最初に取り組んだのはコントローラと画像処理を組み合わせて照明条件を考慮したロボットのティーチングをデジタルツインで実現する仕組みづくりでした。具体的にはロボットの手の先にカメラと照明を付けて、それを仮想空間で動かしながらロボットのティーチングができるシステムを展示会で発表しました」と振り返る岩村氏。
以降、NVIDIA Omniverseを使った開発を進める中での視点にも大きな変化があったのだという。「例えばX線検査装置は世界中に販売している製品です。例えばアメリカで機器のデモをおこなうのは輸送やスタッフの派遣などコストも手間も掛かりますが、デジタルツインの技術を使えば、離れた場所にいる相手でも詳細に機器を見せることができます」と岩村氏。
また、遠隔地でもコントローラのリモートメンテナンスができる点や、アナログでは知識の継承が難しい場合でも、デジタルツインやAIであれば記録がきちんと残る点など、NVIDIA Omniverseは多くの可能性を秘めている。そんなデジタルツイン環境を岩村氏の手元で再現するためのデバイスに選ばれたのがHPワークステーションだ。
HPワークステーションを最大限に活用
現在、HP Z8 Fury G5 Workstationをはじめ、HP Z6 G5A、HP ZBook FuryなどHP製品を数多く使っている岩村氏。「HP Z8 Fury G5には4基のNVIDIA RTX PRO 6000を搭載しており、主にAIモデルのローカル実行、マルチGPU推論、ファインチューニング、NVIDIA VSS/VLM/RAGを利用したAIエージェント開発の中核環境として活用しています。HP Z6 G5 Aに関してはVLMやRAGの構築、アプリケーション開発など、PoCを迅速に進めるために利用しています。いずれにしてもHPワークステーションはNVIDIA Omniverceでの開発とX線検査装置向けのAI開発向けの研究基盤として運用しています」(岩村氏)。
最近の半導体では、極小のチップレットと呼ばれる有機基板を組み合わせる手法が使われるが、シリコンと有機基板の熱膨張係数の差によって反りが生じハンダの浮きなどが発生することがある。この現象は多層化されるほど多くなり、これを防ぐことはとても重要な課題となっている。
「チップレットは3D構造でコストもかかっているので、不良があった場合にはできるだけ早い段階で取り除く必要があります。X線検査装置ではこうした異常を発見することができます」と岩村氏。実際に稼働している状態で、不具合が見つかれば、改めて人間のオペレーターがそれを実際に見て、本当に不具合かどうかを確認することになる。
「基本的に不良が出ることはほとんどないので、過検出かどうかというところも問題になってきます。この判断は最終的に人間の熟練者が行っているのですが、どうやっているのか尋ねてみると、やはり過去の経験の蓄積でやっているということがありました」と岩村氏。現場では検査パラメーターの設定で多めに検出させるようにして、そこから調整を繰り返していく。検査結果が過剰だと分かった場合は、パラメーターを調節して閾値を徐々に詰めていくといった流れだ。
「この作業にAIエージェントを構築することによって、不良の原因を熟練者でなくても段階的にきちんと理由を付けて説明できるのです。 HP Z8でそのための研究を続けていますが、ここでは我々の特許技術も活用しています。その結果、これまで2次元の世界であったVLMを3次元で理解させることも可能になりました。今後はこの技術が大変役立つことになると考えています」と岩村氏は語る。
とはいえ、このケースではAIに与える情報が多いほどよいというわけではないのだという。「X線検査装置に関する情報はAIは何も学習していません。ナレッジグラフによって情報を与えるのですが、この業務に関しては元々学習させた90%以上が不要となるので、『不要な知識を忘れさせる』という難しい課題が残っています」と語る岩村氏。
一般的にはファインチューニングによって知識を足す方向になっているが、一度与えた情報から不要な情報を抜き取るということでさらに高速な動作が見込めるという。非常に難易度の高いチューニングになるが、岩村氏のチームが必ず効率的な手法を確立するだろう。
HPのサポート力を実感
こうしたNVIDIA Omniverseを活用したAI開発で岩村氏の所有するHP Z6、Z8シリーズは常にフル稼働状態だ。しかし、導入した当初から現在に至るまでトラブルが起こったことはなく、HPワークステーションの可用性の高さを改めて実感しているという。
「2025年に購入して以来、約1年になりますが、電源を落とした覚えがありません。それでいて非常に安定した動作を続けてくれているのは大きな安心材料となっています。静粛性も高いので、デスクサイドに置いていても気になりません。ファンの音がうるさいと集中力が途切れてしまうので、その点でも気に入っています」と感想を述べる岩村氏。
「2026年6月にクラウドAI開発環境のトークン課金形態が変更になったことで、コストの面の負担が大きく変わりました。そのことをHPの勝谷氏に相談したところ、HP Z8 FuryにNVIDIA 6000 Blackwell Max-Q Workstation Edition 4基構成で1兆パラメーター級のLLMをローカル環境に構築することが可能となり、ローカルとクラウドで効率よくコスト面も抑えながらAI開発を進めることができるようになりました。このアドバイスは非常に助かりました。マシンをサポートしていただいているHPの若宮氏と共に、ベンダーにこまで深くサポートしてもらったのは初めてだと感じています」と岩村氏は評価する。
ものづくりを支える最適な環境構築を目指す
「これまでのジェネラリストという存在はAIに置き換えられていくと思います。これから必要になるのはドメインスペシャリストという存在だと思います。私はオペレーションテクノロジーが専門で、ここで20年のキャリアがあるのでそのノウハウをベースにユニークさを出していけると考えています」と語る岩村氏。
今後は工場に設置された制御装置もユーザーと対話できるものに変わり、インスペクションマシンからインテリジェントマシンへと置き換わっていくことが予想される。「例えばX線検査装置にしても、検査をすることが目的ではなく、不良品を出さないことが本来の役割です。すなわち不良品が出ない製造プロセスができれば、検査機も不要になるのです。そのような環境を構築することが私たちが目指すべき究極の姿だと思います。今後もその目標へ向けて研究・開発を進めていきたいと思います」と岩村氏は語ってくれた。HPは今後もオムロン様と岩村氏の研究開発をサポートしていく。
エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーションビジネス開発部
部長
若宮 明日香 氏(左)
同
エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーションビジネス開発部
AI/データサイエンス市場開発担当部長
勝谷 裕史 氏(右)
2025年に購入して以来、約1年になりますが、電源を落とした覚えがありません。それでいて非常に安定した動作を続けてくれているのは大きな安心材料となっています。
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
【イベントのご案内】
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■ オムロン様 登壇セッション
生成AIを『成果』に変える現場とは ~オムロンが挑むデジタルツインとローカルAIエージェント開発
日時: 2026年10月7日(水) 11:00-19:00(オムロン様登壇時間 15:35-16:05)
会場: 品川プリンスホテル
参加費: 無料(事前登録制)
事前お申込みは以下よりお願いいたします。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

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