タイムラプスとAIで実現する受精卵のリアルな観察データをHPワークステーションで管理
株式会社アステック
三谷商事株式会社
2026-09-09
医療分野における技術革新が続いている。例えば不妊治療では、より確実で精度の高い判断ができる受精卵観察システムが望まれていた。株式会社アステックは高い技術力でそれを現実のものとし、世界から注目を集めている。彼らが開発したシステムにはHPのワークステーションが利用され、医師や培養士の業務効率化や生産性向上に役立てられているという。今回は同社の担当者に話を伺うことができたので紹介したいと思う。
取材:中山 一弘
目的
- 受精卵観察システムの確実な運用をサポートするコンピューターの選定
アプローチ
- 可用性とコストパフォーマンスが高く、安定供給が見込めるHPワークステーションの導入
システムの効果
- 昼夜問わず安定した運用
- 適切なパフォーマンスで適正な操作が可能
- AI機能を確実に処理するスペック
ビジネスの効果
- 受精卵観察システムの適正な価格設定に貢献
- トラブルが少なくサポートへの負担が最小限
- 優れた調達力で大規模納品時にも安心
不妊治療の現場に革新をもたらしたアステック
株式会社アステック(以降、アステック)は福岡県に本社を置く、ライフサイエンス分野をけん引する企業だ。細胞培養や生殖医療など、生命科学において確かな技術と実績により多くの信頼を勝ち得ており、世界中の医療や研究に携わる人々が信頼を寄せる機器やソリューションを提供している。「生命」というかけがえのないものに対する責任と誇りを持った同社の「ものづくり」の精神と、世界一のインキュベーターブランドを目指す向上心で、品質、技術、サービス、サポートの可能性を広げ、社会貢献を続けている。
様々な領域で同社の技術が活かされた製品を展開しているが、その中のひとつに「受精卵観察システム CCM-CHRONOS (以降、受精卵観察システム)」がある。「受精卵の微細な変化を鮮明に捉えるカメラを取り付けていて、深度合成による圧倒的な立体感で状態を観察・記録することができます。このカメラは動きながら受精卵の1個1個を撮影しているのですが、それを医師や培養士が治療方針を考えるための情報として活用してもらうことになります」と語るのはアステックの井上氏だ。
「一般的に受精しているかどうかを確認するには、顕微鏡を使って観察する必要があります。このとき、一度装置を止めて受精卵を出して確認しなければなりません。エンドポイントで見て判断するという時間が必要になるので、どうしても手間も時間もかかってしまいます。しかし弊社の受精卵観察システムでは、カメラを内蔵してタイムラプス的に撮影していくので、後から振り返って観察することができます。限られたタイミングの観察だけでは捉えきれなかったわずかな変化も、プレビューで遡って確実に確認できるというメリットがあります」と波多野氏は言葉を続ける。
受精卵を外に出すことなく、必要に応じて振り返りながら観察することが可能となるため、機械の開け閉めによる室温の影響などのストレスを受精卵に与えることもない。受精卵を守るという意味でも大きなメリットがあるのだ。
「医師や培養士が受精卵を観察するとき、タイミングによっては観察時に受精していなくても数時間後に反応が出てくるようなこともあります。もちろん個人差があるので、どの卵を母体に戻すのか、凍結保存するのかなどの判断材料としても、タイムラプス機能が付いたモデルは卵にも現場の方にも優しいということにもなります」と波多野氏。
「これまでのモデルであれば、エンドポイントでの観察や途中でマイルストーン的なところだけ取り出して顕微鏡で観察するなどの方法でしたが、やはり細胞というものは一連の流れのなかで観察していかないと、個体差もあるしタイミングによって判断が変わってしまう場合もあります。タイムラプスインキュベーターの登場によって、変化を見落とす可能性を大幅に減らすことができるようになりました」と井上氏も受精卵観察システムが医療に与える影響について話をまとめる。
カスタマーサービス課 係長
波多野 利昭 氏(右)
開発部 開発課
課長
井上 広夢 氏(中)
総務部 係長
鍵本 博明 氏(左)
また、アステックの受精卵観察システムを管理するアプリケーションにはAI機能も追加されている。受精卵を培養していくなかで、様々な形で状態を表すサインのようなものを出すことがある。変化が起こったと思われるタイミングを判定するのにAIが使われているのだ。目視では判断が難しい微細な変化であっても、AIが客観的な解析結果を示すことで、精度の高い判定を強力にサポートする。このAI機能を含めた管理アプリケーションのプラットフォームとしてアステックが選択したのがHPのワークステーションとなっている。
HPワークステーションの高可用性に期待
高性能なタイムラプスインキュベーターを持つ受精卵観察システムの管理に使われているのは「HP Z1 Tower G9 Workstation」だ。「このモデルはCAD設計/BIM、ビジュアライゼーション、3Dデザイン、モデリング、リアルタイムレンダリング、シミュレーション、ゲーム開発などに使われる製品で、コストとパフォーマンスのバランスがとても優れているのが特長です。冷却性能を向上させたデザインを採用しているので、長時間稼働でも安定した運用が可能です。アステック様のように医療現場でお使いいただくのに最適なモデルとなっています」と語るのはHPの新井氏だ。
「HP Z1 Tower G9 WorkstationはHPワークステーションの中で唯一、NVIDIA GeForce RTXグラフィックスが選択できるモデルです。受精卵観察システム用のアプリケーションの仕様を決めた際に、安定した供給とグラフィックスパフォーマンスを考慮した結果、NVIDIA GeForce RTXグラフィックスを搭載したHP Z1 Tower G9 Workstationが選ばれました」と当時の状況を語るHPの竹本氏。
エンタープライズ第一営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション営業部
ワークステーションスペシャリスト
竹本 大樹 氏(右)
エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション事業開発部
市場開発担当部長
新井 信勝 氏(左)
「それぞれの単発の処理に関しては、それほど負荷のかかるものではありません。ただ、どうしても大量の画像処理が必要になってくるので、総合的な負荷という点ではかなり高くなります。例えばインキュベーターで撮影した大量の画像の管理や、最終的な判断をする際の補助的な役割のためにAIも搭載していますが、これにもやはり負荷がかかるため、ワークステーションがやはり最適だと考えました」と語る井上氏。
「私たちがシステム全体で重視しているのは、ワークステーションの安定性です。どうしても病院では昼夜問わず、安定稼働してくれないと困りますが、今のところHPのワークステーションでクリティカルな事故が起こったことはありません。また、HPさんの場合は、サポート面でしっかり支えてもらえるので、その点での安心感が高いと感じています」と評価するアステックの鍵本氏。
HPワークステーションといえど、機械であるからには故障と無縁というわけにはいかない。特にストレージに関してはどうしても消耗品という側面があるため寿命を迎えることもある。HPには全国を対象としたサポート体制があるので、万が一のトラブルでも早期の対応が可能だ。
「HP様から製品を調達させていただくようになるまでは、私たちのほうでGPUを用意していました。価格が大きく変動していた時期もあったので、安定した供給が難しかったこともありました。先日も100台単位の納品をおこないましたが、HP様のご協力もあり、スムーズに揃えることができ、とても助かりました」と長年、アステックのサポートを続けている三谷商事の野上氏はHPの調達力についての評価を語る。
情報システム事業部
ビジュアルシステム部
大阪営業所
野上 今日子 氏
培養室のすべてをサポート
受精卵観察システムにより、不妊治療の精度向上に大きく貢献したアステック。「私たちの今回のシステムでは、製品のコンセプトとして受精卵を撮影した画質を重視しています。そこに関してはお客様からたいへん評価していただいていて、画質の向上によって判断がしやすくなったというお声をいただいています。また、それによってAIでの処理精度も向上していく好循環が生まれています」と井上氏は手応えを語る。
また、受精卵観察システムは日本国内だけでなく、海外からも注目を集めているのだという。「現在は日本国内のお客様が多いのですが、海外での実績も増えてきて数年後には逆転するかもしれないと予想しています。ただし、国によっては当局の認可を受けないと販売できない場合もあるため、現在は各国で認可を得るための準備もしています。また人間ではなく牛などの家畜に応用するなどのニーズもあります。その点でも可能性は今後も広がっていくものだと考えています。製品によってはiPS細胞の製造に使われるようなものもあり、さらに注目されるテクノロジーだと思っています」と鍵本氏は語る。
「弊社が『機械屋』というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、現在ではAIなども含めてアプリケーションの開発にも注力しています。AI画像解析機能をウェブアプリケーションとして提供する『Life Whisperer』はその代表です。今後も機械関係はもちろん、消耗品をお届けするサポート業務、アプリケーション開発など、幅広くお客様に役立つトータルソリューションを提供していきたいと考えています」と語る波多野氏。
「今後は、現在のモデルを強化していくことが中心になってくると思います。特に、ユーザーの負担を減らしながら判断の精度を向上させるAIを確立したいと考えています。ワークステーションに関しては、超小型モデルにも興味があるところです。不妊治療を行うクリニックなどは、例えば駅前のビルに入っているところなど、あまり広くないところもあります。そういったところでも設置しやすくなります。弊社としてはインキュベーターというだけではなく、『培養室のすべてを全面的にバックアップできるメーカー』を目指していきたいと考えています」と井上氏は最後に語ってくれた。HPと三谷商事は今後もアステックをサポートしてゆく。
HPのワークステーションでクリティカルな事故が起こったことはありません。また、HPさんの場合は、サポート面でしっかり支えてもらえるので、その点での安心感が高いと感じています。
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