【HP Indigo海外導入事例】
HP Indigo導入で利益率20%改善
──Shizan Digital Printing社のビジネス変革ストーリー
Shizan Digital Printing Co., Ltd.
ノベルティ印刷の収益性・柔軟性・市場対応力を一新
「スピードが足りない」「コストが合わない」「多品種・小ロットに対応できない」──こうした課題に直面していた中国・江蘇省のShizan Digital Printing社は、HP Indigo 15Kとの出会いを契機に、特殊商業印刷の領域で新たな可能性を切り拓いた。従来の制約を打破し、柔軟性・生産性・創造性を兼ね備えたデジタル印刷体制へと大胆に転換した同社。その変革の軌跡と、HP Indigoがもたらしたビジネスインパクトを紐解く。
収益を圧迫する構造的課題──旧来設備が抱えていた限界とは
中国・江蘇省蘇州市に拠点を置くShizan Digital Printing Co., Ltd.(石山数码印刷有限公司、以下Shizan社)は、名札やキーホルダー、カードなどノベルティグッズの特殊商業印刷を手掛けてきた。しかし従来使用していたUVインクジェット印刷機は出力が低速で1件あたりのコストも高く、多品種・短納期が要求される小ロット注文に対応すると採算が合わない状況に陥っていた。換言すれば、小ロット案件を受けても利益が出ず、受注を逃せば売上機会を損失するという板挟みで、事業拡大のボトルネックとなっていたのだ。加えて顧客からはより繊細な加飾やフルカラー印刷の要望が高まっていたものの、旧来設備では色ズレや表現力の限界があり、品質面でも課題を抱えていた。これら構造的な制約によってShizan社の収益性は伸び悩み、抜本的な打開策が求められていた。
印刷体制の再構築──HP Indigo導入がもたらした戦略的転換
こうした限界を突破するため、Shizan社は印刷体制の抜本的な改革に着手し、HP Indigo 15Kデジタル印刷機の導入による生産モデルの再構築を図った。導入にあたって掲げた狙いは明確だ。
- 高速・高精細な出力で生産性を飛躍的に向上させること
- 多品種・小ロット印刷への柔軟対応により小規模案件も利益が出る体制を築くこと
- ノベルティ市場へ本格参入して新たな収益源を確保すること
以上の三点である。
事実、HP Indigo 15Kの導入によってShizan社の生産現場はデジタル化され、従来ネックとなっていた速度と品質の両面で飛躍を遂げた。One Shot多色同時印刷やサンドイッチ印刷(白インキを中間に挟む多層印刷)などインディゴ独自の先進技術を駆使することで、以前は困難だった精細な多層カラー表現も実現している。Shizan社は「HP IndigoのOne Shotとサンドイッチ印刷技術により従来のボトルネックを克服し、新製品の可能性が広がった」と評価しており、生産プロセスをデジタルに転換した効果に手応えを示している。
数字で語る成果──利益率・処理能力・市場対応力の飛躍
デジタル化の成果は経営指標の向上に如実に表れている。Shizan社がHP Indigo導入によって得た主な効果は次のとおりである。
- 生産速度の飛躍的向上: 高速デジタル印刷への切り替えにより印刷スループットが大幅増加。これに伴い納期が短縮し、一日に処理できる注文件数も拡大した。急ぎの小ロット案件にも余裕を持って対応できる体制が整い、機会損失の削減に直結している。
- 小ロット案件の収益化: 1個からの名入れ注文のような極小ロットでも、版代不要のデジタル印刷なら十分に採算が取れる体制となった。従来は不採算だった少部数案件で利益を確保できるようになったことは収益構造上画期的であり、新規顧客の小口発注にも積極対応できる競争力に繋がっている。
- 運用コスト削減と利益率の改善: デジタル化による省力化・効率化でインクや人件費などの運用コストが削減され、利益率が約20%向上した。コスト構造の改善により利ざやが拡大し、得られた利益をさらなる設備投資や新サービス開発に再投下する好循環も生まれている。
- 新製品開発と新市場への参入: HP Indigo 15Kの多様な印刷能力を活かし、個人向け名札やオリジナルキーホルダー、IDカードなど従来になかった製品を次々と開発。これによりノベルティ印刷市場へ本格参入して新規顧客層を獲得し、事業領域を大きく拡大した。
- 企業ポジションの向上: ビジネスモデルの変革に伴い、Shizan社は単なる下請け印刷業者から、企画提案力を備えた製造パートナー企業へと着実に進化している。顧客に対して印刷物以上の価値を提供できる存在となったことで、市場における評価や存在感も向上しつつある。
- 以上のように、生産効率・収益性の向上と市場拡大を両立し、Shizan Digital Printing の事業は質・量ともに大きく飛躍した。
技術が利益を生む──HP Indigo 15Kが支える高収益印刷モデル
こうした成果の背景には、HP Indigo 15Kがもたらした革新的なデジタル印刷機能の数々がある。Shizan社はこれら先端技術をフル活用し、生産効率と付加価値の双方で競争力を高めた。以下にHP Indigo 15Kの主な機能と、そのビジネス上の効果を整理する。
| 技術機能 | 特長・効果 |
|---|---|
| One Shot多層同時印刷 | 複数の色を一度のパスで同時に転写するHP独自技術。従来は工程を分けて重ね刷りしていた多層カラー印刷を見当ずれなく高精度に実現し、時間短縮と品質向上を両立する。 |
| サンドイッチ印刷 | カラーと白インキを交互に重ねる多層印刷手法。透明アクリル板などの透明素材に裏打ちの白インキを挟むことで鮮やかな発色と両面からの視認性を確保でき、クリア素材を用いた高付加価値ノベルティを可能にする。 |
| プレミアムホワイトインキ | 高濃度の白インクにより、黒や色物の用紙・プラスチックにも下地をしっかり隠蔽する印刷が可能。従来は困難だった濃色素材へのフルカラー印刷を実現し、ダークカラーのグッズやカードへの直接印刷で加工工程を削減するとともに、新たな製品バリエーションを提供できる。 |
| 広色域対応 | CMYKに加えて各種特殊色インキを使用でき、オフセット印刷に匹敵する広い色域を再現。ブランドカラーや微妙な色調も忠実に表現できるため、印刷物の品質を一段と高めている。 |
| 多様な素材適応力 | 紙はもちろん、PVCやPETなどのプラスチック、合成紙、金属調シートなど幅広い素材への直接印刷に対応。Shizan社はこれにより印刷後の貼り合わせ工程を減らし、名札やカードを樹脂素材に直接印刷するなど工程簡略化とコスト削減を実現。扱える素材の幅が広がったことで、提供できる製品サービスの領域も拡大している。 |
これら先進的な技術要素の導入により、Shizan Digital Printingは高付加価値ノベルティ製品の品質向上とバリエーション拡大を同時に実現している。従来は困難だった濃色・透明素材への鮮明な印刷や、多層に重ねる凝ったデザイン表現も可能となり、顧客に提供できるクリエイティブの幅が飛躍的に広がった。これらの技術により、高付加価値ノベルティ製品の品質向上とバリエーション拡大を両立した。
下請けから提案型へ──Shizan社が描く次世代印刷ビジネスの姿
HP Indigo 15Kの導入効果は、同社のビジネスモデル変革にも波及している。Shizan社は技術導入と歩調を合わせて組織体制や営業手法の改革を進め、デジタル印刷の可能性を最大限に活かす次世代型の事業モデル構築に取り組んでいる。
まず、社内に製品企画部門を新設し、これまで外注に頼っていたノベルティ商品の開発を内製化した。これにより顧客ニーズを踏まえた新商品のアイデア出しから試作・量産までを一貫して自社で完結できる体制を整えた。また営業部門では受注型の待ち姿勢から脱却し、提案型の営業スタイルへ転換を図っている。顧客と共同でオリジナルグッズを企画・製造するといった共創アプローチも積極的に推進し、単に注文をこなす印刷会社ではなく課題解決型のパートナーとして信頼関係を築き始めている。実際、これらの施策によってShizan社は「印刷物を納品するだけ」の下請け業者から、企画・製造・納品までトータルに担う提案型企業へと飛躍的に進化を遂げた。
Shizan社のこの挑戦は、デジタル印刷がもたらす印刷ビジネスの新しい姿を体現するものだ。単なるモノ刷りから脱却し、顧客の商品価値やブランド価値を高める「価値創造型」のサービス提供へと踏み出した点にこそ次世代ビジネスの本質がある。高性能なデジタル印刷技術と企画提案力を武器に、Shizan社は今後も印刷を通じて顧客と新たな価値を共創する**存在として成長を続けていくだろう。今回の事例は、伝統的な印刷企業がデジタル技術によって収益性と付加価値を飛躍させ、市場でのポジションを変革しつつあることを示す好例と言える。Shizan社はまさに、印刷業の未来像を切り拓く先駆者としてその歩みを進めている。