現在、多くの地方自治体のインターネット閲覧環境は、総務省が策定した「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で定義された「αモデル」に準じたシステム構築がなされていることはご存知の通りだ。しかしこれらのシステムは強固なセキュリティである一方で、柔軟性に乏しく、インターネットサービスの活用が当たり前の時代にあって、思ったような仕組み作りができないという声も大きい。そのような課題を感じた那覇市役所は「HP Sure Click Enterprise」によって柔軟性に富んだシステム構築を実現したという。どのような取り組みであったのか、那覇市役所へ直接話を伺ってきたので紹介しよう。
目的 ・αモデルにおけるインターネット閲覧およびファイルダウンロードの利便性向上とセキュリティの確保 |
アプローチ ・HP Sure Click Enterpriseの導入 |
システムの効果 ・PC端末(LGWAN端末)内で完結できる利便性 ・仮想環境用のサーバ構築が不要なため、システム全体への影響が少ない ・セキュアなブラウジングとファイルダウンロードの実現 |
ビジネスへの効果 ・職員の利便性と生産性の向上 ・仮想環境用のサーバ構築不要による導入期間の短縮化 ・シンプルなハードウェア、ソフトウェア構成による導入・運用コストの削減 |
那覇市役所は、沖縄の県都でもある那覇市に住む約32万人の市民に対してサービスを行う行政機関だ。古くは琉球王朝の時代から海外貿易の窓口として発展してきた独自の文化を感じさせてくれる街並みと南国特有の美しい海が織りなす景観は、日本人はもちろん外国人からも人気のある一大観光地にもなっている。そんな那覇市役所において、IT活用時にある課題が生まれていた。
多くの自治体において、インターネット経由でのサービス利用や情報収集など、外部サイトを活用したいシーンは数多い。しかし、多くの自治体が採用しているαモデルは強固なセキュリティが構築できる反面、インターネット接続への柔軟性が乏しく、外部サイトへのアクセスが容易には行えないという共通の課題があるのが実情だ。
「那覇市でも、インターネット系端末は各課に共用端末を数台ずつ設置していますが、同様の課題を抱えており、調べ物や調査への回答等の業務が効率的に行えていませんでした。そこでインターネット閲覧環境を仮想化し、職員が効率的な業務を行うことができるようなソリューションを探していました」と語るのは那覇市役所の屋良氏だ。
那覇市役所はそのような現状を改善しようと方法を模索、ソリューションを調査していくうちにHP Sure Click Enterprise(以降、HP SCE)の情報を得ることになる。
あるセキュリティフォーラムに参加した屋良氏はイベントの中でHP SCEと出会った。「セキュリティフォーラム参加後、那覇市役所の伊覇様、宮國様にもご同席をいただき、HP SCEのデモをさせていただきました。αモデルにおけるインターネット活用に課題があるとお聞きし、HPのセキュリティソリューションがお役に立てるのではと考え、地域を担当されている販売店の興洋電子様と共にご提案をさせていただきました」と語るHP 三好氏。
HP SCEは悪意の可能性のあるWebサイトやダウンロードファイル、添付ファイルなどを、マイクロVMテクノロジーを使って仮想空間に閉じ込めた状態でオープンし、万が一脅威が含まれていてもファイルを閉じればそれで封じ込めができるソリューションである。
那覇市役所が課題としていたインターネット閲覧業務のケースでも、HP SCEを活用することで安全性を担保しつつ、エンドポイントであるPC端末内ですべてが完結できるため、システムへの負荷がほとんどないという点も特徴だ。
「すでに次年度予算でインターネット分離環境のリプレイス予算を計上していたこともあり、HPのソリューションには大変興味を持ちました」と屋良氏は当時を振り返る。
当初、興洋電子はサーバ型仮想ブラウザソリューションや仮想デスクトップなども提案に向けた選択肢として検討をしていた。「しかし、これらのソリューションはサーバ型ソリューションのため、同時接続数の担保や常時接続できる認証の実現など、拡張性や可用性をどう担保していくか、運用上の課題が懸念されていたため、HP SCEを選択しました」と、興洋電子の川崎氏は語る。
その後、那覇市役所によって最終的に採用されたのはHP SCEだった。「検証中においてHP SCEは端末内で完結する仮想化ソリューションであったため、他製品のようなサーバ型で必要になる運用上の課題はないように思われました」と那覇市役所の宮國氏は評価ポイントについて語る。
また、今回那覇市役所におけるセキュリティシステム構築の要件として、インターネット閲覧環境の仮想化と共に、ダウンロードファイルの無害化が求められていた。「ここではファイル無害化ソリューションである『サニタイザー』をご提案しました。他製品の無害化機能と比較しても、無害化が可能な対応アプリケーションやファイルの多さ、さらに追加対応、開発の柔軟性などにおいて優位性があり、セキュリティや利便性に強いアドバンテージがあると判断しました」とその経緯を語るのは興洋電子の山本氏。
実際のHP SCEとの連携についてHP 澤田氏は、「最初にHP SCEでLGWAN側のファイルサーバにダウンロードしたファイルを保存し、それをサニタイザーでリアルタイムに無害化して別のフォルダに保存するといった流れになります。これにより、通常のインターネット利用と同じように、職員の皆様はすぐに無害化されたファイルを利用することが可能です」と語る。
また、「HP SCE側で使うダウンロードフォルダについてはユーザーが変更できないように限定し、ダウンロード直後のファイルには触れられないようにしているほか、万が一実行されてしまった場合でも仮想環境の中で実行されるような運用方法を考えています」とHP 内田氏は言葉を続ける。那覇市役所の新しいセキュリティシステムでは、完成したHP SCEとサニタイザーの連携システムにより、完全にリスクを排除できる構成となるように設計が進んでいる。
現在、那覇市役所では段階的な導入の途中となっているが、すでに利用を始めている職員からは多くの声が届いているという。「ある職員は自分の端末(LGWAN端末)から直接インターネットがみられるようになったので、調べ物や調査の業務効率が向上したという声が出ていました。そのほか、これまでインターネットでダウンロードしたファイルを簡単には利用することができませんでしたが、現在のシステムではすぐに無害化されるので即時利用が可能となり、これまでかかっていた時間が大幅に短縮できたという声も届いています」と笑顔で語る那覇市役所 宮國氏。
そのほか、情報担当者からは「サーバ型ソリューションに比べて、同時接続数や可用性などのサーバ設計が不要となり、導入コストの削減の実現や運用負担の軽減につながっている」といった声も届いているのだという。
HP SCEとサニタイザーの連携により、従来のインターネット閲覧環境を大幅に改善した那覇市役所は全体導入の完了へ向けて作業を進めている。「私たちとしてもHP SCEによるインターネット閲覧環境の利便性や操作性の向上によって、住民サービスの充実に寄与できると大きな期待を寄せています」と語る那覇市役所 屋良氏。
「これまでも那覇市や周辺自治体への安定した導入実績とプロジェクト遂行能力で遅延のないシステム導入を実現している興洋電子様にはいつも感謝しています。今回のような新しいソリューションを活用したシステム導入の際にも必要な検証を実施し、機能や性能が問題ないことを確認していただいているので、品質の高いシステムが構築できるのだと考えています」と興洋電子への評価を語る那覇市役所 伊覇氏。
「これからの自治体におけるDX推進には、旧態依然とした環境からの脱却が不可欠となります。そのための基盤となる今回の画期的な連携システムのように、今後も様々な部分でアドバイスやソリューションの提案をしていただきたいと考えています」と那覇市役所 伊覇氏は興洋電子ならびにHPへの更なる期待を寄せた。HPは今後も興洋電子とのパートナーシップを育み、那覇市役所へのサポートを続けていく。
Author : 日本HP