掲載日:2026/04/10

「2025年ウォルマートvsアマゾンをどう見るか」、「ピックルボールがイーターテイメントで拡大」他:進化を続けるアメリカ小売業界Vol.53

「2Dバーコード導入「サンライズ2027」の近況」、「ウォルマートがネイバーフッドマーケットで「快速改装」開始」他:進化を続けるアメリカ小売業界Vol.67

2Dバーコード導入「サンライズ2027」の近況

小売業POS用2Dバーコードのガイドライン。(左)過渡期は1次元と2次元バーコードを両方表示し、(右)2027年以降はどちらか1つを表示するよう指導 出典:GS1ウェブサイト 小売業POS用2Dバーコードのガイドライン。(左)過渡期は1次元と2次元バーコードを両方表示し、(右)2027年以降はどちらか1つを表示するよう指導 出典:GS1ウェブサイト

 

 「サンライズ2027」をご存じだろうか。世界の流通小売業界にとっては次世代への革新を担うプロジェクトで、小売業界が2027年12月31日までに現在の1次元バーコード(JANコードやUPCコード)に加えて2次元バーコード(QRコード等)をPOSレジで読み取れる環境を目指し、流通コードの管理と流通標準に関する国際非営利機関GS1が推進している。

 1次元から2次元バーコードへの移行のメリットは、製造バッチ、ロット番号、賞味期限などサプライチェーンの各段階での情報をのせることができるため、在庫管理、トレーサビリティ、製品の安全管理、サステナビリティの向上が可能となり、消費者がスマートフォンでこれらの情報にアクセスすることでブランドや製品への信頼、エンゲージメントが拡大すると期待されてい

出典:ユーチューブ、GS1 Sunrise 2027 – Resource Label Group、2025年8月 出典:ユーチューブ、GS1 Sunrise 2027 – Resource Label Group、2025年8月

 

 サンライズまで2年を切った現在、まだあまり表立った報道や動きはないが今年2月にフィラデルフィアで開催された「パックエクスポ(PACK EXPO)イースト」コンベンションでGS1米国、コミュニティエンゲージメントディレクター、アンドリュー・モアヘッド氏およびグローバルオフィス、シニアディレクター、スティーヴン・ケディー氏は以下について語った。

  • UPC等1次元バーコードが消えることはない。従って食品や日用品を扱うCPG企業は、小売企業がPOSシステムをアップデートするまでの期間、両方を使用することになる。
  • 2次元バーコードを利用するためには小売企業はPOSシステムのアップデートが必要となる。
  • GS1は2種類を同時にスキャンできるよう、2次元バーコードは1次元から50ミリ以内の場所に配置する「50ミリルール」を採用し指導している。
  • 新スキャナーは2次元バーコードを1次元より早くスキャンできる。
  • 小型商品は印刷スペースの関係上、1次元バーコードのみとなるだろう。
  • 導入に協力しているウォルマート、カルフール、P&G、ペプシコ等は、最初に青果、精肉、調理食品など生鮮食品部門に導入する予定で、現在その作業に集中している。導入後のシナリオとしては、賞味期限によって自動的に値下げする等の具体的な行動が取れるようになり、減耗を削減し粗利向上の機会が生まれる。
  • ヨーロッパ市場ではアパレルや一般的な商品でデジタル上のサステナビリティ開示が可能となり、プーマやパタゴニア等のブランドがQRコードとRFIDタグを通じて既に実践している。
  • ヘルスケア、市販薬では2次元コードは既に一般的に使われている。
  • 現在多くの製品にはUPCコード、マーケティング用QRコード、認証コード、ロットまたはバッチデータ等3、4種類のコードが使われているそうだが、これを一元化することでパッケージに余剰スペースが生まれ、他の用途に使うことができる。

 なおウォルマートは電子棚札(DSL)を2027年度中に全店に設置する計画で3月時点で約2,300店舗に実装済みだが、これによって2Dバーコードへの転換も速やかになる。

 サンライズ2027に積極的に取り組むアマゾン・トランスペアレンシー・プログラムのクレイ・ライアン氏は別のセッションで講演し、2次元バーコードへの移行を踏まえたユニットレベルのシリアライズ(直列化)について語った。同社が非公式に行ったブランドパートナーへのアンケート調査によると、サンライズ2027に向けて活発に準備を行っている企業は20%未満だ。同氏はこの遅延について、リスクであると同時に機会でもあると述べ、同社のアイテムレベルでのシリアライズ認証サービスは世界中で約88,000のブランドに利用されていること、FBA(フルフィルメントバイアマゾン)サービスで2次元バーコード対応が可能であることを示唆した。

 導入についてはメリットばかりではなく、やはり小売企業側の最大の障壁はPOSシステムのアップデートコストだろう。ただし米国の小売業界ではRFIDや2次元バーコード等DXのインフラへの投資は、他業界に比べてマージンが薄いビジネス構造においては、中長期視点での利益率改善のため不可欠だという認識が定着している。

コルゲートの口内炎対応の薬用マウスウォッシュには既に2次元バーコード(左下)と1次元バーコード(右下)がついている。出典:筆者撮影 コルゲートの口内炎対応の薬用マウスウォッシュには既に2次元バーコード(左下)と1次元バーコード(右下)がついている。出典:筆者撮影

本文参考資料:https://www.packworld.com/coding-printing-labeling/coding-marking/article/22961063/sunrise-2027-advances-at-retail-amazon-adds-serialization-as-the-next-layer



ウォルマートがネイバーフッドマーケットで「快速改装」開始

4週間で完了できる改装フォーマット店 出典:ウォルマート社 4週間で完了できる改装フォーマット店 出典:ウォルマート社

 

 ウォルマートは4月6日からにフロリダ、オクラハマ、テキサス、サウスカロライナ、ルイジアナ州のネイバーフッドマーケット10店舗を4週間で改装する「ラピッドリモデル(快速改装)」のテストを行う。導入目的は工事中の休業期間の短縮で、テスト店は全て近くに別のウォルマート店がある地域を選んだ。同プログラムには専任チームだけでなく各店舗従業員も参加し、什器、商品整理、その他の店舗再開に向けた業務を担当する。

 改装後の店舗は①明るい店内、②通路の拡大、③レイアウト変更、④新什器の導入、からなる(上の写真)。店内体験だけでなくEC顧客サービスも強化するためサービスカウンターを拡大し、ファーマシーもデザイン改良する。

 筆者が上の画像を見る限り、当ブログでも取り上げたスーパーセンターの新フォーマットのコンセプト、デザインに準じているがデザインや使用する素材を簡素化した感じだ。ネイバーフッドマーケットはスーパーセンターの5分の1程度の面積だが、4週間という工期が4,000㎡前後の店舗のほぼ内装・什器変更だけの工事で迅速なのかどうかは、日本とはさまざまな条件が異なるので一概には比較できない。米国では多くの場合、必要な許認可取得から実際の工事までいちいち余分に時間がかかる上、建設作業員が簡単に欠勤するのが当たり前なので、一般的には工期は1か月と言われればその倍の時間は読み込む。しかし4週間と大々的に発表しているので、正確に工期が読めない文化要素もクリアする仕組みを作っているのだろう。

 同社は2023年10月に向こう2年間に90億ドル以上の予算で1,400店の改装を発表、昨年4月には650店の改装計画を発表した。インフレによる高所得者のトレードダウンという追い風もあって同社業績は好調だが、今回の4週間改装発表で、業績への改装効果の大きさもうかがい知れる。ちなみにこの改装は電子棚札への転換作業も含むそうだ。



ロウズは年内に全顧客のウェブサイトをパーソナライズ化

ウェブサイトユーザーの居住地情報から同地域の天気予報とそれにふさわしいホームインプルーヴメント活動がサイトに出てくる。上記は、季節が春であることと晴れが続くので芝の手入れに関する商品や情報を提供。 出典:ロウズのウェブサイトからスクリーンショット ウェブサイトユーザーの居住地情報から同地域の天気予報とそれにふさわしいホームインプルーヴメント活動がサイトに出てくる。上記は、季節が春であることと晴れが続くので芝の手入れに関する商品や情報を提供。 出典:ロウズのウェブサイトからスクリーンショット

 

 ホームインプルーヴメント業界2位のロウズは全店舗のデジタルツィンを使って在庫管理やマーチャンダイジングの適正化を進めるなど、最新テクノロジーの活用に熱心だ。同社は昨年末ウェブサイトを刷新し、顧客情報に応じてコンテンツをパーソナライズできるパーソナライズドモジュールをテスト導入した。最初に導入し現在フル稼働しているのは天候ウィジェットで、顧客が今いる地元の天候に応じてバナーの訴求内容や商品推奨をパーソナライズする。基準となるのは顧客プロフィールやDIYプロジェクトあるいは購入の目的だ。

 同社デジタルコマース部SVPのジョー・カノ氏は「もし顧客が冷蔵庫を買ったばっかりだったら、また家電をフィーチャーすることはなく、それを補完する商品、例えば水フィルターやキッチンの簡単な改装などを推奨する」とメディア、モダーンリテールの取材に対して説明している。今稼働している天候ウィジェットでは、もし顧客のいる地域で雨が降っていたら、サイトでは雨天に関連した商品や屋内でのプロジェクト、例えばキッチンの清掃やペンキ塗り用品を推奨し、晴天の場合はアウトドア商品やガーデニング用品を推奨する。場所は郵便番号レベルで認識する。

 現在ウェブサイトのページの15~20%がパーソナライズされているが、年内には全米で100%のパーソナライゼーションを目標にしており、ウェブサイトのアップデート後のエンゲージメントと購入率は以前より向上しているとのこと。

 パーソナライゼーションの対象としては今後ヴィジュアルプレゼンテーションも含める予定で、現在テスト中なのは画像の背景をユーザーの場所によって変えており、例えばフロリダ州内では温かい気候でのアウトドアプロジェクトの画像が背景に見えるが、ウィスコンシン州ではもっと涼しい気候の背景に代わる、などだ。

 CI&T社リテールストラテジーディレクターのメリッサ・ミンコウ氏はパーソナライゼーションは小売の未来だとしながらも、過剰に過去の購買歴やブラウザー歴でフィルターをかけすぎてしまうと、消費者はもっと他にも良い商品があるのではないかというFOMO(もっといいものが他にあったかもしれないのにそれを見逃したかもしれないという不安)の懸念も出てくるので注意が必要とコメントした。

 ロウズはAIアシスタント、マイロー(Mylow)も実用化しており、パーソナルアシスタントとして顧客の利用率は高い。ロウズのように専門的知識が求められるショッピングではAIアシスタントの消費者への浸透は早く、同じことがビューティ業界やウェルネスなどにも言える。



次世代のスーパーマーケットにはヒューマンタッチが重要

ユタ州ヴィンヤードのベラズマーケット店内からプロヴォ渓谷が見渡せる 出典:筆者撮影 ユタ州ヴィンヤードのベラズマーケット店内からプロヴォ渓谷が見渡せる 出典:筆者撮影

 

 AI活用事例が急速に小売業界にも拡大する中、店舗デザイン側からは「より顧客の視点、感覚からヒューマンタッチな店舗設計が必要だ」という声も高まっている。メディア、プログレッシブグローサーの取材によると[1]、フロリダ州タンパを拠点とするデザイン企業API+ディレクター、ジェフリー・ナダー氏は「食品ビジネスのパーソナライズ化が進む中、次世代のスーパーマーケットは床面積以上にレレバンス(関連性)、レスポンシブネス(対応の速さ)、リライアビリティ(信頼性)が重要になる」と述べている。

 ノースカロライナ州シャルロットを拠点とするシュック・ケリー社共同創業者のケヴィン・ケリー氏も「(小売店舗の)未来は完全自動や完全人的サービスではない。顧客は買い物行動に選択肢、快適さ、尊厳、管理を求めている。良い店舗とはただ商品を提供するのではなく、さまざまな可能性を拡げてくれる店だ」とコメントする。

 ウォルマートとは三十年以上取引があるアーカンソー州ベントンヴィルのHFAアーキテクチャー+エンジニアリング社のグローサリー&リテール部リードのスティーヴン・ル氏は「次世代店舗を語る時未来的テクノロジーにフォーカスする傾向があるが、実際のビジネスにおいては、ヒューマンコネクションを強調する傾向があり、ノスタルジックな感覚や長年よく知っているブランドへの好感が大切になってきている」と述べている。

 その例として、ウォルマートではファーマシーを改装する際、授乳期の子供を持つ母親のためのプライベートルームを作ったり、照明や床をより温かみのあるものにグレードアップしている。同社VPのジェームス・オーウェンス氏は「店舗レイアウトに従業員と顧客の間に視覚的なバリアがあってはいけない」と助言する。精肉・鮮魚売場の対面カウンターやベーカリー売場のディスプレースペースは、顧客が食品をよく眺めることができるだけでなく、従業員に質問することもできる。

 さらに、地元コミュニティとのつながりを感じさせる店舗作りも重要だ。建築企業BRRアーキテクチャー社のアトランタオフィストップ、キャロル・バートロ氏は都心部での店舗の小型化について「小型であっても商品やサービスが限定的であると感じさせてはいけない。考えつくされたレイアウト、戦略的マーチャンダイジングによってグラブアンドゴーの利便性と人がメンテナンスすることで成立する青果売場を実現させなければいけない」「スーパーマーケットは未だに生鮮食品のシアターであり、例え小型店でもディスカバリーの感覚を失ってはいけない」と述べている。

 前述のル氏は現在急成長中のアジア系スーパーマーケット、Hマートやフィリピン系アメリカンスーパーマーケット、シーフードシティが大きなフードコートを店内に設置していることに触れ「次世代のスーパーマーケットは、食事を体験や発見などにとって重要なものと位置付けている次世代の消費者とつながっていなければならない」と指摘した。

 冒頭の写真は昨年11月に全米で人口成長率トップクラスのソルトレークシティ郊外ヴィンヤード市に開業したベラズマーケットだ。東は雄大なワサッチ山脈と西はユタ湖に囲まれた同市は最寄りの国際空港や都心から35分という好立地条件もあり、若い世代の理想郷として成長している。同マーケットは地元スーパーマーケットが地元の開発グループと共に出店し、モダンだがノスタルジックなデザインの照明や什器で温かみを感じ、広々とした窓から雄大な山を見渡し自然を感じることができる。またレジを含めて対面サービスコーナーも多く、スペースが広い。「高度テクノロジーは後方スペースや顧客のスマートフォン内に、店舗空間はヒューマンタッチで」というのが今後の店舗デザインの主流になりそうだ。
 

[1] Progressive Grocer, ‘Store design: balancing automation with the human touch’, 2026年3月19日


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【在米リテールストラテジスト 平山幸江】


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