HP、NVIDIAが開催するAIの注目イベント「NVIDIA AI Summit Japan 2024」に出展
2025-01-31
ビジネスにおけるAI活用が注目されている現在、あらゆる業界が求めているのは最新の情報だ。先日開催された「NVIDIA AI Summit Japan 2024」は生成AI、産業デジタル化、ロボティクス、大規模言語モデルといった、AIに関するあらゆる可能性が展示され、最新情報が入手できるイベントとなった。HPももちろんこのイベントに参加。AIの運用に欠かせないワークステーションとAIソリューションを提案した。ここでは、その模様をお届けしよう。

広がるワークステーションによるAI活用
最近のビジネス業界に影響を与えているAIはなんといってもローカル環境で動作するSLM(小規模言語モデル)/LLM(大規模言語モデル)だ。「生成AIがブームになった黎明期にも言われていましたが、社内のデータをクラウド上にアップロードして活用するというスタイルを嫌う企業が非常に多かったのです。いわゆるChat GPTのようなクラウド型のLLMは日々進化し、プロンプトに対する精度も大きく向上しています。しかし、企業が生成AIを使いたいのは、そのような汎用的なデータからの推論ではなく、社内データに紐づくことが大半です。一方で、企業が抱えている大量のデータのほとんどは企業機密あるいは個人情報などの社外に出せないものばかりです。この膨大な社内データをセキュアに、効率よく生成AIによって運用したいというニーズに応えるのがローカルSLM/LLMといったテクノロジーになります」と説明する新井氏。
さらに直近では、大規模なサーバルームが必要なものだけではなく、ワークステーションクラスのコンピューターでも十分な運用ができることが理解され、HP Workstationシリーズに注目が集まっているのだという。「今回のイベント用にお持ちしたのは、HP Z8 Fury G5 Workstationです。インテル® Xeon® W9プロセッサーが搭載可能で、一番の特長はハイエンドグラフィックスであるNVIDIA RTX™ 6000Adaが4基設置できる点です。サーバと比較して非常に小型のデスクトップ型のタワー筐体に、これだけのグラフィックスパワーがあれば、サーバクラスに匹敵あるいは凌駕するパフォーマンスを、オフィス環境に置くだけで得られることになります」と新井氏は語る。

通常、このクラスのグラフィックスを一度に運用するには、200Vの専用電源が必要だが、HP Z8 Fury G5 Workstationは2基の100V電源を搭載することで、オフィスにある通常電源2口で対応することができる。生成AIの推論にはローカルPCをAI PCにすることでも代用できるが、開発や学習、チューニングなども自社でおこなうには高いパフォーマンスを持つコンピューターが必須だ。しかし、新たにサーバを増やさなくても、ワークステーションをオフィスに設置するだけで、それができるようになるということは、企業におけるAI活用に大きなインパクトを与えるはずだ。
HPワークステーションで運用するローカルLLMの実情とは?
本日のイベントでは、まさに新井氏が説明してくれたHP Z8 Fury G5 Workstationを使った、ローカルLLMのデモがHPブースの目玉となっている。「本日のデモは、生成AIを使った画像生成と、動画生成をメインにお見せしています」と案内してくれたのはHPの勝谷氏だ。これ動かしているHP Z8 Fury G5 Workstationのスペックは新井氏が説明したものとなる。

「生成AIとの対話にはプロンプトを用いますが、ローカルLLMには英語版も多く、なかなか英語でプロンプトを作るのが難しいという方も多いと思います。そこでそのプロンプトの生成にも『JAN』を使うことで、英語のプロンプトを考えさせています」と勝谷氏。日本語のプロンプトで思ったような回答が得られないときは英語で入力してみるというのは鉄則だが、プロンプトの生成からローカルLLMに任せられるのは非常に楽だ。

「ここでは『レトロなフェラーリが街中を優雅に走る』といった簡単なプロンプトを生成し、画像生成AIとしてオープンソースの『Flux.1(12B)』で動作させます。ブラウザーで使うUI環境として「Stability Matrix」で構成し、オフラインで動作するようにシステムを構築しています」と説明する勝谷氏。この環境でおおよそ、1分に1枚の画像が生成できるのだという。

LLMを使った動画のデモも見てみよう。「こちらのデモでは動画生成AIに『Cogstudio』を使います。ブラウザーで使うUI環境は『Pinokio』で構成されたオフラインシステムです。プロンプトは同じで『レトロなフェラーリが街中を優雅に走る』としていて、6秒の動画を20分で制作しています」と勝谷氏は説明する。
この2つのデモが1台のワークステーションの中で、インプットからアウトプットまで完結していることになる。外部の情報なしにここまで、このスピードでやれるというのであれば、十分実用的だと考えられる。

こうして出来上がったデータはどのように活用することを想定しているのだろう。「例えば、企業の内部データを使って、広告用のラフ画やイメージ動画を数千、あるいは数百パターンを作成し、その中から候補を選択。イメージ通りのものがあれば、それをデザインセンターに制作依頼する、といった使い方ができます。また、使用する生成AIのバージョンを固定して利用できる点もメリットで、クラウドではAIがどんどん進化してしまうため、企業がその品質を一定に保つことは難しいですが、ローカルLLMならそれも可能です」と勝谷氏は語る。これらのAIアプリは、オープンソースで制作されており、使用する企業側で独自のカスタマイズが可能な点もメリットとなる。多くの来場者は、次々に生成される画像や動画を見てその実力を見つめていた。HPワークステーションの実力を知ることができる、非常にインパクトのあるデモだと感じた。
Z by HP Data Science & AI Global Ambassadors 井ノ上雄一氏も登場
イベント当日は、NVIDIAから出資を受け、大きなニュースになったSakana AI株式会社のResearch Engineerの井ノ上雄一氏もHPブースに立ち、現場を賑わしていた。Kaggle※の最高位であるGrandmasterの称号を持つ同氏は現在、Z by HP Data Science & AI Global Ambassadorsとしても活動をしている。Z by HP Data Science & AI Global Ambassadorsは、世界各国でKaggleにおいて優れた成績を収めている人に対し、HPが機器を提供し、彼らのKaggle活動を支援するというプログラム。
※Googleの子会社であるKaggle.incが運営するデータ分析コンペティションのプラットフォーム

井ノ上氏は貸与されたワークステーション「HP Z6 G5 A Workstation」を使い、Kaggleで開催されている様々なコンペティションに参加。医療画像を扱った課題やLLMが必要とされる課題など幅広いコンペティションで活躍している。同時に様々な日本企業の課題を扱った短期コンペティションを開催しているatmaCupにも参加し、HP Z6 G5 A Workstationの使い勝手の良さとマシンパワーを最大限に活かして好成績を収めている。
「私が使っている、HP Z6 G5 A Workstation は、AMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 7955WXを搭載し、32スレッドによる演算処理ができるモデルです。もちろん、GPUは多ければ多いほど良いですが、NVIDIA RTX 6000 Ada 2基による運用でも十分な性能を発揮し、多くの実験を行うことができています。また、環境準備に時間がかかると実施までが遅れることもありますが、HPワークステーションはプリセットによる環境構築がされており、セットアップが簡単ですぐにLLMを動かせます。このようにすぐに実験環境を用意できると、本当に試行錯誤したいところに注力できる点が非常に有益ですね」と井ノ上氏は、HPのワークステーションを活用するメリットについて語った。
まとめ
今回のイベントでは、実に様々なAIテクノロジーの情報が飛び出してきた。生成AIというと、どうしてもクラウド型サービスを連想し、自身では運営できないと考えてしまう人も多かったのではないだろうか。そんな中、HPや井ノ上氏はワークステーションでも、かなりの事が出来ることを証明することで、多くの人にローカルSLM/LLMの可能性を伝えることに成功したイベントだったと思う。生成AIのビジネス活用に悩んでいる企業は是非一度HPに相談していただきたい。

※コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。

HP Z8 Fury G5 Workstation
高性能デスクトップワークステーションの全く新しいハイエンドモデル。
1つのインテル® Xeon® W9プロセッサーで最大56コア※を提供。さらに、ZデスクトップPCで初めて、GPUとして最大4基のNVIDIA RTX™ A6000を搭載可能。
※ 海外生産品