ECUの評価をデジタル技術で効率化する
エヌビディアの高性能GPUを搭載したHPワークステーションの実力は

「Ansys AVxcelerate Sensors」で検証

2026-05-26

電子制御ユニット(ECU)などをデジタル空間上で検証し、新車開発プロセスを効率化する取り組みが各社で進んでいる。今回は米シノプシスの光学シミュレーションソフトウエアを、エヌビディアのGPUを搭載したHPのワークステーションでテストし、実時間処理の能力を検証した。

※本掲載内容は2026年5月25日 『日経クロステック』 に掲載された記事広告を転載したものです

アンシス・ジャパン株式会社 リードアプリケーションエンジニア 岡 兼司氏 株式会社 日本HP エンタープライズ第一営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション・ビジネス開発部 市場開発担当部長 川口 剛史氏
アンシス・ジャパン株式会社 リードアプリケーションエンジニア 岡 兼司氏 株式会社 日本HP エンタープライズ第一営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション・ビジネス開発部 市場開発担当部長 川口 剛史氏
アンシス・ジャパン株式会社
リードアプリケーションエンジニア
岡 兼司氏

株式会社 日本HP
エンタープライズ第一営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション・ビジネス開発部
市場開発担当部長
川口 剛史氏

新車開発の中盤~終盤では、ECUやカメラシステム全体の検証はシミュレーションツールを用いたHIL(Hardware In the Loop)で行うのが一般的になっている。車両前方などを捉えたカメラ映像と、車載センサーが取得したデータをベンチ上でECUに送り、その応答を基に、ECUの動作や性能を評価するのである。試験時にECUへ注入する映像やデータを一度用意しておけば、同じ条件で反復検証しやすく、実走試験の一部をHILに置き換えることで開発効率の向上やコスト削減にもつながる。開発を早く、安く、正確に進められるようになる。

このときHILで使うカメラ映像は、実車で走行して撮影したものとコンピューターで作成したものの2種類がある。いずれにも利点はあるが、近年は自動運転車も含め、より一層の安全性確保が求められている。そのため、実車走行では取得が難しい多様な状況を想定したテストを効率よく実施できる方法として、コンピューターで作成する方式の重要性が高まっている。

映像の忠実度と実時間性が強み

そこで重要になるのが作成する映像データの品質だ。現実に近い見た目(忠実度)はもちろん、現実の時間とズレがなく進む(実時間性)ことも車の動作を評価する上で不可欠になる。これらを高いレベルで具現化する光学シミュレーションソフトウエアが、米Synopsys, Inc. の「Ansys AVxcelerate Sensors」だ。

「物理ベースのシミュレーションに基づく忠実度の高い映像と、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)に最適化した実時間処理能力がAnsys AVxcelerate Sensorsの強みです。様々なドライビングシミュレーターと連携可能なため、実走行シーンを柔軟に再現することも容易です」と製品の国内販売・サポートを担うアンシス・ジャパンの岡 兼司氏は説明する。

自動車開発におけるシミュレーションでは、映像の「美しさ」だけではなく、センサーが出力する信号レベルでの「正しさ」が何より求められる。その点において、一般的なゲームエンジンと比べて、Ansys AVxcelerate Sensorsは優位性を持っているという。

※ 力学・熱・流体・電磁気などの現実世界の物理法則を数式としてモデル化し、振る舞いを計算機上で再現する手法

HPのZシリーズと最高速GPUで検証

それでは、 Ansys AVxcelerate Sensors をより快適に使うためにはどのようなシステム構成が望ましいのか。今回は、エヌビディアのGPUとHPのデスクトップ型ワークステーション「Zシリーズ」の組み合わせで、 Ansys AVxcelerate Sensors の実時間処理能力を検証した。

複数の組み合わせを検証した結果、「HP Z2 Tower G1i」(以下、Z2)にGPUの最上位モデル「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition (600W)」(以下、RTX PRO 6000 Blackwell 600W)を搭載した環境がベストであることを確認できたという。

「現在主流である『水平画角120°・800万画素(4K画像)』のカメラ仕様でシミュレーションを実施したところ、各フレームを最大20ミリ秒程度で処理できました。毎秒30フレーム相当の実時間HIL運用に求められる時間条件に対して、画像生成処理として高い性能を確認できました。そのことから、後段処理を含むシステム全体での実時間化にも、十分な見通しが得られています」と岡氏は説明する。

また、GPUをやや低価格な「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q Workstation Edition (300W)」(以下、RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q)に変えた場合、フレームの処理時間は24ミリ秒程度と約15%長くなり、GPUの性能が処理に大きく影響することも分かった(図1)。「業務の現場では前世代のRTX 5000 Adaシリーズが多く使われています。最新のカメラ仕様でシミュレーションを行いたい場合は、RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q以上のGPUに換装することをお勧めします」と岡氏は続ける。

図1 GPUが異なる場合の映像処理時間を比較 Z2にRTX PRO 6000 Blackwell 600WとRTX PRO 6000 Blackwell Max-Qをそれぞれ搭載して処理時間を比較。いずれも実時間処理を実現できているが、GPUのグレードを上げると処理時間が約15%も短縮できることが分かった
図1 GPUが異なる場合の映像処理時間を比較 Z2にRTX PRO 6000 Blackwell 600WとRTX PRO 6000 Blackwell Max-Qをそれぞれ搭載して処理時間を比較。いずれも実時間処理を実現できているが、GPUのグレードを上げると処理時間が約15%も短縮できることが分かった
図1 GPUが異なる場合の映像処理時間を比較
Z2にRTX PRO 6000 Blackwell 600WとRTX PRO 6000 Blackwell Max-Qをそれぞれ搭載して処理時間を比較。いずれも実時間処理を実現できているが、GPUのグレードを上げると処理時間が約15%も短縮できることが分かった

一方、ワークステーションについては、より上位のモデルがある中でもZ2が最適という結果になった。要因はCPUの種類だという。

Z2はマルチコアCPU「インテル Core Ultra 9 プロセッサー 285K」を搭載している。Zシリーズの上位モデルが採用しているサーバー向けCPU「インテル Xeon プロセッサー」に比べると、並列処理性能では劣るが、コア単体のクロックは上回る。「Ansys AVxcelerate Sensorsは、CPUのシングルスレッド処理が速いほど性能が出ます。今回はその点が有利に働いたものと考えています」と岡氏は語る。

加えてZ2は、検証実施時点でのZシリーズの最新製品であり、いち早くRTX PRO 6000 Blackwell 600Wの搭載に対応していたことも要因となった。「RTX PRO 6000 Blackwell 600Wはエヌビディアが近年発売したウルトラハイエンドGPUで、実装できる製品はまだ限られています。Z2はコンパクトな筐体でありながら、搭載可能なカードスロットや電源機構を備えています」と話すのは日本HPの川口 剛史氏だ。

具体的に、Z2は最大1200Wの電源ユニットを選択可能で、RTX PRO 6000 Blackwell 600Wでも安定動作する設計になっている。動作時はGPUが高温になるが、格子状の通気口や9つの冷却ファンによってエアフローを最適化し、性能劣化を最小限に抑えるという。「今回の検証では48時間連続の高負荷なシミュレーションも実施しましたが、GPUの発熱を抑えて常に高い処理性能を発揮してくれました」と岡氏は評価する。

マルチカメラの映像の処理にも対応

加えて、最近は自動運転車の開発用途でマルチカメラシミュレーションのニーズが高まっている。映像の数が増える分、処理負荷は高まるが、これについても Ansys AVxcelerate Sensors での検証を実施した。

Z2に「HP Z6 G5 A Workstation」(以下、Z6)2台を加えた、計3台のワークステーションを使用。Z2にはRTX PRO 6000 Blackwell 600Wを1枚、Z6にはRTX PRO 6000 Blackwell Max-Qを2枚ずつ、計5枚のGPUを実装した。マシン同士をイーサネット経由で接続して5系統の映像を生成したところ、マシン間通信のオーバーヘッドを加味しても実時間処理を見据えた性能水準にあることが確認できたという。今後の自動運転車の普及に向けて、多様なシミュレーションに適用できるシステム構成といえるだろう(図2)。

図2 Ansys AVxcelerate Sensors の検証で使用したハードウエア環境 シングルカメラの検証ではZ2(左)を、マルチカメラの検証ではZ2を1台と上位モデルのZ6 G5(右)2台を使用した
図2 Ansys AVxcelerate Sensors の検証で使用したハードウエア環境 シングルカメラの検証ではZ2(左)を、マルチカメラの検証ではZ2を1台と上位モデルのZ6 G5(右)2台を使用した
図2 Ansys AVxcelerate Sensors の検証で使用したハードウエア環境
シングルカメラの検証ではZ2(左)を、マルチカメラの検証ではZ2を1台と上位モデルのZ6 G5(右)2台を使用した

アンシス・ジャパンは、2026年5月と6月に開催される「人とくるまのテクノロジー展 2026」(パシフィコ横浜:5/27~29、Aichi Sky Expo:6/17~19)にブースを出展する。日本HPとの協賛により、ワークステーションの実機環境も用意する予定だ。シミュレーション環境の検討に当たり、より詳しいことを知りたい方は、現地を訪れてもらいたい。

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