2024.12.02
文章や画像、動画などさまざまな新しいコンテンツを作る「生成AI」は、ビジネスシーンでも活用されはじめています。本記事では、生成AIの意味や基本的な操作方法、従来型のAIとの違い、注目される背景と歴史、生成AIの種類と主なサービス、ビジネスで利用するメリット・注意点などを、わかりやすく解説します。
生成AIとは、学習したデータと入力データから新しいコンテンツを作り出す技術の総称のことです。英語では「Generative AI(ジェネレーティブAI)」と呼ばれています。
生成AIは、機械学習の一種であるディープラーニングという技術を用いて、学習した大量のデータから法則やパターンを見つけ、新しいコンテンツを生成する仕組みです。具体的には、文章や画像、音楽、映像、プログラムのコードなど、高度な技術や専門知識がなくても、さまざまなコンテンツを作り出すことができます。
生成AIでは、プロンプトを入力してコンテンツを生成します。プロンプトとは、AIに実行してほしい内容を伝えるための具体的な指示や質問のことです。AIが入力されたプロンプトを解析し、オリジナルのコンテンツや適切な回答を出力する仕組みです。
プロンプトには、テキストだけでなく画像を入力することもできます。画像をAIに読み込ませて、テキストで指示を入れると、その画像とプロンプトをもとに新たな画像を生成します。
従来型のAIでは、学習データからAIが予測・判断して適切な結果を出力していました。事前に設定された行為を自動化することが得意で、生成AIのように新たなコンテンツを生成するわけではありません。
従来型のAIの例として、Siri(Apple社)やGoogle アシスタント(Google社)、Alexa(Amazon社)などのAIアシスタントが挙げられます。AIアシスタントに話しかけると、内容に応じてタスクを自動で実行しますが、オリジナルのコンテンツは提供しません。
生成AIと従来型AIを正確に使い分けるために、以下の表で違いを確認してみましょう。
生成AI | 従来型のAI | |
---|---|---|
意味 | 文章、画像、音楽など新たなコンテンツを生成するAI | 設定された行為を自動で行うAI |
主な使い方 | コンテンツ生成 | データ予測、判断 |
サービス例 | Microsoft Copilot(Microsoft社)、Stable Diffusion(Stability AI社)など | Siri、Google アシスタント、Alexaなど |
2022年、OpenAI社の「ChatGPT」やStability AI社の「Stable Diffusion」の公表をきっかけに、生成AIが注目されるようになりました。特にChatGPTのアクティブユーザー数が急増し、次々と新たな生成AIサービスが登場しています。
個人はもちろん、企業や自治体でも積極的に導入を検討しはじめ、翌年の2023年は「生成AI元年」と呼ばれ、AIの民主化が進みました。
このように、生成AIは社会に急速に普及していきましたが、AI自体は長年にわたり研究されています。AIの歴史を振り返ると、1950年に数学者の著書でAIの概念が登場した時代まで遡ります。その後、1956年のダートマス会議でAIという用語が公式の場で初めて用いられ、AIの研究分野が誕生しました。1990年以降、人間の脳の神経回路を模倣したモデルが生まれ、2010年代には機械学習の一種であるディープラーニングが登場し、生成AIにつながるモデルが開発された背景があります。
2022年以降に登場した生成AIがこれまでよりも注目を浴びた理由として、その精度の高さが挙げられます。例えば、ChatGPTで出力される文章には自然な日本語が使われ、さらに出力のスピードも速い点が評価されました。チャット形式のユーザーインターフェースもわかりやすく、入力画面にプロンプトを入れると、すぐに回答が得られます。誰でも簡単に使える点も、生成AIが浸透する一因になったと考えられます。
AIの処理プロセスは学習と推論の2つのフェーズがあり、実行する場所によって「クラウドAI」と「エッジAI」に分けられます。
クラウドAIとは、学習と推論の両方をクラウド環境に配置されたサーバーで行うAIのことです。ローカル環境では処理が難しい膨大で複雑なデータ処理にも対応でき、自社の端末に負担がかかりにくい点がメリットとして挙げられます。しかし、インターネット経由でデータを送信し、クラウド上に保存するため、通信コストの増大やセキュリティリスクが懸念されます。
一方のエッジAIとは、使用する端末上で学習や推論を行うAI技術のことです。端末内で処理を行うので、リアルタイムでのアウトプットが可能です。インターネットへの常時接続なしでデータ処理ができ、セキュリティ強化につながります。学習に用いる一部のデータをクラウドに送信することもありますが、基本的にはデータを端末内で処理するため、通信コストの削減やセキュリティ担保が期待できます。
続いて、生成AIの種類と主なサービスを見ていきましょう。
テキスト生成AIとは、入力したプロンプトに基づき、自然な言葉でコンテンツを自動生成するクラウドAIのことです。膨大なデータとディープラーニング技術によって構築された、大規模言語モデル(LLM)が利用されていて、プロンプトに応じて、以下のようなタスクを高精度で実行します。
テキスト生成AIのサービス例として、Microsoft Copilotの特長を以下で見てみましょう。
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画像生成AIとは、プロンプトを入力すると、イメージに合ったオリジナル画像を生成するAIのことです。AIへの指示に、テキストだけでなく、参考にしたい画像を使うことも可能です。
例えば、人の線画のイメージ画像を入力して、テキストを使って指示を出すことで、線画をベースに同じポーズの画像を具体化できます。テキストだけでは正確に指示するのが難しい場合、画像も使うと理想のイメージ画像が効率的に生成されやすい点がメリットです。
画像生成AIのサービス例として、Stable Diffusion の特長を以下で見てみましょう。
動画生成AIとは、テキストや画像のプロンプトを入力して、新しい動画を生成するAIのことです。字幕や音声の追加、翻訳なども自動化でき、動画編集の手間を大幅に削減できます。プロモーションや、SNSなどで発信する動画コンテンツを作成するときに役立つでしょう。
動画生成AIのサービス例として、Runway社が提供するRunway Gen-2が挙げられます。特長を以下で見てみましょう。
音声生成AIとは、テキストや画像はもちろん、音声や音楽などのデータを学習させ、新しい音声を作り出せるAIのことです。アプリケーション用の声や、音声対応のチャットボット、コールセンターの自動音声対応、音声通訳などに活用できます。人材や音声録音スタジオ、機材などを用意する必要がなく、コスト削減につながる点がメリットです。
音声生成AIのサービス例として、株式会社 エーアイが提供するAITalkの特長を以下で見てみましょう。
生成モデルとは、新たなコンテンツを生成するために使用されるモデルのことです。ここでは、以下の生成モデルを紹介します。
生成モデルの 種類 |
生成AIサービスの主な種類 | 概要 |
---|---|---|
GAN | 画像生成AI | 2種類のネットワークを競争させて新しいデータを生成する |
拡散モデル | 学習した画像のノイズを取り除き、修復する過程で学習する | |
VAE | 入力データの特徴を学習し、共通する概念を構築する | |
GPT | テキスト生成AI | 何千億ものパラメーターを保有する言語データセットを学習した自然言語処理モデル |
画像生成AIには、GANや拡散モデル、VAEが、テキスト生成AIにはGPTが主に用いられています。以下で、それぞれの概要を見ていきましょう。
GAN(Generative Adversarial Networks)は、画像生成AIに用いられるモデルの一つです。
GANは2種類のネットワークで構成されていて、それぞれを競争させながら、プロンプトにより近く、精度の高いデータを生成します。互いに競争させるため、日本語で「敵対的生成ネットワーク」と呼ばれます。GANでは、ピンボケ画像を高解像度に変換するなど、画像編集も可能です。
しかし、学習が不安定で品質面に課題があり、次の「拡散モデル」が使われるようになりました。
拡散モデル(Diffusion Model)は、学習した画像に付与されたノイズを取り除き、もとの画像に修復する過程で、画像を学習するモデルのことです。画像の概念を学習しているため、GANと比べて応用力や安定的な品質が期待できます。高精度の画像を生成することから、Stable Diffusion やDALL-E3(OpenAI社)をはじめとする、多様な画像生成AIサービスで使われています。
VAE(variational autoencoder)も、画像生成AIに使われるモデルで、入力データの特徴を自動で学習し、潜在空間(学習した画像に共通する概念)を構築する仕組みが採用されています。特定の画像を大量に入力するとパターンを学習し、その特徴を持った画像を新たに生成できるようになります。
GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAI社が開発した自然言語処理モデルで、ChatGPTなどテキスト生成AIサービスの基盤となっています。膨大な文章データを学習し、その処理に何千億ものパラメーターが利用されている点が特徴です。高度な言語理解と言語生成が可能で、人間が書いたように自然な日本語で文章を作成することができます。
ここまで、生成AIの基礎知識を解説しながら、文章や画像、動画作成などできることを紹介してきました。以下で、現時点(2024年11月時点)で生成AIが苦手とする、できないことを見てみましょう。
生成AIが作り出せるコンテンツは、学習データに基づくものに限られ、それ以外は対応できません。また、同様の理由で人間の感情を読み取れず、倫理観の問題が残ることもあります。
ただし、AIは速いスピードで発展を続けており、現時点でできないことも、今後変わっていく可能性がある点に留意が必要です。
次に、企業が生成AIを活用するメリットを紹介します。
生成AIの活用で、日常業務の効率化を図ることができます。例えば、ニュースリリースの文章をSNS向けに作成したり、会議の文字起こしを要約したりするとき、テキスト生成AIが活躍します。それぞれのプロンプトのポイントや使い方を見てみましょう。
SNSの投稿文章を作成 | 会議の文字起こし・要約 | |
---|---|---|
プロンプトの ポイント |
役割やSNS運用ルール、ペルソナや、発信したいニュースリリースの文章を伝える。過去の投稿文も入力し、参照するよう指示する。 | 参加者と会議の文字起こしを伝え、重要なポイントを抽出し、要点ごとに100文字程度で、箇条書きを使ってまとめるよう指示する。 |
使い方 | これまでの投稿内容や言葉づかいと統一するために、過去の投稿データを蓄積しておく。 | 回答後、気になるポイントを再び質問し、掘り下げながら要点をまとめていく。 |
他にも、翻訳やマニュアル作成、アンケート結果の分析、キャッチコピーの作成などに、生成AIサービスを利用できます。業務ごとにプロンプトを作成して共有しておくと、社内全体で業務効率化が実現するでしょう。
企画立案におけるアイデア出しにも生成AIは役立ちます。例えば、社内研修について、ターゲットやテーマなどいくつかのキーワードを入力して、チャット形式で対話しながらアイデアを出してもらうことが可能です。
プロンプトには抽象的な内容ではなく、テーマを具体的に絞って入力することで、適切な回答を得やすくなります。生成AIと壁打ちして複数のアイデアを出しておくことで、人間同士の会議の時間短縮や効率化につながるでしょう。
生成AIの利用で、画像や動画などコンテンツ制作費の削減につながる可能性があります。これまで外部事業者に発注していたプロモーション用のバナーや動画などを、画像・動画生成AIを使った方法で内製化すると、外注費を低減できるでしょう。
すべてを生成AIに代替することは難しいかもしれませんが、一部でも取り入れていくことで、コストだけでなく制作時間も短縮できると考えられます。
顧客とのコミュニケーション活性化にも生成AIサービスが役立ちます。具体的には、カスタマーサポートでIVR(電話自動応答システム)、館内放送で流す音声の生成などが挙げられます。
人にナレーションを依頼すると、同じ人でも録音する日によって声のトーンが変わってしまう場合もあるでしょう。しかし、生成AIを活用すると統一感のある音声をいつでも作成可能です。品質も担保でき、顧客満足度の向上につながると期待できます。
また、ナレーションの人材や録音スタジオを用意することなく、必要な音声を生成できる点もメリットの一つです。
企業が生成AIを業務に活用する際のリスク・注意点について解説します。
生成AIは、ハルシネーションによって間違った情報を出力することがある点に注意が必要です。ハルシネーション(幻覚)とは、生成AIが事実とは異なる内容を生成してしまう現象のことを指します。現時点(2024年11月)において、生成AIのハルシネーションを完全になくすことは難しいです。
例えばテキスト生成AIでは、人間のように文脈や文章の意味を理解しているのではなく、高い確率で出現する表現をつなげて文章を生成しています。学習したデータに内容の偏りや誤りなどがある場合、事実と反する内容を生成する原因となるでしょう。
一見すると、もっともらしい文章が出力されるかもしれませんが、ビジネス利用する際は人によるチェックが不可欠といえます。
生成AIのプロンプトに企業の機密情報を入力すると、情報漏えいリスクがあります。入力内容をAIが学習し、別の企業や個人の質問に対する回答で、機密情報が使用される可能性があるためです。特にクラウドAIは、インターネット経由でデータをクラウド上のサーバーに送信して処理を行うため、端末内で推論処理が完結するエッジAIと比べてセキュリティリスクが高まります。
そこで、企業で利用する生成AIサービスのプランを見て、入力内容が学習に使われるかどうかを確認しておきましょう。また、生成AIサービスの使い方や入力可能な情報の種類など、使用方針を決めてマニュアル化し、社内共有しておくことが重要です。また、クラウドAIによる生成AIサービスを利用している場合、セキュリティを担保しやすいエッジAIへの切り替えは可能かどうかも検討してみましょう。
画像生成AIを使って新たな画像を出力して公開・商用利用するとき、著作権を侵害するリスクがあります。
例えば、AIに学習させた内容が特定のクリエーターの作品に限られている場合は、著作権侵害にあたる可能性が高いです。出力される画像も、著作権侵害の要件を満たすと考えられます。
そこで、著作権リスクの低い生成AIサービスを利用することが大切です。例えば、Adobe社が提供する画像生成AI「Adobe Firefly」は、著作権の有効期限が終了した作品、ライセンスがオープンの作品、使用許諾を受けたコンテンツのみを学習に利用しています。
また、テキスト生成AI「Microsoft Copilot」は、Copilot 製品による出力結果について、著作権に関するリスクを心配することがないと表明しています。
このような生成AIサービスを導入することで、安心して業務利用できるでしょう。
長年にわたり使用してきた業務用PCで生成AIを動かそうとすると、「動きが悪い」「スムーズに作業できない」などの課題が発生し、生成AIを使ったパフォーマンスを生かしきれない可能性があります。
このようなトラブルが起こる理由として、PCのメモリ容量やストレージ容量不足が挙げられます。また、古いPCの場合ではCPUやGPUへの負荷が大きくなり、AI処理に時間がかかってしまうでしょう。特に、ローカル環境で生成AIを動かしていくには、よりハイスペックなPCやワークステーションが必要です。
今後、生成AIの業務利用が当たり前になる時代では、NPUが搭載された最新型のPCへ切り替えることが重要だと考えられます。NPUとは、AIの推論処理に優れた新しいプロセッサーのことです。生成AIの普及は、業務だけでなく、PCのスペックやPCそのものの役割を捉え直すきっかけにもなるでしょう。
2022年のChatGPTや Stable Diffusion の公表を皮切りに、生成AIサービスが急速に広まり、業務利用する企業も見られるようになりました。生成AIサービスの活用で、文書や画像、動画、音声制作の効率化を図ることができます。出力された内容を人の手でチェックし、調整していくことで、より高品質なアウトプットを作成できるでしょう。
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