医療業界へ向けてHPの最新情報を提供する「医療業界ビジネス情報交換会」を開催
2025-05-23

「医療DX」をテーマに医療業界から専門家を招き、HPの最新情報と共に情報共有を実践するイベント「医療業界ビジネス情報交流会」が開催された。医療の将来を明るいものにするために必須のICT知識からDX促進を狙った制度改革が政策対策まで、医療業界に特化したナレッジを知るための絶好の機会となった。
取材:中山 一弘
冒頭あいさつ
今回で9回目となる「医療業界ビジネス情報交換会」。医療業界においてもHPが全力で貢献していることをPRするという目的で開催されたことが契機となっていたが、現在では医療業界の発展のために役立つ情報を共有するという目的でのイベントに育ったと説明する株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 前田 圭介氏。「ぜひ皆様と一緒に医療業界を盛り上げさせていただけたらと思いますので、ぜひ最後までよろしくお願いします」という同氏のあいさつでイベントはスタートした。
JAHIS 2030ビジョン
当日はセッション単位によるセミナー形式でイベントは進んでいく。最初に登壇したのは一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS) 事業企画推進室 室長の小林 俊夫氏(以降、小林氏)。
小林氏は「JAHIS(Japanese Association of Healthcare Information Systems Industry:ジェイヒス)」の概要から説明。「2025年1月で30周年を迎えた組織で会員数386社という規模の団体です。『生活の重視』、『標準化の推進』『産官学の協調』『産業界の健全な発展』をテーマに活動しています」(小林氏)。
同氏はJAHISの活動状況などを説明した後、現在同団体が掲げている「JAHIS2030ビジョン」について解説を始める。様々な時代の変遷を経て策定と改定を繰り返し、最新のJAHIS 2030ビジョンとなったのが、2020年5月のことだったという。「コロナ禍があり、大変な時期でしたが、その後Chat GPTの登場により生成AIに注目が集まり、本日も話題となっている『医療DX』というキーワードも登場し、現在のビジョンに組み込まれることになりました」と語る小林氏。
続けて、同氏はJAHISが掲げている「データ循環型社会」について語る。「データ循環型社会というものがあります。医療や介護を受けた際の1次データを利用して、個人情報を抜いた形で2次データとして、創薬や治療方法の確立などに役立てられ、最終的に国民に還元されていく。これを発表した3年後、厚生労働省からも同じようなイメージを示されました」と語る小林氏。JAHISおよび厚労省にとってもデータ循環型社会は理想の未来像なのだといえる。その後も小林氏による医療業界における情報システムの在り方についての解説がおこなわれ、30分という短い時間ではあったが非常に中身の濃いセミナーは終了した。
なお、JAHISの取り組みはオフィシャルWebサイト(https://www.jahis.jp/)からも確認できる。同サイトから「JAHIS 2030ビジョン」の冊子が入手できるほか、病院の待合室などにも最適な情報システムの重要性を絵本にした「ぐるぐるデータのおくりもの」の申し込みなどもできるので、ぜひ一度アクセスしていただきたい。
医療DXでデータを安全に活用し生産性を向上させるソリューション
続いてHPの最新情報を提供するセッションがスタート。最初に登壇したのは株式会社 日本HPエンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 新井 信勝氏。
「先ほど小林様からもお話があったように、今までクローズした中でのみ利用されていた医療データが医療情報プラットフォームやクラウドを通して様々な分野で再利用するという試みが医療DXを通じて始まっていますが、私たちHPはベンダーとして、その際のリスク回避という観点で少しお話しさせていただきます」と語る新井氏。
DXが進んでいる業界の代表として建築業を挙げた新井氏。その理由について「国土交通省が標準化について牽引している状況があります。例えば建築確認申請は3DデータのBIMデータで受けつけるように強力に方向付けしています」と新井氏は解説する。
医療業界においても、厚生労働省やJAHISが標準化を進めている以上、今後はDX化が加速していくという予想を語る新井氏は「そうなるとDXを進める上で必ず出てくるのがセキュリティ問題です」と説明する。
新井氏はセキュリティシステムの導入に関する注意点や、これまで医療機関を狙ったマルウェアの事例などを説明。「こうしたインシデントを防ぎ、医療DXを促進するためのソリューションを本日はぜひご紹介させていただきたいと思います」と新井氏は語り、次の担当者へとバトンをつないだ。
―HPソリューションの紹介
新井氏に続いて壇上に上がったのはパートナー営業統括 営業企画本部ソリューションビジネス推進部 部長 川喜田 一広氏。
川喜田氏はエンドポイントセキュリティの重要性を説明。「エンドポイントとはまさにPCの事で、院内端末などがその代表です。いまこの端末を狙った攻撃が非常に多く、ランサムウェアやフィッシング詐欺といった手口で病院の情報を得ようとしています」と同氏は警鐘を鳴らす。
特に最近ではOS上で動く様々なプログラムを狙うだけでなく、PCの基盤となるBIOS/ファームウェアというもっとも基本的なオンボードチップを狙った悪意もあるのだという。「万が一、BIOSが攻撃を受けた場合、それを自動的に検出、修復する『HP Sure Start』を提供しています」と川喜田氏は説明する。
「また、現在のマルウェアは従来のアンチウイルスソフトをすり抜けられるタイプが出てきています。そのような悪意でも事前に防ぐことができるのが『HP Sure Click』です」と川喜田氏。このツールを導入してあると、メール添付やインターネットからダウンロードしたファイルを開く際に、OS上に仮想空間を作ってそこでアプリケーションごと展開するようになる。つまり、万が一悪意があっても、その空間から出ることはできず、逆に仮想空間を閉じてしまえば何もなかったことにできるのだ。「この機能を提供しているのは統合セキュリティツールの『HP Wolf Pro Security』および、大規模施設向けの『HP Sure Click Enterprise』になります」と川喜田氏は解説する。
最後に今後の医療に欠かせないリモートソリューション「HP Anyware」について説明する川喜田氏。「Windows、Linux 、MacOS、シンクライアントなど、あらゆる環境で、高品質なリモート操作を実現します。今後、遠隔治療や遠隔アドバイスなどを実現しようとしたとき、ハイレスポンスで高品質なデータ送受信ができるソリューションが必須になります。さらにこのソリューションは先ほど説明した仮想空間を使って利用できるので、非常にセキュアです」と川喜田氏は解説し、次の担当者へと席を譲った。
―誰もが注目する生成AI活用について
このセッションの最後となる登壇者はソリューション営業本部ワークステーション営業部 AI/DS市場開発担当部長 勝谷 裕史氏。
生成AIが一般に深く浸透している中、企業や組織でも日常的にこれを使うことが当たり前になりつつある。「Chat GPTをはじめとする生成AI、いわゆるLLMモデルと言われるものは、インターネット上にある無数の公開情報から様々なものを学習しています。例えば、病院の中にしか存在しないデータに関するプロンプトを投げかけると、そこに関しては分からないので、近しいと思われる答えを返してきます。これが生成AIを活用する際にハルシネーションを起こすひとつの要因にもなっています」と解説する勝谷氏。病院のように外部に出せない情報が多い組織内での生成AI活用においては、一般的な生成AIサービスではなくほかの手法を用いる必要があるというわけだ。
「その解決策のひとつと言われているのでが、『SLM(Small Language Model)』です。インターネットを介さず、ローカル環境である病院内のデータだけで完結させる生成AIであり、データプライバシーを保護しつつ、高効率なデータ運用を実現します」と勝谷氏は語る。続けて勝谷氏はSLMモデルのデモを披露する。
最初に紹介したのはHPワークステーションに2枚のグラフィックスカードを搭載したHP Z8 Fury G5 Workstationで動作させる音声による対話ができるSLMモデルだ。さっそく実演する勝谷氏と生成AIの会話がスムーズなことを受け、会場はざわつきはじめる。「7ビリオンという小さなサイズ内での学習なため、何かに特化させた会話しかできませんが、例えばこれに医療データを学習させれば、事前の問診や診断結果の報告等に活用できます」と勝谷氏。
続けて発表されたのはテキスト生成のSLMだ。Chat GPTと同様にプロンプトを与えるとすぐに答えが返ってくるが、HPワークステーションはスタンドアロンで動作している。「医療データを学習させた場合、診断文書の作成支援などにも応用できますし、要約も得意なので、医療ガイドラインの検索や要約文もすぐに作れます」とアドバイスする勝谷氏。
これらをローカルで動作させるには、それなりのスペックを持ったワークステーションが必要となるが、逆をいえば、ワークステーション1台で、自分の病院の事業形態にマッチした生成AIサービスが構築できるのだから、その恩恵は計り知れない。「実際に導入するとなれば、数千件、あるいはそれ以上のデータを学習させることからはじめるので、3カ月、6カ月といった期間は必要になります。PoCの結果をまとめたものや事例も私たちのWebサイトで確認できるのでぜひ参考にしてください」と語り勝谷氏はセッションを締めくくった。
標準型電子カルテ時代に生き残る医療情報システム関連企業の条件とは?
イベントの最終セッションを飾るのはMICTコンサルティング株式会社 代表取締役の大西 大輔氏だ。
医療DXの第一人者として知られる大西氏は、医療機関を取り巻く環境の変化についていくつかの例を挙げた。「少子高齢化によって人手不足になるのは医療も同じです。今問題となっているのは医療事務の人材不足です」と大西氏。人を集めるのではなく、業務効率化を進める必要性を説き、コロナ禍以降に課題が浮き彫りとなった「長い待ち時間」の問題解決のためにも医療DXが必要だと重要性を説いた。
また、国が進める制作についてマイナ保険証、電子処方箋、全国医療情報プラットフォーム、標準型電子カルテなどの普及が急がれているという大西氏。「例えばマイナンバーカードでは高齢者を中心にデジタルディバイドが起こっていて、病院の顔認証リーダーがうまく使えないケースも見受けられます。そこを技術革新によりスマートフォンで代用できるといった時代が来るのだと思います」と大西氏は語る。
電子カルテについても、加点方式が変更になるなど、普及への施策がとられている。「電子カルテが完全普及してから電子処方箋をやるべきであり、順番を変えるとハードルが高くなる。現状で普及が進んでいないので、電子処方箋を安全に活用できる仕組みを作るためにも速やかな電子カルテの普及が必要です」と大西氏は語る。
そして大西氏は今回のセッションの核心について語り始める。「では、どうすれば電子カルテが100%普及するのか?国の流れに乗ると、お金がでます。国は標準化をしたいと考えています。システム化が進んでいないところを淘汰してでも進めるつもりです。まずはクリニックを中心にα版の導入が進み、中小病院から本格版へと進みます。今後はこの進め方で電子カルテの100%普及を目指していくことになります」と大西氏は説明する。
いずれにしても2030年までには医療DXの成果が実る予想の元時代が動いている。電子カルテや、電子処方箋、そのほかの医療システムはこれまで以上に有機的に結びつき、連携していく必要がある。生き残る条件は、サーバータイプ、機能、操作性、トレンド、サポート、コスト、システム間連携といった項目に分けられると大西氏はいう。「経営とは限られた時間に人物、金、情報、時間をどのように組み合わせるか、最適化するというのはいつの時代も同じです。必要が発明の母となるのです。みなさまもどうかそのことを念頭に今後の医療システムの開発のヒントにしていただければと思います」と大西氏は語り、セッションを終了させた。実際には、具体的なアドバイスも満載だった大西氏のセミナーは非常に聴きごたえのあるものだった。医療DXはまさに佳境に入りつつある。この大きな変化の波を乗り越えるために、ぜひ機会を作って大西氏の話を聞いてみてほしい。
閉会のあいさつ~懇親会
最後に株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋 秀樹氏が登壇した。
満員御礼となった会場への閉会の言葉を持って、本イベントは終了となった。
なお、イベント後には懇親会も用意され、HPの登壇者や各スタッフ、小林氏や大西氏といったゲストも交えて親睦を深める良い機会となった。
来場者の大半が出席したことで、懇親会も大いに盛り上がり、時間いっぱいまで今後の医療業界に関して関係者らが熱く語り合っていた姿が印象的だった。本イベントは今年度中または来年も開催が予定されているので、興味を持っていただいたみなさまはぜひ参加していただくとよいだろう。
本イベントの次回開催時にはみなさんもふるってご参加いただきたい
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