小さいのにAI処理もおまかせ 「デスクトップAI PC」がオフィス業務にもたらす価値
2025-03-10

「Windows 10」は、2025年10月14日にサポートが終了する。サポート終了後は、更新プログラム「Windows Update」が配布されず、新たに発見された脆弱(ぜいじゃく)性やバグに対応できなくなる。そうなる前に「Windows 11」へのアップグレードやWindows 11搭載PCへのリプレースが必要だ。
リプレース先として期待を集めるのが、生成AIへの関心が高まる中で登場した「AI PC」だ。AI処理用のチップである「NPU」(Neural Processing Unit)を搭載したPCで、ローカルでのAI処理を高速かつ低消費電力で実行する。現在主流の生成AIサービスは主にクラウドで処理しているが、近い将来、PCのローカルでAI処理をするソフトウェアが増えることが予想される。デスクトップPCのリプレースに当たってもAI活用を見据えた性能を検討すべきだろう。
こうした背景を踏まえて、本記事はオフィスで利用するデスクトップPCのリプレースに当たって求められる条件を考える。
※本掲載内容は「ITmedia AI+」に掲載した内容を転載したものです。
デスクトップPCをリプレースするときに考えたいポイント
AI時代に突入した今、MicrosoftのAIアシスタント「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)やNPUを使うソフトウェアが注目されている。
Copilotは文書の生成や要約、情報収集、ソースコードの生成、アイデアのたたき台を作るなど業務効率化が期待できる。さらにWindows 11には、Web会議の際に背景ぼかしや話者へのカメラの追従、音声にフォーカスするAI機能「Windows スタジオ エフェクト」をはじめとする、NPUで処理する新機能が登場している。
今からリプレースするならこうしたAI機能に対応したPCを選びたい。持ち歩く必要がないのであれば、性能の高さや拡張性、メンテナンスのしやすさなどを考慮するとデスクトップPCの方が優れている。しかし、以前からあるタワー型ケースを採用したデスクトップPCはスペースを占有してしまう。高度なAI処理を行う場合など高性能なGPUが必要な用途ではタワー型が適しているが、一般的なビジネス用途でのAI利用ならコンパクトで場所を取らないような製品の方がオフィスのスペースを有効活用できる。
省スペースでAI処理にも向いた「HP Elite SFF 805 G9」
AI PCはノートPCタイプから先行して登場したため、AI PCといえばノートPCを思い浮かべる人が多いだろう。そんな中、ようやく登場したデスクトップAI PCが、日本HPの「HP Elite SFF 805 G9 Desktop PC」(以下、HP Elite SFF 805 G9)だ。

HP Elite SFF 805 G9は、省スペース性と拡張性の高さが特徴だ。「SFF」は「Small Form Factor」の略であり、その名の通りタワー型ケースよりも大幅にコンパクトなケースを採用している。縦置きも横置きも可能なデザインで、縦置き用のスタンドも付属している。体積は10.4リットルで、幅は10センチしかないので、机の上に置いても邪魔にならない。


特筆すべきは、CPUにAMDの「AMD Ryzen 5 8600G」または「AMD Ryzen 7 8700G」を採用していることだ。AMD Ryzen 5 8600G/AMD Ryzen 7 8700Gは、CPUとGPUに加えて、演算性能16TOPSのNPUを搭載したデスクトップPC向けプロセッサであり、ローカルでのAI処理を実現する「AMD Ryzen AI」を利用可能だ。Adobe、Blackmagic Design、Topaz LabsなどがAMD Ryzen AI対応のアプリケーションを開発しており、今後も対応アプリケーションの拡充が期待される。
今回はAMD Ryzen 5 8600Gを搭載したHP Elite SFF 805 G9を試用した。AMD Ryzen 5 8600Gは「Zen 4アーキテクチャ」をベースにした6コアCPUで、最大12スレッドの同時実行が可能だ。ベース動作周波数は4.3GHzで、負荷状況に応じて最大5.0GHzまで動作周波数が向上するため高い処理性能を発揮する。GPUのAMD Radeon 760Mも内蔵している。AMD Radeon 760Mは内蔵GPUとしては高性能で、3D CADなどのアプリケーションも快適に動作する。

HP Elite SFF 805 G9は、コンパクトな筐体ながら拡張性の高さも魅力だ。USB Type-Aポートをフロントに4つ、リアに6つ、USB Type-Cポートをフロントに1つ、リアに1つ備えており、合計12ものUSBポートを搭載する。映像出力端子はDisplayPort 1.4とHDMI 2.1を搭載。標準のメモリ容量は16GBで、メモリスロットが4つ用意されており128GBまで増設が可能だ。
ストレージにはM.2 SSDを採用。M.2スロットには空きがあるのでM.2 SSDを追加できる。有線のギガビットLANポートだけでなく、無線LAN(Wi-Fi 6E)に対応していることも高く評価できる。最近のオフィスはノートPCのために無線LAN環境が整備されていることが多いので、標準で無線LANに対応している本製品ならLANケーブルを引っ張り回さずにネットワークを利用できる。



メンテナンスもしやすい。ローレットスクリューを1本外すだけで、ドライバーを使わずに本体カバーを外して内部にアクセスできる。PCI Express 4.0 x16スロットとPCI Express 4.0 x1スロットが1基ずつ空いており、ロープロファイル仕様のPCI Expressカードを利用できることもポイントだ。スリムライン専用オプティカルドライブベイと内部3.5インチベイも用意されており、オプティカルドライブやHDDを搭載することも可能。
「AMD Ryzen 8000 シリーズ」は省電力性能も優れており、本製品の電源ユニットの容量は260ワットと、デスクトップPCとしてはかなり小さい。電源ユニットは「80 PLUS PLATINUM」の認証を取得した高効率なものであり、電力ロスも抑えられる。



CPU性能を計測する「Cinebench 2024」の結果をチェックすると、マルチコアで733pts、シングルコア104ptsでありマルチコアのスコアはかなり高い。

HP Elite SFF 805 G9は、HP独自のセキュリティ機能「HP Wolf Security」を搭載しているため、重要なデータを扱う業務でも安心して利用できる。これはOSの下、中、上の各層でデバイスを保護するソリューションだ。
OSの下とは、OSの起動に必要なハードウェアとファームウェアを指す。ハードウェアデータを暗号化したり、侵入される前にBIOSをロックしたり、BIOSが攻撃を受けても自動で復旧したりといった機能を多数備える。
OSの中ではWebサイトの閲覧やメールの添付ファイルからのウイルス感染を防ぐ他、ディープラーニングAIを利用して既知、未知のマルウェアからデバイスを保護する機能を搭載する。
AI処理が不要ならさらにコンパクトな「HP Elite Mini 805 G8」もお薦め
業種によっては、AI処理の優先度が低い場合もあるだろう。ローカルでのAI処理が不要なら、さらにコンパクトで軽い「HP Elite Mini 805 G8」をお薦めしたい。こちらはCPUに「AMD Ryzen 5000 シリーズ」を搭載している。NPUは非搭載。小型のボディーを実現した点がポイントだ。
フットプリントは177ミリ×175ミリと、CDケース(125ミリ×142ミリ)を一回り大きくした程度だ。縦置きも横置きも可能な他、オプションの「ダイレクトマウントブラケット」を利用することで液晶モニターの背面に設置できるため、机の上のスペースを占有せずに設置できることが魅力だ。
コンパクトな筐体ながら、2系統のDisplayPort 1.4×2とHDMI 2.1×1を搭載しており、3画面出力が可能だ。USBポートもフロントとリア合わせて7ポート備えており、拡張性も十分だ。65ワットのACアダプターで動作するため、電気代を節約できて環境にも優しい。



オフィス業務の効率を向上させるHP Elite SFF 805 G9とHP Elite Mini 805 G8
HP Elite SFF 805 G9は、コンパクトな筐体ながら高い性能と拡張性、信頼性を誇る製品であり、NPUも搭載しているため将来性も高い。細かな部分への配慮も行き届いた完成度の高い製品だ。Windows 10搭載PCからのリプレース候補として、AI処理に対応したAI PCデスクトップであるHP Elite SFF 805 G9は有力な選択肢となるだろう。
AI処理が必要ない場合は、より省電力で十分な性能を持ち、非常にコンパクトなHP Elite Mini 805 G8をお薦めしたい。
これらのWindows 11搭載デスクトップPCの導入によって、AI時代に適応したり快適なオフィス環境を整えたりすれば、仕事に対する社員のモチベーションアップや業務効率化を図れるだろう。
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