ソリューションと経営論の両視点から見据える「デジタル従業員エクスペリエンス(DEX)」の必要性とは
日本HP ソリューション技術本部長 × ピョートル・フェリクス・グジバチ氏特別対談
2026-05-28
企業が成長を続けるには様々な要素が必要だが、中でも人材に関わる部分は非常に大きなウエイトを占めている。特に、社員の従業員エクスペリエンス(従業員満足度)は、企業にとって毎日の推進力と直結するため、特に重点的な施策が必要な部分でもある。今回は数々の企業の成長をコンサルタントという立場から支えてきたピョートル・フェリクス・グジバチ氏と、社員の従業員満足度をクライアントPC視点からダッシュボード化するソリューション「HP Workforce Experience Platform(WXP)」の担当であるHP 高木氏に語っていただいた。早速、対談の模様をお伝えしよう。
株式会社GA Technologies社外取締役
- 連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。
2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleで人材開発、組織改革、リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、HRコンサルティングのプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。
ベストセラー『心理的安全性 最強の教科書』『NEW ELITE』他、『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』『世界最高のコーチ』など執筆。最新著書は「DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方」。
ポーランド出身。
生産性を向上させる組織作りのために
DEX(デジタル従業員エクスペリエンス)という視点で企業の成長を見る際、よくある課題としてシステムが使われない、あるいはシステムが動いているのに成長できないといったケースがあると思います。ピョートルさんとHP 高木さんはこれらの点についてどのようにお考えですか?
「システムは揃えたのに、それが成長につながっていない」ということがよくあると思いますが、そうなってしまう背景や原因について考える必要があります。
簡単に言えば、まず経営というものは「仕組み作り」だと思っています。会社のミッションやビジョンがあり、それを実現する戦略があってプロダクトやサービスが展開されていくことになります。
例えば自動車メーカーが何を提供しているのか、PCベンダーが何を提供しているのかということを考え、逆算しながら、どんな組織作りが必要なのか、どういう人材を雇ってどこで活躍してもらうのか、課題が出た時にテクノロジーでどう解決していくのかも同時進行で考えていく必要があります。
そのためには経営チームというものが大事で、いろいろな会社を見ていくとITが経営者の席に座っていないということがよくあります。これは簡単なことで、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)が取締役になっているのかどうか、とういうことがけっこう大きなシグナルだと思っています。
もしCTOが取締役でないとすると、取締役会でIT関係の声が聞こえなくなってしまいます。これはCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)に関しても同じようなことで、取締役会にいなければ人事に関する話題がどうしても薄くなってしまいます。そうしたことがないように、逆算でどのような経営チームが必要なのかを考えたうえで、必要な責任者が集まった経営会議ができるようにする必要があります。
そういった意味で、経営にもテクノロジーの力が必要であることは間違いないと思います。
ちょっと衝撃的なことなのですが、日本の労働生産性はいま世界で29位といわれています※1。これまで日本人ならではのこだわりでいい製品を作ってきて、それが世界でも評価されていたところがあると思います。ただ、いろいろなテクノロジーが入ってくるようになって、おもてなしの心やこだわりだけでは対応し切れない面が現れてきたのではないかと思います。
※1 2024年のOECDデータに基づき同加盟国内の比較
例えば「IT部門はそのなかだけで収支を考えてきっちりやりなさい」というような従来の組織ではありがちなことを、課題として捉えて解決していく必要があると思います。そこで「HP Workforce Experience Platform(以下、WXP)」のようなサービスの存在が注目されることになり、最近では導入される企業様も増えていますが、IT部門だけの判断では踏み切れないところもあるはずです。
きちんと見なければいけないのは、そのツールがIT部門に対してどれだけの費用対効果があるかだけではなくて、従業員の生産性をどれだけ上げられるかということです。まさにそこに貢献するためのツールなので、例えばデバイス周りで問題がはっきりしていないところを可視化して、手を打てるようにするためのソリューションとして活用する、といったことです。
営業職が分かりやすいかと思いますが、ツールにはそれぞれ目的があって、どういうリードがあってどういうアクセスができて、そこでどんな会話があってということが、データによって正しい動きをしているかどうかが分かるようになります。
本当にクロージングにつながっている案件を獲得できているかどうかなども、データがなければ分かりません。すると、適切なデータの流れとそのデータの健全性や、本当に全部のデータを入れているかなども含めて考える必要があります。個人によってはヒューマンエラーもあるかもしれませんし、入力を怠るようなこともあるかもしれません。
こういったエラーなどを減らしていくことや、コンプライアンスに関する障壁をなくしていくためにも、WXPのようなツールを活用していくことが求められてくるのだと思います。
生のデータが社内の何千台という端末から蓄積されてくれば、様々な問題があってどこから対処すべきか優先順位を付けたいときにも、その観点で提示させることができます。
また一方では1台ずつのデータを細かく見ていくことも必要なので、そこにある生データに簡単にアクセスできる、ということも必要です。
摩擦を減らすための組織作りとWXP
今、面白い視点として組織内の「人」の不確実性や不誠実性の話が出ました。それらをうまく管理していくにはどのような方法がありますか?
例えば組織の中には「声の大きい人」という方がいます。心理的安全性の話にもつながりますが、「本音をいいたいけれども、声の大きさによってそれが潰される」ということも組織のなかではよくあります。
これによって声の大きいユーザーに、IT担当者が忖度してしまう、あるいはその方の意見ばかりに集中してしまうようなことが起きては大変です。あくまでも客観的にデータを見て、そのユーザーにいま支援しなければいけないことを考えていく必要があります。そのために生データを含めて端末や業務環境の状態を客観的に把握し、必要な支援につなげられる仕組みが非常に重要だと思います。
最終的にWXPを使う目的というのは、従業員の生産性向上になります。一般的に従業員の生産性向上を阻害するものというと、システムトラブルや使いにくさなどが挙げられると思います。
しかし、問題が起きたとしても47%のユーザーが、問題に気づいていながら報告しないでやり過ごすというデータがあります※2。自然に治ることを期待してやり過ごしたり、別の方法でなんとか対処したりしてしまうことがあるのです。
※2 Deloitte (2023). The State of IT Support: Employee Reporting Behaviors
Copilotなどを使って調べると分かるのですが、そういう場合は1つのケースに対して数時間もロスしていることがあります。ある調査などでは平均で8時間くらいロスしているとも言われていて、それが例え半分の4時間だとして、例え年に数回の頻度であったとしても、これが多くの従業員に起きているのならば、このロスが生産性向上の阻害という点では大変大きなものになります。それは利益を上げる機会の喪失ですし、いろいろなシステムを導入したことによるコスト削減以上にかなり大きな損失になってしまいます。
WXPはそこをきちんと取り戻しましょうということで、生産性向上に貢献するためのツールとして活用できるものになっているのです。
大企業でも中小企業でも、場合によっては家庭でも使えるツールなのですが、当然ですがそこでフィットする機能というのは変わってきます。そういう場合、大きな問題として、社員が与えられた環境を適切に使えないようなことがあれば、それはIT部門に連絡して「使えるように対処してくれ」ということになります。
ただし、もし従業員の稼働率のなかで5%が使えない状況であれば、IT部門は優先的に対処しないかもしれません。しかしここでその5%を救ってあげれば、その分の売上は増えるのは当然のことです。こういうところこそ、経営判断として会社組織のなかでやっていかなくてはならないところです。
ところがこれをIT部門が単独で判断できるかというと、いまの日本の会社の仕組みではなかなかそうなっていないことも実情です。その意味でも、経営部門とIT部門はうまくリンクしていく必要があるのです。
これはある社員の例なのですが、パソコンを使いながら話しているときに、「ちょっとマシンが遅くてなかなか作業が進みません」と社員が言ってくるという話題が出てきました。詳しく聞くと、もう数か月間もそんな状態で困っているといいます。すぐにでもIT部門に機種交換をさせていれば簡単に解決できたのですが、なぜかやっていなかったのです。
これにはIT部門に相談しにくい雰囲気や、問い合わせ後の対応に対する不安・不信感といった背景があったのかもしれません。その結果、「じゃあちょっと我慢しておこうか」などと思わせてしまっていた可能性があります。大手企業ではこういう場合も比較的言いやすいところもあるようですが、IT部門の人たちが信頼や尊敬されているのか、というところも問題としてあるのが実情です。従業員の側にもきちんと症状を訴える責任はありますが、そのせいだけにすることはできません。
こういうことをどうやって防ぐのかといえば、やはりリモートアクセスで確認してもらうとか、IT部門の専門家のチェックを受けられるようにしておくことが大切です。ITスキルがあまり高くない社員の場合には、そもそも自分が使っているパソコンが遅いのかどうかも分からないかもしれません。
IT部門と社内の各部門が風通しの良い関係にしておくことは、こういった時に生産性向上につながるのです。
いまの例でいうと、ユーザー側から問題の情報が上がってきたときに、リアクティブにIT部門が対応するということになります。このリアクティブな対応についても、いかに早く正確にできるか、ということがあります。
情報が正確に取れて、それを見える化できていればそのデバイスがどういう状況にあるのか客観的に把握でき、他の端末と比較して考えることもできます。それによって状況をヒアリングする前段階を省くことができ、ITスキルの高くないユーザーと相談するときでも、的確な処置を施すことができるようになります。これはユーザーとの信頼性も含めて、かなりメリットの大きいことだと思います。
経営論と組織論を組み合わせて考えていくことが、こういった一歩を踏み出すうえでも大切だと思います。
WXPを導入しただけで終わってはいけない
ここで話を戻して、冒頭で触れた、せっかくソリューションを導入したのに使われない、という状況にしないためにはどんなことが必要になってくるのでしょうか。
すべてのテクノロジーに共通していることだと思いますが、いろいろな定義はあるでしょうが、結局は「摩擦を減らすもの」だということです。
先ほどの例でいえば、ある社員が自分のパソコンが遅いと思っているのに、なぜ上司やIT部門にそれを言わなかったのかということがあります。そこには対人関係があったのかもしれませんし、会話のコストや感情的な問題があったのかもしれません。あるいは組織全体の問題があったのかもしれませんし、たまたま忙しかったのでフィードバックせずにスルーしたのかもしれません。
WXPのようなソリューションは、そういった部分での摩擦を減らすことができるので、社員の側にも雇う側にもメリットをもたらすテクノロジーなのではないかと思います。それによって生産性向上がもたらされれば、全体にとっての利益にもつながります。
WXPを導入することによって、会社のなかで停滞していたものが動き出すということですね。動いただけで止めては勿体ない気がしますが、「次の一歩」を踏み出すには何が必要ですか?
いまITに関していうと、様々なことを要求されている環境にあると思います。攻める側も巧妙になってきているのでセキュリティ対策も難しいですし、生成AIなどに対応・導入する必要もあります。
限られたリソースでそれらに対応していくため、どうしてもデバイスの管理などは後ろ側の業務として追いやられてしまうこともあるかもしれません。
そういう場合に、WXPなどのテクノロジーを使いながら必要な情報は集めておいて、限られたリソースで廻していく仕組みを作っていくことが必要だと思います。それによって、別のリソースで新しいイニシアチブを廻していくようにしないと、今後新しく出てくるセキュリティ要件や生成AIの要件に対して対応しきれなくなってしまうかもしれません。
つい最近の話なのですが、シンガポールにいる人事の仕事をしている知人が昇格して、肩書きが「チーフピープル&エージェントオフィサー」になっていました。もはや人事も人だけではなくワークフォースはエージェントでもあるということです。
会社によっては、すでに人事とITの両方を見る役員がいるところも増えてきています。日本の場合はIT部門にいる人たちが、組織や人事の話からはちょっと離れているような気がしています。そのため、IT部門が端末で起きている問題だけを見ているだけになってしまっているところもあります。
例えばクラウドを導入しようというときに、人事や経理部門はものすごいデータを大量に持っています。だからこそセキュリティ対策を高めて守る必要があるのですが、同時に攻めの側面で活かしていく必要もあります。これをIT部門の人が分かっていないと、生産性につながる対策が何も出てこないことになってしまいます。これを理解したうえで、しっかり導入するにはどうしていくか、ということが大切です。
いまITを使って見えているつもりになっていても、実際にはまだきちんと見えていないものもあると思います。WXPではシステムからきちんとパフォーマンスを含めた全部のデータを取得、可視化し、生でも使用でき、俯瞰した状態で優先順位を付けても使える、というところがポイントになります。
もちろんコストの問題はありますが、会社として何をしなければならないのかを考えたときに、そこで従業員の生産性向上を実現できるのであれば、十分に価値のあるものだと思います。
人間が1日の仕事のなかで、本当に集中できる時間はとても短いと思います。もしその時間にトラブルが発生したり、パソコンが遅かったりしたら大きな機会損失であり、生産性の低下につながってしまいます。その少しの問題を解決してあげれば、生産性は大きく向上することになります。
これだけでもWXPに投資する価値はあるのではないでしょうか。WXPにはトライアル版もあるので、ぜひこれで試していただきたいと思います。
もしIT部門に従事している人の場合であれば、ユーザーの行動心理を理解する必要があると思います。パソコンが遅くて困っていることを言い出せなかったユーザーに対して、萎縮せずに報告できる仕組みをどうやって作るのかなどを、客観的にユーザーの行動パターンを見て生産性向上の方法を考えていかなければなりません。それはユーザーベースのことだけではなく、経営面での意味もあります。テクノロジーを通じて、どうやればもっと早く、もっと賢くできるのかサポートしてあげる必要があります。
会社としての戦略と経営方針を理解し、ユーザーの行動パターンが分かってくれば、その間でどういう仕組みを作っていくのかがIT部門の役割だと思います。こういうことの解決のためにも、WXPを導入してみる価値はあると思います。
もっとお二人のお話を伺っていたいのですが、ここで時間が来てしまったようです。本日はありがとうございました。
HP Workforce Experience Platform (WXP)
HP Workforce Experience Platform (WXP) は、DEXの概念を具現化し、IT部門が直面する具体的な課題を解決するための独自のソリューションを提供します。
詳細はこちら
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。





