小ロット印刷による新しい形の印刷会社
資料マイクロ株式会社
社長 富山 氏
「我が社は印刷屋という意識はありません。」
資料マイクロ株式会社の富山社長は、そう言い放つ。
顧客のニーズに合わせた、少部数、小ロットを短納期で納品するという形態が、従来の印刷会社から一線を画すからだという。
小ロット印刷への道程
資料マイクロ株式会社が、少部数、短納期、可変データというオンデマンド印刷の特性に着目したのは、時代の流れともいえるだろう。
もともと、その名前の由来ともなるマイクロシステムによる図面の複写やその印刷が資料マイクロ株式会社の専門だった。
しかし、デジタル化の波が、マイクロシステムの需要を減少させていき、時代の流れの中で、資料マイクロ株式会社は、マイクロシステムに加え、図面のデジタル化、大型ポスターやパネルの製作・加工、CADなどの業務を行うようになり、顧客の需要に応じて、小ロットのデジタル印刷やCTP印刷業務もこなしていった。
印刷は本業ではなかった。
しかし、小ロット印刷というマーケットの開拓により、デジタル印刷は、同社の売上の中核を占めるようになった。
迎えた転機
小ロット印刷は、名刺やはがき、封筒などの印刷が主。当初は、オフセット印刷機を使用していたという。
需要はあった。
しかし、オフセット印刷機は小ロット印刷を行うには紙やインキのロス、そして手間がかかりすぎる。市場を開拓し受注を増加させるとかえってコスト高になってしまう。
折角の市場も、オフセット印刷機では開拓すらままならなかった。
しかし、1997年E-PRINTの導入で転機は訪れた。
資料マイクロ株式会社
三宮 氏
「E-PRINTの導入を機に、その稼動率のアップを目的として、注目したのは、量は少なくカラーの品質の高い印刷物。つまり名刺や会社で利用する各種はがきでした。」と当時を語るのは、同社常務取締役の三宮氏だ。
本格的に始めたカラー小ロット印刷は、その受注数が増加し、HP Indigo press 3050 をはじめ、今年、2006年には最新鋭のHP Indigo press 5000 を導入。それでも連日フル稼働するほどの主力業務となっていった。
相反する要望
資料マイクロ株式会社は、社員100名を超え、東京三鷹市の本社の他に首都圏に支店・営業所を構える。印刷業務を主とする会社では、中堅クラスと言っていい。しかし、名刺をはじめとした小ロット印刷業務で実績を上げている。
そもそも名刺は、会社や個人にとって最も身近なものである。まさに顔だ。
だから、コピーで刷ったものではステータスを感じない。
しかし、コストや納期もかけたくない。
相反する要望が名刺印刷にはあった。
しかし、デジタル印刷機を使用した短納期でありながら高品質の名刺を提供することで、この相反する顧客の要望に応えていった。
名刺印刷は、もともと数千円の売上と、確かに単価は安い。
しかし、充分な顧客を確保していれば、平均1日数百箱と仕事が途切れることはない。
さらに、人事異動の時期には数千単位の名刺を刷ることに。
その市場を開拓し、顧客満足を獲得していった同社の名刺印刷を主としたオンデマンド印刷は売上の1/3を占めるまでに成長していった。
さらなる市場開拓へ
大規模な印刷システムでは、かえってコストばかりが膨らんでしまう小ロット印刷市場。その市場に着目し、E-print、HP Indigo press 3050 の導入と、さらには、HP Indigo press 5000 を中央支店に導入し、その特性を最大限に生かせる市場を開拓してきた資料マイクロ株式会社。
顧客ニーズに着目し、短納期、高品質を武器にしたデジタル印刷で、既存の印刷業とは異なる市場へのアプローチが功を奏したのだ。
しかし、「まだ小ロット印刷の需要は掘り起こされていない」と語る富山社長は、市場開拓に余念がない。
顧客ニーズの中に、その答えは隠されているのかもしれない。