『少子化』:スクールアルバム市場の盟主が直面する課題
ダイコロ株式会社
代表取締役社長 松本 秀作 氏
ダイコロ株式会社は、1953年(昭和28年)に創立された従業員380名のスクールアルバムメーカーである。最後発ながら他社に先駆けて最新鋭のカラースキャナとオフセット印刷機を導入し、フルカラーアルバムをモノクロ料金で提供したことにより業界トップシェアを獲得した。現在では、全国3,300軒の写真館と提携、9,000校に対して100万冊強を提供している。ダイコロでは毎年150校程の新規提供先を獲得しており、スクールアルバム市場でのシェアは年々高まっている。
しかし、少子化の影響でスクールアルバム市場は縮小傾向にあり、シェアを伸ばしているダイコロでも売上は横ばいで推移している。こうした状況において、少子化によって増えている小ロットジョブの積極的な取り込みが急務であった。また、2005年頃からアルバムの内容が成熟してきたことから、内容面での新たな差別化・高付加価値化の方向性を探ることも必要であった。
スクールアルバム市場の変化に適切に対応し競争力を高めるため、ダイコロは2008年4月に最初のHP Indigo 5500 デジタル印刷機を導入、また2009年3月には2台目の Indigo 5500 を追加した。
Indigo 導入の目的は『アルバムのパーソナル化実現』と
『小ロットジョブの積極的な取り込み』
ダイコロがHP Indigo デジタル印刷機を導入した目的として、松本秀作社長は『アルバムのパーソナル化』を挙げた。「アルバムの内容の成熟化に対して、当社は『パーソナル化』を進めることで競争力を高めようと考えました。アルバムの良いところは、同じ本を共有するところです。しかし、ご家族やご親戚の視点で見ると、必ずしもご満足いただける内容ではないこともあります。そこで当社は、アルバムのうち数ページにご家族が撮影された写真を使うことにしました。こうした『パーソナル化』において、HP Indigo デジタル印刷機は強力な武器となったのです」(松本社長)。
また、少子化の影響で増加傾向にある小ロットジョブの積極的な取り込みも、HP Indigo デジタル印刷機導入目的のひとつであった。ダイコロでは現在、「100部以下のジョブは全てHP Indigo デジタル印刷機で行っており、その数は年間30万冊以上となっています」(松本社長)。今後もスクールアルバムのパーソナル化、そして少子化によりさらなる小ロット化が見込まれることから、Indigo による生産量は引き続き増加すると、松本社長は予測している。
HP Indigo デジタル印刷機を選んだ理由について、松本社長は「当社が求める印刷品質を達成していたため」だと説明する。「当社の顧客は写真館という写真のプロフェッショナルであるため、当社が求めるのは『写真画質』なのです。デジタル印刷機の導入に当たり複数のデジタル印刷機を検討しましたが、当社の求める『写真画質』をクリアしていたのはHP Indigo デジタル印刷機だけでした」。
HP Indigo デジタル印刷機によってダイコロが作成したアルバムは、第3回アジア太平洋 & 日本HP Digital Print Awards (HP Indigo) 2010 をフォトブック部門で受賞した。
一冊から製作している写真集
写真館に対するアルバム編集プロセス改善ソリューションの提供
ダイコロでは、顧客である写真館と共に少子化を乗り越える仕組み作りにも積極的である。そのひとつとして、写真館におけるアルバム編集ソフト『NEXT』を中心としたソリューションが挙げられる。
写真館ではアナログカメラからデジタルカメラへの移行が遅れており、ダイコロがHP Indigo デジタル印刷機を導入した2008年時点では、デジタルカメラの導入が始まったばかりであった。そのため当時は、写真館からダイコロへの入稿フォーマットは、アナログ写真、デジタルカメラで撮影されたデジタルデータ、アナログ写真をスキャンしてデジタル化したもの、など複雑化していた。
入稿データフォーマットの複雑化は、写真館でのアルバム編集作業コストの増大に加えて、ダイコロでの印刷データ作成作業のコスト増大にも繋がっていた。そこでダイコロでは、入稿データフォーマットを『デジタルカメラで撮影したデジタルデータ』に一本化することで写真館および自社のコストを削減することを目指し、アルバム編集ソフト『NEXT』を自社開発した。
これをキヤノンのデジタルカメラ、HP 社のパソコンと組み合わせ、ソリューションとして写真館に提供したのである。このソリューションは現在、約1,000軒の写真館に導入・活用されており、写真館とダイコロのコスト削減に大きく貢献している。
学校写真販売のウェブサービス化ソリューションの提供
2011年4月1日、ダイコロではウェブ上での学校写真販売サービス『PhotoSpot』を開始した。これは、校内で模造紙に貼るなどして行ってきた『学校行事を撮影した写真の販売サービス』をウェブ上に移行したものである。
このウェブサービスは、ダイコロが用意したウェブサイトに学校行事を撮影した写真を写真館がアップし、生徒・学生や保護者はそのサイトを見ながら写真を選び注文する、というものである。この仕組みにおいては、写真の価格設定は写真館が行い、生徒・学生や保護者から注文を受け、写真をプリント・発送、そして代金の決済はダイコロが行うという役割分担となっている。
このサービスは、保護者にとっては自分でも欲しい写真を選べ、24時間いつでも注文できる、といったメリットがある。また、写真館にとっては、「学校行事を撮影した写真をプリントし見本を模造紙に貼る」「注文と代金を集める」「生徒・学生毎の注文を確認して納品する」といった写真販売に掛かる手間を大幅に削減できるというメリットがある。
ダイコロにとっても、このサービスを通じて写真のプリント料金などの新たな収入源を得るというメリットがある。『PhotoSpot』は始まったばかりのサービスであるが、松本社長は既に大きな手応えを感じている。4 月1日時点で300軒の写真館が登録、開始後3週間で20軒ほどがサービスを開始し、相当量の注文を受けたためである。
写真を包含することで
更に大きな市場への進出を目指す
『PhotoSpot』では現在各サイズ写真の販売を行っているが、ダイコロでは、顧客毎に購入した写真をストックしておき、クリスマスなどのタイミングでアルバムにまとめることを提案する計画を立てている。松本社長によれば、「当社での調査の結果、写真が売れると、アルバムが売れるという相関関係が明らかになっています。写真の販売を伸ばす事は、アルバムの売上を伸ばす事にも繋がるのです。写真は生活に密着しているため、その市場は大きいと考えています。その写真を包含すれば、当社がアクセス可能な市場は非常に大きなものとなります。」(松本社長)。
こうしたモデルを実現するに当たり、松本社長は「印刷に加えて前後左右のシステムを作り、全体を最適化すること」が重要だと考えている。「『印刷』のような部分だけの最適化では必ず価格競争が起こり、共倒れになってしまいます。価格競争を回避するためには、『印刷』に加えて『販売』や『受注』、『データ入稿』、『提案』などのシステムを含めた全体を構築し、最適化することが必要不可欠なのです」。
『パーソナル化』や『小ロットジョブの積極的な取り込み』を実現する『写真画質』のHP Indigo デジタル印刷機を活用することで、写真館と共に少子化を乗り越えてスクールアルバムビジネスの拡大を目指すダイコロの今後に、大きな注目が集まっている。
チャレンジ
- ・スクールアルバムの内容成熟化への対応
- ・少子化への対応力強化:
- スクールアルバムの小ロット化
- スクールアルバム市場の縮小 - ・提携先写真館からの入稿データフォーマットの複雑化への対処
ソリューション
- ・HP Indigo 5500 デジタル印刷機
- ・アルバム編集ソフトNEXT(自社開発)
- ・ウェブ上での学校写真販売システム
PhotoSpot(自社開発)
結果
- ・スクールアルバムのパーソナル化実現
- ・小ロットジョブの積極的な取り込み成功
- ・入稿データフォーマット統一による自社と写真館の利益率改善
- ・ウェブ上での学校写真販売による事業機会の拡大
- ・第3回アジア太平洋 & 日本HP Digital Print Awards (HP Indigo) 2010 受賞(フォトブック部門)
会社概要
- ダイコロ株式会社
- 〒540-6591 大阪市中央区大手前1-7-31(OMM ビル11F)
URL:http://www.daicolo.co.jp
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