さらに充実した市民サービスの提供を目指す
新潟県のほぼ中央にある柏崎市は、日本海に面していることから水産資源にも恵まれ、山系に囲まれた広い平野もあるため水田地帯も豊富にあるなど、非常に恵まれた地勢を持つ地域だ。地域を支える製造業や建設業、卸売、小売業などのほか、医療福祉にも力を入れており、暮らしやすい街として、Uターン、Iターンなどの移住先としても広く受け入れられている。
「柏崎市は、米山、黒姫山、八石山の刈羽三山、西山連峰の山々に囲まれる一方、福浦八景や砂丘地など変化に富んだ42㎞の海岸線から佐渡島を望む風光明媚な地方都市です。明治時代に、石油が噴出したことにより、製油会社の設立が相次ぎ、機械金属工業が発達したことから、「エネルギーのまち」、「ものづくりのまち」として発展してきました。観光では、200年以上の歴史を持ち、総延長約2kmにわたって露店が並ぶ「えんま市」、海面に広がる海中空スターマインなど越後三大花火として有名な「ぎおん柏崎まつり海の大花火大会」など、魅力あふれるイベントも多いです。また、子育てや教育にも力を入れており、市民の皆様に充実したサービスをお届けしたいという思いを込め、職員一同、業務に励んでいます」と語るのは柏崎市の重野氏だ。
そんな柏崎市も多くの地方自治体と同様、ITシステムには総務省が策定した「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で定義された「αモデル」に準じたシステム構築をしていた。「システム自体はとてもセキュアで信頼ができるものなのですが、一方で今や当たり前になっているインターネットサービスが使いづらいなど、不満が出ていたことも事実です」と振り返る柏崎市の阿部氏。
αモデルは安全性の高さと引き換えに、インターネット経由の様々なサービスを利用する際に、認証や再ログインに手間がかかり、ちょっとした調べものをするにもいくつかの手続きをする必要があるなど、職員に負担を与えてしまう面があることも事実だ。「それに加えて、PCでの操作では当たり前のコピー&ペーストといった作業にもひと手間かかるため、生産性が向上せず、日常業務の効率化という面でも疑問が出始めていました。そこで思い切って、システムを分離型に変え、なおかつセキュリティ面が強化できる方法はないか、模索することにしたのです」と阿部氏は語る。こうして柏崎市は、セキュアな環境で柔軟にインターネットアクセスができるソリューションを探すことになった。
左から、柏崎市役所 総合企画部 企画政策課 課長 重野 圭吾氏、
情報統計係 係長 阿部 洋和氏、
主事 外山 瞭平氏、主査 長谷川 大典氏
左から、株式会社カシックス
第1公共システム部 情報政策課 課長 細川 正隆氏、
チームリーダー 平野 翔太郎氏
HPのセキュリティソリューションに活路
ある社団法人が主宰するIT研究会にオンライン出席した柏崎市の外山氏は、現在抱えている課題についてアドバイスを求めた。「当日、ちょうど最新の脅威に対するセキュリティソリューションが発表されていました。そこで、私たちの課題もこれで解決できるのではと思い、相談してみることにしたのです」(外山氏)。
その時、話題として取り上げられていたテーマが「HP Sure Click Enterprise(以降、HP SCE)」だった。
従来型のシグネチャー型ウイルス対策ソフトをかいくぐってくる新たな悪意は、巧妙に仕組まれた手口でユーザーをメールの添付ファイルやWebサイトからのファイルダウンロードへと誘導し、ファイルが実行された瞬間に小さなプログラムを侵入させる。
これを防ぐにはファイルが正しいものかを判断する必要があるのだが、一般的なセキュリティソリューションでは小さな悪意を検知することが難しいのだ。
左から、株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 グローバルサービス・ソリューション本部 テクニカルコンサルタント 澤田 亮太氏、
エンタープライズ営業統括 第一営業本部 官公庁・自治体営業 マネージャー 小笠原 孝氏
対してHP SCEは、エンドポイントとなるクライアントPC内の仮想空間でそれらのファイルをオープンする。これにより、ユーザーは中身を安全に閲覧することができ、目的と違うファイルであればすぐさまそれを閉じることで、仮想空間ごと悪意を封じ込めることが可能になる。つまり、ユーザビリティはそのままに、強固なセキュリティを実現できるソリューションがHP SCEなのだ。
当日、研究会のサポーターとして参加し、外山氏から話を聞いたHPの小笠原氏は、柏崎市の課題解決へ向け、さっそく行動を開始する。「お話を伺う中で弊社のセキュリティソリューションであるHP SCEがまさに最適だと考えました。
製品の特長をご説明すると共に、まずは体感していただくのが一番と思い、以前から柏崎市役所様のインフラを構築されている同市の株式会社カシックス様に協力を要請しました」と小笠原氏は振り返る。
「HP様からオファーをお受けし、柏崎市様の課題解決のため協力体制を作り、本格提案に臨むことにしました。柏崎市様はインターネットアクセス環境に分離型ソリューションで構築しています。その場合、エンドポイントとなるクライアントPCはシステムだけで守りきることが難しいので、まさにHP SCEのようなあらゆる脅威に対応できるセキュリティソリューションは理想です。そこで、まずは弊社内にHP SCEを導入し、PoCを実施することにしました」とカシックスの細川氏は当時を振り返る。こうして、HPとカシックスは協同で柏崎市への提案のためのPoC(Proof of Concept:概念実証)を開始することになった。