こんにちは、日本HPでロングライフPCを担当している竹下 雅洋です。今回は、製品レビューや過去からのテクノロジー(技術・製品カテゴリー)として最近よく耳にする、Windows 10 IoT OSについて考察・発信してみようと思います。
最近の大きな流れとしてはデジタルトランスフォーメーション(DX)などのワードと共に IoT(モノのインターネット)がWEBサイト等で目にする機会が増えたと思います。今回はIoT 向けOS であるWindows IoT がどのようなOSなのか、どのようなケースに利用されているかなどを見てみたいと思います。
元々は、Windowsの組み込み用途向けOSで、1995年のWindows CEが始まりと思います。これはARM系のCPUを搭載したデバイス、当時HPでも620LXやJornadaといったハンドヘルドPCや他社だとカーナビなどに搭載されていました。その後Windows Embedded ファミリーに名前が変わり、Windows 7 の世代ではPOSなど使用用途ごとに細分化され、Windows 10 の世代では、Windows IoTに統合されて現在に至る流れになります。
左
HP 620LX(https://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980223/hp.htm)
媒体:PC Watch
右
HP Jornada 720(https://k-tai.watch.impress.co.jp/cda/article/stapa/3194.html)
媒体:ケータイWatch、撮影者:ライター スタパ齋藤 様
Win10IoTの最大の特徴であり、Win10 Pro との違いは機能更新に対する考え方です。Pro はWaaS(Windows as a Service)によるSAC(Semi-Annual-Channel;半期チャネル)の更新サイクルで機能アップグレード(バージョンまたはビルドと呼ばれる)がリリースされ、約18か月間のサポート期間となっているため、更新サイクルごとに、アプリやデバイスの動作チェックが必要ですが(現在のリリースは20H2)、Windows IoTについては 2016LTSBなら1607, 2019LTSCなら 1809 と各バージョンをベースにした決め打ち構成となっており、WaaS にある機能更新がありません。セキュリティパッチなどの重要な更新プログラムは長期提供されており、最大10年間となっています。
またIoTではロックダウン機能というPCの機能を制限する機能が盛り込まれており、デバイスを立ち上げた際に表示されるWindowsのロゴを非表示にしたり、UWF(Unified Write Filter: 統合書き込みフィルター処理)という、ハードディスクへのデータ書き込みを制限して、仮想オーバーレイ上で
データ処理することにより、KIOSKやアプリの更新が必要とされない特定用途でデバイスのセキュリティや安定性を向上させることが出来ます。
これらから、Windows Proは主にオフィスオートメーションの用途、Windows IoTについては機能更新を必要としない組込みや特定用途で最大10年間システムを運用することが可能になっています。
HP では 日本でも10年以上の長きにわたってPOSシステムを販売していますが、現在販売しているいずれの機種についてもWindows10 Pro またはWindows IoT Enterprise を 搭載して販売しています。また近年POSシステムを”ロングライフ(長期供給)PC” として、活用いただくご提案をしておりHP ビジネスソリューションのWEBサイトでご紹介していますが、想定する利用ケースとしては
OA用途以外の様々な用途を見込んでいます。 https://jp.ext.hp.com/business-solution/llpc/
さて、それぞれのOSを搭載したPCを実際に起動してみようと思います。言語やコンピュータ名などの一連の初期設定をし、デスクトップが表示された状態を対比してみました。
今回はHPロングライフPCのラインアップの中から拡張性に優れた HP Engage Flex Pro を使用して確かめてみました。こちらは
Windows 10 proとWindows 10 IoT Enterprise 2019 LTSCに対応したモデルがあるので対比しやすいです。 (2016 LTSBにも対応するモデルもあります)
製品情報サイトはこちら https://jp.ext.hp.com/retail-solutions/engage_flex_pro/
こちらは昨年(2020年)末に製造されたマシンで、タスクバーには最新のウェブブラウザであるchromium版 Microsoft EDGE が表示されており、そのほか、ファイルエクスプローラーやストアなど見慣れた表示が並んでいる。
こちらは壁紙が同じなので、一見同じ画面に見えるが、タスクバーにはコルタナやストアなどのショートカットアイコンもなく、すっきりしたデスクトップに見える。
各アプリケーションのリストとピン留めされたアプリケーション、このマシンはMicrosoft Office の イメージがロードされ、ピンにも留めされた状態で出荷されていました。
他にChromium版のMicrosoft Edge やストアアプリケーション、HP Client Security, HP Sure Senseがピン留めされています。
こちらはシンプルな表示で ピン留めエリアも Foxit Phantom PDF(おためしPDF化アプリ)と
HP Client Security, HP Sure Sense といったHPのセキュリティソリューションのアプリケーションが
ピン留めされているのみでした。
※各製品のデスクトップ画面や、収録されているアプリケーションは出荷される時期により異なる場合があります。
こちらのマシンはPOS用途で販売されているためいずれのOSでもPOS用のハードウェアを使用するためのMicrosoft POS for .NETがインストールされているのがわかります。Windows10 Proでは主にマルチメディアを活用するためのアプリケーションが充実しており、それらを入手、アップデートするためのMicrosoft Storeがスタートメニューに収録されているが、Windows10 IoT EnterProse OSではハードウェアベンダー(HP)が提供するサポートアプリ以外にはアプリはほとんど収録されておらず
スッキリしたスタートメニューになっています。なお今回確認したモデルではMicrosoft Office のイメージがロードされており、各アプリケーションがスタートメニューに登録されているが、使用できる状態ではないのでリストからは割愛しました。
以上、Windows 10 IoT EnterpriseをWindows10 Pro との対比で見てみましたが、デスクトップ画面の単純な見え方としてはそれほどWindows 10 Pro搭載の通常のPCと変わらないのではと思います。ただしWindows 10 IoT Enterpriseに追加されている機能更新のポリシーや各種のロックダウン機能といった、より組込み用途で安定して利用できる機能、 これまでの組み込み用途向けOSの変遷や様々な利用用途、そして昨今のコロナ禍の影響や今後の日本の社会構造やデジタルトランスフォーメーション(DX)などの変革に際してこれらのPCは無くてはならないものになってくると思います。
また米国HPでは各種センサーからの情報収集や推論作成のエッジコンピューティングに対応したロングライフPCをリリースしており(日本での発売は未確定)今後の特定用途向けロングライフPCの動向に目が離せないと思います。