前編では、HPがPOS製品を開発し提供を始める経緯と、「POSとは何か」について解説しました。後編ではそれらを踏まえ、HP POSがカテゴライズされる「オープンPOS」がもたらす利点やその特徴について解説します。
先にご紹介した通り、HPのPOSシステムは当時要望された要件に基づき、モジュラー型のモデルが最初の製品となりました。
モジュラー型POS(図3)とは、一般的なデスクトップPCと同様の形状をしたもので、必要な周辺機器はPOS本体とケーブルで接続されます。縦に組み上げて使う事もできますが、カウンターの中に主要部分を格納することで、接客カウンター上のスぺースを有効活用できる、設置の自由度が高い仕組みです。
All-in-One型は、PCの一つのスタイルとして、システムの演算部とモニター部が一体化したスタイルのものを指しますが、All-in-One型POS(図4)においては、タッチパネルスクリーンを搭載し、主要な操作を画面へのタッチにより行えるものを指します。POSシステム全体が小型化するほか、設置や移設が容易なことが特徴です。
また、モバイル型POS(図5)は、PCの領域に登場したスレート型PC、またはタブレット型PCと呼ばれるタッチパネル機能搭載の薄型PCをPOS本体とするもので、持ち運んで使うことのできる高い機動力が特徴です。日本では主にその省スペース性が好まれる傾向にあるほか、移設が容易なことを利用した臨時POSとしても活用されます。
日本は諸外国と比べて、POSは専用システムと認識され、ハードウェアからアプリケーションを含むシステム全体を単一のベンダーが担う割合が比較的高いのが特徴ですが、特に北米や欧州では1990年代頃よりオープンシステムPOSが主流となりました。ちょうど、ホストシステムコンピューターが、従来のクローズドなシステムからオープンシステムに移行する流れを追った形です。オープンシステムのひとつの利点は、単一ベンダーが設定するシステムの制約から解放されるため、ユーザー側がコストコントロールを行いやすくなることにあります。それに加え、より多くの企業のエンジニアに開発を依頼することができるため、コストに加えスケジュールに関しても単一ベンダーの束縛から解放されます。POSのオープンシステム化にともない、世界ではオープンなシステム向けにPOSアプリケーションを提供する独立系のアプリケーションベンダー(ISV)が数多く存在しています。その結果、オープンPOSを利用するユーザーはその利点として、ハードウェアの変更を伴わずに、自社が競争力を高めたい領域の機能を持つPOSアプリケーションに移行できる柔軟性を享受できます。また、それとは逆に、特定のハードウェアが自社の戦略に合わなくなった場合でも、アプリケーションは変えずにハードウェアだけを他社に移行することもできます。つまり、企業は顧客との接点の中で重要な位置づけとなる決済の瞬間を担うシステムを、自社の戦略に合わせて柔軟に変更でき、競争力を高めることができます。それこそがオープンPOSシステムの最大の利点と言えます。
HPのPOSは、設置の自由度が高いという特徴があります。これは、最初の製品が伝統的なキャッシュレジスターの形状を模した全機能一体型の専用機器ではなく、PCと同形状のモジュラー型として始まり、POSを構成する個々の機能がはじめから本体とケーブルを介して接続されていたことにも起因します。
モジュラー型のPOSは、POS本体とキャッシュドロアーをカウンター内に格納し、タッチパネルモニター、レシートプリンター、バーコードスキャナー、決済端末などをカウンター上に設置するスタイルが一般的です。格納するカウンターが食品小売業向けのチェックアウトレーンの場合(図6)でも、専門店向けの対面式カウンターの場合でも、それぞれに適した什器を用意して設置することで、同一モデルのPOSを使いながら使い方のスタイルを変えることができます。システムコンポーネントの共通化により、使い勝手を最適化しながら、運用の簡素化と投資の保護が可能になります。
また、All-in-One型POSの場合、タッチパネルディスプレイを持つヘッドユニット内にCPUやメモリー、ストレージ、各種インターフェースなど、POSとしての主要部分が全て内蔵さるため、ヘッドユニットのみをVESA規格のポールにマウントして利用することもできます。POS本体がカウンターから持ち上がるため、キャッシュドロアーをカウンター内部に格納することで、広々と確保されたカウンタースペースを接客のために有効活用することができます。
HPのPOSはその成り立ちから、自由度の高いオープンシステムとしての性質を持っています。そのため製品が利用され始めた当初から、POSだけではない様々な目的の店舗内システムへの利用が幅広く行われてきました。モジュラー型POSは、店舗サーバーやキオスク端末、デジタルサイネージ、監視カメラのコントローラーとして。また、All-in-On型POSはそのヘッドユニットをVESAマウントできる性質から、対面型POSだけではない、キオスク端末、セルフチェックアウト端末、勤怠管理端末などの幅広いセルフサービス端末としての利用が行われてきました。近年は、サービス時間帯の深夜への拡大や店舗とECを融合させたオムニチャネル化などのサービスレベルの高度化にともない、テクノロジーを活用した新たな顧客とのタッチポイントに、このような自由度の高い店舗端末が有効活用されています。