【導入事例:髙丸工業株式会社 】産業用ロボットのリモートシステム開発の成功を支えたHPワークステーション
髙丸工業株式会社
2026-07-17
製造業者にとって産業用ロボットはなくてはならない設備だ。生産性を大きく向上させるとともに、長期間休みなく働き続けてくれるため、企業の成長に大きく貢献する。一方で、ほとんどの産業用ロボットは標準機(本体)のみでメーカーから出荷されることが多く、実際の現場に合わせて稼働させるための周辺装置や専用の制御プログラムは、顧客ごとに企画・構想の段階からオーダーメイドで構築する必要がある。また、そのオペレーションには専門知識が必要なため、「導入を検討したくても、その瞬間に社内に扱える人材がいない」という理由から、導入に二の足を踏んでしまう企業は少なくない。今回はそんな産業用ロボットのリモート操作システムの開発に成功し、HPワークステーションとの出会いにより、オペレーション用のコンピューターの最適化も実現した髙丸工業株式会社の事例を紹介したいと思う。
取材:中山 一弘
目的
- 誰でも簡単に操作できる、汎用性を高めた産業用ロボットシステムの開発
アプローチ
- リモート環境からのロボット溶接システム運用の実現
- オペレーション用のコンピューターにHPワークステーションを採用
システムの効果
- 要件に見合ったスペックを選択
- スムーズなオペレーション環境の実現
- マルチディスプレイ環境の提供
ビジネスの効果
- システム要件に見合ったワークステーションの提案
- 導入コストの最適化
- 新たな試みへの伴走支援
産業用ロボットの導入をもっと容易に
髙丸工業株式会社(以降、髙丸工業)は、産業用ロボットシステムの開発、製造、販売をメインの事業としている企業だ。1963年に創業した設計事務所、髙丸工業所を源流とし、以降、自社開発の自動で動作する産業用ロボットや自動溶接機をメインに取り扱ってきた歴史を持っている。
「『ロボットを“どこでも・誰でも・簡単に”』をキャッチフレーズに活動しています。最終的には当社の技術をロボット操作のプラットフォームとして拡げることで、世の中のさまざまなことを便利にしていきたいと考えています。創業から60年以上が経っていますが、創業来ロボットシステムインテグレーターとして活動を続けています」と語るのは髙丸工業 専務取締役の髙丸 泰幸 氏(以降、髙丸氏)だ。
企業規模を問わず、高い評価と信頼を積み上げてきた髙丸工業はロボットの運用についても積極的な取り組みを続けている。「中小企業へのロボット導入の場合、ロボットを使える人材がいないという相談をよくいただきます。そのため、20年ほど前からロボット導入や使い方に関する教育を提供する役割も担っていて、毎月100人以上、年間では1300人程度が弊社にロボットの取り扱い資格の講習を受けにいらっしゃいます」と髙丸氏は語る。
製造と導入・運用支援を両立させてきた髙丸工業は、あらゆる規模の企業に対してSIerとして伴走型のサービス提供を続けている。「産業用ロボットの基本は人間でいう『腕』だけの状態です。そこへ目や体になる周辺装置と脳になるプログラムを入れることで生産をおこなう設備として動き始め、『命』を宿した状態になります。つまり、産業用ロボットシステムはオーダーメイドであり、規模も役割も多様です。一方で使い方が難しく、実際に運用するにはコストも人材も必要なため、大手企業様が導入されるケースがほとんどです。そんな産業用ロボットをどうにかして中小企業にも導入しやすいものにしたいという思いから、HPさんの力も借りて、新しいシステムを開発することになったのです」と、髙丸氏は課題とHPワークステーションの導入経緯について語る。
ロボットを人の技能を補う“道具”として使う「WELDEMOTO」
オーダーメイドの要素が強い産業用ロボットの使い方を劇的に簡単にすることで、導入しやすい形で提供する。この課題解決へ向けて髙丸工業の新たな取り組みが始まった。「基本的な考え方は、30年以上前に現社長が『ロボットを省人化のために使うのではなく、人間の技術・技能を補うために使うべきだ』と考えた事がきっかけであり、そのコンセプトが今回の開発の出発点になっています」と語る髙丸氏。
髙丸氏曰く、ロボット業界はパソコン業界の後追いをしており、ロボット業界の未来はパソコン業界の発展の歴史に重なるという。コンピューターの黎明期にはプログラムが直接ハードウェアを制御していたが、やがて汎用OSとしてWindowsやMac OSなどが登場すると、パソコンが身近になり、使い方も劇的に容易になった経緯がある。
「現状の産業用ロボットは、パソコンで言えばWindowsが登場する以前の環境であって、ロボット業界でそういったものを生み出す絶好の機会とも言えます。それを生み出すことができれば、中小企業でも導入しやすくなり、ロボットはさらに普及するのではないかと考えました」と髙丸氏。
パソコンやスマホがそうであるように、細かい仕組みは知らなくても「使うことはできる」という状況を生み出せるように、とにかく使い方を簡単にしていくことをコンセプトに髙丸工業の取り組みは進んでいった。
「画面を見ながら直感的に操作するだけで、産業用ロボットを扱うことができるシステムを開発しました。オペレーションはディスプレイ上でおこないます。表示されたCGを見ながら、マウスでロボットを動かしてみると、現実の環境ではどのような位置や姿勢になるのか、何かとぶつかったりしないのかなどを確認できます。そのうえで安全にロボットによる溶接を実行することができるようにしました」と髙丸氏。バーチャル上で動作後の未来を確認できる、まさにデジタルツイン/サイバーフィジカルな技術だ。
これまで、ロボットの扱いを簡単にする、あるいは遠隔化する開発では、高額なセンサー類が必要となり、結果としてロボットの機能が制約されることが避けられなかった。しかし髙丸工業では特許取得済みの技術により、パソコンとカメラのみを使用し遠隔からの簡単な操作でロボットのあらゆる動作を実現可能にしているのが特徴だ。「現在のところ、ロボット溶接用途に絞って具体化しており、このシステムを『WELDEMOTO』と命名しました。名称の由来は、溶接のウェルディング(Welding)と遠隔のリモート(Remote)を組み合わせた造語です」と髙丸氏は説明する。ちなみに最後がEではなくOなのは、ロボット“でもっと(DEMOTO)”多くのことを実現したいという願いを洒落で表現しているのだという。「今後は、切断の用途であれば『CUTDEMOTO』のように、アプリケーションを増やしていくことであらゆる社会課題を解決していきたいと考えています。そのためには、他社との連携も不可欠になってくるでしょう」
WELDEMOTOを活用するためのHPワークステーション
WELDEMOTOの実現にはHPワークステーションが貢献している。「ロボットシステム全体のコストで考えると、パソコンが占める割合というのはそれほど高くはありません。ですから、研究開発の段階では市販の中でハイエンドモデルであればそれで良しとしていました。実際、PCのパフォーマンスによってどの程度システム全体に影響があるのか、なかなか検証しにくいところもあって、本来どの程度のスペックが必要なのか絞り切れていないところもありました」と開発期を振り返る髙丸氏。
そんな折、システム要件に合わせた機材の選定のためHPはワークステーションの検証機の貸し出しを提案した。「今回、HPさんから様々なワークステーションの貸し出しやサポートをいただく機会があって、グラフィックスボードなども含めて、WELDEMOTOに必要なスペックの要件をかなり詳細に出すことができるようになりました」と髙丸氏。例えば、カメラを増やすにはどれぐらいスペックを強化すればよいか、どんなコーディングをすればグラフィックがどのような反応をするか、といったレベルまで要件を出せるようになったのだという。結果として、自社の技術を見つめ直し、さらなる改善を行うきっかけにもなった。
「元々はイベントでの出会いがきっかけでした。そこから髙丸工業さまが抱える現状や課題について丁寧にお話を伺い、「本当に実現したいことは何か」を一緒に掘り下げるため、何度も打合せを重ねてまいりました。その過程では、単にスペックや価格を比較するのではなく、「本当にやりたいことが実現できるのか」という視点を何より重視しながら、「ワークステーションであれば、ここまでできる」という可能性や知見をご共有してきました。そして、潜在的だったニーズが少しずつ形になっていく中で、髙丸工業さまのご要望に合わせた専用構成でのワークステーション検証をご提案し、高い評価をいただいたうえで導入へとつながりました。現在も、新たに生まれるアイディアや挑戦に対し、単なる“機器提供”にとどまらず、共に考え、導入後もさらなる業務革新に向けた取り組みをご支援しています」と語るのはHPの小俣氏だ。
「現在、基本的なシステムとして『HP Z2 Tower G1i Workstation』をベースに、導入先が必要とする仕様に合わせてグラフィックスやプロセッサーを選択していく形が取られています。工場で業務用に使用するためのシステムであるので、高可用性や高耐久性、充実のサポートをご提供できる組み込み用途で実績豊富なHPワークステーションを選択していただいた理由となっています」とHPの新井氏もHPワークステーションの利用価値について語る。
製造業の働き方を大きく変革するWELDEMOTO
髙丸工業はWELDEMOTOを大阪・関西万博にデモンストレーションとして出展。来場者からは大きな反応があったのだという。「例えば、主婦の方からは子どもの手がかからなくなってきたので、空いている時間を使って溶接作業をしてみたいといった意見をいただきました。同じような意見として夜間でもよければやってみたい、海外からやってみたいといった意見もありました。特別なスキルは必要なく、安全にリモート環境から実行できるメリットは様々な働き方への提案にも繋がっていくのだと思います」と髙丸氏は語る。
「WELDEMOTOは非常に簡単な操作でロボットを扱って溶接ができるので、特定の対象物に限らず、一品一様の製品の溶接でもロボット化することができます。つまり産業用ロボットが初めて汎用品として展開できるようになり、レンタルやサブスクなどの形態での契約も可能になるかもしれません。そのうえで、必要となるコンピューターとして要件を合わせたHPワークステーションを導入し、適切なサポートを提供できればと思っています」と髙丸氏は語る。産業用ロボットとワークステーションをセットで運用するうえで、先に機械的な寿命を迎えるのはワークステーションになる。顧客に合わせ適切な入れ替え時期のアナウンスなどを含め、HPはそれに応えられるサポートと新しい機材を提案して供給していく点でも期待がかかっているのだ。
「リモートで溶接をできたらという発想は、冒頭で述べた30年前に現社長がいった『ロボットを省人化・省力化の装置ではなく道具として技術・技能を補うために使うべきだ』という考え方が根付いていたからこそ、ようやく実現できるようになったのだと思います。産業用ロボットを簡単に使えるようにすること、遠隔で操作できるようにすること、誰でも溶接できるようにすることが目的であるということを見誤らずに、15年をかけた研究開発もようやく実を結びました。今後の課題としては弊社内部だけではなく、今まで以上に様々なお客様の環境で使っていただきながら、順次アップデートを重ねていかなければなりません。AI技術なども含めて、先進的な技術もどんどん取り入れてステップアップを図っていきたいと思います」と最後に髙丸氏は語ってくれた。HPは今後も髙丸工業のサポートを続けてゆく。
産業用ロボットが初めて汎用品として展開できるようになりました。必要となるコンピューターとして要件を合わせたHPワークステーションを導入し、適切なサポートを提供できればと思っています。
専務取締役
髙丸 泰幸 氏
エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション事業開発部
市場開発担当部長
新井 信勝 氏
ソリューション営業本部
ワークステーションビジネス開発部
小俣 裕二 氏
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