流通、小売の生成AI活用を促進するHP POS製品群とVINX「Retail Brain」
2026-06-22
流通、小売業界にもDXや生成AI活用の波が押し寄せている。そんな中、同業界向けの業務横断型の生成AI管理ソリューション「Retail Brain」と、洗練されたデザインとハイスペックが同居する株式会社HP(以降、HP)のPOS製品群の組み合わせが市場にインパクトを与えている。今回はHPのパートナー企業である株式会社ヴィンクスに話を伺ったので紹介したいと思う。
ライター:中山 一弘
AI事業推進室 室長
川久保 竜也 氏(左)
AI事業推進室
AIスペシャリスト
能登 一樹 氏(右)
流通、小売業の業務フローのすべてをカバー
株式会社ヴィンクス(以降、VINX)は、流通、小売業に特化したITソリューション企業だ。POSシステム「ANY-CUBE」やMD基幹システム「MDware」などの独自パッケージ製品を中心に、コンサルから運用までワンパッケージで提供。近年は生成AIプラットフォーム「Retail Brain」などのDX領域に最適なソリューションも積極的に展開している。
VINXの理念に「人々のくらしと流通企業のビジネス活動を情報システム技術で融合し、豊かな社会の実現に貢献する」とあるように、消費者と流通企業の間にある課題をITで解決することを使命とし、「アジアにおける流通ITのリーディングカンパニー」を目指している。
「VINXには、POSや基幹システムなどをうまく使いながら、AIも加えていこうという考えがありました。そのための研究開発なども行われており、現在『Retail Brain』というプラットフォーム製品を提供しながら、AI活用の幅を広げていこうと考えています」と語るのは2025年に立ちあがったばかりのAI事業推進室の川久保氏だ。
「Retail Brain」は店舗・本部・消費者のデータとシステムをつなぎ、迅速な意思決定と現場の自律化を支援する拡張可能なAIプラットフォームで、使いやすさを重視した月額+従量課金制による利用が可能となるためコスト管理がしやすい特長もある。
「実際の基幹システムとデータをうまくつなぐことによって、今までだとレポートを作成するのに負荷がかかっていたような業務をかんたんにします。例えば『昨日いちばん売り上げた店舗の情報をまとめる』、『過去の実績からトレンドを分析する』といったようなことも手軽に実行可能です」と説明を続ける川久保氏。
VINXでは、Retail BrainをHPのPOS製品群にインストール。ワンパッケージという形でのソリューション提供もしている。
HPと築き上げてきたパートナーシップ
「私が担当していたお客様から、『HPの新しいハードウェアを使ってPOSを導入してみたい』というご要望をいただいたことがあります。そこで弊社のPOSソフトウェアANY-CUBEシリーズをHPのPOSハードウェアに入れ、販売をさせていただいたところからお付き合いをはじめさせていただきました」と協業するようになったきっかけについて話す能登氏。
2026年3月におこなわれた「リテールテック JAPAN 2026」でも、HPブースにてRetail Brainが持つひとつの機能「コンシェルジュ」のプロモーションをおこない、来場者にその技術力とHP POSとの相性の良さを示すなど、良好なパートナーシップを築いている。
「お客様からは『HPさんのPOSハードウェアはかっこいい』、『お店の雰囲気を壊さないデザインがよい』といったお声をよく頂戴します。そういった目線でお選びになるお客様には、私たちからもHPのハードウェアをお勧めすることもあります。また、HPのPOS製品の新製品を送っていただき、そのデザインに感動した私たちは、HP POS製品上で扱われることを想定して画面をデザインしたケースもありました」と語る能登氏。
今回のイベントの際にも様々な課題を抱えてこられたユーザーが多かったという能登氏。「いろいろな現場がありますが、システムがけっこうバラバラで、それぞれのシステム会社も異なっていたりすることもよくあります。UIから違って非常にやりにくいようなことも珍しくありません。こういったところもRetail Brainなら自然言語による一括指示で行えたりするので、その負担軽減の効果に驚かれるお客様も多かったと思います」(能登氏)。
そのほか、来場者からは「生成AI活用のイメージが具体的に理解できた」「自社業務への適用を検討したい」といった前向きな声が多く、複数企業様と展示後に具体的な商談・協業検討にも発展したケースもあったのだという。
流通、小売業の生成AI活用を後押し
「流通、小売業界では人手不足・原価高騰・業務の属人化といった課題が深刻化する一方で、生成AIの認知度は高いものの活用率はわずか24%にとどまっていたという調査結果がありました。そうした『認知と実践のギャップ』を埋めるソリューションへのニーズが急増しているのが現状です。VINXはPOS・基幹・CRMで長年蓄積してきた流通、小売業の業務データとノウハウを武器に、Microsoft Azureの生成AI技術と組み合わせることで『Retail Brain』を開発。国内小売DX市場が2030年に1,852億円規模へ拡大すると予測されるなか、『流通、小売業を知り尽くしたAIプラットフォーム』として市場へ投入したのがRetail Brainなのです』と開発の背景と狙いを語る川久保氏。
AIは本当に必要なのか悩んでいるユーザーも多いが、手元にあるデータを生成AIに与えることで意味合いを持ったデータへと変換することが容易になる。例えば自分の店舗だけでなく、他の店舗と比較や相違点を探すようなケースで生成AIを使えば複雑な処理をせずに簡単に答えを導き出すことができるようになる。従来は負担が大きかった処理の省力化や時間の圧縮ができるだけでも店舗運営に大きなメリットを与えられるはずだ。
「Retail Brainは、チャット・RAG・音声議事録・レポート生成など多彩な機能を備えています。特にコンシェルジュ機能は来店客向けの接客AIで、商品案内・店内ナビ・多言語対応を24時間提供し、人手不足の解消にも貢献します。ユーザー数無制限・業務時間の大幅削減・問い合わせ対応の自動化など、現場力の底上げとコスト最適化を同時に実現するのが最大のベネフィットだといえます」と川久保氏は導入メリットを語る。
成長を続けるRetail Brain
すでにHP POSと共に多くの顧客への導入実績もあるRetail Brain。「いろいろな現場でお使いいただいているのですが、商品の検索などについても基幹システムとしっかり連動していくことで、新しい使い方も出てくると思います。いままではシステムが商品を検索して『あそこにあります』ということしか言えなかったとしても、生成AIを利用することによってさらに詳細な案内や、そこから発展して食材であればレシピの提案なども行えるようになります。さらに踏み込んで『今日の特売品がこれなので、こんなお料理ができますよ」といった提案まですることができるのです』と語る川久保氏。
Retail Brainのコンシェルジュ機能は来店客向けに売場案内・商品説明・多言語対応・ギフト提案を24時間自動対応し、実証実験では毎日50~100人が利用するなど高い現場定着率を示している。さらにユーザー数無制限の料金体系と伴走型サポートにより、本部バイヤーから店舗アルバイトまで組織全体でAIを活用できる点が競合他社との大きな差別化ポイントとなっている。
「インバウンドで来日されたお客様の対応もありますが、最近では日本にお住まいの外国人の方も増えています。そういった方への接客にも、多言語対応にしていけば便利に活用できるソリューションだと思います」と川久保氏は近況に適した使い方も提案する。
Retail Brainの最大の強みは、POS(ANY-CUBE)・基幹(MDware)・CRM(Satisfa)など流通、小売業の基幹データと直接連携できる「流通業を知り尽くしたAI」である点で、汎用AIにはない業務特化型AIエージェント(チーフ支援・従業員支援など)を提供するところにある。
「今後は現在のチャット・RAG・音声議事録などの基盤機能から、チーフ支援・レジサポ・ダイナミックプライシングなど業務特化AIエージェントを順次追加し、店舗・本部・顧客接点の全方位をカバーするプラットフォームへと拡張していく計画です。2026年後半にはスマホアプリへのAIコンシェルジュ搭載やHP連携を進め、2027年以降は動画生成・リアルタイム音声合成・自己改善型モデルなど高度な自律化機能の実装を目指しています。最終的には日本の流通、小売業にとどまらず、アジア市場への展開も視野に入れ、『流通、小売業の意思決定を自律的に担うAIプラットフォーム』としての標準化を目指すのが『Retail Brain』の長期ビジョンです。今後もHP様と協業しながら、流通、小売業界に幅広く使ってもらえるソリューションを展開していきたいと考えています」と最後に川久保氏は語ってくれた。HPは今後もVINXとのパートナーシップによる絆を深めてゆく。
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