誰一人取り残さない自治体DXの選択肢となるHP Polyソリューション
2026-07-14
少子高齢化が進む今の日本において、持続可能な自治体運営に欠かせない業務効率化や住民サービスの品質向上などを実現すべく、デジタル技術を活用した自治体DXの取り組みが加速している。そんな自治体DXの施策づくりに向けて、電話を中心とした音声系ソリューションの実証実験を行ったのが愛知県岡崎市だ。クラウドPBXとしてのZoom Phoneを中心に、現場に適したユーザー体験を生み出すHP Polyソリューションを検証した経緯について、総合政策部 デジタル推進課 副課長 音羽 智樹氏および同課 推進係 主査 本多 広昌氏に詳しく伺った。
目的
- 業務効率化や住民サービスの向上を目指し、場所を問わない柔軟な働き方と自治体DXの推進のヒントを得る
アプローチ
- Zoom PhoneとHP Polyの電話機を借り受け、使い勝手に関するPoCを実施
システムの効果
- 従来同様の操作性で現場の違和感を払拭し、ネットワーク経由の稼働状況可視化による管理効率化にも貢献
ビジネスへの効果
- 誰一人取り残さない環境整備の試金石として、将来のクラウド移行や災害時のレジリエンス向上への指針を得た
問い合わせ対応など電話に関する自治体DXの課題が顕在化
愛知県のほぼ中央、矢作川や乙川流域の広大な平野部に位置する岡崎市。中核市として38万人を超える住民が暮らしており、徳川家康が生誕した岡崎城の城下町として栄えた歴史や八丁味噌発祥の地としての文化など、歴史と伝統が息づく街として観光スポットが点在している。豊かな自然環境でありながら、名古屋へのアクセスが容易といった交通の利便性がよく、ベッドタウンとしての人気が高い。
そうした歴史と活気ある街を支える市役所では、“デジタル技術の活用で、実感できる「一歩先の暮らし」へ”を基本理念に掲げた「おかざきDXビジョン」に基づき、デジタル化による利便性の高い市役所や行政業務の効率化、誰もがデジタルの恩恵を受できる地域社会づくりに向けてさまざまな施策を進めている。現在は地域社会DXに向けたスマートシティーへの取り組みとともに、市民ポータルを軸にした市民デジタルプラットフォーム構想を推進。電子申請などのスマート窓口やペーパーレス化に貢献するデジタル通知などにより、来庁ゼロ、待ち時間ゼロ、問い合わせゼロといった、あるべき姿の実現に向けた総務省の「自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト」に選ばれるなど、自治体DXへの積極的な取り組みを加速させている状況にある。
そんなDX推進を担う総合政策部 デジタル推進課では、職員の業務改善にも積極的に取り組んでいるが、以前から電話対応に関する課題が顕在化していた。「特にコロナ禍のタイミングでは、在宅勤務時の電話対応や外出時の電話対応のために庁舎に戻らざるを得ないなど、場所に依存せずに業務を柔軟に継続することが難しい状況が続いていたのです」と音羽氏は当時を振り返る。
音羽 智樹 氏
クラウドPBX検証に必要だったデスクトップ電話機、HP Polyソリューションに注目
電話に関する課題が顕在化しつつあるなか、ヘッドセットを利用し、庁内のデスク以外の場所で電話を取る他自治体の取り組みを目にしたことがきっかけで、クラウドPBXを使った柔軟な働き方への興味が高まったという。実は以前から通信事業者からクラウドPBX提案が継続的に行われており、AIを使って電話内容や議事録の文字起こしによる業務の効率化に向けた環境整備にも興味を持っていた。そして、各種問い合わせを統合的に受け付けるコンタクトセンターのシステム導入が計画されていたことで、電話に関連した業務改善への期待や共通プラットフォームの必要性に関する議論が加速。その過程で事業者から紹介を受けたのが、クラウドPBXのZoom Phoneだった。
電話周りの業務効率化やDX推進につながる可能性のあるクラウドPBXだけに、将来的な導入も視野に入れるべくPoC実施を決断、その検証に際して必要だったのがデスクトップ電話機だった。「職員全員に携帯電話が貸与できるわけではありませんし、共用スペースなどでPCとヘッドセットで電話対応するイメージがどうしても湧きませんでした。窓口にいる職員がヘッドセットで電話している姿は、市民の方が見たときに違和感があるのではと考えたのです」と音羽氏。共用スペースや会議室に可搬性の高いスマートフォンを設置すると、紛失や故障のリスク、充電の対応など管理の煩雑さが懸念されたことも、据え置き型のデスクトップ電話機が求められた背景にあったという。
そこでZoom Phoneと一緒に検証したのが、据え置き型の電話機として紹介を受けたHP Polyデスクトップ電話機だった。米国製のソリューションで自治体の調達基準にも合致し、豊富なラインナップで働く環境に応じて柔軟に選択できる点も考慮し、HP Polyのデスクトップ電話機がPoC環境の一部として選択されたのだ。
PoCで得た教訓を生かす、誰一人取り残さない環境整備に役立つHP Polyソリューション
PoCでは、三層分離におけるαモデルで構築された既存のネットワークに音声系のパケットを流すのを避け、モバイルルーターから高速無線サービスである地域BWAを経由してZoom Phoneへアクセス、1ヶ月ほどかけてその使い勝手を検証した。据え置き型のデスクトップ電話機には、従来の電話機同様に物理的なボタンを持つHP Poly Edgeシリーズおよび液晶画面のタッチパネルで操作するHP Poly CCXシリーズを活用。実際には、各部にデジタル推進を担う担当者であるデジタルリーダーを通じて検証参加を募集し、4つの部署で外線の発着信や転送処理など基本的な機能検証を実施した。
実は当初はインターネット接続系のネットワークから県のセキュリティクラウドを経由してZoom Phoneにアクセスすることも試したが、LGWAN接続系端末上の仮想ブラウザや多段プロキシの設定、ポート制限も含めて、結果として限られた検証期間ではうまく接続できず。改めて導入を検討する際には、自治体特有のネットワーク環境をしっかり考慮する必要があることが認識できたことが成果の1つになっている。「Wi-FiでモバイルルーターにアクセスしてもWi-Fi通信が混雑する時間帯では、音声品質が低下することが確認されました。本格的に導入するのであれば、ネットワークの環境整備が重要だと再認識できました」と音羽氏。
検証に参加した原課のメンバーからは、従来のボタン電話に近い操作性を持つPoly製品だからこそ違和感なく使えると肯定的な評価が得られたという。「デスクトップ電話機の設定に当初は戸惑う場面もありましたが、私自身はいい意味で今までの電話と変わらない使い勝手で、裏の仕組みが変わっても現場に違和感なく展開できる印象を持ちました。現場からも悪いイメージは聞いておらず、職員は普段から使っている電話機に操作感が近く、スマートフォンよりも使いやすいと評判でした」と本多氏は評価する。
本多 広昌 氏
ただ、今回は機器の設定周りについては試行錯誤した部分もあったため、導入をスムーズに行うためにきちんとベンダーからの支援を受けることの重要性も認識できたと本多氏。管理者側にとっても、ネットワーク経由で電話機の稼働状況を可視化できることは、従来困難だった備品管理の効率化につながる大きなメリットとして捉えているという。
なお、今回のPoCによってクラウドPBXによる業務の効率化に期待する声は寄せられた一方、ポータル上にFAQを掲示して問い合わせが不要になる情報展開にも取り組んで欲しいと前向きな意見も寄せられたという。
今回の検証に限らず、デジタルに関する施策には苦手意識を持つ一定層からの声が出てくるものだが、誰一人取り残さない環境整備という自治体DXの本質を考えても、関わる全員に対して使いやすい選択肢を残しておくことが重要だと音羽氏は指摘する。「ペーパーレスの施策でも一気に紙を捨てるということはできないものです。誰一人取り残さずに使っていける方法を考えるのが我々の仕事であり、デスクトップ電話機などもその1つの選択肢となってくるはず」。
α'モデルへの移行も視野にクラウドPBX活用も検討、自治体DXへの挑戦は続く
今後については、LGWAN接続系のネットワークからローカルブレイクアウトすることで各種クラウドサービスへのアクセスを可能にするα'モデルへの移行が検討されており、クラウド版のグループウェアの導入も推し進めていく計画がある。ネットワーク構成の変更に関する議論が進むことで、クラウドPBXへの移行についての検討を進めていく可能性も十分にあるという。「廃止が決まっているメタル線が敷設された施設など、一部の出先機関にあるPBXの更新は急務となっており、改めてクラウドPBXのPoCは実施する見込みです。ユースケース次第では、改めてデスクトップ電話機での検証も十分考えられる」と音羽氏は意欲的だ。
同時に、建物が被災してネットワークが断線した場合でも、Starlinkをはじめとした衛星通信とクラウドPBXの組み合わせといった、レジリエンス向上に資する電話環境のあり方についても模索している段階にある。クラウドPBXが実装するAI機能によって通話内容のデータ活用も視野に、業務の効率化や住民サービスの質向上、ひいては誰一人取り残さないデジタル社会の実現に向けて、自治体DXを加速させる岡崎市の挑戦は今後も続いていく。その一助として、HP Polyソリューションが活躍する場面も出てくることだろう。
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