「MCP」とは?業務効率化の新常識
2025-06-24

最近話題の生成AI。「もっと便利に使いたい!」「会社の業務に活かせないかな?」と感じている方も多いでしょう。しかし、いざAIを導入しようとすると、「AIが社内のデータやツールと上手く連携できない」「それぞれのAIとツールを繋ぐのが大変…」といった壁に直面することがあります。
そこで注目されているのが「MCP(Model Context Protocol)」という新しい技術です。なんだか難しそうな名前ですが、ご安心ください。
この記事では、MCPとは何か、なぜ今必要なのか、そしてどんなメリットがあるのかを、AI初心者の方にもわかりやすく解説します。MCPを理解すれば、AI活用の可能性がさらに広がること間違いなしです。
ライター:國末拓実
編集:小澤健祐
MCPとは何か?AI時代の共通インターフェース
MCPの基本定義と誕生の背景
MCPは「Model Context Protocol(モデル・コンテキスト・プロトコル)」の略です。
簡単に言うと、例えばChatGPTのようなLLMが、外部のさまざまな「道具(ツール)」や「情報源(データソース)」と、上手に接続されるための「共通のやり方」や「ルール」のことです。
誕生の背景:AIの「悩み」
これまでのAIは、とても賢い頭脳を持っていても、外部の情報やツールを自由に使うのが苦手でした。
- 情報が孤立: 社内の大切なデータや最新の情報にAIがアクセスできず、せっかくの能力を活かしきれない。
- 連携がバラバラ: AIとツールを繋ぐ方法がそれぞれ異なり、開発が大変で時間もコストもかかる。まるで、コンセントの形が国ごとに違うような状態です。
MCPは、このようなAIの「悩み」を解決するために生まれました。
「AIのUSB-C」としてのMCPの意義
MCPの役割を身近なものに例えるなら、まさに「AI界のUSB-C」です。
USB-C端子は便利ですよね。充電ケーブルも、イヤホンも、データを保存する外付けドライブも、多くの機器がUSB-Cに対応しているので、同じケーブルや端子で色々なものに繋げます。
MCPもこれと似ています。
AIの世界における「共通のつなぎ口」のようなもので、この「MCP」という共通のつなぎ方があれば、A社のAIも、B社のAIも、みんな同じようにして、社内のデータベースや、カレンダーアプリ、天気予報サービスなど、さまざまな道具や情報と簡単に繋がれるようになるのです。
これにより、開発者は接続の手間から解放され、ユーザーはより多くの情報にアクセスできる賢いAIを使えるようになります。
誰が作った?オープンスタンダードとしてのMCP
この便利なMCPは、AIの研究開発企業であるAnthropic(アンソロピック)社によって2023年11月に初めて提案されました。Anthropic社は、高性能なAI「Claude」を開発していることでも知られています。
そして大切なのは、MCPが「オープンスタンダード」であり、「オープンソース」のフレームワークであるという点です。
これはつまり、
- MCPの設計図や基本的なプログラムが公開されている。
- 誰でもその仕組みを利用したり、改良したり、開発に参加したりできる。
- 特定の会社だけが独占して使える技術ではない。
この「オープン」であるという性質が、MCPがAI業界全体に急速に広まる力になっています。みんなで使える共通のルールだからこそ、より安全で便利なものへと進化していくのです。
MCPが解決する課題と導入のメリット
MCPは、これまでのAI活用における大きな課題を解決し、多くのメリットをもたらします。
従来の「M×N問題」とは何か?
以前は、AIと外部の道具を繋ぐのは非常に大変でした。
例えば、「M個」の異なる種類のAIと、「N個」の異なる種類の道具を連携させたい場合、それぞれの組み合わせごとに専用の「通訳」や「接続アダプター」のようなものを作る必要がありました。
つまり、M × N 通りもの個別対応が必要だったのです。
これを開発者の間では「M×N(エムかけるエヌ)問題」と呼び、開発の時間とコストを増大させる大きな原因となっていました。
MCPによる「M+N問題」への転換
そこで救世主として登場したのがMCPです。MCPは、AIと道具たちの間に「共通語」を導入するようなものです。
MCPの仕組みを使うと、開発者はこう変わります。
- M個のAIそれぞれをMCPに対応させる。
- N個の道具それぞれをMCPに対応させる。
すると、AIと道具の接続の組み合わせは、M×N通りではなく、M + N 通りで済むようになるのです。
これは、開発の手間やコストを劇的に削減できることを意味します。
課題と解決策 | 従来(M×N問題) | MCP導入後(M+N問題) |
---|---|---|
連携の数 | M個のAI × N個のツール = M×N通り の個別対応が必要 | M個のAI + N個のツール = M+N通り の対応で済む |
開発の手間 | 非常に多い | 比較的少ない |
コスト | 高い | 比較的低い |
標準化 | なし(バラバラ) | あり(共通のルール) |
標準化による開発コスト削減とAI利活用の拡大
MCPによって接続方法が標準化されることで、以下のようなメリットが生まれます。
- 開発コストの削減とスピードアップ: 新しいAIサービスやツール連携の開発が格段に速く、安くなります。
- イノベーションの促進: 開発者が接続の複雑さから解放され、AI自体の賢さを高めたり、新しい活用方法を考えたりすることに集中できます。
- AIの民主化: 中小企業や個人の開発者でも、高度なAI連携ソリューションを開発しやすくなり、AI技術の恩恵がより広い層に行き渡ります。
- AIエージェントの進化: 私たちの代わりに様々な作業を自律的にこなす「AIエージェント」が、MCPを通じて多様なツールを使いこなし、より賢く、より便利になります。
仕組みから理解するMCPの構成要素
MCPがどのようにしてAIと外部の道具たちを繋いでいるのか、そのチームの役割分担を見ていきましょう。
3つの主要役割:Host、Client、Server
MCPの世界には、主に3つの役割を持つ「登場人物」がいます。
役割 | 簡単な説明 | 具体例 |
---|---|---|
MCPホスト (Host) | AIを搭載したアプリケーション本体。私たちが直接操作するもの。 | Claude Desktop, VS Code (AI機能付き) |
MCPクライアント (Client) | ホストの中にいて、MCPサーバーと実際に通信する「連絡係」。 | ホストに内蔵される機能 |
MCPサーバー (Server) | 特定のデータや道具(ツール)へのアクセスを提供する「専門家」。 | ファイルシステムアクセス、API連携 |
- MCPホスト (Host)
私たちがチャットでAIに話しかける時、そのチャットアプリがMCPホストにあたります。AIが住んでいる「お家」のような存在です。 - MCPクライアント (Client)
MCPホストの中に組み込まれている「連絡係」や「翻訳家」です。ホストからの指示をMCPサーバーが理解できる言葉に翻訳して伝えたり、サーバーからの返事をホストに分かりやすく届けたりします。 - MCPサーバー (Server)
特定のデータソースや道具(ツール)へのアクセスを提供する「専門家集団」や、便利な道具がたくさん詰まった「道具箱」です。ファイルアクセス専用、データベースアクセス専用など、機能ごとに用意されます。
MCPサーバーができる3つのこと(リソース、ツール、プロンプト)
MCPサーバーは、AIに対して主に3種類の「助け」を提供します。
- リソース (Resources)
内容: AIが参照するための「情報そのもの」。ファイルの中身、データベースの記録など。役割: AIが情報を読み取り、知識を得るために使います。基本的に副作用(システムへの変更)はありません。例えるなら: 図書館の本、ウェブサイトの記事。
- ツール (Tools)
- 内容: AIが特定の「作業を実行する機能」。計算、メール送信、ファイル保存など。
- 役割: AIが具体的なアクションを起こすために使います。副作用(システムへの変更)を伴うことがあります。
- 例えるなら: 電卓、メールソフト、工場のロボットアーム。
- プロンプト (Prompts)
- 内容: AIへの指示を出す際の「テンプレート」や「定型文」。よく使う指示のパターン。
- 役割: ユーザーがAIに的確な作業を効率よく頼めるようにします。
- 例えるなら: ビジネスメールの定型フォーマット、料理のレシピ。
MCPを活用したAIとの通信フロー
では、これらの登場人物は、具体的にどのように連携するのでしょうか?
例:あなたがAIチャットアプリ(MCPホスト)に「今日の東京の天気を教えて?」と入力した場合
- ユーザーのお願い(MCPホストへ): あなたがAIに「今日の東京の天気を教えて?」と質問。
- AIの判断と指示(ホスト → クライアントへ): AIが「天気情報が必要だ」と判断し、MCPクライアント(連絡係)に「天気予報のMCPサーバーに問い合わせて!」と指示。
- クライアントからの問い合わせ(クライアント → サーバーへ): MCPクライアントが、天気予報機能を持つMCPサーバー(専門家)に「今日の東京の天気は?」とリクエスト。
- サーバーの処理と返答(サーバー → クライアントへ): MCPサーバーが天気情報を調べ、「晴れ、最高気温25度」という結果をMCPクライアントに返す。
- クライアントからの報告と回答(クライアント → ホスト → ユーザーへ): MCPクライアントがAIに結果を報告。AIがあなたに「今日の東京の天気は晴れで、最高気温は25度です」と回答。
この一連のやり取りは、コンピューター同士が情報を交換するための決められたルール(JSON-RPCなど)に従って行われます。
MCPの具体的な活用事例と導入プロセス
MCPによって、AIは様々な場面で活躍できるようになります。
プログラマー向けAIアシスタントの連携
プログラマーが使う開発環境にMCPが統合されると、AIがコーディング作業を強力にサポートします。
- スーパーコードアシスタント: AIがPC内のファイルやプログラムの変更履歴と連携し、高度なコード提案や自動生成を行う。
- 賢いデバッグアシスタント: AIがエラーメッセージやログを読み解き、問題の原因特定や解決策を提案。
- ドキュメント自動生成: AIがプログラムのコードを分析し、説明書を自動生成。
業務自動化・分析レポート生成への応用(例:社内エージェント)
ビジネスシーンでもMCPは役立ちます。
- 自然言語でデータ分析: 専門知識がなくても、AIに話し言葉で質問するだけで、売上データなどを分析し、レポートを作成。
- プロジェクト管理の自動化: AIがプロジェクト管理ツールと連携し、進捗確認やリマインダー送信、議事録作成などを自動化。
- 頼れる企業内アシスタント: AIが社内規定や過去の資料、顧客情報システム(CRM)などにMCPを通じてアクセスし、社員からの質問に的確に回答。
中小企業でも可能なMCP導入のステップとコスト感
MCPの導入は、大企業だけでなく中小企業にとっても現実的な選択肢となりつつあります。
導入ステップ
- 目的の明確化: AIと連携させて何をしたいのか、どの業務を改善したいのかを明確にする。
- 対応ツールの確認: 利用したいAIモデルや連携させたいツールがMCPに対応しているか確認する。
- MCPサーバーの選定・構築: 既存のMCPサーバーを利用するか、特定のニーズに合わせて小規模なMCPサーバーを開発する。
- 連携設定とテスト: AI(MCPホスト)とMCPサーバーを接続し、動作をテストする。
- 運用と改善: 実際に利用を開始し、効果を見ながら改善していく。
コスト感
- 既存のMCPサーバー利用: 比較的低コストで始められる可能性があります。
- カスタム開発: 開発規模によりますが、オープンソースのSDK(開発キット)を活用することで、従来よりもコストを抑えられる可能性があります。
- クラウドサービスの活用: MCPをサポートするクラウドサービスを利用することも選択肢の一つです。
重要なのは、スモールスタートで試し、徐々に活用範囲を広げていくことです。
知っておきたいMCPの注意点と今後の展望
素晴らしい可能性を秘めたMCPですが、知っておくべき注意点と、これからの展望も見ておきましょう。
セキュリティの観点
MCPはAIに外部システムへのアクセス権を与えるため、セキュリティ対策が非常に重要です。
- 悪意のあるサーバーへの接続リスク: 機密情報が盗まれたり、システムが不正操作されたりする危険性。
- 対策:
- 明示的な同意: AIがツールを使う際にユーザーに確認する。
- 信頼できるサーバーの利用: 提供元が確かなMCPサーバーを選ぶ。
- アクセス権限の管理: AIに与える権限を最小限にする。
- 通信の監視: AIとサーバー間の通信をチェックする。
便利な道具も安全な使い方を学ぶことが大切です。
対応サーバー選定と管理のポイント
MCPはまだ新しい技術であり、利用できるMCPサーバーの種類や品質にはばらつきがあるかもしれません。
- 信頼性の確認: サーバーの提供元やコミュニティでの評判を確認する。
- 目的との適合性: 自社のニーズに合った機能を持つサーバーを選ぶ。
- 継続的な管理: サーバーのアップデートやセキュリティ情報を定期的にチェックする。
MCPによる「モジュール型AI社会」の到来
MCPが普及することで、AIの世界はより「モジュール型」になると言われています。
これは、レゴブロックのように、必要な機能(AIモデルやMCPサーバー)を自由に組み合わせて、目的のAIシステムを構築できるようになるイメージです。
今後の展望
- 業界標準へ: OpenAIやGoogle、Microsoftといった大手企業もMCPのサポートを進めており、業界標準となる可能性が高いです。
- AIエージェントのさらなる進化: MCPを通じてより多くのツールを使えるようになり、AIエージェントがより複雑なタスクを自律的にこなせるようになります。
- 新しいサービスの創出: AIとツールの組み合わせが容易になることで、これまでになかった革新的なサービスが生まれることが期待されます。
おわりに
MCPは、AIが外部の道具と安全かつ柔軟につながるための「共通言語」です。
難しい仕組みのように見えるかもしれませんが、MCPの導入によってAIはさらに実用的でパワフルな存在へと進化します。
これまで「AIにこんなことができたらいいな」と思っていたことが、MCPによって現実のものになるかもしれません。
中小企業にとっても、MCPはAI活用のハードルを下げ、業務の生産性を向上させる大きな武器となるでしょう。
これからのAI時代において、MCPがどのような役割を果たしていくのか、ぜひ注目していてください。
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