2024.09.13

印刷工場はこう変わる!
インテリジェントオートメーションが切り拓く未来

「自動化」を成功させるために抑えるべきポイントを解説

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株式会社 日本HP
デジタルプレス事業本部
インダストリアルセールス本部
事業戦略部 部長
田口 兼多

「インテリジェントオートメーション」という言葉から、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?未来の工場でロボットが動き回る姿や、最先端の技術が織りなす自動化の世界でしょうか?インテリジェントオートメーションは、AI技術を駆使して生産フロア全体を一元的に管理し、印刷機や加工機のデータをリアルタイムに収集・分析・判断し、システム連携して最適な行動につなげます。印刷機とソフトウェアを高度に融合し、ロボットが生産ラインをサポートする姿はもう未来の話ではありません。インテリジェントオートメーションで、
生産性を飛躍的に向上させ、印刷プロセスを次世代へと進化させませんか?

単なる自動化ではなく「思考の自動化」

AIの進化のスピードは目覚ましく、印刷業界にも例外なくその波は押し寄せています。
HP Indigoデジタル印刷機には様々なAIベースの機能が搭載されていますが、今回は、HPが提唱する「インテリジェントオートメーション」についてご紹介します。単なる自動化を超え、印刷工程をよりスマートに、より効率的に自動化を実現するインテリジェントオートメーションは、自動化の新しい標準となり、これからの印刷工場になくてはならない存在になると考えています。

現在、印刷機を使用されているお客様は、労働力不足や、エネルギー消費の最適化、廃棄物削減、マスカスタマイゼーション、オンデマンド生産への対応など多くの課題を抱えていることと思います。このような課題を解決するのが、生産ラインにおけるインテリジェントオートメーションです。

では、インテリジェントオートメーションは、一般的なオートメーションと何が違うのでしょう?通常のオートメーションは、機械やロボットが人間の代わりに作業を実施するという「アクション」のみを対象としています。それに対して、インテリジェントオートメーションは単に行動を代替するだけではなく、データを収集し、分析し、それに基づいて決定を下すという、まさに知的なサイクルを回しているのです。このことから、インテリジェントオートメーションは、「思考の自動化」とも言えます。

自動ドアを例に見てみましょう。通常のオートメーションは、ドアを開閉するという「アクション」を人の手に代わって機械が行います。開閉という行動のみを代替しているため、センサーが感知すれば、猫であろうと荷物であろうとドアは開くでしょう。一方、インテリジェントオートメーションは、データを収集し、データ分析に基づいて判断した上でアクションを実行するので、ドアの前に立つのが人間でなければドアを開けないこともできますし、仮に危険人物と推定される人物が立てば自動的に警備に通報する、ということもできるようになるかもしれません。

インテリジェントファクトリーの実現に欠かせない要素

さて、最先端の技術を工場や製造プロセスに統合し、工場全体の自動化とスマート化を実現するのがいわゆる「インテリジェントファクトリー」です。ロボットやAIが生産プロセスを自動化し、オペレーターの介入を最小限に抑えるのが基本概念ですが、印刷におけるインテリジェントファクトリーを実現するには3つの欠かせない要素があります。1つ目は革新的な印刷技術、2つ目は業界をリードするベンダーとの戦略的パートナーシップ、そして3つ目が前述のインテリジェントオートメーションです。

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HPのインテリジェントオートメーションの大きな特長の一つは、データ駆動型であることです。生産フロアから直接印刷機や加工機の稼働状況データを集めて、AIで分析し、アクションに結び付けるための判断を引き出します。その上で、関連システムと連携して、適切なアクションを推奨するのがHPのインテリジェントオートメーションでした。

この、データ収集・分析・判断・システム連携といった一連の自動化を可能にするには、強力なプラットフォームが不可欠です。その役割を果たすのが、2016年に提供を開始し、今もなお進化を続けるクラウドベースのオペレーティングシステム「HP PrintOS」です。HP PrintOSは、印刷機の機能を最大限に引き出し、自動化を推進するための様々なアプリケーション群を備えた、いわば「インテリジェントオートメーションのエンジン」だと言えます。インターネットに接続できれば、どこからでも印刷機の稼働状況や作業の進捗をリアルタイムで管理することが可能です。

スウェーデンに本社を置くElanders Groupは、受発注から出荷までの全体のワークフローをHP PrintOSのアプリケーションであるSite Flowで管理しており、同社の生産性に大きな影響を与えています。2016年の時点で約11万4千件の印刷関連のオーダーを受けていましたが、Site Flowによって生産性が飛躍的に上がり、2023年の注文件数は約17.5倍の200万件以上にまで達しました。これはインテリジェントオートメーションがなければ到底達成できなかった数字だとPrint & Packaging部門のCOO(最高執行責任者)Ulrich Schätzlが語っています。

生産フロア全体の機器を監視する
Production Beatと自動走行搬送ロボット(AMR)

インテリジェントオートメーションに関連する2つの最新情報をご紹介しましょう。まずは、HP PrintOSのアプリケーションの1つであるProduction Beatです。HPの印刷機のみを管理対象とした従来のPrint Beatに対して、生産フロア全体の機器の監視を可能にしたのがProduction Beatです。Production Beatは他社製のデジタル印刷機はもちろん、オフセット印刷機やあらゆる種類の加工機も管理の対象となり、これを利用することによって、生産フロア全体の状態をリアルタイムで監視することが可能になりました。機器に取り付けたセンサーからは、電源のオンオフ、アイドル状態、動作カウンター(回転数、速度、温度、長さなど)などの情報を取得し、データを分析し、インサイトを導きアクションにつなげます。そして、より効率的に機器や人員を配置することで、長期継続的にフロア全体の生産性を改善できます。

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もう1つご紹介したいのは、オランダに本社を置くMoviĜo社(モビゴ)と共同で発表した自動走行搬送ロボット(AMR)Ŝharko5です。MoviĜo Ŝharko5は、HP Indigoデジタル印刷機向けに最適化されたメディア搬送ロボットです。設置面積が小さく、充電時間も短い上に終日連続稼働し、自立型のため床にトラックを敷いたり生産現場に特別な設備を設置する必要がありません。既存の通路をそのまま利用できるので、導入時の負担もなく容易に設置が可能です。また、前面と背面にカメラがあり、物体を感知して停止することもできます。ワークフローと統合して、なくなりそうな用紙を搬送したり、印刷済みのパレットを次の加工機へ搬送したり、インテリジェントオートメーションの重要な役割を担う存在となるでしょう。

アナログとデジタルを融合し、
生産ライン全体をインテリジェントファクトリーに

最後に、インテリジェントファクトリーが実現されるとどうなるか、具体的にイメージしてみましょう。例えば、HP Indigo 120Kデジタル印刷機、オフセット印刷機、加工機などが複数設置されている書籍生産ラインがあるとします。ここでは、HP PrintOSによって、受発注、プリプレス、印刷、後加工、出荷など、ほぼ全てのプロセスが自動化されています。ECサイト等から注文が入ると、HP PrintOS Site Flowにデータが入り、注文内容を確認後、インクや原反など各ジョブに必要なセットアップに基づいてバッチ処理が行われます。印刷に必要な情報は、適切な印刷機に送信されます。例えば、表紙はHP Indigo 120Kデジタル印刷機に、中身はHP PageWide Web Press(連帳インクジェット印刷機)にといった具合です。ジョブが印刷機に送られると、HP Indigo 120Kデジタル印刷機であれば1時間あたり最大6,000枚をノンストップで印刷します。Automatic Alert Agentという機能が印刷されたすべての用紙をインラインで高速チェックし、エラーや品質の問題が検出されると印刷不良の用紙を自動的に回収し、印刷機を停止せずに再印刷。色も自動でキャリブレーションされるので、印刷品質が担保されます。また、自動走行搬送ロボット(AMR)を使用して、パレットの交換を自動化すれば、ノンストップで用紙交換ができるのでたった1人のオペレーターが並行して2台の印刷機を運用することも可能です。後加工は、セットアップ情報を加工機が印刷機から受け取り、加工も自動で行われます。 その後、製品を注文情報と照合して出荷するまでのプロセスが自動化されているので、ノンストップで1日に数千件のジョブの処理もこなせるでしょう。

現在、生産フロアに様々な種類の印刷機が混在する環境も多く見られるようになりました。1台の印刷機が全てのオーダーに適しているわけではありません。印刷ジョブによって、デジタル印刷機、オフセット印刷機、インクジェットなど、最適な技術を使うことで生産性は格段に向上します。インテリジェントオートメーションは、規模に関わらず、デジタル印刷機と既存の印刷機との統合が可能です。生産ラインごとにあらゆる工程を自動化・最適化し、一歩ずつインテリジェントファクトリーを実現しませんか?これまで夢として語られてきた印刷工場の未来は、今まさに実現できるところにまで来ているのです。

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