ゼロトラストとは?必要な理由や要件、主要技術までわかりやすく解説

2026-06-18

ランサムウェアとは
ランサムウェアとは

クラウド移行やリモートワークの拡大により、従来の「社内は安全」という前提が崩れた今、多くの企業が新たなセキュリティモデル「ゼロトラスト」への移行を迫られています。

ゼロトラストとは、「決して信頼せず、常に検証する」を原則に、すべてのアクセスを検証する次世代のセキュリティ概念です。境界防御では防ぎきれない内部不正や標的型攻撃に対応し、場所を問わない安全な業務環境を目指します。

本記事では、ゼロトラストの基本概念から必要とされる背景、導入のメリット・デメリット、7つの要件、実現に必要な主要技術、具体的な導入ステップまで、企業のセキュリティ担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

デジタル庁やIPAのガイドラインも参照しながら、実践的な導入アプローチを紹介しますので、ぜひセキュリティ戦略の見直しにお役立てください。

ゼロトラストとは、「決して信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という前提に立ち、すべてのアクセスを検証するセキュリティの考え方です。従来は社内ネットワークを安全な領域として信頼していましたが、ゼロトラストでは社内外を問わず、すべてのユーザーやデバイスからのアクセスを常に確認・検証します。

この考え方は「ゼロトラスト・アーキテクチャ」として体系化されており、クラウドサービスの普及やリモートワークの常態化といった現代の IT 環境に対応した、新しいセキュリティモデルとして注目されています。

近年、ゼロトラスト対応を謳う製品やサービスが増えていますが、ゼロトラストは単なる製品ではなく、組織全体のセキュリティ戦略を根本から見直す包括的な概念です。社内・社外という境界に依存せず、あらゆるアクセスを検証することで、より強固なセキュリティ体制を実現します。

1-1. 境界型セキュリティとの違い

従来の境界型防御モデルは、「信用する領域(社内)」と「信用しない領域(社外)」の間に明確な境界線を設け、境界内部のリソースやユーザーは基本的に信頼できる前提で成り立っています。ファイアウォールや VPN を境界線上に配置し、外部からの脅威を遮断することでセキュリティを確保する考え方です。

一方、ゼロトラストは「決して信頼せず、常に検証する」という前提に立ちます。社内・社外を問わず、情報資産にアクセスするあらゆる要素を検証し、必要最小限のアクセス権のみを付与します。

項目 境界型防御 ゼロトラスト
基本思想 信用する、しかし検証する 決して信用せず、すべて検証する
境界の概念 明確な境界を設定 境界の概念を排除
社内からのアクセス 基本的に信頼 常に検証が必要

クラウドサービスやリモートワークの普及により、境界の概念が曖昧になった現代では、ゼロトラストの考え方がより適しているといえます。

1-2. SASEとの違い

ゼロトラストとSASE(サシー:Secure Access Service Edge)は混同されがちですが、その位置づけが異なります。

ゼロトラストは、すべてのアクセスを信頼しないという「セキュリティの考え方・ポリシー」です。社内外を問わず、あらゆるアクセスに対して認証や検証を求める基本方針を指します。

一方SASEは、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で統合的に提供する「技術フレームワーク」です。2019年にガートナー社が提唱した概念で、テレワークやクラウドサービス利用の拡大に対応するための具体的な実装方式といえます。

項目 SASE ゼロトラスト
性質 技術フレームワーク セキュリティポリシー
役割 実装手段 考え方・方針

企業がゼロトラストのセキュリティ体制を整えたい場合、その実現手段としてSASEソリューションを選択するケースが多くなっています。

デジタル庁による「民間企業におけるゼロトラスト導入事例」によると、公開されている民間企業23社のゼロトラスト導入事例を分析した結果、導入を決定した主な理由として「リモートワーク環境の整備」が最多となりました。続いて「安全なクラウド利用」「社内ネットワークの混雑緩和」「業務の効率化」「サイバー攻撃対策」が挙げられています。

引用:デジタル庁「民間企業におけるゼロトラスト導入事例」
引用:デジタル庁「民間企業におけるゼロトラスト導入事例」
引用:デジタル庁「民間企業におけるゼロトラスト導入事例

2-1. クラウドサービスの普及

近年、企業の IT 環境は急速にクラウドへと移行しています。従来、企業の情報資産は社内のデータセンターやオンプレミスのサーバーに集約されており、境界型防御によって保護することが可能でした。

しかし、クラウドサービスの普及により、業務データやアプリケーションが社外のクラウド環境に分散配置されるようになりました。これにより、以下のような変化が生じています。

従来の環境 クラウド環境
  • 社内に情報資産が集約
  • 明確な境界で防御可能
  • 社内ネットワーク経由でアクセス
  • 社外のクラウドに分散
  • 境界が曖昧化
  • インターネット経由で直接アクセス

クラウドへのデータ分散が進んだ結果、境界線を基準とした従来型のセキュリティ対策では、企業の重要な情報資産を適切に守ることが難しくなってきました。そのため、アクセス元やデバイスの状態を問わず、すべてのアクセスを検証するゼロトラストの考え方が不可欠となっています。

2-2. リモートワークの常態化

働き方改革関連法案の成立や新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、リモートワークは一時的な措置から恒常的な働き方へと変化しました。これにともない、社外の環境から企業ネットワークへ接続する従業員の数と頻度が大幅に高まっています。

自宅やカフェなど、さまざまな場所から業務システムへアクセスする状況では、もはや「社内=安全」という前提が成り立ちません。このような環境変化により、アクセス元や利用者を問わず、すべての通信を検証するゼロトラストの考え方が求められています。

2-3. サイバー攻撃の高度化・多様化

近年、サイバー攻撃の手法は著しく高度化・多様化しており、企業のセキュリティ対策は大きな挑戦に直面しています。

IPA(情報処理推進機構)が発表する「情報セキュリティ10大脅威2026」では、組織が直面する深刻な脅威として以下が挙げられています。

順位 組織向け脅威 概要
1位 ランサムウェア攻撃 データを暗号化して身代金を要求する攻撃
2位 サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 取引先や委託先のセキュリティの脆弱性を突いて本命の組織へ侵入する攻撃
3位 AI の利用をめぐるサイバーリスク 生成AI を悪用した高度なフィッシングメールやディープフェイクによる詐欺攻撃
4位 システムの脆弱性を悪用した攻撃 ソフトウェアやシステムの脆弱性を突いて不正アクセスやマルウェア感染を引き起こす攻撃
5位 機密情報を狙った標的型攻撃 特定の組織を狙い、機密情報を狙った高度で執拗なサイバー攻撃
6位 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) 国際情勢や政治的緊張を背景とした国家主導型または関連するサイバー攻撃
7位 内部不正による情報漏えいなど 従業員や退職者による意図的な機密情報の持ち出しや不正アクセス
8位 リモートワークなどの環境や仕組みを狙った攻撃 テレワーク環境のセキュリティの甘さを狙った不正アクセスやマルウェア感染
9位 DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) 大量のアクセスを集中させてサービスを停止させる攻撃
10位 ビジネスメール詐欺 経営幹部や取引先になりすまして送金や情報提供を騙し取る詐欺

参考:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026

従来のファイアウォールやアンチウイルスソフトといった境界型防御をすり抜け、内部ネットワークへの侵入を成功させるケースが増えています。

一度侵入を許すと、「内部は安全」という前提のもとでは脅威の拡散や被害の拡大を食い止めることが困難です。このような状況において、ネットワークの内外を問わずすべての通信を検証するゼロトラストの考え方が、現代のセキュリティ対策として重要になっています。

なお、サイバー攻撃については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

HP Tech&Device TV:サイバー攻撃とは?種類や手口、被害事例、対策を解説(2025年5月29日)

2-4. 内部不正のリスク増大

従来の境界型セキュリティでは、一度社内ネットワークへの認証を通過したユーザーやデバイスは「信頼できるもの」として扱われ、その後のアクセスに対する継続的な検証が行われませんでした。そのため、正規の権限をもつ社員や協力会社の担当者による意図的な情報持ち出し、あるいはアカウント情報の盗用による不正アクセスといった内部不正のリスクに対して、十分な対策を講じることが困難でした。

実際に、退職予定の社員が機密情報を持ち出すケースや、権限を悪用した個人情報の不正閲覧など、内部からの脅威による情報漏えい事故は後を絶ちません。加えて、リモートワークの普及により、社員が社外から社内システムにアクセスする機会が増えたことで、監視の目が届きにくくなり、内部不正のリスクはさらに高まっています。

ゼロトラストでは、社内ネットワークであっても常に検証を行うため、こうした内部不正に対しても有効な対策となります。

ゼロトラストの導入には、セキュリティ強化と業務効率化の両面でメリットがある一方、注意すべきデメリットも存在します。導入を検討する際は、これらを十分に理解したうえで判断することが重要です。

ゼロトラスト導入のメリット・デメリット一覧は、以下のとおりです。

項目 メリット デメリット
セキュリティ 社内外の脅威を平等に監視し、サイバー攻撃や内部不正のリスクを大幅に低減できる 全アクセスの認証・監視により、運用負荷が増大する
業務環境 場所や端末を問わず安全にアクセスでき、テレワークやBYODを推進できる 導入初期に既存システムとの統合や設定に時間を要する
コスト 境界防御の複雑な設定が不要になり、長期的には運用がシンプル化する 専用ツールや技術の導入に初期投資が必要となる
クラウド活用 クラウドサービスを安心して業務利用でき、DXを加速できる 全リソースの可視化・分析基盤の構築にコストがかかる

導入の成功には、自社の現状と課題を正確に把握し、段階的な移行計画を立てることが不可欠です。

2018年、Forrester Research(フォレスター・リサーチ)社のチェイス・カニンガム博士により「ゼロトラスト・エクステンデッド・エコシステム(ZTX)」が提唱されました。

この中で、抽象的な概念にとどまっていたゼロトラストを実装可能な体系へと具体化するため、7つの構成要素が示されています。これらの要素は、ゼロトラスト・アーキテクチャ(ZTA)を構築する際の基盤として位置づけられています。

具体的な7つの要件は以下のとおりです。

  1. ネットワークセキュリティ
  2. デバイスセキュリティ
  3. アイデンティティセキュリティ
  4. ワークロードセキュリティ
  5. データセキュリティ
  6. 可視化と分析
  7. 自動化

これらの要件は、それぞれが独立して機能するのではなく、相互に連携しながら組織全体のセキュリティレベルを高めていきます。

4-1. ネットワークセキュリティ

ゼロトラストにおけるネットワークセキュリティでは、企業ごとのネットワーク構成に応じて、多層的な防御施策を実施することが求められます。

具体的には、以下のような対策を組み合わせてネットワーク全体を保護します。

対策 詳細
エンドポイント保護 端末レベルでの脅威検知・防御
ネットワーク入口の監視 不正侵入検知システム(IDS)・不正侵入防止システム(IPS)の導入
ファイアウォール 通信の可否を制御し、不正なトラフィックを遮断
ゲートウェイ保護 外部との接続点におけるセキュリティ強化
通信経路の暗号化 データの盗聴や改ざんを防止

ゼロトラストでは、ネットワークの内外を問わずすべての通信を検証するため、これらの対策を統合的に運用し、リアルタイムで脅威を監視・分析することが重要です。

エンドポイント保護やファイアウォールについては、以下の記事も参考にしてください。

HP Tech&Device TV:これからのエンドポイントのセキュリティ対策 何が必要?(2023年6月12日)
HP Tech&Device TV:不正アクセスからデータを守るファイアウォール!仕組みや種類は?(2019年4月5日)

4-2. デバイスセキュリティ

ゼロトラストにおいて、企業の情報資産にアクセスするすべてのデバイスは検証対象となります。パソコンやスマートフォンはもちろん、ネットワークに接続された複合機、ルーター、IoT 機器なども含まれます。

具体的には、以下のような対策が必要です。

対策 詳細
デバイスの識別と承認 アクセス要求のたびに、デバイスが組織の基準を満たしているかを検証
エンドポイント保護の実装 EDR(Endpoint Detection and Response)などを用いて、デバイス上の不審な挙動をリアルタイムに検知・分析
セキュリティポリシーの強制 セキュリティソフトの導入状況や OS の更新状態などを常時監視
即座の遮断機能 マルウェア感染やポリシー違反が検出された際、該当デバイスをネットワークから速やかに隔離

万が一デバイスが侵害された場合でも、被害の拡大を最小限に抑える体制を整えることが重要です。

4-3. アイデンティティセキュリティ

アイデンティティセキュリティは、ネットワークにアクセスを行うあらゆる利用者のデジタルアイデンティティ(eメールアドレス、ログイン認証情報、PINナンバーなどの固有識別子で構成されるもの)に対して認証・認可を行うことです。

ゼロトラストにおいて、アイデンティティは「新しいセキュリティ境界」として位置づけられています。従来のネットワーク境界に代わり、すべてのアクセス要求に対してアイデンティティの検証を行うと、組織の内外を問わず適切なアクセス制御を実現します。

デジタルアイデンティティの情報は、なりすましや不正利用のリスクを最小化するため、継続的なメンテナンスと厳格な管理が不可欠です。これによって企業内の情報資産へのアクセス権を常に必要最低限にとどめ、情報漏えいリスクを抑えます。

VPN 接続やリモートデスクトップ環境における認証情報の窃取を狙った攻撃が、近年急速に拡大しています。そのため、多要素認証の導入や特権アカウントの厳格な管理など、アイデンティティを保護する対策が不可欠です。

4-4. ワークロードセキュリティ

ワークロードセキュリティとは、クラウド環境やオンプレミス環境で稼働するシステムのワークロード(CPU 使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率などの総体)を適切に管理・保護することを指します。

近年、IaaS や PaaS といったクラウドサービスの利用が拡大していますが、利用中のすべてのクラウド環境を自社のセキュリティ部門で把握するのは困難です。しかし、これらの環境を適切に管理しないままでいると、外部からの侵入や設定の不備を原因とした機密情報の流出につながる危険性が増大します。

ゼロトラストの観点では、ワークロードそのものを「信頼しない」前提で、以下のような対策が求められます。

クラウド上で稼働するすべてのワークロードの可視化
脆弱性やセキュリティ設定の継続的な監視
異常な挙動の検知と迅速な対応

これにより、社内システムが適切に稼働しているかを常に把握し、セキュリティリスクを最小化することが可能になります。

4-5. データセキュリティ

ゼロトラストにおけるデータセキュリティでは、企業が保有するあらゆる情報資産を適切に分類し、データ自体を保護対象とする考え方が基本となります。保存場所や転送経路を問わず、データがどこに存在しても守る姿勢で対策を講じることが重要です。

具体的には、以下のような対策を実施します。

対策 詳細
データの分類と保存場所の決定 機密度に応じた適切な保管場所の選定
アクセス権限の厳格な管理 最小権限の原則に基づいた権限付与
暗号化の徹底 保管時・転送時にデータを暗号化

特に、企業にとって重要な機密データについては、強い権限をもつ管理者であってもアクセスできないよう制限するなど、厳格な対策も検討する必要があります。暗号化の適切な実装により、万一の情報流出時にも、許可されていない第三者がデータの中身にアクセスできない状態を保つことが可能です。

4-6. 可視化と分析

ゼロトラストの実現には、すべてのアクセスやデバイス、通信の状態を可視化し、継続的に監視・分析することが不可欠です。ログを一元管理し、分析を行える体制を整備すると、システムとインフラ全体の可視化を実現できます。

すべてのセキュリティプロセスを「見える化」することで、以下のような効果が期待できます。

許可されていないサービスやデバイス(シャドー IT)を社員が使用した際のアラート検知
異常な通信パターンやアクセス行動の早期発見
セキュリティインシデントの予兆検知と迅速な対策実施

収集したログデータの分析により、セキュリティリスクを事前に把握し、被害が拡大する前に適切な対応を取れるようになります。また、可視化されたデータは、セキュリティポリシーの見直しや改善にも活用できます。

4-7. 自動化

ゼロトラストを実現するには、組織全体のネットワークシステムにおいて、セキュリティ運用の自動化が不可欠です。手動での設定や分析に依存していると、膨大なログデータの中から脅威を見逃してしまい、セキュリティインシデントにつながるおそれがあります。

自動化が求められる理由は、以下のとおりです。

セキュリティ管理者がすべてのログを手動で追跡することは現実的に不可能
攻撃者からの脅威を迅速に発見し、対処するスピードが求められる
ゼロトラストモデルでは、各ソリューションを統合的に管理する必要がある

そのため、ネットワーク全体でゼロトラストの各ソリューションを自動化して集中管理し、アラート検知だけでなく、その後の対応処理も可能な限り自動化することが重要です。これにより、人的リソースの負担を軽減しながら、セキュリティレベルを維持・向上させられます。

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ゼロトラストを実現するためには、複数のセキュリティ技術を組み合わせた活用が必要です。以下に主要な技術を一覧表にまとめました。

技術名 役割
EPP エンドポイントの脅威を事前に防御(主に「事前防御」が目的)
EDR エンドポイントでの不審な動作を検知・対応(主に「事後対策」が目的)
IAM / IGA ユーザーの ID・アクセス権限を一元管理
ZTNA ポリシーに従い、アプリケーションやサービスへ安全にリモート接続
CWPP 多様化したワークロードを包括的に保護するプラットフォーム
SOAR 複数のセキュリティツールを統合し、脅威の検知から対応までのプロセスを自動化・効率化する運用基盤
統合エンドポイントセキュリティソリューション 端末を保護し、マルウェアの侵入防止や端末内の不審な動きを監視する防御・検知ツール

これらの技術は、それぞれが独立して機能するのではなく、連携により「決して信頼せず、常に検証する」というゼロトラストの原則を実現します。

5-1. EPP(エンドポイント保護プラットフォーム)

EPP(エンドポイント保護プラットフォーム)は、マルウェア対策やファイルの暗号化、情報漏えい対策といった複数のセキュリティ機能を一元化した統合型のソリューションです。事前防御を主な目的としており、エンドポイント(パソコン、スマートフォン、タブレットなど)をマルウェア攻撃や悪意のある活動から保護します。

従来のオンプレミス型から、現在はクラウド型の EPP が主流となっています。クラウド型では、エンドポイントに配置された軽量エージェントを通じて、場所を問わず一元管理が可能です。

主な機能は、以下のとおりです。

  • 次世代アンチウイルス(NGAV)による予防的防御
  • AI・振る舞い分析による脅威検知
  • 脅威インテリジェンスの統合
  • 脆弱性管理と IT ハイジーン

EPP は大量のエンドポイントデータを収集・分析し、脅威を事前に予測・ブロックします。リモートワークが増加する現代において、ネットワーク境界の外にあるデバイスも保護できるため、ゼロトラスト実現の基盤技術として不可欠です。

5-2. EDR(エンドポイント検知・対応)

EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイント上での不審な挙動を検知し、侵入後の対応を支援する技術です。従来のアンチウイルスソフトがファイルのパターンマッチングで既知のマルウェアを検知するのに対し、EDR はエンドポイント上の振る舞いを継続的に分析します。

主な特徴は、以下のとおりです。

  • 未知の脅威に対しても高い検知精度を発揮
  • 感染後の対応作業を支援する機能を搭載
  • エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視・分析

EDR は主に事後対策を目的としており、万が一マルウェアが侵入した場合でも、迅速な検知と対応が可能です。

ゼロトラストモデルでは、信頼できるネットワークという概念が存在しないため、エンドポイント自体のセキュリティ強化が不可欠です。既知の脅威をアンチウイルスソフトでブロックし、そこをすり抜ける未知の脅威を EDR で検知・除去する2段階方式が、現在のセキュリティ対策として推奨されています。

5-3. IAM / IGA(ID・アクセス管理)

IAM(Identity and Access Management)とIGA(Identity Governance and Administration)は、ゼロトラストにおける ID 管理の中核を担う技術です。

IAM の主な機能 IGA の主な機能
  • シングルサインオン(SSO)による統合認証
  • 多要素認証(MFA)による本人確認の強化
  • ユーザーアカウントの自動作成、更新、削除
  • アカウントのライフサイクル管理の自動化
  • アクセス権限の棚卸しと適切な権限付与
  • コンプライアンス対応とアクセス申請ワークフロー

IAM は認証基盤として複数のクラウドサービスやアプリケーションへの統合ログインを実現し、ユーザーの利便性向上とセキュリティ強化を両立します。一方、IGA は人事異動や入退社にともなうアカウント管理を自動化し、運用負荷の軽減とヒューマンエラーの防止に貢献します。

両者を組み合わせると、「誰が」「何に」「いつまで」アクセスできるかを適切に管理できます。

5-4. ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)

ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)は、事前に設定されたポリシーに従い、アプリケーションやサービスへ安全にリモート接続できる仕組みを実現する技術です。

従来の VPN が LAN 全体への包括的なアクセスを付与するのに対し、ZTNA は「拒否をデフォルト」とし、ユーザーが明示的に許可されたサービスのみへのアクセスを提供します。ユーザーの認証が完了すると、暗号化された専用通信経路が確立され、その経路を介して必要なアプリケーションへの接続が自動的に提供される仕組みです。

主な特徴は、以下のとおりです。

  • ID ベース認証とアクセス制御による攻撃対象領域の縮小
  • デバイスの状況や場所に基づいたきめ細かなアクセス制御
  • 「決して信頼せず、常に検証する」という最小特権アプローチ
  • ダーククラウド概念による未許可アプリケーションの非表示化

これにより、侵害されたエンドポイントや認証情報による横方向の移動を効果的に防ぐことが可能です。

5-5. CWPP(クラウドワークロード保護)

CWPP(Cloud Workload Protection Platform:クラウドワークロード保護)は、クラウド上で稼働する仮想マシンやコンテナ、サーバーレスなど、多様化したワークロードを包括的に保護するプラットフォームです。

主な機能は、以下のとおりです。

機能 詳細
脆弱性管理 ワークロード上のセキュリティパッチ適用状況の確認と脆弱性の検出
脅威検知 マルウェアや不正アクセスなどの脅威をリアルタイムで監視・検出
コンプライアンス管理 セキュリティポリシー違反の自動検出と是正
可視化と分析 複数クラウド環境におけるワークロードの一元管理

特にマルチクラウド環境では、AWS や Azure など異なるプラットフォーム上のワークロードを統合的に管理できるため、セキュリティ運用の効率化とコンプライアンス強化に貢献します。クラウド特有の動的な環境変化に対応し、継続的なセキュリティ保護を実現します。

5-6. SOAR(セキュリティ統合自動化)

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response:セキュリティ統合自動化)は、セキュリティオペレーションの自動化を実現する技術です。複数のセキュリティツールを統合し、インシデント対応のワークフローを自動実行することで、対応速度と一貫性を飛躍的に向上させます。

主な機能は、以下のとおりです。

機能 詳細
自動化とオーケストレーション マルウェア感染検知時の端末隔離、ウイルススキャン実行、ファイアウォールルール更新など、複数の対応作業を自動実行。手動では30分~1時間かかる作業が数分で完了
プレイブック実行 インシデントタイプごとに標準化された対応手順を定義し、経験の浅いアナリストでも高品質な対応が可能に。条件判断や人間の承認が必要な箇所を組み込むと、柔軟な運用が実現できる

SOAR導入により、インシデント対応時間の短縮や、アナリストの生産性向上が図れます。

5-7. 統合エンドポイントセキュリティソリューション

ゼロトラストの実現には、これまで紹介した EPP、EDR、IAM などの技術を個別に導入するだけでなく、それらを統合的に運用できるソリューションの活用も有効です。特に、中小企業や専門人材が不足している組織では、複数のセキュリティ製品を個別管理することが運用負荷の増大につながります。

HP Wolf Pro Security は、次世代アンチウイルス、マイクロ仮想マシンによる脅威の封じ込め、フィッシング対策を統合したエンドポイントセキュリティソリューションです。ゼロトラストの「決して信頼せず、常に検証する」という原則に基づき、以下の特徴を備えています。

機能 詳細
脅威の封じ込め マイクロ仮想マシン技術により、高度なマルウェアを隔離。検知に依存せずゼロデイ攻撃にも対応
ユーザー資格情報の保護 フィッシングサイトでの認証情報入力を検知・ブロック。既知の悪意ある Web サイトへのアクセスを自動遮断
次世代アンチウイルス ディープラーニングAI により、既知・未知の脅威を検出。従来型アンチウイルスソフトが不要に
HP Wolf Security Controller クラウドベースの統合管理画面で、25台以上の環境では脅威の動的分析やポリシー管理がフル搭載

3ステップの簡単な導入と運用、生産性を損なわない防御、第三者機関に評価された多層防御の実現が可能です。特に、セキュリティ専門人材が不足している中小企業や、リモートワーク環境を整備したい組織、クラウドサービス利用を拡大している企業、段階的にゼロトラスト移行を進めたい組織におすすめのセキュリティソリューションです。

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ゼロトラストの導入は、製品を購入するのでなく、段階的な設計と運用改善をともなうプロセスです。IPAが推奨する以下のステップで進めましょう。

ステップ 実施内容
1. 業務の現状分析 保護すべき資産(データ・アプリ・デバイス)の棚卸しと現状のアクセス権限の確認
2. グランドデザイン作成 「誰が・どのデバイスで・どのアプリに・どの条件でアクセスできるか」のポリシー設計
3. 投資判断 必要な技術(IAM、ZTNA、EDR など)の選定と予算確保
4. 環境構築 パイロット部門での段階的導入と技術基盤の整備
5. 検証・改善 ログ分析による異常検知の確認と継続的なポリシー更新

参考:IPA「ゼロトラスト移行のすゝめ

重要なのは、全社一斉導入ではなく、重要度の高いシステムから段階的に展開し、現場のフィードバックを反映しながら進めることです。

6-1. 業務の現状分析(As-is 分析)とありたい姿の検討

現状分析(As-is分析)とありたい姿の検討は、ゼロトラスト移行の目的を明確にする重要なフェーズです。この部分を疎かにすると、期待した効果を最大限発揮できないリスクがあります。

現状分析は「セキュリティ」「ユーザー利便性」「運用効率化」3つの観点から行います。

観点 詳細
セキュリティ NIST CSF(サイバーセキュリティフレームワーク)などを用いてリスク分析を実施し、ネットワーク構成、情報資産、執務場所、ID 基盤、重要データの保護状況などを確認
ユーザー利便性 事業部門へのアンケート・ヒアリングを行い、複数部署から意見を収集することが重要
運用効率化 負荷の大きい業務や対応困難な業務を洗い出し、人材をDX推進など組織発展に活用できるようにする

主な課題例としては、ID 管理の分散や認証強度の弱さ、シャドー IT、パスワード管理の煩雑さやテレワーク環境の未整備、個別 ID 管理の負荷やキッティング作業の工数などが挙げられます。

一方で、ゼロトラストと親和性の高い"ありたい姿"には、認証・認可の強化、デバイス統制、ID 管理の一元化、いつでもどこでも安全に働ける環境、パスワードレス化、デバイス管理作業の効率化などがあります。現状分析を行わずに目先の課題だけから検討すると、潜在的課題を見逃す可能性があるため、現状を正確に把握したうえで”ありたい姿”を描くことが成功の鍵となります。

6-2. グランドデザイン作成

現状分析で明らかにした課題を踏まえ、ゼロトラストのありたい姿を実現するための具体的な構想を描きます。グランドデザイン作成では、以下3つのステップで検討を進めます。

ステップ 詳細
1. As-is構成に対し、To-be構成、Can-be構成を描く 現状構成(As-is)から、ありたい姿を実現するために必要なソリューションを洗い出し、将来的に目指すべき構成(To-be)を明確化。一足飛びにTo-beへ移行できない場合は、中間地点としてCan-be構成も検討
2. 課題とソリューションの対応関係をマッピングする 各ソリューションがどの課題を解決するのか整理し、ありたい姿の実現性を検証
3. ロードマップを作成する ID 統制・デバイス統制など優先度の高い施策から順に実装計画を立て、新たに発生するコスト、不要になるコスト、得られる効果の発現時期を整理。これにより投資判断に必要な情報が明確になる

グランドデザインの策定により、現状から理想への移行経路が明確になり、経営層への説得力のある投資提案が可能になります。

6-3. 投資判断

グランドデザインの作成後、経営層の承認を得るための投資判断を行います。

この段階では、単に「セキュリティリスクへの対処」という説明だけでは不十分です。ゼロトラストは IT 戦略全体として捉えるべきものであり、以下のような多面的な投資効果を示すことが重要です。

観点 詳細
セキュリティレベル向上 ランサムウェア対策、不正アクセスリスクの低減、内部不正対策など
ユーザー利便性向上 いつでもどこでも安全に働ける環境の提供、一度のログインで複数システムにアクセスできる仕組みの導入など
運用効率化 スマートフォンやパソコンなどのデバイス設定の自動化、複数システムの ID を一元管理することによる管理負担の軽減など
ビジネス機会の拡大 サプライチェーンセキュリティの強化により、協業先として認められる可能性の向上

また、経営層には「いつ、どの程度の出費が発生し、いつ、どのような効果が得られるのか」を明確に示すことが必要です。グランドデザインで作成したロードマップに基づき、投資のタイミングと期待効果を丁寧に説明しましょう。

6-4. 環境構築

グランドデザインと投資判断が完了したら、具体的な環境構築に進みます。以下のような作業を段階的に進めましょう。

実装作業 詳細
ID 統制 (IDaaS)の実装 信頼できる ID ソースとの連携、SSO や ID プロビジョニングの設定、アクセスポリシーの検討
デバイス統制(MDM)の導入 管理対象デバイスの登録、機能制限やコンプライアンスポリシーの設定、IDaaS との連携
Web セキュリティ・シャドー IT 対策(CASB・SWG)の設定 悪性コンテンツへのアクセス制限、SaaS利用状況の可視化、テナント識別設定
データ漏えい防⽌(DLP・IRM)の構築 機密情報の定義、検知ルールの策定、制御内容の検討
エンドポイント保護(EDR)の展開 エージェントの配布、検知ポリシーのチューニング、IDaaS との連携設定

各ソリューションの構築後は、幅広い部門からパイロットユーザーを募り、さまざまな業務への影響を確認しながら、本番展開前に必要な調整を行います。

6-5. 検証・改善

ゼロトラスト環境は構築後も継続的な改善が不可欠です。IDaaS のアクセスポリシーや EDR、SIEM の脅威検知ルールなど、各ソリューションは運用の中で定期的なチューニングが必要になります。

特に重要なのが、セキュリティ強度とユーザー利便性のバランスです。セキュリティを厳格にしすぎると業務効率が低下するため、日々ユーザーの声に耳を傾け、適切な調整を行うことが大切です。

また、サイバー攻撃の手法は日々進化するため、以下のような取り組みで継続的に環境を見直すことが求められます。

MITRE ATT&CK Evaluations(セキュリティ製品の検知・防御能力を厳格にテストする評価プログラム)などを活用したリスク分析
ペネトレーションテスト(侵入テスト)による脆弱性の把握
最新の防御手法のキャッチアップと柔軟な構成変更

ゼロトラストには「正解」の構成は存在しません。外部環境の変化に応じて、顕在化したリスクを評価し、優先順位をつけて着実に対応していく姿勢が重要です。

加えて、従業員へのセキュリティ教育も継続し、組織全体でセキュリティ意識を高めていきましょう。

ゼロトラストは、「決して信頼せず、常に検証する」という前提に立ち、場所や属性に関わらず継続的な検証を行う新しいセキュリティモデルです。クラウド活用やリモートワークの拡大、サイバー攻撃の高度化といった環境変化に対応するため、従来の境界型防御から脱却し、7つの基本要件に基づいた多層防御の実現が求められています。

導入にあたっては、現状分析からグランドデザイン作成、段階的な環境構築まで計画的に進めることが重要です。EPP や EDR、IAM、ZTNA などの主要技術を組み合わせ、エンドポイントからネットワーク、データまで包括的に保護する体制を整えましょう。

特にエンドポイントセキュリティでは、HP Wolf Pro Security のような統合ソリューションが有効です。次世代アンチウイルス、マイクロ仮想マシンによる脅威の封じ込め、フィッシング対策を一元管理でき、ゼロトラストの「信頼しない検証」を実践できます。

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HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。

Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。

組織において Windows 11 を導入することで、セキュリティが強化され、生産性とコラボレーションが向上し、より直感的でパーソナライズされた体験が可能になります。セキュリティインシデントの削減、ワークフローとコラボレーションの加速、セキュリティチームとITチームの生産性向上などが期待できる Windows 11 へのアップグレードは、長期的に経済的な選択です。旧 Windows OSをご利用の場合は、AIの力を活用しビジネスをさらに前進させるために、Windows 11 の導入をご検討ください。

※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。

ハイブリッドワークに最適化された、Windows 11 Pro+HP ビジネスPC

ハイブリッドなワークプレイス向けに設計された Windows 11 Pro は、さらに効率的、シームレス、安全に働くために必要なビジネス機能と管理機能があります。HPのビジネスPCに搭載しているHP独自機能は Windows 11 で強化された機能を補完し、利便性と生産性を高めます。

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