お父さんは家庭の「情シス担当」、エンプラ向け管理ツールを「おうち」に導入してみたら、めちゃくちゃ理にかなっていた話
2026-10-06
取材:ASCII.jp編集部
※本掲載内容は株式会社角川アスキー総合研究所が運営する「ASCII.jp」に掲載された記事を転載したものです。
またか……、家族から不意にやってくる恐怖のSOS
PC好きやIT業界で働く人間であれば、誰もが一度は経験したことがあるだろう。
実家で暮らす両親や、離れて暮らす家族からやってくる「突然の問い合わせ対応(PCサポート)」である。「なんか変な画面が出たんだけど、これ、閉じていいの?」「英語のアラートが出たんだけど、どうすればいい?」 電話口でそう言われても、こちらには何が起きているのかさっぱり分からない。「まずは画面の左下にあるスタートボタンを押して」と伝えても、「スタートボタンってどれのこと?」と返される始末だ。電話、あるいはLINEの説明から症状を理解し、トラブルの原因を探るためのヒアリング作業に時間が溶けていく……。
日本HPでエンドポイントマネジメント&セキュリティソリューションを担当する高木聡氏も、そんな頭痛の種を抱える一人だった。離れて暮らす娘さんや、高齢となる80歳の父親のPC管理。それはまさに、地方に分散した拠点を抱える大企業の情シス担当者と全く同じ課題であった。
発端は、父親のPCに突然表示された英語のメッセージだ。実際には「アップデートをすれば3ヶ月延長無料」と書かれていた。見た目が紛らわしいが、要はアンチウイルスソフトのオファー画面だったのだ。しかし、慣れていない父親からすれば「英語の変な画面が出た、ウイルスかもしれない!」と大パニックになるのも理解できる。「とりあえず画面を写真に撮ってスマホで送って」と頼む。落ち着いてもらうだけでも一苦労だ。
「複雑な操作を電話でお願いするのは、到底無理です。本当は自分で直接触って直したいのに、物理的な距離のせいでそれが叶わない。このもどかしさをどうにかできないかと考えたのが、今回の取り組みのスタートでした」(高木氏)
そうだ、会社で使っている「ガチのやつ」を入れよう!
そんな高木氏の頭にふとよぎったのが、「自分がやっているのは、企業であれば情報システム部門のサポート担当者。であれば、自身が日頃から顧客企業に提案している日本HPのエンタープライズ向けソリューションを使ってみてはどうだろうか」というアイデアだった。具体的には、強力なセキュリティソフト「HP Wolf Pro Security(WPS)」と、高度なデバイス管理ツール「HP Workforce Experience Platform(WXP)」の2つの導入である。
いくらプロとはいえ、個人の家庭用PCにエンタープライズ向けのツールを入れるなど、流石にオーバースペックではないか。コストも跳ね上がるのではないか。そうツッコミを入れたくなる気持ちもよくわかる。「話が飛躍しすぎだ」と思った人も多いだろう。無理のない話だ。でも、これは実話なのだ。
そして、やってみるとこの選択は極めて合理的だった。ひとつは離れた場所にいてもリモート操作で、家族の使っているパソコンの状態が一目でわかること。もうひとつは、セキュリティに対する対応だ。
「お客様には常に、昨今のサイバー攻撃は巧妙化しているため『多層防御』が必要ですとお話ししています。企業であればEDRがあり、アンチウイルスがあり、ゼロトラストがある。しかし家庭環境では、どうでしょうか? 一般的なアンチウイルスソフトが入っていれば大丈夫だろう、とタカを括っていないでしょうか? でも、それだけでは防ぎきれない脅威が今は山のようにある。サポートだけでなく、こういう未知の脅威から家族を守ることも必要でないかと考えたのです」(高木氏)
WPSとWXPは、基本的に法人向けのソリューションで、WPSは25ライセンス以上、WXPは50ライセンス以上が推奨になる。だが、所定の販売店もしくは HP Directplusの個人向けオンラインストアを通じて、WPSとWXPを合わせて、年間7920円/台(※)からの導入も可能だ。これなら非現実的な価格ではないように思える。とはいえ、複数台パックで販売される個人向けのアンチウイルスソフトと比べれば、割高に感じるかもしれない。
※2026年8月時点の価格で、HP Wolf Pro Security 5年が1万9800円/台(税込)、HP Workforce Experience Pro 5年が1万9800円/台(税込)。これを年単位の価格として算出したもの。
しかし高木氏の計算は違った。
「万が一マルウェアに感染したときの損害額や各所のパスワード変更の手間、そして何より、電話対応でわからずに最悪実家まで出向かなければならない交通費と時間、そして何より突発対応のストレスを考えたら、どうですか? 最初から『ガチのやつ』を入れておいた方が圧倒的に安上がりで楽じゃないか、という結論に行き着いたんです!」(高木氏)
「怪しいサイト? 閉じれば消えるよ」がもたらす精神的な安定
WPSを導入した最大の理由は、その中核技術である「HP Sure Click」の存在だ。これはエンタープライズ向けソリューションと同じ「マイクロ仮想マシン」(マイクロVM型サンドボックス)技術を用いている。
猛威を振るっているランサムウェアの攻撃は、まずインフォスティーラーによりログイン情報/認証情報を奪取し、侵入後に管理者権限を奪い、更にカーネルやBIOS、ファームウェアへと段階的により深いレイヤーへ侵入する手法が主流になっている。
「一番避けたいのはログイン情報を取られることです。家族のPCにキーロガーが仕込まれでもしたら、様々なサービスのパスワードを変更しなければならず、対応が非常に大変になります」と高木氏も指摘する。
HP Sure Click(WPSに搭載されている仮想化テクノロジー)は、ウェブブラウザーでのネットサーフィンや、USBメモリーなどから開いた主要なファイル(WordやPDFなど)を、PC本体のOSから完全に隔離された「マイクロ仮想マシン」の中で実行する。
「例えば娘が学校の友達とファイルのやり取りをしたり、USBからよくわからないPDFを開いたりしたとします。もしそこにランサムウェアが仕込まれていて感染したとしても、それは仮想環境の中だけの出来事です。PC本体には一切影響しません。『なんか変なのが出た』と言われたら、『とりあえず、そのPDFを閉じて』と言えばいい。ブラウザーでも同様です。閉じれば仮想マシンごと破棄されて、マルウェアも消滅します。この『感染を前提としてパソコン本体を守る』という圧倒的な安心感は、個人向けのツールでは決して得られないものです」(高木氏)
遠隔地にいて「トラブルで呼ばれても困る」からこそ、そもそも深刻なインシデントに発展しない「デフォルト設定で最強」の防波堤を構築する。これこそが、ITのプロが導き出した究極の合理的選択だったのだ!
あ、この設定だとダメだ……娘に気付かれない親心も発揮できた
守りを固めるのがWPSなら、遠隔からの「可視化と管理」で圧倒的な利便性をもたらすのがWXPだ。WXPは、本来DEX(デジタル従業員体験)を向上させるためのデバイス管理ツールだが、家庭内で使ってもその効果は絶大だった。
その威力を感じた例の一つが、バッテリーの管理。家族が使っているPCから「バッテリーが常に最大容量まで充電されている」ことをWXPで知った瞬間だ。ASCIIの読者ならご存じの通り、バッテリーを常にフル充電で使用するのは劣化を早め良いことではない。そのため80%程度までを上限とした「いたわり充電」といった機能を備えている機器もある。とはいえ、バッテリーの充電制御は通常ではBIOSレベルの設定が必要であり、遠隔地からOS上で簡単に変更することはできない。
「遠隔ではどうしようもないと諦めかけましたが、WXPならBIOSのポリシーをリモートでセットできるんです。そこで『HPが最適に充電するモード』というポリシーを作ってWXP経由で配信しました。すると見事にアラートが消え、設定が書き換わりました。使っている家族は、そんな対処が行われたことすら気づかずにそのまま使い続けています。何の説明もせずに裏側で直せるのは本当に最高でしたね」(高木氏)
編注: BIOSの制御はHPのビジネスPC向けに提供されている機能であり、家庭内情シスとして自腹でビジネスPCを導入していた高木氏ならではの荒技でもある。
高木氏は導入していないが、HP Protect & Trace with Wolf Connectという電源オフの状態でも場所情報の取得やロック/ワイプが可能になるMDMソリューションもWXPのコンソール上からコントロールできる。
さらに、WXPはPowerShellスクリプトの配布&リモート実行という機能も持っている。ここは「生成AIとの連携」によって、劇的にスクリプト作成のハードルが下がった点も追い風になっている。
家族の使っているパソコンは使用年数も、状況もさまざまだ。高木氏はある時、「Windowsのセキュアブート対応状況を急遽調べたい」と思った。とはいえ、各PCのOSパッチのビルドやBIOSのバージョンを手動で調べるのは困難だ。
そこで高木氏が考えたのがスクリプトの活用。Windows 11のCopilotに「PowerShellでセキュアブートの対応状況である証明書などの4項目を取得し、JSON形式で出力するスクリプトを書いて」と指示したところ、必要な情報を得られるスクリプトが簡単に作成できた。
※画像の例は、別の用途のスクリプトを作成したもの
「WXPのUIに標準で用意されていない項目でも、PowerShellさえあれば情報を拾えます。昔はスクリプトを書くためのテクニックが必要でしたが、今はAIが数秒で書いてくれる時代なので、それをWXPのコンソールに流し込んで実行するだけです。家族がパソコンを使っている裏側で、2日間ほどかけて電源がオンになった各PCから順次情報を収集でき、完了したものと電源が入らず未処理になったものを見やすく一覧にしてくれました。拾った情報を見て、『このPCはもうBIOSが古くて対応できないから買い替えだな』と、客観的なデータをもとに納得のいく買い替えもできるんです」(高木氏)
「最小単位」の組織である家庭から学んだ、IT管理の本質とは?
大企業で多数のパソコンを管理するためのツールを家庭に入れる。ここまでの記事を読んで、どのような感想を持っただろうか? 筆者には「過剰スペックで普通の人はやらないことをやっている、テック好きのお父さん」の姿がほほえましかった。これはもちろんほめ言葉だ。実際、パソコンが好きでITにも詳しいとなれば、自然に家族や親戚のパソコン相談係に認定されてしまうことが多い。共感する読者もいるだろう。しかし、ここで、「面倒ごとが増えたなぁ」なんて、ネガティブに考えるのではなく、「どうせやるなら、徹底的にやろう」という高木氏の姿勢がすごい。 興味がある人は、時間のある長期休みのタイミングで試してみるのもいいかもしれない。ある意味、大人が実行する「夏休みの自由研究」として充実した時間が過ごせそうだ。
面白いのはここで語られているエピソードが、そっくりそのまま企業におけるIT管理の「最適解」へとつながる点だ。
競合ツールがひしめき、何種類もの重いエージェントがPC上で動いて動作を圧迫する中、HPのWXPは「1つのエージェント、1つの画面(シングルプレーン)」で完結する強みを持つ。
「WXPの大きな特徴は、エージェントソフトが非常に軽いことです。ユーザーは監視ツールが入っていることを負担に思いません。グローバル基準のプライバシーとコンプライアンスの観点から、WXPはユーザーが利用している画面のキャプチャーを連続して撮ったり、どんなメールをやり取りしたかという中身を見たりはできません。しかし、『どのアプリがどれくらい稼働しているか』『CPUやメモリーの傾向はどうなっているか』は確実に把握できます」(高木氏)
企業の情シスにおいて、従業員のPCが効果的に使われているかを全体俯瞰するのは極めて難しい。Intuneなどでアプリを配布しても、アプリ側が勝手にアップデートされ、手元の台帳と実際のバージョンにズレが生じる。WXPを使えば、どのバージョンがどこで動いているかを正確に把握できるのだ。
「何かトラブルの問い合わせがあった際も、WXPならユーザーに一切のコンタクトを取ることなく、まずは裏側でPCの稼働状態を確認し、必要に応じてイベントログをダウンロードして解析できます。どうしても自力で直せない場合のみ、最後の手段としてリモート接続を依頼すればいい。IT担当者が自分のタイミングで調査を進められるのです」(高木氏)
情シスが1台1台、ユーザーの席まで足を運んで手作業で対応する必要がなくなる。この生産性の向上は計り知れない。専任のIT担当者がいない中小企業(SMB)やスタートアップにおいて、人がいちいち営業所へ出向くような環境であれば、この恩恵はさらに大きくなる。「最小単位の組織」である家庭でこれだけ快適に成立する端末管理の考え方が、企業で役立たないわけがないのだ。
習うより、慣れろ! まずはやってみることから始めよう
販売開始から約1年。国内市場においては、すでに200社以上がデバイス管理のためにWXPを利用しており、WXPの価値は着実に証明されつつある。しかし、その真価は実際に使ってみて初めて腹落ちする類のものだ。
「WXPには60日間、最大500台まで利用できる無償のトライアルプログラムがあります。(※)まずはこれを申し込んで、実際に使っていただける機会を設けています。数台入れるだけでもPCの状態が手に取るように分かりますが、30台、40台と数が増えてくると、組織全体の傾向が見えてきます。例えばWindowsの新しいパッチがリリースされた時、『うちの環境はパッチが当たっていないPCが急に増えたな』といったマクロな視点での気づきが得られます」(高木氏)
※PCを250台以上保有している法人企業・組織向けのサービス
ハイリテラシーな読者や、企業のIT選定権を持つ担当者にこそ、まずは自分の身の回りの小規模なチーム、あるいは高木氏のように自身の「家庭内のPC」からでもいいので、管理を始めてみてほしい。 設定や構築は驚くほど簡単で、テナントを作ってエージェントを入れるだけで使い始めることができる。それでいて、掘り下げれば多彩なアングルから環境をコントロールできる奥深さを持っている。
「まずはやってみることから始めてみてください。本当に楽だと確信したら、ぜひ会社への本格的な導入を検討してみてはいかがでしょうか?」(高木氏)
IT管理の煩わしさを、劇的に、そしてエレガントに解決する手段は、すでに私たちの手の届くところに用意されている。お父さんの「自由研究」が教えてくれたのは、そんな未来の情シスのあり方だった。
HP Workforce Experience Platform (WXP)
HP Workforce Experience Platform (WXP) は、DEXの概念を具現化し、IT部門が直面する具体的な課題を解決するための独自のソリューションを提供します。
詳細はこちら
HP Wolf Security
「HP Wolf Security」は、企業をサイバー攻撃から守るために設計されたハードウェア、ソフトウェア、サービスで構成される高度で包括的なエンドポイントセキュリティです。
詳細はこちら※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。
Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。
組織において Windows 11 を導入することで、セキュリティが強化され、生産性とコラボレーションが向上し、より直感的でパーソナライズされた体験が可能になります。セキュリティインシデントの削減、ワークフローとコラボレーションの加速、セキュリティチームとITチームの生産性向上などが期待できる Windows 11 へのアップグレードは、長期的に経済的な選択です。旧 Windows OSをご利用の場合は、AIの力を活用しビジネスをさらに前進させるために、Windows 11 の導入をご検討ください。














