文字起こしから決定事項・ToDoを自動抽出!Foundry Local で作る議事録自動整形ツール開発事例を解説
2026-09-18
ライター:株式会社WEEL
会議の文字起こしは残っているものの、決定事項やToDo、担当者の整理に時間がかかり、議事録の作成が後回しになる。こうした悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。
そこで今回、Microsoft Foundry Local を使って、文字起こしテキストを貼るだけで決定事項・ToDo・担当者を自動抽出する議事録整形ツールを開発しました。
この記事では、開発したツールの仕組みから従来ツールとの違い、ユースケース、開発時の注意点まで解説します。最後まで読んでみてください。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいて執筆されています。
記事のポイント要約
結論:文字起こしを貼るだけで決定事項・ToDo・担当者を自動抽出する議事録整形ツールは、Microsoft Foundry Local を使えばクラウド不要のオンデバイスAIとして開発できる
重要度:中
ひと言評価:社内データを外部に出さない設計思想が、機密性の高い会議ほど価値を発揮する
議事録自動整形ツールとは
ここでは、開発した議事録自動整形ツールの概要と技術構成を紹介します。
議事録自動整形ツールの概要
議事録自動整形ツールは、会議の文字起こしテキストを入力すると、AIが決定事項・ToDo・担当者の3項目を自動で抽出して整理するアプリです。Zoom や Teams の文字起こし機能で出力したテキストをそのまま貼り付けるだけで使えます。
この3項目に絞ったのは、会議後に確認される頻度が高い一方、手作業での洗い出しに時間がかかるからです。要約全体を作らず特化することで、確認にかかる時間を短縮する狙いがあります。
推論基盤には Microsoft Foundry Local を採用しました。※1
※1:Microsoft, "What is Foundry Local?"(Microsoft Learn)
https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-local/what-is-foundry-local
起動時にPC上のNPU・GPU・CPUを自動検出して最適な実行環境を選ぶ仕組みのため、開発側で端末ごとの分岐処理を書く必要がありません。※2 文字起こしデータは全てローカルで処理され、外部のサーバーには送信されません。
※2:Microsoft, "Foundry Local architecture overview"(Microsoft Learn)
https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-local/concepts/foundry-local-architecture
議事録自動整形ツールの技術構成
議事録自動整形ツールの主な技術構成を以下にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発環境 | C#(.NET 8)+WPFのデスクトップアプリ |
| 外部ライブラリ | なし(標準の通信機能とJSON処理のみで実装) |
| 使用モデル | Qwen 2.5 7B(複数の小型モデルを試し、日本語の自然さで選定) |
| 応答形式 | ストリーミング表示(生成された文章を逐次表示) |
| 推論基盤 | Microsoft Foundry Local |
| API形式 | OpenAI 互換のChat Completions API(/v1/chat/completions) |
| 実行環境 | NPU・GPU・CPUを自動検出して選択 |
| 処理方式 | オンデバイス処理(クラウド送信なし) |
| 入力 | 文字起こしテキストの貼り付け |
| 出力 | 決定事項・ToDo・担当者のリスト |
Foundry Local は OpenAI 互換の Chat Completions API を提供しているため、既存のプロンプト設計をほぼそのまま流用できました。※3
※3:Microsoft, "Foundry Local REST API Reference"(Microsoft Learn)
https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-local/reference/reference-rest
今回のツールでは、文字起こしテキストをプロンプトに含め、決定事項・ToDo・担当者を項目ごとに書き出すよう指示する設計にしています。専用のSDKを導入せず、標準の通信機能だけで実装できた点も、社内での内製を検討しやすい要素です。
今回開発したツールに約1,000字の会議の文字起こしを読み込ませたところ、最初の文字が表示されるまで約43秒、全体の生成完了まで約80秒でした。
生成速度は毎秒2.6トークンで、処理中もネットワーク通信は発生していません。なお今回はCPU向けに最適化されたモデルが選ばれた状態のため、NPUやGPUに対応したモデルを使えば処理時間はさらに短縮できるでしょう。
従来の議事録作成方法と比べて何が新しいのか
議事録自動整形ツールが従来の方法と何が違うのかを整理します。
手作業・クラウド型AI議事録ツールとの違い
従来の議事録作成は、会議中にメモを取るか、会議後に録音を聞き直して手作業でまとめる方法が中心でした。近年はクラウド型のAI議事録ツールも普及していますが、データを外部サーバーへ送信する仕組みが一般的です。
議事録自動整形ツールは、既にある文字起こしテキストを入力するだけで決定事項・ToDo・担当者を自動整理する点、かつ処理を全てローカルで完結させる点で、手作業・クラウド型のどちらとも異なります。
議事録自動整形ツールと類似ツールとの比較
Foundry Local を使ったオンデバイスAIアプリは、今回のツール以外にも登場しています。たとえば HP 製 Copilot+ PC 向けに提供されている「 Speech Summarizer AI 」は、録音・文字起こし・AI要約を1つのアプリで完結できるオンデバイスアプリです。
Speech Summarizer AI が録音から文字起こし・要約までを担うのに対し、議事録自動整形ツールは既にある文字起こしテキストから決定事項・ToDo・担当者を構造化して抽出する用途に特化しています。両者を組み合わせれば、録音から議事録の骨子作成までを一貫してオンデバイスで完結させることも可能です。
| 比較項目 | Speech Summarizer AI | 議事録自動整形ツール |
|---|---|---|
| 主な用途 | 録音・文字起こし・要約 | 文字起こしからの決定事項・ToDo抽出 |
| 入力 | 音声(マイク・スピーカー音声) | 文字起こし済みテキスト |
| 出力 | 会話タイトル・要約文 | 決定事項・ToDo・担当者リスト |
| 推論基盤 | Microsoft Foundry Local | Microsoft Foundry Local |
議事録自動整形ツールのユースケース
議事録自動整形ツールが特に効果を発揮する2つの場面を紹介します。
経営会議・M&A関連会議など機密性の高い会議
M&Aの交渉や経営戦略会議など、社外に出せない情報を扱う会議ほど、クラウド型ツールの導入にはIT部門の承認や社内規程の確認が必要です。今回のツールは文字起こしを外部に送信しないため、こうした負担を抑えたまま導入を検討できます。
人事面談・1on1など個人情報を含む場面
採用面接や人事考課面談、1on1など個人情報が含まれる会話でも、クラウドに送信せず処理できる点は安心材料になるでしょう。面談後の決定事項やフォローアップのToDoを自動で洗い出せるため、担当者ごとにバラつきがちな記録の質を一定に保ちやすくなります。
議事録自動整形ツール開発から見えるビジネスインパクト
議事録自動整形ツールを開発して見えたのは、議事録作成の工数削減と情報漏えいリスクの低減を同時に実現できる可能性です。
会議終了後に決定事項やToDoを洗い出す作業は、1時間の会議に対して30分程度かかることも珍しくありません。議事録自動整形ツールを使えば、この作業をAIによる自動抽出に置き換えられ、担当者は内容の確認・修正だけで済むようになります。
クラウドへのデータ送信を制限する社内規程がある企業でも、オンデバイス処理なら新たなセキュリティ審査なしに導入を検討しやすくなります。部署単位で試してから全社へ広げる進め方も可能です。
開発時に直面した制約や注意点
議事録自動整形ツールを開発する中で見えてきた制約もあります。
まず、モデルの読み込みに時間がかかります。今回の開発環境では、起動後にモデルを読み込むまで数分を要しました。そのため、処理ごとにモデルを切り替える設計は見送り、1つのモデルで完結する構成にしています。処理速度そのものも端末性能に左右され、NPUを搭載していない端末ではCPUのみでの推論となり、応答に時間がかかる場面がありました。※2 NPUを搭載した端末を選べば、この課題は解消できます。
抽出の精度は、実際に試した範囲では良好でした。サンプルの文字起こしからは決定事項3件が正しく抜き出され、ToDoには担当者と期限が紐付いた状態で出力されました。本題と関係のない雑談は省かれ、持ち帰って調整とされた未確定の議題も決定事項には含まれていません。
ただし精度は入力する文字起こしの質に左右され、話者名が記録されていない場合は担当者の特定が難しくなります。抽出された項目は人の目で確認するようにしましょう。
ローカルLLMを本格活用するにはNPU搭載端末が鍵になる
今回のようなローカルLLMアプリを快適に動かすには、端末選びが重要な鍵を握ります。Foundry Local はNPUを検出すると自動的にNPUでの推論に切り替え、CPUのみの環境よりも高速な処理が可能です。※2
Microsoft は、NPUの処理性能が40TOPS以上のPCを「 Copilot+ PC 」と定義しています。※4
※4:Microsoft, "Copilot+ PCs & Windows PCs: Differences?"
https://www.microsoft.com/en-us/windows/learning-center/copilot-plus-pcs-windows-pcs-differences
今回のようなオンデバイスAIアプリを本格的に業務へ組み込むなら、開発・導入の段階から Copilot+ PC のようなNPU搭載端末を検討しておくことをおすすめします。
Foundry Local で社内特化型AIアプリの内製化を始めよう
議事録自動整形ツールは、Microsoft Foundry Local を使えば、文字起こしテキストから決定事項・ToDo・担当者を自動抽出するアプリをクラウド不要で開発できることを示す一例です。データを外部に送信しない設計は、機密性の高い会議を扱う企業ほど導入メリットが大きくなります。
社内向けのAIアプリを内製化したい場合は、Foundry Local のようなオンデバイス推論基盤の活用を検討してみてください。NPU搭載端末を選定すれば、快適な処理速度で運用を始められます。
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