2024.08.20
HP Future Ready AI Conference 2024 with HP Partner Communication
2024年7月11日、日本HPが主催するAI活用イベント、「HP Future Ready AI Conference 2024 with HP Partner Communication」が開催された。2023年に大きな話題となった生成AI「ChatGPT」を始め、生成AIによる業務効率化、生産性向上を実現する企業が急増している。今や、待ったなしといわれるほど、DXに欠かせない存在となった生成AIをどのように取り込んでいけばいいのか、本イベントでは各界の著名人やAI時代をリードするベンダーが一同に会し、AI活用の現在、そして将来を語った。ここでは、特に注目されていたセミナーについて紹介していきたいと思う。
2024年7月11日、品川インターシティホールは、AIを最大限に活用しようと考える先進的な企業を中心に大勢の来場者でひしめき合っていた。彼らの目的は日本HPが主催するイベント「HP Future Ready AI Conference 2024 with HP Partner Communication」だ。
この日は、生成AIの活用のヒントとなるナレッジを披露する各種セミナー、AI PCによるスタンドアロンのローカル上で動作させる生成AIテクノロジーのデモの展示などが行われた。本編では基調講演の模様をお届けしよう。
早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏
700席すべてが埋まり、満席となった基調講演の壇上に上がったのは、早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授の入山 章栄氏(以降、入山氏)だ。
冒頭、「これから会場にお集まりのみなさまが、生成AIとどのように向き合うべきなのか、みなさまのお役に立つ情報を持ち帰れるような講演にしたいと思います」と語る入山氏。近年の生成AIの台頭が、間違いなく大革命であるという入山氏は「かつて私たちが経験した『インターネット元年』が、10年、20年を経て、当時の誰もが考えもしなかった『配信ビジネス』というものを生み出しました。それと同じように生成AI活用の始まりとなった現在、今後どれだけ発展していくのか、恐ろしいほどのインパクトがあることだけは間違いないと考えます」と語り、会場をどよめかせた。
生成AIがビジネスにもたらす影響について、とあるAI系企業のトップの発言を紹介する形で、「知識軸」「抽象軸」「表現軸」で評価できると説明した入山氏。「『知識軸』は、私たちに圧倒的な幅広い知識をもたらしてくれるものです。必要な回答を得るまで何度も検索を繰り返していたこれまでとは違い、生成AIに質問してしまえば、あっという間に回答にたどり着けます」と入山氏。その知識を高解像度で、質問者の意図した形に提示する「抽象軸」、さらに得られた情報を、翻訳や絵などの形で表現する「表現軸」という評価内容があると話す。
「この3つで各種生成AIは評価できるのですが、もっとも大切なのはこれらが簡単に使えるということです。扱うことが難しいテクノロジーは普及しません。例えばプログラムを書くのは誰にでもできることではありませんが、生成AIを使えば、普通の言葉を使えば、プログラムも映画も作ることができるようになるかも知れません。つまり、人間がテクノロジーを学ぶのではなく、テクノロジーが人間に寄り添うようになってくれるのです」と入山氏は語る。
現在、アメリカを中心にAIベンチャーが次々と登場している現状について触れる入山氏。「ディープマインドで活躍した、ムスタファ・シュリーマンと先日お話しましたが、彼は全く新しい生成AIのベンチャーを起ち上げましたが、この時に資金調達した予算は8,000億円という巨額だったそうです」(入山氏)。
世界的なAIベンチャーの台頭についてひとしきり語った入山氏だが、ひとつ注意点もあるのだという。「生成AIについて考えるときは、それを動かすための半導体から、我々が手元で使うハードウェアまで、そのすべてがトータルで重要になってきます」と入山氏。つまり、今後はPCの品質が特に注目されるようになり、ものづくりの重要性が高まっていくというわけだ。
「例えば、生成AIはクラウドからも提供されますが、それには大量のサーバが必要になります。大量のリソースを消費するため、データセンターの熱処理も重要な課題となりますが、これまでは空冷だったものが、水冷へと流れが変わっています。ここで市場を取ろうとしているのが、水冷技術に長けた日本企業です」と入山氏は指摘する。
日本企業にもチャンスがあるという入山氏は、日本企業が抱える課題についても語る。「日本企業の最大の課題が『イノベーション』です。生成AIをうまくとりこめる企業が、経営を加速できるのだと思います」と入山氏。
コロナ禍、ウクライナや中東での戦争、資源コストの急騰など、ビジネスでは不変とされる不確実性の高さがより顕著になっているように感じる現在、どのような業界においても現状維持はあり得ないのだという。「先ほど触れたイノベーションは、技術的なものだけとは限りません。企業やそこで働く社員のみなさまが変化し、新しい価値を生み出し、前に進んでいくということです」と語る入山氏。
新しいアイデアとは、既知の知と、既知の知の組み合わせであり、イノベーションの根本だという入山氏は、同時に人間の頭の中の認知には限界があるのだと語る。「そこから脱却する必要があります。自分が持っている知と新しい知を組み合わせるために、生成AIを活用していのです。より幅広い領域の『知の探索』のために、生成AIは大きな力を発揮してくれます。それをもとに『知の深化』も同時にしていく『両利きの経営』が大切になってきます」と入山氏は語る。
日本企業の多くは「知の深化」には傾倒するが、「知の探索」がおろそかになりがちに見える。「効率やコストの問題から、目の前の問題に深化していくことに注力しがちだからです。これは巨大資本のグローバル企業でさえ同じ傾向にあります」と入山氏。
同時に入山氏が知る優れた経営者の多くが、遠方まで頻繁に出かけ、新たな知識や経験を手に入れることに精力的で、その知見を経営に活用し新しい取り組みに挑戦しているのだという。「もちろん、現場を見ることが大切なのは変わりません。しかし、そうしなくても『知の探索』を深くおこなっていくのに、これからは生成AIが活用できるのです」と入山氏は語る。
ある化学メーカーが最先端の研究論文を世界中から集め、さらには特許やSNSでの情報まで、生成AIに取り込ませて「知の探索」を大きく効率化しているエピソードを披露する入山氏。「この企業の場合、これまで情報を集めるのに膨大な人的資源とコストをかけていましたが、生成AIを活用することで迅速かつコストをかけずに情報収集ができるようになったといいます」と入山氏は語る。
ただし、情報の取捨選択のジャッジは人間にしかできず、「責任を持つ」こともまた人間にしかできないのだと入山氏はいう。「これが重要なポイントです。人間のやることは『責任を取る』ことなのです。これは生成AIを使ったとしても同じことがいえます」(入山氏)。
一方の「知の深化」については「無駄を省いて確実にこなす」ことが求められ、この分野こそ生成AIが最も得意とする分野だという。「『知の深化』にはこれまで非常に多くの時間を取られていましたが、生成AIに任せればその時間は圧倒的に短くすることができます」と入山氏。
ただし、その結果出来上がったストーリーについては、うまく説明する能力がビジネスリーダーには求められるともいう。「情報収集については生成AIを使えばなんとかなりますが、最後に決断すること、さらにその決断について相手を説得することはビジネスリーダーの役割だと考えています」(入山氏)。
生成AIの活用について企業が積極的な現在、日本企業にとって最大のチャンスが巡ってきているのだという入山氏。「ものづくりをリードしてきた製造業のイノベーションが進めば、復権するチャンスも大いにあると思います。私が今後に期待している企業の中には、実際に製造業者がたくさんおられます。実は海外投資家もそのあたりには目を付けていて、どんどん株式が買われていることも事実です」と語る入山氏。
生成AIにより、自動車産業やそれに関連する製造業、あるいはDXがもっとも進んでいる外食産業などの例を出しつつ話を進める入山氏。「ビジネスを支えるすべての人は、生成AIを活用することでレベルを大幅に上げることができます。企業の現場にこそ生成AIが必要であり、『エッジ』『ローカル』で活用されることで、ビジネス力の強化や市場拡大も図っていくことができます。生成AIこそ、日本企業や日本社会を大きく盛り上げてくれる方策ではないかなと思っています」と最後に語り、講演を終えた入山氏。会場からは大きな拍手が鳴りやまず、大成功のうちに基調講演は終了となった。
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