離島のICT教育を支えるHP Fortis x360 G5 Chromebook(HP eSIM Connect対応)

2ndGIGAがスタートし、いよいよ根付いてきた感が強くなっている日本のICT教育。新たに構築された教育地盤を支えるのは、児童生徒らが毎日手にするGIGA端末と、それらが有機的につながるためのネットワークの存在だ。HPは未来へ向けて最適なICT教育の環境構築のために、日本中の学校と共に協力体制を創っている。今回は、沖縄県にある伊平屋島を例に、その取り組みの一部を紹介したいと思う。

取材:中山 一弘

風景
案内図

学校紹介)
伊平屋島は、沖縄本島の北方約50kmに位置する離島だ。住所としては沖縄県島尻郡伊平屋村となり、2024年11月現在、約1,100名が暮らす、自然豊かな島だ。本島とは1日2便のフェリーで結ばれており、農業、漁業、観光産業などで生業を立てている。伊平屋村立 伊平屋中学校(以降、伊平屋中学校)は島にある中学校のひとつで、今回のHP eSIM Connect対応、2ndGIGA向け端末「HP Fortis x360 G5 Chromebook」の実証実験の舞台となっている。

右から、伊平屋村立 伊平屋中学校 教頭 高良 直人氏、校長 大田 守利氏、株式会社 日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長 岡 宣明氏
右から、伊平屋村立 伊平屋中学校 教頭 高良 直人氏、校長 大田 守利氏、株式会社 日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長 岡 宣明氏

豊かな自然の中に息づくICT教育

HP 岡
―伊平屋島には初めて訪れましたが、海がとてもきれいで心が奪われるようでした。すばらしい自然環境の中で学べる生徒さんがうらやましいですね。伊平屋中学校はどのような学校なのですか?

大田
生徒数38名の小さな学校ですが、幼稚園からずっと同じクラスで学び、育ってきたこともあり、生徒たちの仲が非常に良いのが特長だと思います。部活動にも積極的で、中学校では男女ともにバレーボールに打ち込んでいます。その成果が出たのか、去年は新人大会で男子が国頭地区で優勝することができました。

先生たちも子どもたちの個性をしっかり伸ばしていけるよう、生徒たちと共に一緒に歩んでいるような校風があります。また、島の大人たちは子どもをとても大切にし、伊平屋島の文化の担い手として育てます。子どもたちは自分たちが生活している島ではどんな文化が培われてきたのか、楽しみながら学び、祭りのときなどにはその成果を発表することもあります。最近では祭りのための太鼓を練習していますが、みんなイキイキと汗を流しています。

太鼓の練習
太鼓の練習
太鼓の練習
元気に島の文化を学ぶ生徒たち

HP 岡
―自分たちが育った土地に誇りを持てる、すばらしい風土ですね。ICT教育ですが、いよいよ2ndGIGAへと突入しましたね。これまでの伊平屋中学校でのICT教育はどのように進んで来たのですか?

大田
コロナ禍のころからスタートしましたが、当初はネット環境が良くなくて、全員がアクセスすると回線が落ちるというところから始まりました。何回か工事をしてよくなってきたのですが、自宅と学校の両方でインターネットが使えるようになるまでは時間がかかりましたね。

そんな苦労もありましたが、生徒たちはずいぶんICTデバイス類は慣れてきた印象があります。ここは中学校ですが、小学生から1stGIGAを体験している子どもたちが入学してきているので、タイピングも上手ですし、素地はできていると考えています。

HP 岡
―先生たちはどのような授業をしているのですか?

大田
先生方はなるべく生徒たちにICTを使わせていきたいと考えています。ですから、なるべくGIGA端末を使った授業をするように工夫しています。電子教科書などはもちろんですが、スライドを作成させて発表させるというスタイルは、自分たちの考え方をアウトプットできる場にできるので生徒たちからの反応も良いです。ほかにもクイズ形式で勉強ができるソフトウェアを使った授業を取り入れるなど、まずはICTが楽しいものだと思ってもらうことからスタートしています。

太鼓の練習
4択のクイズを取り入れるなど、楽しみながら学ぶことができる授業を展開

HP Fortis x360 G5 Chromebookの試験導入で何が変わった?

HP 岡
―伊平屋中学校がICT教育に熱心な様子が分かりました。現在の課題はありますか?

大田
やはり、島にはフリーWi-Fiがないような状態ですので、ネットワークの充実という意味ではまだまだだと思います。光回線は来ているので、Wi-Fiの問題は将来的に解消へ向かうと思います。LTE、5G回線に関してはキャリアによって差が大きい印象がありますね。

伊平屋島の風土や教育について語る大田氏
伊平屋島の風土や教育について語る大田氏

HP 岡
―やはりネットワークに課題が残る感じですか。今回実証実験用としてお渡ししているHP eSIM Connect対応のHP Fortis x360 G5 Chromebookの使い心地はいかがでしょう?

高良
個人的な感覚もありますが、最新モデルだけあって、ストレスなく動きますし、非常に使いやすい印象が強いです。プリイントールされているアプリも豊富で、すぐに教育の現場で使えるものがたくさんあるのはとてもうれしかったです。

HP 岡
―HP Fortis x360 G5 Chromebookは、プロセッサーに最新のインテル® プロセッサー N100を搭載しているので、以前のGIGA端末よりもずいぶんとレスポンスは良いと思います。また、米軍調達基準のMILスペックをクリアしていることはもちろん、ヒンジやUSBポート、キートップなど、壊れやすい部分を強化しているので、破損しにくい設計です。ソフトウェアに関しては、Google GIGA Licenseの利用を想定していますし、導入率の高いチエル社のInterCLASS® Console Supportなどもプリインストールしているので、即戦力を高めています。今回はLTE回線が容量無制限で5年間使い放題になる「HP eSIM Connect」対応モデルですから、課題となっているネットワーク環境の向上にも役立つと思います。

HP Fortis x360 G5 Chromebook
実証実験の対象端末「HP Fortis x360 G5 Chromebook」。GIGA端末としてのパフォーマンス測定はもちろん、HP eSIM Connectによってデジタル教育にどのような影響があるのかを調査する目的もある

金城
おっしゃる通り、HP eSIM Connectの効果は絶大だと思います。端末そのものもパフォーマンスがかなりアップしていますし、どこにいてもインターネット環境に繋がることができるので、以前は個人的に自主性に任せていた自学自習を積極的にやってくる生徒が増えました。先生方も生徒たちの自主性が上がったことを受け、予習、復習に繋がるような宿題や課題を提供することができるようになり、非常に喜んでいます。

HP eSIM Connect
今回のPoCでもっとも影響が強かったのが「HP eSIM Connect」の存在と、auの安定したLTE回線だった

HP 岡
―それはすばらしい前進ですね。さっそくHP eSIM Connectのメリットを生徒さんたちも感じていただいているようでうれしいです。

金城
その通りだと思います。積極的に端末を使って勉強してくれるようになると、生徒一人ひとりについて、どこができていて、どこができていないか把握も容易になります。生徒個人が何を伸ばしてよいのかをより深く知ることができるのは大きな収穫だと考えています。

伊平屋村立 伊平屋中学校 教諭 金城氏
伊平屋村立 伊平屋中学校 教諭 金城氏。同校のICT担当でもある

HP 岡
―HP eSIM Connectの受信状況はどのような感じですか?

高良
生活範囲のほとんどで使えています。「港でもつながったよ!」とうれしがっている生徒もいましたね。HP eSIM Connectはau回線を利用していると伺いましたが、他のキャリアは山側に立つと極端に悪くなるものもあるのが現状です。しかし、HP eSIM Connectに関してはそういうこともなく、どこにいても快適に使えます。

伊平屋中学校校舎内からのau回線実測値。伊平屋港付近では5Gも測定できた
伊平屋中学校校舎内からのau回線実測値。伊平屋港付近では5Gも測定できた

HP 岡
―各ご家庭でも安定して使えているようで良かったです。リモート授業はやっているのですか?

大田
休みがちな生徒もいるのですが、その子には今回の実証機を与えてリモートで授業を進めています。その子の家庭ではこれまでネット環境がよくなかったのですが、この端末になってからは安定してネットワークに繋がることができるようになったので、リモート授業に参加できるようになりました。

HP 岡
―それは素晴らしいですね。

高良
安定したLTE回線が日常的に使えるようになったので、リモート授業の可能性はまだまだ広がると思います。このような良い環境になったのは、HP eSIM Connectや端末の設定、ネットワークの改善などで尽力いただいた、地元の窓口であるサン電通エンジニアリング株式会社様のご尽力も大きいと思います。いつもありがとうございます。

教育方針やネットワーク事情について語る高良氏
教育方針やネットワーク事情について語る高良氏

HP 岡
―HP Fortis x360 G5 ChromebookとHP eSIM Connectによってネットワーク環境が改善され、とても良い方向に向かっているようですね。私たちとしてもうれしいです。

2ndGIGAへ弾みをつけるHP Fortis x360 G5 Chromebook

HP 岡
―HP Fortis x360 G5 Chromebookの機能で、他に生徒達から反応が良い部分などはありますか?

高良
タッチペンが使いやすいと評判で、すでに使いこなしている生徒が多いです。図形などを描いてペン先でくるくると回して遊んでいますよ。感圧式のタッチペンならではの使い方になりますが、美術の時間ではデッサンにも使っています。様々なシーンで本格的な使い方ができるので、デジタル学習の幅が広がったように感じますね。

生徒たちに大好評のタッチペン。使いこなすようになると、生産性が大きく向上する
生徒たちに大好評のタッチペン。使いこなすようになると、生産性が大きく向上する

他にはWebカメラですね。高解像度なのでQRの読み込みもスムーズですし、写真を撮って課題に使うということもしています。

また、せっかく回線が良くなり、Webカメラやマイクも高性能になったので、英語の授業などで海外の学校とリモート文化交流などもしてみたいと思っています。(※取材後にトルコの高校生とのリモート文化交流を実施。生徒たちにも大好評だったという。)

HP 岡
―さっそく、HP Fortis x360 G5 Chromebookの機能をフル活用いただいているのですね。今後はどのような方針でICT教育を進めていかれるご予定ですか?

大田
HP様のおかげでよい環境下で実証実験ができました。やはりICT教育はデジタルデバイスを上手に使い、いかに学習に結び付けていくかが大切だと思いました。これからも先生方とも話し合いながら、生徒達が楽しんで学べるようなICT教育を取り入れていきたいと考えています。

高良
小学校の先生方も同じですが、教員の研修では自由進度学習がよく出てきますし、流れ的にはそちらへ向かっていくのだと思っています。先生方が研修で培ったノウハウを持って、HP Fortis x360 G5 Chromebookを活かしながら個別最適な学習に結び付けていけたらよいですね。

学習風景

大田
インターネット環境が安定して得られるようになれば、中学校の全生徒が端末を持ち帰って使うということが日常になってくると思います。そうなれば、災害時の対策としてGIGA端末が役立つというケースもあるかと思います。HP Fortis x360 G5 ChromebookとHP eSIM Connectの組み合わせは、これからもいろいろなものに使っていけそうな気がしています。実証実験の期間を使って、今後も様々な課題を見つけて試していきたいと考えています。

HP 岡
―ICT教育の促進はもちろんですが、多方面でGIGA端末を使っていただき、新たな可能性を見つけてくださると私たちとしてもうれしいです。今後の結果報告も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

伊平屋村立 伊平屋中学校、サン電通エンジニアリング株式会社、KDDI株式会社、株式会社 日本HPで構成される伊平屋島中学校の実証実験メンバー
伊平屋村立 伊平屋中学校、サン電通エンジニアリング株式会社、KDDI株式会社、株式会社 日本HPで構成される伊平屋島中学校の実証実験メンバー

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